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リウマチ専門医対談

リウマチ専門医対談

2.リウマチ膠原病専門医を目指したきっかけ・時期

松下:まずリウマチ・膠原病をご自身の専門としたきっかけを、お一人ずつ伺いたいと思います。
 長谷川先生、いかがでしょうか。

長谷川詠子(以下、長谷川):私は、虎の門病院にずっといるのですが、1~2年目を前期研修医として内科全科をローテートしたあとに、3~5年目も後期研修医として複数科をローテーションしました。当院では、腎臓内科医がリウマチ膠原病科も診るという診療体制になっており、血液内科、呼吸器内科、腎臓内科をローテーションしながら私は最後まで進路に迷っていましたが、最終的に腎臓内科にしました。したがって、リウマチ膠原病科を「選択した」という感覚はあまりないのですが、腎臓内科で腎臓病といっしょにリウマチ膠原病診療をしているうちに、リウマチ・膠原病の面白さ、奥深さ、魅力にはまっていったという感じです。
 今振り返ると、血液内科や呼吸器内科も、免疫が関与しているというところに興味があったのかなと思います。

松下:働きはじめて益々リウマチ学の魅力を感じてきたということですね。

長谷川:そうですね。

松下:ありがとうございます。それでは岡野先生はいかがでしょうか。

岡野匡志(以下、岡野):私は、学生のときからずっとラグビーなどのスポーツをやっていて、よく怪我などもしていましたので、整形外科に進みたいなというのはありました。なかでもスポーツ整形に興味がありました。最初に研修したのは、大阪市立総合医療センターという病院で、これは宮下さんといっしょの病院でした。超急性期の病院で、脊椎の手術や人工関節の手術など、いろいろな整形外科の手術を行いました。当時、若手は外来の患者さんは担当しておらず、病棟の入院患者さんの受け持ちを主にしておりましたので、手術をして回復する患者さんしかあまり知りませんでした。
 ちょうどその研修医の間に、整形外科以外にもいろいろローテーションしていたため、老健施設とか、そういったところにも行く機会がありました。そこで、車椅子のまま歩けない人たちがいるのだということに気づきました。立ったり座ったりなどのリハビリの時間があって、ヘルパーさんがそれを手伝うだけだったのですね。あるとき、私が「もっと何かきちんと介入してあげれば、もっとよくなるのではないですか」といった意見を言いました。そのとき、次のようなことを言われました。「ここに来ている人たちの中には、脳梗塞後の人などで、一通りの医療が終わって、もうこれ以上よくなる見込みがない人もいます。でも、たとえ自分でごはんが食べられないとしても、私たちが口に運んであげて、食べておいしいと思ってくれたら、その人はそれで幸せだし、別に自分で歩けなくても、私たちが車椅子で押してあげたらどこでも行けます。健常者と同じようにできることが幸せとは限らないのではないですか」と。それまでは、手術してよくなる人に手術してあげたいなという思いが非常に強かったのですが、「そういう医療もあるのか」と気づかされました。
 それを整形外科の領域に当てはめると、関節リウマチの患者さんが、そういう人たちに近い状況・環境なのだということがわかりました。関節リウマチは、ちょうど私が研修医になったぐらいにバイオが出始めて、よくなる時代になりつつあるという状況でした。よくなる人がいる一方で、よくならない人もいる。よくできる人をよくしてあげることもできるし、よくならない人をいかに工夫し、介入し、よくしてあげられるかという疾患です。手術でよくしてあげることもできるし、サポートで幸せになる人もいるという点が、幅広いなと思いました。人工膝関節の手術後、歩けるようになるというのもいいのですが、関節リウマチは幅が広くて、興味が湧いてきたというのが、リウマチの専門医を目指すようになったきっかけという感じですね。

