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リウマチ・膠原病を心配したら

リウマチ・膠原病全般について

Q:膠原病とは、どんな病気ですか?

膠原病とは、どんな病気ですか?

A:「膠原病」という言葉は、ひとつの病気の名前ではなく、共通する性質を持ついくつかの病気の総称です。1942年に、アメリカの病理学者であるPaul Klemperer(1887-1964)が、顕微鏡を使った検査で、全身の結合組織(骨・軟骨・腱など)や血管に「フィブリノイド変性」と呼ばれる特徴的な所見が認められるいくつかの病気を発見し、それらを「膠原病」と呼ぶことを提唱しました。膠原病は、「結合組織疾患」や「リウマチ性疾患」などと言い換えられることもあります。

膠原病を発症する原因は、「免疫」の異常にあると考えられています。私たちの体には、細菌やウイルスのような異物を排除し、自分を守るための「免疫」という機能が備わっています。一方で、自分の体をまるで異物のように認識し、排除しようとする免疫の暴走を「自己免疫」と呼びます。膠原病の患者さんの体の中には、自分の体を攻撃する細胞(自己反応性リンパ球)や、蛋白質(自己抗体)が存在し、これらが皮膚や筋肉、関節、内臓、血管などに炎症を起こすと考えられています。

近年、研究の進展に伴い、膠原病に対する病態の理解や治療方法の開発が進んでいます。主治医とよく相談しながら、ひとりひとりの患者さんが、ご自分の病気の状態やライフスタイルにあった適切な治療を受けることが大切です。

 

Q:リウマチ専門医が診療にあたる病気について教えてください

A:リウマチ専門医が診療にあたる疾患(膠原病・リウマチ性疾患)には様々な病気が含まれます。「膠原病・リウマチ性疾患・はどのような病気ですか?」という質問には以下のリンクに答えがあります。
https://www.ryumachi-jp.com/general/collagen-diseases/
下にありますリンクから一部の列記された疾患に対する簡単な説明を見られますが、読んでいただくにあたって大事なことがあります。コンテンツにはその疾患で比較的よくみられる症状・検査結果が記載されていますので、「一般的にはこんな感じの疾患なんだ」というイメージを持つのには役立ちますが、ご自身の症状すべてを説明できるとは限りません。治療に関してもあくまでも一般論であることをご理解ください。
https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/

・リウマチ性疾患および類縁疾患
関節リウマチ(RA) リウマチ性多発筋痛症(PMR) 乾癬性関節炎(PsA) 脊椎関節炎(SpA)
全身性エリテマトーデス 多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM) 全身性強皮症(SSc) 混合性結合組織病(MCTD) 抗リン脂質抗体症候群(APS)
巨細胞性動脈炎 高安動脈炎 結節性多発動脈炎 顕微鏡的多発血管炎(MPA) 多発血管炎性肉芽腫症(GPA) 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)
シェーグレン症候群 ベーチェット病 IgG4関連疾患
変形性関節症 骨粗鬆症 痛風 偽痛風
・小児リウマチ性疾患
若年性特発性関節炎(JIA) 若年性シェーグレン症候群 若年性皮膚筋炎 小児全身性エリテマトーデス 家族性地中海熱
 

Q:間質性肺炎ってどんな病気ですか?

A:肺を大きく分けると実質と間質にわけられます。実質は気管・気管支・肺胞という外気が通る部分、間質は肺胞の周り、血管や支持組織がつまった部分を指します。イメージとしてはフルーツゼリーのフルーツが実質、ゼリーが間質という風に思ってもらえばよいかと思います。
通常の肺炎は実質に炎症が起きますが、間質性肺炎では間質を中心に炎症が起こります。結果として影響を受ける部分は体内への酸素の取り込みです。間質性肺炎が進行すると低酸素状態となるため、動いた時の息切れなどが出現します。
間質性肺炎はリウマチ性疾患にしばしば合併するため、注意が必要です。間質性肺炎の原因は様々ですが、リウマチ性疾患の場合には感染・原疾患・薬剤によることが多いです。原因に応じて治療は異なりますが、特に原疾患による場合炎症を止める目的でグルココルチコイド(副腎皮質ステロイド)や免疫抑制剤が使用されます。
間質性肺炎の一部では炎症が生じたあとに線維化が進行することがあります。線維化が進むと肺の弾力がなくなり、正常な間質が線維に置き換わるため体内への酸素の取り込みにも問題が出てきます。最近では進行性の線維化をともなう間質性肺炎に対して、抗線維化薬の有用性が報告されています。

 

Q:どんな時に膠原病が疑われ、どのように診断されますか?

どんな時に膠原病が疑われ、どのように診断されますか?

A: 膠原病の症状には、発熱、全身倦怠感などの全身症状や、関節や筋肉の痛み、皮疹、息切れなどがあります。熱が続いたり、原因のわからない関節痛や筋肉痛、皮膚症状がみられたりする場合は、一度専門医にご相談いただければと思います。

診断は、症状の「ストーリー」(経過)、「様子」(身体診察)、「検査」(採血、尿検査、画像検査など)を組み合わせて、総合的に判断されます。そこで、「どういった事柄がいつ頃から起こったか」「日常生活のどういう瞬間に困っているか」という記録を、時系列にそってメモにまとめたり、症状を写真に保存したりしておくことは、医師の診断の助けとなります。

膠原病には100種類を超す疾患があり、いくつかの病気は、条件を満たすと難病法による医療費助成の対象となります。近年は原因究明やお薬の開発が進み、「難病」という言葉にそぐわない場合もあります。ただ、気管支喘息や高血圧のように、一生上手にお付き合いしていく病気が多いのも事実です。
▸リウマチ性疾患と検査、薬剤について

 

リウマチ・膠原病などの病気のしくみについて

Q:自然免疫と獲得免疫って何ですか?

