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参加者レポート 平野 史生

長期プログラム
JCR-EULAR若手リウマチ医トレーニングプログラムを参加して

平野 史生
東京医科歯科大学医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座

研修先:Department of Rheumatology, Leiden University Medical Center
 
 
私は2019年4月から2020年3月までライデン大学医療センター(Department of Rheumatology, Leiden University Medical Center; 以下LUMC)で研修を行いました。脊椎関節炎のグループに所属し、早期体軸性脊椎関節炎コホートの解析に携わりました。LUMCのリウマチ科はスタッフ、PhD studentを含めると総勢100名以上になる大規模な組織であり、オランダでも膠原病・リウマチ領域では最大とのことです。また私のように海外から研修で来ている方も多く、多彩でオープンな雰囲気で楽しく研究をすることができました。
 
研究内容
私の研究内容は、フランスリウマチ学会による早期体軸性脊椎関節炎コホート、DESIR(DEvenir des Spondyloarthropathies Indifférenciées Récentes)のデータを用いたアウトカムに関する研究です。DESIRはおよそ700例の体軸性脊椎関節炎が強く疑われる症例を登録し、長期間フォローアップした大規模な研究であり、このコホートから既に多くの論文が発表されています。私のプロジェクトはアウトカムのうち、patient well-beingと関連する要因を検討するというものでした。これまで、強直性脊椎炎(あるいはradiographic axial spondyloarthritis)においては様々なアウトカムがどのように関連して最終的にquality of lifeやwell-beingに影響するかという概念的なモデルがMachadoらによって提唱されていましたが、この枠組みに基づき、patient well-beingと関連のある因子を5つのドメイン(disease activity, physical function, spinal mobility, structural damage, axial inflammation)から検討しました。また、この研究と同様の手法を用いて、DESIRにおいてphysician global assessmentがどのような因子に基づいているか、についても検討を行いました。LUMCでは自分のプロジェクトを遂行するだけではなく、PhD student向けのanalysis of repeated measurementsのコースも受講させていただきました。演習は苦労しましたが、このコースのおかげで自分のプロジェクトを遂行することができました。
 
今回のプロジェクトは留学の前年からsupervisorであるDr. Ramiroとともに検討し、事前に研究本部の承認を得て行いました。オランダ滞在中はDr. Ramiro(LUMC所属だが普段はマーストリヒトにおられる)とは主にメールやSkypeにて連絡を取り合いながら解析を進めました。脊椎関節炎のグループを統括しているvan der Heijde教授も同様にマーストリヒトにおられますが、1-2ヶ月に1回程度の頻度でLUMCに来られていたため、その時に指導を頂きました。また、LUMCに常にいたDr. van Gaalen、周りのPhD studentにもたびたび相談にのってもらい助言を頂きました。
 
自分自身のプロジェクト以外では、研修中は以下のような機会がありました。
 
Journal Club
週一回金曜の朝、臨床研究に関わるPhD studentとポスドクで開かれるjournal clubにも参加しておりました。毎回参加者の中から一名が担当者となり、事前に選んだ論文を配布して当日朝までに質問を募ります。当日は質問を一枚の紙にまとめ、それについて回答していくというスタイルです。これは回答する方はもちろんですが、質問する側も論文を十分に読み込み批判的吟味をする必要があります。ここで交わされていた議論は非常にレベルが高いものである上、英語で行われることもあり、私にとっては議論の内容についていくのがやっとというところでしたが、特に解析手法に精通したポスドクのコメントは非常に勉強になるものでした。このように疫学的な手法、解析方法について批判的に吟味して深く議論することは非常に重要な機会だと思います。自分自身の博士課程ではこのような機会が少なかったため、この経験を自分のさらなる学習や今後の指導に生かしたいと思います。
 
臨床研究カンファレンス
週に一度、持ち回りで自分のプロジェクトの進行状況を発表する場があります。オランダ人は直接的な言い方を好むと言われておりますが、まさに率直に問題点や疑問点を指摘されます。しかし、これも議論の内容からは学ぶことも多い機会でもあります。
 
臨床カンファレンス
臨床について関わる機会は少なかったのですが、週一回開かれる臨床のカンファレンスに不定期に出席させていただきました。これは外来で診断や治療方針が難しかった症例について科内で相談するようなカンファレンスです。実際に行われているプラクティスについて日本と細かい点で相違はありますが、ここで議論されていたいわゆる難しい症例というのは我々が大学病院でも経験する難しい症例と大きな相違はないように感じました。
 
Thesis defenseの様子
ライデン大学本部のsenate roomで開かれたthesis defenseの様子も一度見学させていただきました(この様子はライデン大学のYoutubeチャンネルでみることもできます)。LUMCから少し歩いたライデン大学本部にある古めかしい会場、中世の儀式のような厳かな雰囲気で始まる会、一方で和やかな瞬間もあり、様々な面でオランダらしい、興味深い体験でした。
 
その他
LUMCが中心となって行っている早期体軸性脊椎関節炎コホートであるSPACEのカンファレンスにも一度参加させていただきました。内容は、これまで行われている解析の中間報告や今後の解析、あるいは各施設での実務的な問題点などについて議論が交わされていました。これについては私が今まで日本で経験したような他施設共同研究の会合と同様と感じました。
 
最後に
今回の研修では自分のプロジェクトを通して多くのことを学びましたが、それだけではなくライデン大学においてどのように研究活動が行われているかを体験し、その強み、日本の大学との相違点などを知ることができました。今回の研修に多大なサポートをいただきました日本リウマチ学会、スタッフの皆様をに心より感謝申し上げます。
 

Huizinga主任教授、Dr. van Gaalenと

 
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