医学生・若手医師のみなさま 医学生・若手医師のみなさま

海外留学体験記 前田 俊恒(65号)

Stanford University留学便り

前田 俊恒
松原メイフラワー病院 リウマチ・整形外科

松原メイフラワー病院 リウマチ・整形外科の前田俊恒と申します。2017年3月から2019年3月までアメリカ・カリフォルニア州にありますStanford University、Division of Immunology & RheumatologyのCornelia Weyand教授のLabに研究留学させていただきました。

スタンフォード大学はアメリカ西海岸のカリフォルニア州にある大学で、サンフランシスコから南へ約60kmのところに位置しています。スタンフォード大学の周辺には、GoogleやApple、Facebookなど大手IT企業やベンチャー企業が集積しており、いわゆるシリコンバレーを形成しています。

スタンフォード大学のWeyand教授は血管炎の世界で第一人者であり、臨床はもちろん研究においてもトップレベルの大変ご高名な先生です。Weyand LabはVasculitis Group、RA Group、CAD Groupの3つのグループを有し、10人ほどのメンバーで構成されており、私はVasculitis Groupに所属し、GCA(巨細胞性動脈炎)やTA(高安動脈炎)などの大血管炎における免疫異常に関する研究を行なってきました。同じLabの日本人研究者である渡部龍先生(東北大学血液免疫病学分野)、秋山光浩先生(慶應義塾大学リウマチ膠原病内科)とは同じGroupであり大変お世話になりました。私が整形外科医ということもあり、マウスモデルを用いた研究を主に任され、そのプロジェクトの一つが2018年8月にジャーナル「Circulation Research」に、「MMP (Matrix Metalloprotease)-9-Producing Monocytes Enable T Cells to Invade the Vessel Wall and Cause Vasculitis」としてpublishされました。これは、先の渡部先生とのequally contributionでの論文で、血管の弾性膜を構成するIV型コラーゲンを選択的に分解するMMP-9が、GCAの病変部位において有意に高発現し、単球やT細胞の血管へのアクセスをコントロールしていること、すなわち、炎症やT細胞浸潤、血管新生や血管内膜肥厚などGCAの病態形成にMMP-9が関与していることを解明しました。

IT企業が集積するここシリコンバレーでは、AI、とりわけDL(深層学習)の手法を用いた医療分野への応用がとても進んでいるのを実感しました。少子高齢化の進む日本においては、限られた医療資源の中での医療の効率化は喫緊の課題であり、これらの技術やモノが日本にも導入され医療の発展に貢献することが期待されます。

スタンフォードでの研究や生活は毎日とても刺激的で有意義なものであり、日本を見つめなおす良い機会となりました。留学を通して家族や仲間の大切さを改めて思い知りました。このような貴重な留学の機会を与えてくださいました神戸大学整形外科の黒田良祐教授、三浦靖史先生をはじめ皆さまに感謝します。本稿がこれから留学を考えている先生方の一助になれば幸いです。

 

CCSR Building。免疫、血液、循環器、放射線など様々なラボの研究室がある。

CCSR Building。免疫、血液、循環器、放射線など様々なラボの研究室がある。

Weyand Lab。前列右から3人目が筆者、後列右から4人目がWeyand教授、3人目が Goronzy教授。

Weyand Lab。前列右から3人目が筆者、後列右から4人目がWeyand教授、3人目が Goronzy教授。