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開業医からの視点 林 太智(71号)

Narrative Treatmentのその先へ
~リウマチ膠原病診療からWell-Beingを探究する~

林 太智
クエストリウマチ膠原病内科クリニック
林 太智

2020年12月にJR水戸駅前にリウマチ膠原病専門クリニックを開院しました。これまで筑波大学で様々な研究に携わり、その傍ら(株)日立製作所ひたちなか総合病院にリウマチ膠原病センターを開設、有数のリウマチ膠原病診療施設に育て上げたつもりです。論語に言う「不惑・知命」の齢となり、立場は若手に譲り、理想とする繊細な医療を広く多くの患者さんに届けたいと考え発起しました。

前職地の隣町・隣駅という立地ですが、患者さんに自立性を促していることもあり、診療してきた患者さんの約半数からのスタートとやや不安はありました。しかし開院半年でリウマチ性疾患・膠原病とその疑いの患者さんだけで受診者数はもと診療していた人数を超え、大きなアンメットニーズがあったことが実感されました。初診で多いのはPre-RAと言うべき症例です。ACPA/RF陽性で関節腫脹が明らかではない症例、ACPA/RF陰性で多関節腫脹はあっても分類基準を満たさない症例などが挙げられます。よく診ると脊椎関節炎、乾癬や掌蹠膿疱症を有する症例も少なくありません。こうした症例のマネージメントはやりがいがあり、とても充足した日々を送っています。診断が確定的かどうかでなく、そこに困っている患者さんがいるのですから…。

私が提唱してきたNarrative Treatmentはクリニックでこそ本領が発揮できます。ナラティブとは<語り>を意味し、患者さんの人生や価値観に寄り添う意味と戦略的柔軟さの2つの意味を包含しています。Patient Reported Outcome; PROを共通言語とした医師と患者の共有意思決定(Shared Decision Making; SDM)によってWell-Beingの高みを目指そうという考え方です。高度な医療機器や技術に依存せず、柔軟な対応と戦略で一貫して高くカスタムメイドした目標を達成できる、こうした意味の「高度医療」はむしろクリニックでこそ実現可能であり、RAやSLE以外の診療でも実践できます。

さて、施設は関節エコー機器、全身型DXAだけでなく、院内で精密な血液検査できる大型機器も導入し、ケア看護師、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師が常駐、ビルテナントながら460㎡の診療スペースを確保、点滴・皮下注ブース、待合室は十分なソーシャルディスタンスをとり、ホテルのようなデザイン空間としました。ここから今後も新たな提案を次々と発信していくつもりでいます。

クリニック名のクエストは<探求>を意味します。立ち止まらない…それが私のWell-Beingです。

 

クエストリウマチ膠原病内科クリニック

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