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参加者レポート 高窪 祐弥

短期プログラム

JCR-ELUAR 若手リウマチ医トレーニングプログラム(短期研修)報告記

高窪 祐弥
山形大学医学部整形外科学講座

研修先 : Division of Rheumatology, Helsinki University Central Hospital, Finland

 

 この度は、JCR-ELUAR 若手リウマチ医トレーニングプログラム(短期研修)にご選出頂き、誠にありがとうございました。今回は、4年前にお世話になったフィンランドヘルシンキ大学教授、Yrjo Tapio Konttinen先生のもとで再び勉強させて頂く予定でした。しかし、一昨年の12月大学院生の指導をなさっている最中に突然お倒れになり、そのまま帰らぬ人となられてしまいました。そのため、一時は研修中止も考慮されましたが、新しい教授Kari Eklund先生、Dan Nordstrom先生や以前からの研究者仲間に支えられ、どうにか今回の研修を終えることができました。ラボのメンバーも半分の方は以前のままで、ロシア人のバシリやリビア人のハキムをはじめ、多くの方々にお世話になり、充実した日々を過ごすことができました。

 今回は、短期研修のため以前からヘルシンキ大学と国際共同研究を継続しているアポトーシス細胞から抽出した微小粒子の研究をまとめることを主な目的と致しました。 簡単に研究内容についてご説明させて頂きますと、微小粒子は自然免疫系反応を引き起こす内因性物質で、自己組織から発生する直径0.05-3 µmの膜性の物質として報告されています。その内部には、自己のDNAやRNA,核タンパクを含むことから,自然免疫反応に重要なToll様受容体 (Toll-like receptor; TLR)に結合するリガンドの一つとして注目されています。

 微小粒子は健常人末梢血にもみられ,血管内皮細胞などの内膜組織や胎盤,血小板,赤血球,白血球などからも分離されますが,健常人末梢血と比較し自己免疫疾患患者の末梢血中では微小粒子が多数認められたと報告されています。関節液中においても,リウマチ性疾患などの炎症性自己免疫疾患では,非炎症性疾患の変形性関節症患者のそれと比較して,多数の微小粒子がみられたとされています。前回の留学時より継続していた,微小粒子とリウマチ性疾患の病態形成に深く関与する形質細胞様樹状細胞の一連の反応を、共同研究者のMari Ainola先生とBeata Przybyla先生と議論を重ね、近日中に論文投稿の運びとなりました。同時期に関節リウマチにおけるポドプラニンの研究やリウマチ性疾患患者における非定型大腿骨骨折の研究もまとめることができ、実り多き研修となりました。

 また、臨床研修としてKonttinen先生のお弟子さんである、Tampere大学客員教授のMarkku Kauppi先生のお計らいで、Tampere大学とLahti Paijat-Hame Central Hospitalで、リウマチ外来を見学させて頂きました。フィンランドの医療システムは、日本と異なり、専門医、家庭医制度がしっかりしており、専門医のところへは3カ月に一度、落ち着いている方は半年から年に一度の診察で、処方や採血、症状の変化があった場合はまず、家庭医がみるというスタイルになっています。そのため、Lahti-Tampere地区のリウマチ専門医であるMarkku先生は、患者さんと納得するまで話し合い、平均で30分から60分くらい一人の患者さんに時間をかけて、診察をされます。診察の最後には、患者さんはみなさん笑顔でMarkku先生と握手をして診察室を後にされます。そのような外来スタイルをみていると日本のフリーアクセス性の良し悪しを考えさせられます。また、フィンランドは国全体でearly aggressive therapyを実践されているため、残存している関節炎や疼痛部位をエコーで調べ、activeな関節炎があれば、基本的にステロイドの関節内注射を行うというスタイルの様が一般的とのことです。実際、治療する医師がtight controlに積極的な方が、患者のout-comeが良いという研究結果も報告されています (Rantalaiho V, ARD, 2014)。日本ではすぐには無理だと思いますが、現状の大病院志向をもう少し改善していく必要があるのではないかと考えさせられてしまいました。

 週末には、Markku先生がチームドクターをされているPellitatというアイスホッケーチームの試合をベンチ脇から観戦させて頂いたり、Markku先生のお友達でKonttinen先生のお弟子さんでもあるヘルシンキ大学獣医学教室の教授であるAnti Sukura先生に氷上フィッシングに連れて行っていただいたりと、公私ともども大変お世話になりました。

 最終週は、フィンランドリウマチ学会にも参加させて頂き、とても良い経験ができました。フィンランド語の発表が多いのですが、普通に英語のスライドが混ざり、フィンランド人同士で途中から英語での議論になったりと日本では考えにくい光景でした。4年前に日本へ帰国した際に、おぼろげながらまたヘルシンキに戻ってきたいと思っていましたが、短期研修でありましたが、本当に戻ることができ、とても幸せでした。今後も、もう少し英会話力を身に着け国際的な仕事に携わっていきたいと思っています。

 最後に、今回の研修をご許可下さった山形大学整形外科の高木理彰教授、不在中、病棟外来を担当して頂いた佐々木幹先生、佐々木明子先生、伊藤重治先生、長沼靖先生、梁秀蘭先生、仁藤敏哉先生、太田大地先生、竹内隆二先生をはじめ多くの先生方にこの場をお借りし心より深謝いたします。

 そして、Yrjö Tapio Konttinen先生の御冥福を改めてお祈り申し上げます。

 We have still no word but deep sad regards about Yrjö’s hidden. He is our great teacher, big father and good friend forever. We wish he is in pace requiescat.

 
 

写真: フィンランドリウマチ学会に参加して (Kari Eklund教授と; 右から2番目)

 
 

写真: ラボの仲間 (ロシア人、日本人、フィンランド人、イラク人、ポルトガル人、リビア人)

 
 

写真: Markku Kauppi先生の御自宅で

 

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