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海外留学体験記 秋山 光浩(71号)

海外留学で得られるもの

秋山 光浩
慶應義塾大学医学部リウマチ・膠原病内科
 

2018年1月から2020年9月まで、米国カリフォルニア州にあるスタンフォード大学医学部免疫リウマチ学部門のCornelia Weyand先生のラボに、基礎研究で留学していました。スタンフォード大学の位置するパロアルト市は北に車で30分程行けばサンフランシスコ、南に車で1時間ほど行けばペブルビーチ、気候は1年を通して温暖で、毎日雲一つない青空が広がっていました。治安も良く、地域の学校の教育レベルも高いため家族で留学するものにとっては申し分ない環境でした。米国の中で最も物価の高い地域でもあり、金銭面では苦労しました。

日本では、IgG4関連疾患を研究テーマにしていました。患者さんから血液サンプルを頂いて解析し、疾患に関与するリンパ球の動態や機能の解明を目指していました。留学先は別の疾患である血管炎の研究で有名なラボを選びました。もちろん1つの疾患、テーマで研究を継続することも大事ですが、海外留学は新しいことにチャレンジする良い機会であると考え、あえて別の疾患、テーマに取り組んでいるラボを選びました。マウスではなくヒト免疫に主眼を置きたいという気持ちは変わらず、私は巨細胞性動脈炎とANCA関連血管炎の患者さんから血液サンプルを頂いて基礎研究に従事しました。留学を通じて自分の幅が広がったことを実感しております。

留学期間中は研究室で実験に励み、様々なミーティング、カンファレンス、セミナー等に参加して、グローバルな生命科学を学ぶのは当たり前かと思います。プライベートでは家族と過ごす時間が増えました。家族も一人増えました。自分のことをゆっくり考える時間がもてました。苦楽を共にした多くの友人が国内外で増えました。

留学から帰国した今思うのは、本当に留学させて頂いて良かったということです。単に留学にかかる費用や研究の成果だけを考えた場合には、日本で働いた方が当然給料も良いですし、日本にだって大きな研究成果を出しているラボは多数存在します。さらに、COVID-19による影響も重なって、日本から海外への研究留学自体が一筋縄ではいかない状況にあります。しかしながら、留学で得ることができる貴重な人生経験は実に様々で、特に多様性の問題は留学経験者の誰もが経験することであり、経験者しか得ることができない人生の財産でもあります。自分の中で視野が広がっていくのを実感することができます。人類がCOVID-19を克服した暁には、グローバルな競争に負けない日本の将来を見据えて、一人でも多くの医師が海外を経験する機会をもてる日が戻ってくることを期待しています。

週末には家族でビーチへ。

週末には家族でビーチへ。

ラボメンバーでスタンフォード大学のキャンパスにて(著者右から3番目。)

ラボメンバーでスタンフォード大学のキャンパスにて(著者右から3番目。)