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研究紹介 長谷川 哲雄(71号)

リウマチ学会奨励賞受賞後の抱負

長谷川 哲雄
慶應義塾大学医学部 リウマチ膠原病内科 助教
長谷川 哲雄

2021年度リウマチ学会奨励賞受賞の言葉

この度はリウマチ学会奨励賞にご選出頂き、誠にありがとうございます。選考に携わった全ての先生方、学会関係者の皆様、そして研究をご指導頂きました石井優先生、竹内勤先生にこの場をお借りして深く感謝申し上げます。
私は、平成23年に慶應義塾大学を卒業後、横浜労災病院にて初期臨床研修を行い、慶應義塾大学・内科学教室の後期研修を経てリウマチ膠原病内科へ入局しました。その後、大阪大学・免疫細胞生物学教室へ国内留学させて頂き、基礎研究に従事して参りました。
モデル動物とヒト疾患の病態には少なからず相違が存在しますが、関節組織の炎症の終着点として病的な破骨細胞が形成され関節破壊が惹起される点においては、マウスモデルと関節リウマチは共通すると考え、パンヌスという特徴的な組織に注目して参りました。関節炎モデルマウスの滑膜組織に存在する単球系細胞を詳細に観察することで、関節破壊を惹起する破骨前駆細胞を同定し、シングルセル解析によりこれら前駆細胞の約1割の細胞集団が成熟破骨細胞へin situで分化することを明らかにしました(1)。さらに、生体イメージング技術を用いてマウスの滑膜組織を直接観察することで、生体内における破骨前駆細胞の動態や、病的な成熟破骨細胞が関節破壊を惹起する様子をリアルタイムで可視化することに成功しました(2)。研究活動を通じ、新たな知見に巡り会う喜びを感じる一方で、自己免疫疾患の病態の本質的な部分は未だ謎だらけであることも痛感しました。学際的な視点を忘れず、日進月歩で進化する生命科学の新たな解析手法にも注目しながら、今後さらに自己免疫疾患の病態解明に精進して参りたいと思います。
本研究を遂行するにあたり、多大なご助力を賜りました関係者の皆様にこの場をお借りして心から感謝申し上げます。

1. Hasegawa T, et al. Identification of a novel arthritis-associated osteoclast precursor macrophage regulated by FoxM1. Nat Immunol. 2019;20(12):1631–43.
2. Hasegawa T, et al. Development of an intravital imaging system for the synovial tissue reveals the dynamics of CTLA-4 Ig in vivo. Sci Rep. 2020;10(1):1–12.