A:免疫は、ウイルスや細菌などのさまざまな病原体から体を防御するためのしくみであり、生まれた時から備わっている「自然免疫」と、後天的に身につく「獲得免疫」があります。私たちが健康でいるためには、「自然免疫」と「獲得免疫」のどちらも欠かせない働きを担っています。以下にそれぞれを説明します。

【自然免疫】
自然免疫は、あらゆる生物がもつ基本的なシステムであり、体に病原体などの異物(非自己)が侵入した時にいち早く反応して排除するしくみです。具体的には、マクロファージや好中球といった細胞が細菌などの病原体を食べることで処理します(貪食作用)。さらに、マクロファージや樹状細胞といった細胞は、貪食した遺物(抗原)の情報を免疫の司令塔であるT細胞へと伝達すること(抗原提示)により獲得免疫を活性化させます。その他、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)などは体内を巡回し、がん細胞やウイルスに感染した細胞を除去する役割を担います。このように、自然免疫はさまざまな異物に素早く対応することが特徴で、たとえば風邪をひいた時に薬を飲まなくても自然に治るのは自然免疫が働いているためです。

【獲得免疫】
獲得免疫は、一度侵入した病原体の情報を記憶するシステムであり、再び侵入された時に素早く対処して病原体を効率的に排除する役割を担います。獲得免疫は、自然免疫のように生まれながらに備わっているものではありません。たとえば、はしかなどのウイルスに一度感染して回復すると、体内に抗体ができて、同じ病気にはかかりにくくなったり、もう一度かかっても治りが早くなるのは、獲得免疫の働きによるものです。ワクチンもこの仕組みを利用しています。具体的には、抗原を貪食したマクロファージや樹状細胞がリンパ節へ行って、ヘルパーT細胞へ病原体が侵入したことを伝達します。そして、伝達を受けたヘルパーT細胞はB細胞を成熟させて抗体を作らせるなど免疫の司令塔として働きます。B細胞は最終的に形質細胞と呼ばれる細胞になり、抗体を量産するとともに異物を攻撃して自然免疫を助ける役割も担っています。

 

Q:自分が膠原病だと家族も膠原病になりますか?

A:膠原病はたくさんの遺伝子が発症に関連する多因子疾患と考えられています。膠原病以外では、生活習慣病が代表的な多因子疾患です。例えば、糖尿病になりやすい遺伝子を複数持っている人は、持っていない人と比べて糖尿病を発症しやすい傾向にあります。
多因子疾患の病気にかかわる遺伝子のひとつひとつはそれほど影響力が強くないため、遺伝子ひとつだけでは病気の発症には結びつきません。また、子供さんに伝わる遺伝子だけでなく多くの要因が重なって病気の発症に至ります。

よってご質問に対する答えとしては、親の膠原病が子供に直接遺伝することは(一部の例外を除けば)ないということになります。ただし、親の疾患遺伝子の一部は子供に遺伝しますので、子供は全く疾患遺伝子のない家系と比べれば膠原病をより発症しやすくなるとはいえます。遺伝の要素がどの程度膠原病に関係するかはその疾患により異なります。例えば遺伝子が同一の一卵性双生児の場合片方がSLEになったときにもう一人がSLEになる確率は30%程度と言われています。また、家族内に膠原病の患者がいる場合同じ病気ではなくても、そのほかの膠原病を発症しやすくなることがわかっています。これは自己免疫を起こしやすい遺伝子的な背景が共通しているからと考えられています。

ただし、この起こしやすさが遺伝子だけにより引き起こされているのか、環境要因(住環境や食事)が共通であることがも影響しているのかは難しい問題です。

 

Q:免疫のしくみと膠原病との関係は?

A:膠原病は、1942 年に米国のポール・クレンペラーという病理学者が提唱した病気の考え方です。厳密には、膠原病は病名ではありません。心筋梗塞、狭心症、不整脈などをまとめて心臓病というのと同じように、膠原病は、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど 30 以上の病気の「総称」です。クレンペラーは、それまで原因不明に亡くなる患者さんのさまざまな臓器の「膠原線維」に病変がみられる病気を総称して「膠原病」と名付けました。しかし、医学の進歩によって、膠原病は全身性の「自己免疫疾患」であると理解されるようになりました。「免疫」というのは、体に外から異物が入ってきた際に、それを見分けて攻撃し、体を守るしくみのことです。「自己免疫」の病気、すなわち膠原病では、このシステムに狂いが生じ、自分の体の一部を自分の免疫が攻撃します。免疫の司令塔がリンパ球ですが、自分を攻撃するリンパ球は、全身の関節、皮膚、肺、腎臓などに流れていくと、そこで臓器障害を生じ、膠原病に属する病気が発症します。

膠原病がなぜ発症するのかについて、その全容はまだ解明されていません。膠原病は、親から子へ引き継がれる遺伝病ではありませんが、遺伝の要因が全くないわけではありません。膠原病を発症する人には、複数の疾患感受性遺伝子(病気にかかりやすい遺伝子)が知られており、それに環境要因(感染症、外傷、寒冷刺激、紫外線、ストレス、妊娠・出産、薬物など)が重なることで免疫システムの異常が起こり、病気を発症すると考えられています。「自然免疫と獲得免疫って何ですか?」に記載されているように、免疫システムはマクロファージや好中球からなる自然免疫とT細胞やB細胞からなる獲得免疫が病原体への免疫(生体防御)として働きます。
膠原病では、これらの免疫システムにかかわる遺伝子に多くの疾患感受性遺伝子が見つかっており、自分自身の体の成分(自己抗原)を提示するマクロファージや好中球、自己抗原に反応するT細胞やB細胞が過剰に活性化することで、自分を攻撃する抗体(自己抗体)を作り、さまざまな症状と多くの臓器に障害を引き起こします。したがって、多くの患者さんの治療薬にはこれらの免疫システムを抑える薬(免疫抑制薬)や免疫に関わるさまざまな分子を抑える薬(分子標的薬)が使われます。

 

リウマチ・膠原病の症状について

Q:関節が痛いときの治療にはどんなものがありますか?

