長期プログラム
JCR-EULAR若手リウマチ医トレーニングプログラム研修報告書
永渕 泰雄
自治医科大学医学部アレルギー膠原病学
研修先:Leiden University Medical Center, Department of Rheumatology
期 間:2023年9月から2025年3月まで
私は2023年9月~2025年3月、ライデン大学メディカルセンター(しばしば”LUMC”と呼ばれる)のリウマチ科で基礎研究を中心とした研修を行う機会を得た。ライデン大学はオランダで最古の歴史を誇る大学で、心電図の発明がなされた場でもある。LUMCのリウマチ科は総勢100名以上のスタッフを抱え、ヨーロッパを代表するリウマチ学の臨床、研究、教育機関の一つである。オランダ人の他に、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、トルコ、サウジアラビア、インド、パキスタン、インドネシア、中国など様々なバックグラウンドを持つスタッフが在籍していて、非常に国際的な環境であった。オランダ人の多くは非常に流暢な英語を喋るため、仕事や日常の生活はすべて英語で事足りる。とはいえ、私自身の英語力の不足で歯がゆい思いをすることは多々あった。一般的な英語力の日本人が留学を準備する場合、何をおいても大事なのは可能な限り英語力を高めることだと考える。
・研修内容について
私のボスは主任教授のTom Huizinga先生とリウマチ科内の免疫研究部門を統括するRene Toes先生であり、非常に親身な指導を受ける事ができた。”スタッフ一人一人がHappyであることがとても大切なんだ”というHuizinga先生の言葉と、様々な場面での心配りが心に残っている。
私の研究の専門はデータ解析であり、リウマチ科内でデータ研究を行っているRachel Knevel先生にも大変お世話になった。またリウマチ科とは別個に、計算生物学センターのErik Van Den Akker先生の研究室にも所属し具体的なデータ解析について指導を受けた。またAnnette H.M. van der Helm – van Mil先生の研究室にも参加し、at-risk RA(プレRA)の研究に加わった。
複数の研究室に所属することで、様々な研究に触れることが出来て大変勉強になった。一方で、所属研究室が曖昧になり、出席が必要な会議が増える(それぞれのグループに週1-2回程度ミーティングがある)、などのデメリットもあり一長一短があるように感じた。主な研究内容については下記を参照されたい。日本へ帰国後の現在もLUMCの研究員を併任し、共同研究を継続している。
実臨床については、研究が多忙になってドロップアウトするまでの期間は外来の難治症例を議論する週一回のカンファランスに参加していた。オランダは医療費が無料で、医療問題はまずかかりつけ医に相談するシステムである。オランダでは生物学的製剤使用へのハードルが日本より高いことなど医療制度の違いは興味深かった。また、多数の医師主導の臨床研究や治験が行われている様子も刺激になった。
私の研究の専門はデータ解析であり、リウマチ科内でデータ研究を行っているRachel Knevel先生にも大変お世話になった。またリウマチ科とは別個に、計算生物学センターのErik Van Den Akker先生の研究室にも所属し具体的なデータ解析について指導を受けた。またAnnette H.M. van der Helm – van Mil先生の研究室にも参加し、at-risk RA(プレRA)の研究に加わった。
複数の研究室に所属することで、様々な研究に触れることが出来て大変勉強になった。一方で、所属研究室が曖昧になり、出席が必要な会議が増える(それぞれのグループに週1-2回程度ミーティングがある)、などのデメリットもあり一長一短があるように感じた。主な研究内容については下記を参照されたい。日本へ帰国後の現在もLUMCの研究員を併任し、共同研究を継続している。
実臨床については、研究が多忙になってドロップアウトするまでの期間は外来の難治症例を議論する週一回のカンファランスに参加していた。オランダは医療費が無料で、医療問題はまずかかりつけ医に相談するシステムである。オランダでは生物学的製剤使用へのハードルが日本より高いことなど医療制度の違いは興味深かった。また、多数の医師主導の臨床研究や治験が行われている様子も刺激になった。
・研究1. ACPA産生B細胞のシングルセルRNA-seq
