医学生・若手医師のみなさま 医学生・若手医師のみなさま

海外留学体験記 仲野 寛人(72号)

ベセスダ水災日記

仲野 寛人
横浜市立大学大学院 医学研究科 幹細胞免疫制御内科学/National Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Diseases,Translational Genetics and Genomics Unit
 

2018年7月から米国立衛生研究所(NIH)のMichael Ombrello先生のラボに留学しております。ワシントンD.C.から地下鉄で30〜40分程郊外の地域で暮らしています。日本では桐野洋平先生のご指導の下ベーチェット病のマクロファージを介した炎症形成機序を研究テーマとしておりましたが、アメリカではスティル病に軸足を少し移して遺伝子変異の機能解析をしています。

COVID-19による影響は甚大ですし、海外生活・研究を通して見聞が広がったのは疑いようのない事実ではありますが、留学を経験された諸先輩方のお話に付け加えるべき内容が中々思いつきません。

そこで、水道の蛇口をひねるときれいな水が出てきて、締めれば水は止まるのが当たり前だと思っていた私の固定観念が覆されたお話をしたいと思います。

ある日、培養室の流し台でフットペダルを踏むと鉄錆色の水が出てきた挙げ句、フットペダルを離しても止まることはありませんでした。

衝撃の冷めやらぬある週末には研究室の別の流し台のフットペダルが故障して夜通し水が止まらなくなってしまい、近隣の3つのラボが水没しました。復旧に壁を破壊する必要があり1週間立入禁止になりました。研究室の査察で地面に電気製品を直置きしていないか細かくチェックされる理由をこの時に理解しました。

しかし、水漏れがするのは何も築古の職場だけではなく、築古の自宅アパートも色々な部位の不具合により月1回程度天井から水が滴り落ちてくるのでバケツやモップなしには日常生活が成り立ちません。

水道システムを始め日本のインフラが優秀だというのは理解していたつもりでしたが、これが当たり前と思える状況を陰ながら維持し続けてくれている人たちに感謝する気持ちが芽生えるにいたりました。

さて、個人的なことですが私は音楽を趣味にしております。これまでにも亀田総合病院や横浜市立大学で多くの人と一緒に演奏することで親しくしていただいておりました。こんなご時世ですがNIHでも音楽に繋いでもらったご縁で何度か楽しく合奏をする機会がありました。先日は日本大使館公使公邸にご招待いただいて公使のフルートソロでバッハのブランデンブルグ協奏曲を演奏して楽しい時間を過ごしました。

これから留学される若い先生方にも趣味にまつわるものを是非持って来られることをお勧めしたいです。

まだまだコロナウイルス感染症の終息が見えない中ですが、リウマチ学会員の皆様のご多幸と健康をお祈りしております。

オンブレロラボのメンバー

オンブレロラボのメンバー

公使公邸での合奏後記念撮影

公使公邸での合奏後記念撮影