A:関節の痛みは、リウマチ性疾患の患者さんによくみられる症状のひとつです。しかし、その原因は様々であるため、画一的な治療ではうまくいかないことがあります。関節痛への対処を考えるために、まず関節痛の原因やその種類について考えてみましょう。
1)痛みの考え方
関節の痛みをどう考えればよいのでしょうか?まずは関節炎による痛みとそれ以外に分けるとわかりやすいと思います。例えば関節リウマチに代表されるリウマチ性疾患の患者さんは関節の炎症(関節炎)による痛みを感じることがあります。“関節炎”による痛みは動かずにじっとしているとき(安静時)にも強い痛みを感じること、患部の腫れ(腫脹)や赤み(発赤)、熱っぽさ(熱感)を伴うことが多い、といった特徴があります。つまり関節の中や周囲で炎症が起きているわけです。痛風発作もこれらの痛みに分類されます。
それでは関節炎による以外の痛みにはどのようなものがあるでしょうか?例えば関節リウマチ患者さんで骨や軟骨の破壊が進行して関節の変形やぐらつき(構造破壊)が生じてしまうと、痛みの原因となることがあります。また、変形性関節症の患者さんの場合には関節軟骨のすり減りや骨などの変形によって同様の症状が起きることがあります。“構造破壊”による痛みは関節を動かしたり体重をかけたりといった動作のときに特に強く痛みを感じることが多い、といった特徴があります。
この他、関節の炎症や破壊がなくてもロコモティブシンドロームやフレイルといった身体機能や筋力の低下が痛みの原因となっていることもあります。これらについては日本整形外科学会ホームページ(新概念「ロコモティブシンドローム」|公益社団法人 日本整形外科学会 (joa.or.jp))や日本医学会連合が作成したパンフレット(20220428132856.pdf (jmsf.or.jp))をご覧いただくとわかりやすいと思います。
また、関節自体に異常がなくても、その部分を支配している神経の傷害でも痛みが出現することがあります(詳しくは後で述べます)
さらに線維筋痛症の患者さんの場合には、痛みを感じる脳の反応性が痛みに敏感になることで痛みを感じるといわれています。
以上のように痛みと一言でいってもさまざまな原因が考えられ、それぞれによって対処法が違うことをご理解ください。
2)痛みの種類
痛みには3つの種類があると言われています。
①侵害受容性疼痛(しんがいじゅようせいとうつう)とは、組織や関節の炎症や損傷による痛みのことです。打撲や骨折などケガによる痛みも含まれます。関節リウマチ患者さんの“関節炎”や“構造破壊”による痛みの多くが侵害受容性の痛みに含まれます。この種の痛みは「ズキズキ」「ガンガン」などと表現される方が多いようです。
②神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう)とは、神経そのものが障害されたり刺激を受けたりすることによる痛みのことです。腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛、帯状疱疹による神経痛なども含まれます。関節リウマチ患者さんとは関係ないように思われるかもしれませんが、関節リウマチ患者さんの5人に1人は神経障害性の痛みを伴っていたという報告もあります。この種の痛みは「ジンジン」「ピリピリ」「ビリビリ」「チクチク」などと表現される方が多いようです。
③心因性疼痛(しんいんせいとうつう)とは、不安や怒り、偏った痛みの捉え方など“情動”が関与する痛みのことです。関節リウマチ患者さんで、自分自身の無力感や不安、運動への恐怖などが機能障害や痛みと関連している可能性があります。こちらに関しては診断が難しいため、今回は省略します。

3) 関節痛への対応の仕方
次に、関節痛への対応の仕方について、お話を進めてみます。
基本的な対策として、痛みのある関節に負担をかけないための工夫が挙げられます。具体的には、自分の生活習慣の中で特定の関節に負担がかかる動作がある場合にそれを改善できないか考えてみる(例えば膝が痛い患者さんであれば正座などで直接床に座るよりは椅子に腰かけるほうが膝への負担は軽くなります)、仕事や趣味で無理な姿勢を長く続けているようなことがある場合は少し控えてみる、肥満気味の方は適正体重を目指して減量を心がけてみる、体を冷やしすぎないようにする、関節を保護するためのサポーターや装具・自助具の使用を検討する、などが考えられます。また、炎症を起こしていると考えられる時(熱や腫れがある場合)には無理に動かさずに痛みのある部分の安静を心がけることも効果的です。このような時は保冷剤などで痛みのある関節を冷やすことも有効と考えられます。一方で、痛みのある関節に炎症の徴候(熱や腫れなど)がない場合には入浴やホットパックなどで温めることで血流が良くなり、痛みが軽くなったり、周りの筋肉がほぐれてリハビリが行いやすくなったりすると考えられます。このような時はマッサージも周囲の血流を改善することで同様の効果が期待できます。
ここからはお薬での治療を中心に説明いたします。痛みのある局所への治療として消炎鎮痛剤を含む湿布や塗り薬が有効なことがあります。また、関節注射が有効なこともあります。変形性関節症(主に膝関節が対象になります)や肩関節周囲炎に対してはヒアルロン酸の関節注射がよく行われますし、その他の原因であっても関節炎を起こしている場合には炎症を鎮める目的でグルココルチコイド(副腎皮質ステロイド(副腎皮質ステロイド | 一般社団法人 日本リウマチ学会(JCR) (ryumachi-jp.com)を参照してください))の関節注射が選択されることがあります。局所治療で痛みの改善が難しい場合や、他部位に痛みがある場合には内服薬での全身的な治療を行います。
関節リウマチ患者さんが関節の痛みを感じてしまう場合、特に関節炎の症状が残存している場合には、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)による疾患活動性のコントロールを図る必要があります(抗リウマチ薬(DMARDs) | 一般社団法人 日本リウマチ学会(JCR) (ryumachi-jp.com)を参照してください)。このほか関節炎や構造破壊による関節痛に対しては一般的な解熱鎮痛薬であるアセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(非ステロイド抗炎症薬 | 一般社団法人 日本リウマチ学会(JCR) (ryumachi-jp.com)を参照してください)が一時的に用いられます。また関節リウマチ治療初期などに炎症を伴った関節痛に対する強い効果を期待して一時的に副腎皮質ステロイドが用いられることがあります。これらのお薬(アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬、グルココルチコイド(副腎皮質ステロイド))はあくまで対症療法としての補助的な薬剤であり、一時的な症状改善は得られますが、関節リウマチの滑膜炎や骨破壊には影響を及ぼさないという点に注意が必要です。
焼けるようなヒリヒリするいたみ、電気が走るようなピリピリする痛み、チクチクさしたりするような痛み、軽く触れるだけでも感じてしまう痛みなどの場合には神経障害性疼痛の可能性が疑われます。神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版(2016年版)では第一選択薬としてCa2+チャネルα2δリガンド(プレガバリン、ミロガバリン、ガバペンチンなど)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(デュロキセチン)、三環系抗うつ薬(アミトリプチン、ノルトリプチン、イミプラミンなど)が、第二選択薬としてワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液、トラマドール(弱オピオイド薬)が記載されています。
痛みが長期間にわたって続いてしまう場合には慢性疼痛(典型的には3か月以上続く痛みとされます)といわれ、慢性疼痛診療ガイドライン(2021年版)が公開されています。このような痛みには今まで紹介した薬剤を組み合わせるなどといった複合的な治療が必要になることもあります。またその他にもリハビリテーションや心理的アプローチなど様々な治療法が推奨されています。