Rene Toes先生とHans Ulrich Scherer先生の研究室における抗シトルリン化タンパク抗体(ACPA)産生B細胞のシングルセルRNA-seq研究にデータ解析担当者として参加した。ACPA産生B細胞の遺伝子発現(トランスクリプトーム)の特徴を明らかにするため、関節リウマチ(RA)患者の末梢血と関節液からフローサイトメトリーのテトラマー染色を利用してACPA+ B細胞を単離し、単一細胞RNAシーケンス(scRNA-seq)を実施しその特徴を明らかにした。研究成果は、EULAR 2025にて発表し、今後論文投稿を予定している。
・研究2. 早期関節リウマチの治療予後におけるJoint involvement patternの意義
Rachel Knevel先生の研究室におけるJoint involvement patternの研究のフォローアップ研究に解析担当者として参加した。治療歴のない早期RAにおいて、関節の炎症分布に基づくJoint Involvement Pattern(JIP)による4つのサブグループを報告している。本研究では、NORD-STAR試験およびBeSt試験に参加した早期RA患者を対象に、これらのJIP分類が治療後のRAの活動性に与える影響を調べた。研究成果は、こちらもEULAR 2025にて発表を行い、今後論文投稿を予定している。
・ライデンでの生活について
ライデンはライデン大学を中心とし、運河に囲まれた人口20万人程度の美しい小都市である。私は妻と小学生の長女を伴ってライデンに赴任した。ライデンの治安はよく、バスや電車などの公共交通機関にも日本と同じような感覚で乗れる。住宅難が続いているのだが、運良く市内にアパートを借りることが出来て、快適に生活することが出来た。知人から電動自転車を譲り受けた後は、より生活が便利になった。
平日の夕方18時くらいになると研究室に居残っているのは数人になり、「こんな遅くまでどうしたの?何かあったの?」と言われてしまうので、自然と夕方に帰宅するようになった。また週末や春夏秋冬の学校の休暇についても、多くのスタッフが長い休みを取り家族で旅行などに出かけていた。これがヨーロッパ流の生活か、と感慨深かった。私も家族と過ごす時間が長く、料理の腕を(多少)上げ、オランダのミュージアムを巡ったり、ヨーロッパ各地の旅行も楽しかった。
オランダには、公立のインターナショナルスクールがあり、外国人の子女は英語で教育を受ける事ができる。娘は世界各国の友人を作るとともに、メキメキと英語力を高め、自分で考えて行動する力をつけていった。あっという間に私の英語力を抜き去り、今では立派な「帰国子女」である。オランダでの生活は、私だけでなく家族にとっても大きな刺激になったように思う。
平日の夕方18時くらいになると研究室に居残っているのは数人になり、「こんな遅くまでどうしたの?何かあったの?」と言われてしまうので、自然と夕方に帰宅するようになった。また週末や春夏秋冬の学校の休暇についても、多くのスタッフが長い休みを取り家族で旅行などに出かけていた。これがヨーロッパ流の生活か、と感慨深かった。私も家族と過ごす時間が長く、料理の腕を(多少)上げ、オランダのミュージアムを巡ったり、ヨーロッパ各地の旅行も楽しかった。
オランダには、公立のインターナショナルスクールがあり、外国人の子女は英語で教育を受ける事ができる。娘は世界各国の友人を作るとともに、メキメキと英語力を高め、自分で考えて行動する力をつけていった。あっという間に私の英語力を抜き去り、今では立派な「帰国子女」である。オランダでの生活は、私だけでなく家族にとっても大きな刺激になったように思う。
・おわりに
海外留学を経験された先生は、周囲に「一度留学をした方がいい」と勧める人が多いと思う。実際に経験して、私もそう思うようになった。世界は広く、価値観も人生も様々であることを強く感じた。また、現在も続くLUMCでお世話になった先生方とのつながりも留学で得た大きな財産だと思う。このような貴重な経験の機会を与えてくださった日本リウマチ学会に心から御礼申し上げるとともに、本プログラムに推薦くださった東大の藤尾先生やお世話になった医局の先生方にも深く感謝する。本留学で学んだことを、日本の若手の先生方に還元し、今後のリウマチ学の発展に貢献できるよう頑張りたいと思う。
図1. Rene Toes先生の研究室一同の似顔絵。一番上の中央がToes先生、その左が筆者。
図2. お世話になったRachel Knevel先生、Erik Van Den Akker先生とともに。