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勤務医からの視点 押領司 健介(64号)

急性期病院における自己免疫疾患診療の利点と難しさ

押領司 健介
松山赤十字病院 リウマチ膠原病センター/免疫統括医療センター
 

2002年九州大学第一内科入局、2010年より松山赤十字病院に赴任して現職を拝命しております。整形外科2名、内科3名の体制で関節リウマチは2100名超、全身性エリテマトーデス200名超をはじめリウマチ膠原病以外の免疫疾患を含め約3000名程度を診療しています。2018年に免疫統括医療センターを立ち上げてからは非感染性ぶどう膜炎や炎症性腸疾患に随伴する関節症状、免疫チェックポイント阻害療法に伴う免疫関連副作用の相談事なども増えてまいりました。こうしたactiveな背景もあり当科で研修を行って頂く初期・後期研修医の数は年々増え、今年度は初期研修医は常時1-2名、後期研修医は愛媛大学整形外科から半年間、石巻赤十字病院内科から3か月間来ていただいております。

当科外来では現時点では医師1名の診療に対し医師事務作業補助者1名と看護師1名がついていただくようになっており、それにより多数の外来患者さんのVAS・HAQ・SDAIなどの臨床評価指標をもらさず記録しつつ診ることができるようになっています。多数の患者さんの臨床評価指標がすべて記録されていることから、質の高い後ろ向き臨床研究などをいつでも施行できることも当科の恵まれている点といえます。

急性期病院における自己免疫疾患診療の利点は、1.外来診療における検査や有事の際の入院が迅速に行える、2.他科との連携が速やかかつ正確に行える、ということに尽きます。1に関しては採血後1時間強でほぼすべての結果が出るところが外来診療の質を明らかに向上させていると言えます。2に関しては全身を診る当科としては誠に頭が上がらないほど様々な科にご協力を頂いています。

一方で当院は急性期病院であるため年間5000件以上の救急搬送受け入れも行っており、632床のうち当科のベッドは13床しかありません。が、近年の治療の進歩により入院を要する患者が減少しており、ちょうどよいくらいの病床数となっています。しかしこのことが近年、急性期病院で自己免疫疾患診療を行っていく難しさにつながっています。

まず第一に、急性期病院全体の傾向ですが経営上の観点から外来患者を減らそうとする動きが強くなってきております。当科外来は先述のように医師事務作業補助者・看護師の助けにより成り立っておりますが、特に外来看護師の配属については我々の裁量を超えたところにあるため今後が不透明であるという不安があります。リウマチケア看護師が看護協会認定の資格となれば当科の急性期病院でのプレゼンス向上の一助となると考えられるため、日本リウマチ学会や日本リウマチ財団にはご尽力いただけると幸いです。

そして最大の難しさは、患者さんをよくすればするほど入院が減り診療収入としては低下する点です。目の前の患者さんのアウトカムを外来で向上させると、診療している我々にとっては自院から逆風となるのです。特に当院が院外処方に切り替わってからはその傾向が顕著になってきております。

こうした近年顕在化してきた急性期病院における自己免疫疾患診療の難しさを打開すべく、自施設から質の高い論文や発表を行うこと、他科の医師との信頼関係をより強固にしていくべくさらなるコミュニケーションをとることや、免疫を専門とする医師の院内でのプレゼンス向上などに日々努めているつもりです。しかし病院全体に占める当科の診療収入・新患者入院数という指標は思っているよりもずっと重く、プレゼンスは年々低下しているように思います。会員の皆様方の施設ではいかがでしょうか?

 

当科医師(初期・後期研修医含む)・看護師・医師事務作業補助者・受付事務。筆者は前列中央右。

当科医師(初期・後期研修医含む)・看護師・医師事務作業補助者・受付事務。筆者は前列中央右。