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参加者レポート 庄田 宏文

短期プログラム

JCR-EULAR若手リウマチ医トレーニングプログラム2014感想

庄田 宏文
東京大学大学院医学系研究科アレルギーリウマチ学

研修先 : Rheumatology Unit, Department of Medicine, Karolinska Institutet

 

 このたびは、JCR-EULAR若手リウマチ医トレーニングプログラムに選出していただきありがとうございました。私は大学院生時代より、関節リウマチ(RA)におけるT細胞の役割に注目して研究を行ってきました。特にシトルリン化抗原を含む抗原特異的な免疫応答とRAの病因との関わりに興味があり研究を進めていたのですが、Karolinska Institutetから報告されたHLAテトラマーを用いたT細胞の解析、抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)のクローニングに関する研究には非常に注目していました。このたび機会を与えていただき、これらの研究報告を行ったグループである、Rheumatology Unit (Prof. Lars Klareskog), Department of Medicine, Karolinska Institutetをトレーニング先として、勉強・研究を行うことができたことに感謝しております。

 Karolinska Institutetでは研究所(Center for molecular medicine, CMM)に所属して主にPhDの先生と研究を行いました。複数の研究グループがあるのですが、特にT細胞に興味があるということでアレンジしていただき、RAにおける抗原特異的T細胞解析のグループに所属し、on goingのprojectに参加しました。内容としては、ヒトの末梢血、滑膜検体を用いた細胞培養とFACS解析の実験を主に行い、一般的な実験方法から解析手法まで幅広く習得することができました。3カ月の短期滞在期間でしたが新規HLA-DR4 epitopeに関するsmall projectを割り当てていただき、主体的な研究にも関わることができました。今回の滞在での結果は限定的ですが、今後の研究につながればと考えています。また日々の実験を通して、研究の楽しさ、発見の嬉しさを再認識することができました。今後の研究についても、協力して行う予定であり、定期的な意見交換などを行っていければと考えております。

 Rheumatology研究グループでは週1回全員で集まって、各グループから1-2人が自分の研究テーマについて発表を行っていました。内容は多岐にわたっており、筋炎、強皮症、RA遺伝子解析、RAにおける疼痛の研究など、疫学研究から基礎研究まで様々なテーマに関する知見を深めることができました。またJournal club, Book clubも行われており、英語で議論する練習にもなりました。夜には研究所内にPubが開かれることもあり、楽しい時間を過ごすことができました。派遣期間中は研究室での実験だけでなく、カロリンスカ大学・研究所合同のRheuma retreatやBTCure主催のworkshopに参加し、有名な先生方と交流する機会もありました。特にBTCureのTolerance workshopはテーマがRAに対するtarget to pathologyについて考える会であり、この分野の最先端の講演をまとめて聴く機会に恵まれ、基礎的な内容から現在進行中の治験まで幅広く勉強することができました。またご厚意でEIRA registryの担当部門、Biobankingの担当部門を見学する機会もあり、国策としてシステムの構築、データの集積と、それを解析したうえでの医療の最適化、研究の推進を行っている現場をみることができました。わが国も医療費の増大が懸念されていますが、このようなビッグデータに基づいた医療政策は見習うところが大きいと感じました。

 派遣期間は3月から5月であり、3月中旬には雪が続いたこともあり、食糧買い出しが困難となるなど少し苦労しました。東京よりかなり気温は低めながらも5月中旬以降は日照時間も延び、快適に過ごすことができました。ストックホルムはたいへん美しい街で、ガムラスタン(旧市街)など観光名所も多いところです。私の借りたフラットは研究室に近くて研究には便利だったのですが、街外れにあったため、平日の日中は研究室での実験、夜はフラットでの自炊を中心とした生活が続きました。一方で、週末にはヴァーサ号博物館や市庁舎など、有名な観光地を訪れる時間もありました。ストックホルムは自然と調和した街作りがなされており、暖かくなってからは自然に親しむ気持ちの良い時間を過ごすことができました。

 今回の派遣により、実際的な実験技術の習得や実験データの蓄積だけでなく、リウマチ研究を進めていくにあたって、世界の最先端の先生方が何を考え、どういう方向で解決を目指しているのかを肌で学ぶことができました。また、有名な研究者にはopen heartな方も多く、scienceを進めていくうえで重要な姿勢を学ぶことができたと思っています。そしてなによりKarolinska Institutetによき研究仲間が増えたことを喜ばしく感じています。

 

写真1:Rheumatology Unit, Department of Medicine, Karolinska Institutetにて

 

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