痛みを感じる場面や痛みの性質をよく見極めて、担当の医師や看護師、薬剤師などと適切な治療法についてご相談することをお勧めします。

参考文献
1.竹田晃子, ほか. 慢性痛保有者における痛みのオノマトペ. ペインクリニック. 36:783-792,2015
2.井上雅之, ほか. 痛みの種類・分類. JOHNS. 32:547-550,2016
3.島原範芳, ほか. 生物学的製剤使用中の関節リウマチ患者の疼痛症状、機能障害、精神心理的問題の関係性 心理社会的側面評価の重要性. 臨床リウマチ. 30:154-165,2018
4.大石了三. 痛みの種類と治療薬.臨床と研究. 97:133-137,2020
5.Noda K, et al. How do neuropathic pain-like symptoms affect health-related quality of life among patients with rheumatoid arthritis?: A comparison of multiple pain-related parameters. Mod Rheumatol. 30:828-834, 2020
6.島原範芳, ほか. 関節リウマチ患者の訴える痛みに如何に取り組むか 寛解後も残存する痛みを修飾する因子と愁訴の関係性を中心に. 日本関節病学会誌. 40:134-140,2021
7.慢性疼痛診療ガイドライン(慢性疼痛診療ガイドライン | Mindsガイドラインライブラリ (jcqhc.or.jp))
8.神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版(神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版 | Mindsガイドラインライブラリ (jcqhc.or.jp))

 

Q:再燃って何ですか?どうしたら再燃しなくなりますか?

A:病気を治療して完全に治った状態を「治癒」といいます。症状や検査異常は消失しているけれども治癒とはいえない状態を「寛解」といいます。インフルエンザや骨折は「治癒した」という言い方ができますが、関節リウマチや膠原病は「治癒した」という言い方ができません。それは、関節リウマチや膠原病では症状がなくなった状態(寛解状態)が維持されていても、病気の仕組みが体内から完全に消失したとは言いきれないからです。つまり症状が消失したからといって自己判断で投薬を減薬・中断してしまうと病気の再活性化、つまり再燃を起こしてしまいます。「自分の身体のことは自分が一番わかっている」という理屈は病気、すくなくともリウマチ性疾患には通じません。
近年は有効な治療薬が増え、長期的に寛解を維持でき、さらに治療薬が中止されて「治癒」のように感じられる場合もあると思われます。しかし、その場合であっても長い年月が経過するあいだには、病気の再燃をきたすことがあります。これが「治癒」ということばを我々があまり使用しない理由です。再燃が繰り返されると、関節、肺、腎臓などにダメージが蓄積し、関節破壊、呼吸不全、腎不全などの状態が固定化していきます。
再燃を減らすためには、定期的に受診し、薬剤の内服は規則正しく行い、薬剤の減量は医師の指示に従って少しずつ進めること、風邪や新型コロナなど一時的な感染症ではできるだけかからないようにすること、などがあげられます。また再燃であっても早い段階であれば、治療の若干の修正で対応できる場合もあるので、日頃から症状を気に掛けていただき、気になる症状がある場合は早めに主治医に伝えて頂くことが重要です。

 

Q:関節が痛いとき、どうすればいいですか?

関節が痛いとき、どうすればいいですか?

A: 関節痛は様々なことが原因で生じます。若年者であればウイルスなどの感染症、中年以降の女性であれば手指や膝関節などの変形性関節症、中年男性であれば痛風発作も関節痛の原因となります。また尋常性乾癬、炎症性腸疾患などの基礎疾患をお持ちの方が関節痛を生じた場合は、これらの疾患に関連した関節炎の可能性があります。
▸リウマチ性疾患と検査、薬剤について

関節リウマチや膠原病の関節症状の場合は、慢性の経過をたどります。症状が6週間以上持続する場合、一度は関節炎診療を得意とする膠原病・リウマチ内科、整形外科を受診することをお勧めします。関節リウマチであれば、早期診断・適切な治療介入により、将来的な関節破壊・変形を起こすことなく、病気が落ち着いた状態(寛解)にすることが可能です。また関節リウマチはその発症リスクとして、家族歴・喫煙・歯周炎が知られています。特に血縁者の中に関節リウマチをお持ちの方がいる場合は、禁煙や日頃からの口腔ケアを徹底しましょう。

 

リウマチ・膠原病の治療について

Q:リウマチ・膠原病の治療ってどんなものがありますか?

A:リウマチ領域の治療には様々なものがありますが、ここでは標準的な治療についてお伝えしたいと思います。
膠原病や関節リウマチの治療には、病気そのものの活動性を抑える治療、痛みや発熱などの症状をやわらげる治療、副作用を抑える治療に分けて考えることができます。
1:病気そのものの活動性を抑える治療
関節リウマチでは“抗リウマチ薬”と呼ばれる薬が使用されます。一般的な抗リウマチ薬として、 メトトレキサート、サラゾスルファピリジン、イグラチモド、タクロリムス、ブシラミンなどの
内服薬が使用されます。とくにメトトレキサートは作用が強力で、関節リウマチの主たる治療薬として位置づけられています。病気の活動性が十分に抑えきれない場合には、生物学的製剤(注射薬(自己注射や点滴JAK(ジャック)阻害薬(内服薬)など、より強力だが副作用にも注意を要する高価な薬剤が使用されます。
膠原病はさまざまな疾患を含み一律に決まった治療として括ることはできませんが、多くの疾患でグルココルチコイド(ここではわかりやすく「ステロイド」と記載します)プレドニゾロンなど)が使用されます。ステロイド製剤の標準的な投与量は病気によって異なっており、たとえばリウマチ性多発筋痛症ですと比較的少量ですが、重症の全身性エリテマトーデスや皮膚筋炎、血管炎症候群などでは点滴投与も含めた大量投与が必要になる場合があります。さらに強力な治療を行うため、あるいはステロイド製剤 の減量のために、種々の免疫抑制薬が追加されることがあります。これらの薬剤は、膠原病によってもたらされている肺、腎臓、神経、筋、皮膚、血液などの障害の程度に応じて調整されます。また最近では標的を絞った強力な薬剤である分子標的薬も治療に用いられます。
2:痛みや発熱などの症状をやわらげる治療
関節リウマチや膠原病の症状として関節痛や筋肉痛は多くみられます。また、疾患の活動期には発熱がみられることも少なくありません。これらの症状の緩和には、非ステロイド性解熱鎮痛薬が使用されます。症状が強い際にはしばしば使用されますが、病気の活動性が抑制できればその使用を減らすことができ、さらに中止できる場合もあります。
痛みの緩和には解熱鎮痛薬のほかに、鎮痛補助薬といわれる薬剤が使用されることもあります。
一部の膠原病では、主に手足の末端の血管が狭くなったり詰まることで血の流れが悪くなることがあります。
このような際に、末梢血管を拡張させる血管拡張薬、血栓を抑制する抗凝固薬や抗血小板薬が使用されることがあります。
3:副作用を抑える治療
メトトレキサート、生物学的製剤、JAK阻害薬、ステロイド製剤、免疫抑制薬は、その免疫抑制作用によって強力な治療効果を発揮する薬剤ですが、そうであるがゆえに自身の免疫能の低下による感染症の発生が懸念されます。特に肺炎、帯状疱疹、新型コロナウイルス感染症 、ウイルス性肝炎、結核などの発生には注意を要します。副作用がおきてから対処するのではなく、その前段階での対応として肺炎球菌ワクチン、帯状疱疹ワクチン、インフルエンザワクチン、新型コロナウイルスワクチンなどの予防接種を行ったり、ニューモシスティス肺炎、B型肝炎 、結核などには、予防投薬がなされる場合があります。他に、ステロイド製剤の長期使用に伴う骨粗鬆症や消化管障害に対する予防的あるいは治療的な投薬、メトトレキサートの副作用予防のための葉酸製剤の投与がしばしばなされます。

