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勤務医からの視点 小寺 雅也(66号)

市中病院での膠原病診療における皮膚科医とリウマチ医の複眼思考

小寺 雅也
独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院 皮膚科
小寺 雅也

1)はじめに

多くの大学病院には膠原病内科やリウマチ内科(欧米ではリウマチ疾患を扱う医師はRheumatologistであり、~内科という標榜はないが)の講座が存在する。しかし膠原病内科やリウマチ内科学講座から市中病院に複数の常勤医師を派遣することには限りがあり、特に地方では、膠原病関連の標榜のある市中病院は多くない。筆者の所属する中京病院は名古屋市内にあり、名古屋市内の市中病院での膠原病標榜の有無について調査したことがある。平成23年の調査ではあるが、名古屋市内の132病院で膠原病・リウマチを標榜する専門外来標榜を有する病院は11病院のみであった。このような状況下で、患者は医療機関・診療科の選択に迷い、早期に適切な診察を受ける機会を失していることも予想され、大きな問題点と感じていた。

2)皮膚科医がどこまでみるべきか?

膠原病は皮膚病変をはじめ、脳神経、眼、唾液腺、心、肺、腎、肝、消化管など全身の臓器に合併症をきたす疾患であり、たとえ膠原病専門医であっても一つの診療科で全てを完結できない。リウマチ性疾患の病態は自己免疫を基盤としており、分子生物学な病態解明は目覚ましい進歩があるものの、免疫病態を臨床上可視化することは現代の医学をもってしてもまだまだ困難である。患者ごとにその自己免疫状態は異なり、さらに時間軸でも変化する。可視化が不可能でブラックボックスにも例えられる免疫病態を探り、治療に結びつけなければならない。臨床データや画像所見でブラックボックスを覗き、ブラックボックスから飛び出してくる自覚症状を的確に捉える必要があるが、もう一つ飛び出してくる重要な情報が皮膚病変である。ブラックボックスの中を類推するうえで、情報は多いに越したことはない。膠原病の皮膚病変と鑑別しなければならない他疾患、膠原病の診断に結び付く皮膚所見、膠原病の活動性を反映する皮膚所見など皮膚病変を的確に捉えることは皮膚科医が得意とするところである。従って臨床データや画像所見の評価について精通し、免疫抑制治療を安全、確実にこなすスキルアップをはかることができれば皮膚科医が膠原病診療を行うことは問題ないと思う。いずれの診療科がこの疾患を診るべきであるかというのは不毛な議論であって、膠原病患者の診療に情熱を持ち、救急医療にも対応できる医師が調整力を持った指揮者となって診るべきであると考えている。

3)私的方法論

膠原病診療を行う人員を確保するためには、病院経営への貢献、業績、収入増を病院管理者に説明しなければならない。病院に対する貢献度を向上し、院内での膠原病診療部門のプレゼンスを向上させる方略として、病院のシステム作りに自ら積極的に参画することを試みた。医療を取り巻く環境は日々刻々と変化しており、その対応のため病院管理部門では日々システム作りや改善作業を行っている。それに参画することで病院全体を俯瞰でき、その視点で皮膚科をみることもできるようになった。その取り組みの一つを紹介したい。筆者の病院ではこれまでも膠原病診療はしてきたものの、それを標榜する診療科がこれまでなかった。関節リウマチや膠原病に対する治療が急激に進歩する中で、病院経営全体的な立場からの必要性と同時に患者の立場からも膠原病を標榜する必要性を感じていた。皮膚科、整形外科の医師に加えて、リウマチケア看護師、薬剤師、作業療法士など多職種協働で安心・安全な医療を提供できるように膠原病リウマチセンターの開設を9年前に試みた。病診連携会、講演会、研究会を企画施行し、また病院内の多人数をしめる職種である看護師や薬剤師の学会活動をサポートすることで病院内でのプレゼンスが向上した。病院の増収にも貢献し、その結果、皮膚科医の私がセンター長を拝命することになった。皮膚科医とリウマチ医の複眼思考により、膠原病診療チームがさらに病院内のチーム医療をより成熟させるリーダー役となり得ると考えている。

 

JCHO中京病院膠原病リウマチセンターのメンバー 医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、事務で構成

JCHO中京病院膠原病リウマチセンターのメンバー 医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、事務で構成

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