松下:なるほど。ありがとうございます。
 最近は多くの生物学的製剤が認可されておりますが、手術の傾向というのはだいぶ変わってきているのですか。

岡野:そうですね、全体的には手術は減ってきているのかなとは思います。昔よく行われた滑膜切除というのは、基本的にはほとんどなくなりました。ただ、やはり年齢がいってきますと、当然OA(変形性膝関節症)を合併してくる患者さんもいますので、人工関節の手術をする患者さんもいます。また、逆によくなって動けるようになったことで、今まであまり動かなかったから痛くなかったとか、気にならなかった個所に関して、もっとよくなりたいということで、手術をされる方もいらっしゃいます。そういう点からしますと、やはり手術でよくできる部分はまだありますので、すごく減っているというわけではありません。滑膜切除などの減った領域もあり、一方では増えている領域もあるということだと思います。

松下:ありがとうございました。
 では、続いて宮下先生、お願いします。

宮下知子(以下、宮下):もともと大学卒業時には内科に行こうと思っていたのですが、最初の研修の病棟で初めて出会った患者さんが、16歳のGPA(多発血管炎性肉芽腫症)の患者さんで、病棟の中で一番重症の方でした。どこの病院の小児科でも診断がつかず、研修病院に運ばれてきて、やっと診断がついたという女の子でした。それがすごく衝撃的だったのです。
 その後、いろいろな患者さんを診るにつれて、診断学というのがすごく内科では重要だということを認識し、診断学がきちんとできていないと治療に移れないということを痛感して2年間を終えました。長谷川先生と同じように、内科でどこの科を目指すのかが、なかなか自分のなかで決められずに、3年目、4年目は総合診療科に進み、自分の進路を見つけようと思いました。
 3年目、4年目でも不明熱や診断がつかない患者さんというのは、膠原病疾患においてすごく多かったのを実感し、5年目に膠原病を選んだというかたちでした。

 

3.リウマチ学の魅力・面白さ、他の領域との違いとは

松下:実際にお仕事をされ、他の領域との違いを実感することにより、学問の魅力や面白さがさらに増してくるのかと思いますが、岡野先生、いかがでしょうか。

岡野:私は整形外科医ですが、薬物治療に関して内科の先生と同じようにできないといけない、中途半端ではいけないという思いがあり、いろいろ免疫学のことなども勉強しています。勉強していくと、この領域は非常に奥が深いですし、面白いです。学術的な免疫学自体もそうですし、実際の薬物治療を行っている際の、いろいろな内科的な合併症も興味深いです。整形外科の領域で言えば、いろいろな手術も行いますが、たとえば膝の人工関節にしても、われわれの医局内でも、その手術を専門とする先生もいます。私は整形外科医として、それぞれの手術の専門家と対等でなければいけないという気持ちも強いので、本当に幅広く、いろいろ勉強しなければいけない。そのため、とても忙しいのですが、リウマチ学は面白いと感じています。

松下:宮下先生は、いかがですか。

宮下:膠原病自体は免疫異常が複雑にからみ合っています。私は大学院で、関節リウマチの細胞の勉強や、SLE(全身性エリテマトーデス)のモデルマウスを使った実験なども行いました。解明されていない部分が多いと同時に、生物学的製剤など、今までの実験をもとに実際に使える薬剤もいろいろ開発されているという部分は、すごく面白い分野かなと思っています。

松下:長谷川先生、いかがでしょうか。

長谷川:膠原病は全身のいろいろな臓器に多彩な症状をきたし、それが膠原病診療の難しさでもあり、とっつきにくいと感じるところでもあるのですが、最初はどこから手をつけていいかわからなくても、基本に忠実に、パズルを解くようにほかの疾患を鑑別していくと答えにたどり着くことができます。そのような瞬間は、学問としてすごく面白くやりがいがあります。あとは、先ほどの宮下先生の症例にもあったように、どこの科でも診断がつかない症例がまわってきて、最後に診断がついて感謝されることがあります。そういうときは「膠原病科医冥利に尽きる」というような感じで、非常にやりがいがあると思います。