治療の内容やその意図については、患者さんごとにさまざまな要因が考慮されています。主治医との相談を十分にされて、治療内容を理解され、検討されることをお願いいたします。

 

Q:リウマチ・膠原病で使う薬の副作用って何がありますか?

A:お薬の副作用は非常に悩ましい問題です。われわれは良い効果を期待してお薬を処方しますが、期待している効果以外の作用が起こることもしばしばあります。これを副作用といいます。日本リウマチ学会ホームページにもよく使用するお薬に関しての解説文があり、一部のお薬では副作用についても触れています。
https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/
お薬の説明書きを読めばわかるように副作用が報告されていないお薬はありません。よってわれわれがお薬を処方するときには良い部分・悪い部分を慎重に秤にかけてから使うかどうかを決めています。また、お薬の副作用は多岐にわたりますが、説明書きに記載されているもの全てがひとりの方に起きることはありません。また、お薬の副作用かどうかを判断するためには因果関係(お薬の内服と起こった副作用とが医学的に判断してつなげられるかどうか)が成立するかどうかも考える必要があります。極端な例ですが、きちんと因果関係を考慮しないあいまいな理由で使えないお薬を増やしてしまうと病気の治療自体に支障をきたしてしまうかもしれません。
われわれリウマチ医は長期にわたって使う薬を処方することが多いため、副作用に対しては特に注意をはらっています。お薬が変わってから何か体調に変化があったときにはためらわずに主治医に相談してください。
また、もしも副作用で非常に大きな問題が生じた場合には、医薬品副作用被害救済制度を利用することもできます。くわしくは以下のリンクをご参照ください。
https://www.pmda.go.jp/kenkouhigai_camp/index.html

 

Q:リウマチ・膠原病の最新の治療について教えて下さい

A:患者さんたちからはしばしばこの質問をいただきます。確かに新しい治療には新たな可能性があるので、病気を患って苦しい思いをしている患者さん達には早く知りたい情報だと思います。
しかし、最新の治療とはなんでしょうか? 最新の治療という言葉自体、とらえかたや立場によって様々にうけとることが可能であるため、まず最初に最新治療が意味することを整理してみたいと思います。
最新の治療は大きく分けると4つになります
1. 現在開発中の薬剤:治験の薬剤などがこれにあたります。一般の使用はできません。
2. 現在どこかの国でその疾患に承認された薬剤:承認された国が日本でなければ簡単に使用はできませんが、今後使えるようになる可能性があります。
3. 最近開発されて保険適応となった薬剤:販売されてからならば使用することができますが、1年間は2週間分程度の処方になります。また、新薬ですので予想しない副作用が見つかる可能性があります。
4. もともと他の疾患で使用されていて適応拡大となった薬剤:すぐに使用することができます。副作用に関してもある程度はわかっています。ただし、疾患特異的(病気に特有の)副作用についてははっきりしていません。
日本リウマチ学会としては、一般のみなさまには安全性の高い、保険適応のある薬剤を中心とした治療を説明すべきと考えています。よって上記の中で扱うものは3, 4, (状況によって2)となります。また、個々の薬剤についてピックアップして述べることはある薬剤を同列に扱わず忖度することにもつながりかねないので、疾患の治療の説明においては一般的な形、標準的な治療を中心にでお話させていただいています。
ご理解いただければ幸いです。
以下に疾患・薬剤についてのリンクを貼っておきます。
https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/

 

Q:将来的には治療を止めることができますか?

A:リウマチ性疾患は自分の免疫システムの一部が都合の悪い反応を起こすことで発症します。感染症などの場合には病原体が体内に侵入して病気になるため、病原体が体からいなくなれば病気は「治癒」の状態になりますが、リウマチ性疾患の場合いろいろな原因によって体内の免疫システムに異常が生じることで病気になるため、その原因がなくなっても免疫システムの異常が治らない限りは「治癒」とはいえません。我々の使用しているグルココルチコイド(わかりやすくステロイドと呼ばれることもあります)や免疫抑制剤、抗リウマチ薬、分子標的薬はいずれも余分に起きてしまっている免疫反応を抑え込む働きをしますが、もともとある異常を元通りにしているわけではありません。ある意味では薬で抑え込んでいるという言い方をしてもよいかと思います。
体内の免疫反応が十分沈静化されていない段階で薬をやめると「再燃」するのは上記のような背景によります。
体内の免疫反応・炎症反応が落ちついた状態を「寛解」といいますが、この状態になったからといって免疫の異常が解消されているとは限りません。よってこの状態で急に治療をやめると、一定期間が経過したのち再燃することがあり得ます。
しかしながら、「寛解」になった場合、病気を抑え込むための薬剤の減量はしばしば行われることです。減量を続けていき、最終的に薬を0にすることもできないとはいえません。例えば副腎皮質ステロイドが中心的な治療薬である全身性エリテマトーデスや血管炎症候群においても、他のお薬を併用することでステロイドを中止にできる症例がみられるようになっています。ステロイドを中止にしたのち、そのほかの薬も減量・中止できる患者さんもいないわけではありません。ただし、すべての患者さんが必ず最終的に薬をやめられるかというと、そういうわけではありませんし、中止にした患者さんの一部は再燃することもあります。
よってこの質問の答えは「寛解を達成した患者さんの一部では治療をやめられることがありますが、寛解になった患者さんが全員治療を中止できるわけではありません」ということになります。

 

Q:自己判断で薬の服用を中断するとどんなことが起きますか?

