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参加者レポート 梅北 邦彦

短期プログラム

留学報告

梅北 邦彦
宮崎大学医学部附属病院 膠原病感染症内科

研修先 : Center of Experimental Rheumatology and WHO collaborating Center for Molecular Biology and Novel Therapeutic strategies for Rheumatic Disease, Department of Rheumatology, University Hospital Zurich

 

はじめに
 私は2012年9月から2014年3月までの1年半、Prof Steffen Gayが主宰するスイス チューリヒ大学リウマチ学教室(Center of Experimental Rheumatology and WHO collaborating Center for Molecular Biology and Novel Therapeutic strategies for Rheumatic Disease, Department of Rheumatology, University Hospital Zurich)にポスドクとして留学しておりましたので報告いたします。
 
当センターの概要
 当センターはチューリヒ大学病院のリウマチクリニックに隣接し、古い平屋建てのこじんまりした実験棟です。メンバーはProf. Steffen Gay, Prof. Renate Gay夫妻を中心に、Ph.D student, technical assistant、それに数名のポスドクから構成されています。Gay教授はヨーロッパ、アメリカ、日本のリウマチ学会の要職を歴任されており、世界各国からフェローの申し込みがあるようです。私の留学中、ドイツ、ハンガリー、スロベニア、オーストリア、チェコ、イタリア、エジプト、インド、アメリカなど各国からフェローが集まっていました。3ヶ月~6ヶ月の短期滞在で共同研究のための実験方法を習得して帰国するフェロー、ポスドクとして数年滞在し新規のプロジェクトを立ち上げ研究費を獲得しているフェローなど、彼らはそれぞれの立場で研究を着実に進める努力をしていました。私は日本からの20番目のポスドクで、私の前に北海道大学第2内科から加藤将先生が、その前には長崎大学第1内科から岩本直樹先生が各々留学されておりました。また、当センターで印象的だったことは、共同研究を進めているアメリカやヨーロッパの複数の研究室とスカイプを使ってresearch meetingを開催していたことです。パソコン上でデータを示しながら討論を行い、進捗状況を確認する。このような光景は非常に新鮮かつ刺激的で、研究にとって重要なデータは場所や時間を選ばずに共有することがプロジェクトを推進するために重要なのだなと感じました。毎週火曜日に開催される研究室カンファレンスでは、当番のフェローが実験の進捗状況を発表します(発表の機会が訪れるのは3ヶ月に1回程度)。そしてこのカンファレンスで何より有意義であったのは、ヨーロッパの様々なリウマチ学研究室から著名な先生方がレクチャーに訪問され、各研究分野の最新の成果を勉強させていただけることでした。このレクチャーを通して研究のヒントを掴んだり、新たな共同研究が始まることもありました。このように、世界中からフェローが集まり、実験方法やリウマチ学の活きた情報を交換することができるインターナショナルな当センターは、リウマチ学の発展に大きく寄与しているといっても過言ではありません。
 
研究について
 研究室の取り組んでいる大きなテーマは、関節リウマチ滑膜細胞線維芽細胞 (RASF)のepigenetic programの解明とその制御でした。このテーマは更に、①DNA methylation、②microRNAなどnoncoding RNA、③Toll-like receptorに分けられ、フェロー3人程度のsmall project groupによって研究は進められています。私は留学以前からRNA worldに興味があり、noncoding RNAプロジェクトに参加する意思を伝えました。当研究室ではmicroRNAに関する研究手法は既に確立されており、実績も多数ありましたが、私はアドバイザーが立ち上げようとしていたlong noncoding RNA (LncRNA: microRNAよりも塩基配列の長いnoncoding RNA)プロジェクトに参加しました。LncRNAに関する情報はまだまだ少ないため、新たな実験手法を確立し、得られた研究データの意義を慎重に解析する必要がありました。RASFにおけるLncRNAのepigenetic programにおける役割を明らかすべくこのプロジェクトに没頭できたことは、私の分子生物学に関する知識と技術を大きく成長させたと思います。また、私はこのプロジェクトの成果を2013年10月アメリカリウマチ学会(San Diego)やSwiss-Japanese symposium on Masculoskeletal Researchで発表する機会に恵まれ大変光栄でした。
 Steffen教授は、実験方針については基本的にフェローの意見を最大限尊重してくれます。しかしその意味は、各々のプロジェクトの責任、研究費の獲得に対する責任が自分にあることを意味しています。1年間研究しても結果がまとまらず学会発表ができないフェローや研究室を去るフェローもいましたが、着実に成果を築きあげて毎年論文を発表しているフェローもいました。当センターの研究費はかなり潤沢で、Steffen教授が認めれば実験に必要な試薬はほぼ全て購入可能で、アレイなどの高価な外注検査も行うことができました。また、アメリカリウマチ学会をはじめとする国際学会の参加費、旅費もすべて研究室が負担してくれました。
 
スイスでの生活
 前述のように、研究室は国際色豊かであるため英語によるコミュニケーションがとられていました。また、チューリヒは世界有数の観光地であり、駅や役所、チューリヒ大学病院内でも英語が通用しました。このため、生活を送る上でのコミュニケーション言語にあまり不自由は感じませんでした。ただし、移民局、役所や銀行などから届く公式文書はスイスの公用語であるドイツ語で作成されているため、その文書が届くたびにラボメンバーや秘書に内容を教えてもらい対応するという生活を送りました。スイスではドイツ語、フランス語、イタリア語、レートロマンシュ語が使用されていますが、スイスのドイツ語は標準ドイツ語とは異なるスイスドイツ語で、ドイツ人でも慣れないと理解できないこともあるようでした。スイスの西側ではフランス語、南側ではイタリア語というように隣国の言語や文化の影響も受けており、各々の地方へ足を伸ばすと標識からレストランのメニュー、交通機関のアナウンスまで使用言語が変わるところなどは大変趣がありました。
 
おわりに
 2014年2月はスイス日本国交樹立150周年にあたります。2013年頃からスイス各地で日本文化を伝えるイベントが開催されていました。この様な時期にスイスへ留学でき、スイスから日本の風習、文化を感じ思うことがたことを幸せに思います。また、親日家であるSteffen教授からも以下の様なお言葉を頂きました。「日本人研究者の研究は緻密で、正確で、とても信頼できる。だから、日本は世界各国と共同研究をして関節リウマチの原因を解明するリーダー的存在になって欲しい。日本のリウマチ研究者には期待しているので、頑張ってください。」この言葉は私の心に深く染み込みました。そして今後、この言葉を忘れることなく、膠原病や関節リウマチに関する研究を続けていこうと決意しました。
 最後に、この度の留学をご快諾いただきました宮崎大学医学部附属病院 膠原病感染症内科の岡山昭彦 教授、留学中も様々なサポートをしていただきました医局スタッフの皆様に御礼申し上げます。また、日本リウマチ学JCR-EULAR若手リウマチ医トレーニングプログラムに採択していただき、この様な貴重な機会を与えていただきました日本リウマチ学会の関係者の皆様へ深謝いたします。

 

写真1:研究室正面玄関にて

 

写真2:左からProf. Renate Gay, Prof. Steffen Gay, 筆者, Mojca Frank (筆者のアドバイザー)

 

写真3:ラボでの一コマ

 

写真4:チューリヒ湖畔.多くの市民がチューリヒ湖で夏を楽しむ

 

写真5:マッターホルンにて(筆者と家族)

 

 

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