松下:専門性の高い分野ですので、そういったことは多々あると思いますね。

 

4.ライフスタイルについて:1日ごと、1年ごと

松下:先生方は総合病院や大学病院の第一線でご活躍されており、大変お忙しい日々をお過ごしかと存じます。普段はどのような生活を送っていらっしゃるのでしょうか。どのような一日、そしてどのような一年をお過ごしでしょうか。
 宮下先生から、お話しください。

宮下:内科医として仕事をしていますので、主に外来や病棟の業務がメインです。それに加えて、空いた時間で研究をするというかたちです。
 ほとんどは、診療に時間を取られることが多いのですが、診療していると、なかなか解明できない症例などに出くわすわけです。そういった症例に関して、日本リウマチ学会などでいろいろ調べたことを報告したり、研究に関しては、年単位でわかったことを発表したりしています。学会発表やその先のディスカッションを通じて、ほかの大学の先生、ほかの国の方とお話ができて、研究が進んでいくこともあります。

松下:ありがとうございます。忙しい日とそうでない時とメリハリがあるということですね。

宮下:そうですね、忙しい日もありますが、基本的に安定している患者さんも多いので、外来などはわりあい時間どおりに終われると思います。一方、入院している患者さんは急変されることも多いので、そういう場合は忙しくはなりますが、メリハリをつけて仕事ができる環境だと思います。

松下:長谷川先生はいかがですか。

長谷川:私は、ずっと臨床病院にいますので、あまり基礎研究に割いたりする時間はありません。1週間のスケジュールに関しては、半日を1コマとしますと、リウマチ膠原病外来を2コマ、腎臓外来を1コマ、透析当番を2コマ、関節エコー外来を1コマ、あとは病棟業務といった感じです。日中の業務は、腎臓とリウマチ膠原病、半々ぐらいの割合です。
 1年間のサイクルでは、臨床業務以外に症例報告や臨床研究などで研究会や学会などに参加するようにしています。

松下:皆さん、お忙しそうですが休養できていますか。

長谷川:入院患者さんの重症度によりますね。リウマチ膠原病の患者さんは、8割は落ち着いており、外来で診療できることが多いのですが、CADM(筋無症候性皮膚筋炎)やSLE(全身性エリテマトーデス)など、重症病態の患者さんが来られたときは、忙しくなることもあります。全般的には、いろいろな働き方ができる科なのかなとは思います。

松下:ありがとうございます。
 では、外科系の岡野先生はいかがでしょうか。

岡野:いや、たぶん内科の先生のほうが、重症患者さんが多いので、忙しいのではないかなと思います。私は、1週間でいくと、半日を1コマとすれば、大学での外来は2~3コマくらいでしょうか。そのほか、エコーが2コマ、水曜日は1日手術ですので2コマ手術、あとは外勤と研究などです。
 整形外科は基本的に、入院患者さんは、われわれが手術した患者さんですので、全身状態の悪い患者さんはあまりいません。そういう意味で、夜遅くまで患者さんの管理をしたり、土日に行って管理をしたりなどということは特になく、アフター5とか土日は、比較的時間が確約されるかなと思います。私は水曜日が手術なので、木金と術後が安定していれば、土日は一切行かないという場合も多いです。
 自分自身が手を動かして今研究しているということはないのですが、大学院生を指導する立場にありますから、大学院生の基礎研究をいっしょに行ったり、指導したりもしています。また、大学病院ですから学生の講義もあります。そういった診療と教育や研究を、平日の時間内で目一杯やっていますので、アフター5とか土日は比較的時間は取れるかなと思います。

松下:仕事中は非常に忙しいけれど、仕事が終われば、比較的自由な時間が取れるということですね。年間を通して長期の休暇を取ることも可能なのでしょうか。

岡野:夏休みは1週間、しっかり取れるかたちになっています。子どもがいるのですが、いっしょに遊ぶなど、そういう時間は十分取れます。

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