A:リウマチ性疾患や膠原病、自己炎症性疾患およびその近縁疾患は多岐にわたりますが、免疫異常がおこす炎症に対して治療を行うという原則には変わりがありません。またこれらの疾患は自然に治癒するということが無いため、寛解後も再燃のリスクが伴います。
リウマチ性疾患の治療薬としてはグルココルチコイド(わかりやすくステロイドと呼ばれることもあります)、免疫抑制薬、免疫調整薬、生物学的製剤など免疫に影響を及ぼすお薬が中心になります。薬剤は治療指針など標準的な治療を参考にしながら、個人に合わせた形で選択されます。薬剤選択にはご本人の意向や置かれている環境も反映されますので、ご自身が納得した上で治療を開始することが重要です。
薬剤の効果があるかどうかの医学的な判断は患者さんご自身ではできないため、定期的な受診は欠かせません。効果がないと自己判断して服用をやめた場合には中断したことによる病気の悪化が起こることがあります。更にグルココルチコイドの場合、急な自己中断により重い副作用をきたすことがあります。グルココルチコイドは体内でも生成されているホルモンですが、長期間内服することで体内での自己産生が止まってしまいます。急激な内服中断は結果として体の生命維持に必要なグルココルチコイドが不足した状態となり、倦怠感、吐き気、頭痛、血圧低下(ショック)、意識障害などの症状が出現し生命にかかわることがあります(ステロイド離脱症候群)。
また、内服してから出現した症状が副作用であるかが気になって薬の服用を止めることもあるかもしれません。これも本当に薬によるものなのかどうかの判断は医学的な知識がない場合非常に難しいです。もしも薬のせいでなかった場合には、自己判断の結果使用できるはずの薬が減ってしまうことになります。
薬の効果が出ていない、副作用が出現したのではないかなどお薬に関する疑問が生じた場合には、担当医へ連絡して指示を仰ぐことが望ましいと思います。もしも担当医の判断や薬剤選択に不安が残る場合にはセカンドオピニオンを求めるという方法もとれます。くれぐれも自己判断だけに基づく内服中断はおやめください。

 

Q:関節リウマチの治療中、どんな時に手術を考えますか?

関節リウマチの治療中、どんな時に手術を考えますか?

A: 関節の痛みや変形によりぐらつきや動きの制限が生じ日常生活動作が障害されている場合(歩きづらい、腕があがらない、物を持ちづらい、など)に手術を考えます。特に薬による全身的な治療がしっかりと行われているのに一部の関節だけに腫れや痛みが残ってしまう場合、すでに一部の関節の変形や破壊がすすんでしまった場合(今の薬の治療では関節の修復・再生はできません)には手術をお勧めしています。

手術を考える部位によって異なりますが、次のような選択肢があります。
関節の変形が軽度で痛みや腫れが主な場合には、滑膜切除術(炎症の原因となっている滑膜という組織を除去する手術で最近は主に関節鏡を用いて行います)や関節形成術(なるべく本来の関節構造を残しながら関節の機能再建を目指す手術)が選択されます。
関節の破壊が目立つ場合には、人工関節置換術(関節の傷んでいる部分を切除して人工の関節に入れ替える手術)や関節固定術(関節の動きは失われてしまいますが、傷んだ関節を固定することで痛みをなくしてしっかり支えられる状態にする手術)が選択されます。

 

Q:治験ってどんなものなのか教えてください

A:生物学的製剤、JAK阻害薬などさまざまな新薬の登場により、近年の関節リウマチや膠原病の治療成績は飛躍的に向上しました。これらの薬剤一つひとつが世の中に誕生するまでには、いくつもの段階を踏む必要があります。まずは化学合成物、植物、土の中の微生物、海の生物などから発見された物質から、いくつかの成分が「くすりの候補」として選ばれます。次に、動物を対象として「くすりの候補」の効果と安全性を調べられます。その後にヒトを対象として、有効性と安全性を調べられます。ヒトへの有効性や安全性について調べる試験を「臨床試験」と呼び、厚生労働省から「くすり」として承認を得るために行う臨床試験のことを「治験」と呼びます。

1. 治験の概要
治験は通常、第I相試験、第II相試験、第III相試験の3つの段階を踏んで進められます。この際に使用される「くすりの候補」のことを「治験薬」と呼びます。

2. 治験を実施するためのルール
治験は病院で行われます。治験を行う病院は、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP)」という国際的な規則に定められた要件を満足する必要があります。
その要件は簡単にいうと、以下の通りです。
• 医療設備が充分に整っていること
• 責任を持って治験を実施する医師、看護師、薬剤師等がそろっていること
• 治験の内容を審査する委員会を利用できること
• 緊急の場合には直ちに必要な治療、処置が行えること
詳しくは厚生労働省のホームページにある、治験のルール「GCP」をご覧ください。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu2.html)

3. インフォームド・コンセント
医師は「くすりの候補」を使えば病気に効果があると期待される患者さんに、治験の参加をお尋ねします。治験の目的、方法、治験に参加しない場合の治療法、「くすりの候補」の特徴などが書かれた説明同意書が渡され、その内容が詳しく説明されます。この際、患者さんの自由な意思に基づく文書での同意がないと治験は進められません。この説明と同意のことをインフォームド・コンセントと言います。

 

リウマチ・膠原病の日常生活について

Q:自分の住んでいる地域で専門的な診療を受けるにはどうしたらよいですか?

