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研究紹介 渡部 龍(64号)

リウマチ学会奨励賞受賞後の抱負

渡部 龍
大崎市民病院リウマチ科 副科長 東北大学血液免疫科 非常勤講師
渡部 龍

基礎研究、臨床研究におけるかけがえのない経験を糧に

この度は、このような素晴らしい賞を頂戴し、誠にありがとうございます。これまでご指導下さった東北大学血液免疫科の張替秀郎教授、石井智徳特任教授、藤井博司准教授、また米国におきましては、Stanford大学のWeyand教授に、この場をお借りして、心より御礼申し上げます。
私は東北大学大学院で、藤井博司准教授の指導の下、ヒトCD4陽性T細胞におけるオートファジーの役割に関する基礎研究を行い、オートファジーが老朽化したミトコンドリアを除去し、活性酸素の蓄積を防ぐことによって、T細胞の生存に寄与していることを報告しました(1)。大学院で幅広く実験手技を教えて頂いたことが、私の基礎研究の礎となりました。
2015年より米国Stanford大学に留学し、Cornelia Weyand教授に師事し、巨細胞性動脈炎(GCA)の基礎研究を行いました。GCA患者の樹状細胞では、免疫チェックポイント分子PD-L1の発現が低下し、T細胞の過剰な活性化により血管壁のリモデリングが起きていること(2)、また、血管炎モデルマウスを用いて、MMP-9阻害薬の有効性(3)や、JAK阻害薬の有効性(4)などを報告しました。
基礎研究の傍らで、オランダLeiden Universityのvan der Heijde教授の下、関節リウマチにおけるレントゲン評価法、modified Total Sharp Score(mTSS)を習得する機会に恵まれ、東北地方におけるトシリズマブ使用例の解析(5)や、長崎大学との関節リウマチに関する前向き研究(6)などの多施設共同研究にも参加させて頂きました。
多くの先生方のご指導により、基礎研究、臨床研究のいずれにおいても、かけがえのない経験をさせて頂きました。本賞の受賞を励みに、ますます基礎研究にも臨床研究にも邁進して参りたいと存じます。今後ともご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

1. Watanabe R, Fujii H, et al. Eur J Immunol. 2014;44(8):2508-20.
2. Zhang H & Watanabe R, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Feb 7;114(6):E970-E979.
3. Watanabe R & Maeda T, et al. Circ Res. 2018;123:700-715.
4. Zhang H, Watanabe R, et al. Circulation. 2018;137(18):1934-1948.
5. Hirabayashi Y, et al. Mod Rheumatol. 2016;26(6):828-835.
6. Koga T, Okada A, et al. PLoS One. 2017;12(5):e0175281.