A: リウマチ・膠原病の専門医は「リウマチ専門医」と呼ばれます。リウマチや膠原病に関する十分な学識と経験を有し、一定の条件を満たした医師が筆記試験に合格すると日本リウマチ学会から認定されます。2024年3月時点で全国に約5,200名おり、その所属先などの情報は日本リウマチ学会のホームページに掲載されています(http://pro.ryumachi-net.com/)。都道府県別に検索することも可能ですので、是非ともご活用ください。
 ここで、「リウマチ専門医」に関して少し補足が必要です。現行の「リウマチ専門医」には、内科、整形外科、リハビリテーション科、小児科など様々な診療科の医師がいます。リウマチ・膠原病といっても様々な病気や病態があり、各診療科によって得意とする守備範囲は異なります。例えば、膠原病であれば内科や小児科が中心となりますし、関節の手術が絡むような場合は整形外科が中心となります。場合によっては、内科と整形外科の両者による併診が望ましい場合などもあります。専門医を検索する際、それらも念頭に検討されることをお勧めしますが、実際にはどの診療科の専門医に相談すべきか判断できない場合も多いと思います。その際は、まず適切だろうと考える専門医を受診し、病態や病状に応じて必要があるようならさらに然るべき専門医を紹介してもらうようにしましょう。
 実はもう少しややこしい話がありますので参考までに記載しておきます。これまで、どの診療科でもリウマチの専門医は「リウマチ専門医」と呼ばれていましたが、今後、内科に限り「膠原病・リウマチ内科領域専門医」(こちらは日本専門医機構が認定します)という名称に順次変更されていきます。内科以外の場合、今のところは「リウマチ専門医」の名称が続く予定です。いずれもこの領域の専門医に変わりはありませんのでご安心ください。(詳細についてはhttps://www.ryumachi-jp.com/general/jcr-board_certified_rheumatologist/をご参照ください)

 

Q:日常生活で注意することはありますか?

日常生活で注意することはありますか?

A: 膠原病・リウマチ性疾患の原因はまだ明らかになっていないことも多いですが、喫煙は発症・悪化の明らかなリスクです。自分で避けられる数少ないリスクでもあるので、喫煙している方は必ず禁煙しましょう。病気によっては、紫外線がリスクになる場合があり、日焼け止めクリームや長袖の服で日焼けを避けます。

バランスの取れた食事をとり、適正体重を保つようにしましょう。骨粗鬆症対策として、カルシウムの豊富な食事も重要です。糖尿病や高血圧などの合併症がある場合は、それに応じた食生活も必要です。食後は歯みがきを行い、歯周病を予防しましょう。

ストレスを避け、十分な休養をとり、規則正しい生活をすることも大切です。適度な運動をするなど健康的な生活をしましょう。治療の発達により、病気をしっかりコントロールしながら、通常の日常生活を送れるようになってきています。なるべく明るく楽しく生活するよう、心がけましょう。

Q:リハビリテーションについて教えてください

A:リハビリテーションは、WHO(世界保健機関)では“個人が、環境との相互作用の中で機能を最適化し、障害を軽減するためにデザインされた一連の介入”と定義されています。日本で行われているリハビリテーションは医療保険で行われるリハビリテーション医療と介護保険で行われているリハビリテーションマネジメントの二つにわけられます。
リハビリテーション医療は「痛みや腫れの軽減、筋力や体力の維持・改善、関節・脊椎などへの負担軽減と変形進行の予防」などを目的に行われます。理学療法士や作業療法士などのセラピストが個別に患者さんに対応し、ストレッチや筋力強化などの運動療法指導や、装具療法などを行う運動器リハビリテーションと、マッサージや温熱・電気治療などを行う物理療法の2種類があります。関節リウマチに限らず疾患別の運動器リハビリテーションは起算日から150日を限度(通院頻度に関係なく起算から150日であることに注意が必要です)に医療保険の適応として実施が可能です。ただし、関節リウマチは算定日数上限の対象外疾患でもあるため担当医が「治療継続により状態の改善が期待できる」と医学的に判断した場合は、日数上限は除外されることもあります。
関節リウマチのリハビリテーションは同じ患者さんであってもその時々の障害の原因となる炎症の程度や疾患活動性の状況に応じて、慎重に行うか積極的に行うかを考える必要があります。特に関節リウマチを長く患っている方やご高齢の方では関節の変形や拘縮、骨脆弱性が生じていることも多いため、愛護的にリハビリをすすめるなど特別な配慮が必要なこともしばしばあります。リハビリでどの程度の負荷を与えてよいのかなどについてはメディカルスタッフ間で情報が共有されなくてはなりませんが、患者さんご自身もリハビリスタッフにその時々のご自身の状態をしっかり伝えていただくことが大切です。強い痛みを我慢してまでリハビリを行う必要はありませんので、辛い時には我慢せずにリハビリスタッフにしっかり伝えるようにしてください。
介護保険でのリハビリテーションマネジメントでは「運動や生活の機能維持」が目的となります。通常では介護保険サービスの適用は65歳以上ですが、関節リウマチは特定疾病にあたるため、40歳以上の患者さんは適用できることがありますので、担当の医師に相談してみてください。デイサービスなどに通所して行うリハビリ、自宅への訪問リハビリなど様々なリハビリ提供方法がありますので、ご自身にあったサービスの利用方法を担当医やケアマネージャーなどと相談してみるのが良いでしょう。医療保険によるリハビリテーションと介護保険によるリハビリテーションは同時に併用できないため注意が必要です。
これまで関節リウマチの診療は薬での治療が重要視されてきていましたが、2020年に改訂された日本リウマチ学会編集の「関節リウマチ診療ガイドライン2020」には世界初の試みとして非薬物治療・外科的治療アルゴリズムが掲載されました。ここにリハビリテーション治療も早期からの重要な治療選択肢の一つとして記載されています。適切な安静や運動、負担をかけない身体動作による症状の軽減、関節変形や筋力・体力・心肺機能の低下の予防や進行予防が重要視され、関節リウマチの発症早期からリハビリテーションの必要性を検討することが望まれます。リハビリは医療者に“してもらう”のではなく、自分で“する”という意識を持っていただくこと、患者さんご自身が病院などで教わったことや自分でできる運動を自宅で自分一人でも継続して実施することが重要です。ご自宅でできるセルフストレッチについてもご自身でできる範囲での取り組みをお勧めいたします(図1,2:メディカルスタッフのための ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイドから抜粋)。


リハビリテーションというと関節に対する運動療法が注目されがちですが、関節リウマチや膠原病は全身の多臓器にわたる病変が生じることがあります。たとえば関節リウマチや一部のリウマチ性疾患では間質性肺炎やその他の肺病変を生じることがよく知られていますし、お薬の副作用や感染症の影響で呼吸器に不具合を生じることもあります。特に間質性肺炎は生命予後や生活の質(QOL)に関わる重要な疾患であり、呼吸リハビリテーションによる身体活動性の維持・向上が重要になります。
また、膠原病のうちシェーグレン症候群の口腔乾燥症や全身性強皮症の食道機能障害による摂食嚥下障害はよく知られていますが、関節リウマチ患者さんでも約4割で食事や飲みこみの障害を感じていて、特に固形物の飲みこみづらさを感じている方が多いという報告もあります。摂食嚥下障害があると誤嚥性肺炎などの肺の病気も起こしやすくなるため、飲みこみづらさを感じた場合には担当の医師や看護師などに相談して適切な評価を受けることをお勧めします。嚥下機能低下があった場合には適切なリハビリテーションを指導してもらうことで改善する可能性があります。
最後になりましたが、全身性強皮症では皮膚硬化による手指や顔面の拘縮予防、呼吸機能維持などリハビリテーションが重要な位置を占めます。以下に強皮症研究会議でとりあげられている強皮症のリハビリテーションプログラムへのリンクを貼付します(https://www.sclerodermajapan.net/pamphret/pdf/rehabilitation2.pdf)。
リハビリテーションに関しては、理学療法士や医師の指導の下、安全に行うことに留意してください。セルフトレーニングも同様です。

参考文献
1. Roy N, et al. Epidemiology of Swallowing Disorders in Rheumatoid Arthritis: Prevalence, Risk Factors, and Quality of Life Burden. Ann Otol Rhinol Laryngol. 127:577-587, 2018
2. 一般社団法人日本リウマチ学会編. 関節リウマチ診療ガイドライン2020.
3. 日本呼吸器学会・日本リウマチ学会合同膠原病に伴う間質性肺疾患診断・治療指針作成委員会編:膠原病に伴う間質性肺疾患診断・治療指針2020.
4. 伊豆蔵英明, ほか. 膠原病に伴う間質性肺疾患と呼吸リハビリテーション. Jpn J Rehabil Med. 57:715-720,2020
5. 國枝顕二郎, ほか. 膠原病の摂食嚥下障害. Jpn J Rehabil Med. 57:721-728,2020
6. 小嶋俊久. 関節リウマチ治療における非薬物療法のアルゴリズム. Loco Cure. 7:303-306,2021
7. 厚生労働科学研究費補助金 免疫・アレルギー疾患政策研究事業「ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援に関する研究」研究班 編集. メディカルスタッフのためのライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド. 2022

 

Q:栄養・食事について注意する点はありますか?

A:膠原病・リウマチ性疾患を患っておられる患者さんが、特定の食べ物を摂取することにより病気がすごく良くなったり、逆に悪くなったりすることは、ありません。基本的で、かつ最も大切なのは、バランスの取れた食事をとり、適正な体重を保つことです。

さて、「バランスがよい食事」とはどのような食事でしょうか。少しだけ、バランスを揃えるコツをお伝えしようと思います。
私たちが口にする食べ物は大きく、「主食(ごはん、パン、麺など炭水化物が中心)」「主菜(肉、魚、卵、大豆などたんぱく質が中心)」「副菜(野菜、きのこ、海藻など)」に分けられます。1日3食、各食に「主食」「主菜」「副菜」が揃うことが理想的です。ただ、「今朝はバタバタしていてパンと牛乳だけだった」「昼食が外食で野菜が食べられなかった」など、毎回の食事をバランスよく摂ることは、なかなか簡単ではありません。これから食事の見直しを始めよう、という方は、1日単位(「今朝はたんぱく質が摂れなかったから、昼に補おう」)や1週間単位(「昨日は野菜が摂れなかったから、今日はしっかり食べよう」)から取り組んでみましょう。
一方で、いくらバランスが揃った食事でも、食べ過ぎはよくありません。1日の必要カロリーは、「標準体重(kg)×25~30 kcal」とされており、標準体重は、「身長(m)×身長(m)×22」で計算できます。例えば、身長160 cm(1.6 m)の方であれば、標準体重は「1.6×1.6×22 = 56.3 kg」、1日の必要カロリーは「56.3×25~30 = 1408~1690 kcal」です。製品のカロリー表示や、食品別のカロリー早見表、最近では食事のカロリー計算が可能なスマートフォンアプリなどがありますので、ご活用ください。

また、特に閉経後の女性患者さんや、グルココルチコイド(ステロイド)を使用されている患者さんでは、骨粗鬆症の対策として、カルシウムやマグネシウム、ビタミンDが豊富に含まれる食事(乳製品や小魚、キノコ類)も重要です。1日に必要とされるカルシウム量は700-800mgと言われています。意識して摂取するようにしましょう。糖尿病や高血圧などの合併症がある場合は、間食を控え、食べ過ぎや塩分のとり過ぎに注意してください。特に、このような合併症がある患者さんは、主治医にご相談いただき、栄養士による栄養相談(栄養指導)を受けられることをお勧めします。

最後に、治療に使用しているお薬の中には、食べ合わせが悪い食品もあります。例えば、ワーファリンと納豆や青汁、タクロリムスやシクロスポリンとグレープフルーツなどが挙げられます。注意すべき食品は、お薬と一緒に受け取ることができる「薬剤情報提供書」に記載されていますが、心配なことがございましたら、主治医や薬剤師に質問してください。

 

Q:生活に困ったとき、どうしたらよいでしょうか?

A: 関節リウマチや膠原病による臓器障害・合併症のために、長期間療養が必要になった、家事や仕事ができなくなったという状況に陥ることもあるかと思います。このように生活に困った場合は、下記のような社会的制度によるサポートを受けることができます。

1. 介護保険制度
介護保険制度は65歳以上の第1号被保険者の他、特定疾患をもつ40歳から64歳までの第2号被保険者が対象になります。関節リウマチはこの特定疾患に含まれており、40歳以上の関節リウマチ患者さんは介護保険制度を利用することができます。ただし、認定される介護度に応じて、介護用品やサービスの利用可能な幅や頻度が変わります。詳しくは厚生労働省のホームページにある介護保険制度の概要をご覧ください。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html)

2. 傷病手当金
傷病手当金は、病気によって会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。詳しくは全国健康保険協会のホームページをご覧ください。
(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/sbb31710/1950-271/)

3. 高額療養費制度
高額療養費制度は、同一月にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度です。自己負担限度額は、年齢と所得状況等により設定されます。医療費が高額になるとあらかじめわかっている場合には、限度額適用認定証を発行しておくことで、窓口での支払い額を抑えることもできます。詳しくは厚生労働省ホームページの該当箇所をご覧ください。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html)

4. 生活保護制度・生活困窮者自立支援制度
生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度です。一方、生活困窮者自立支援制度は、生活困窮者が生活保護の受給に至らないように自立を支援する制度です。詳しくは厚生労働省ホームページの該当箇所をご覧ください。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html)
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000073432.html)
上記は作成時点(2022年9月)における情報提供になります。制度や条件・対象などが変わることもございますので、最新の情報に関しては必ずご自身でご確認いただくようお願いします。