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開業医からの視点 廣瀬 慎太郎(67号)

院長入院する…の巻

廣瀬 慎太郎
ひろせ内科クリニック
廣瀬 慎太郎

2014年9月、新潟市から自動車で一時間ほどに位置する五泉市でクリニックを開設しました。

当市はメリヤス・ニット製品の主要生産地の一つであり、切り花・里芋など農産物でも有名なところです。また最近ではワクチン製造で有名なデンカ生研が続々と工場を建設し、五泉のランドマークとなっています。

内科・リウマチ科・腎臓内科を標榜していますが、高齢者比率の高い土地柄のため、患者さんの多くは高血圧症・高脂血症・耐糖能異常が占めます。もちろんリウマチ専門医としての診療にも力を入れていますが、圧倒的に「地域のかかりつけ医」としての役割が求められている状況です。そんな中、クリニック存亡の危機が訪れます。

2020年3月中旬に出現した左腰痛は4月に入ると常態化します。同月下旬、いつものように腰痛で苦しんでいたところ左大腿内側に突然の電撃痛、その後もしびれが続きます。素人でもL3-4あたりのヘルニアであろうと想像がつきます。5月連休明けにMRIを撮影しましたが、その時点ではすでに仰臥位も難しい状態でした。おまけに素人の診断は正しいことが証明されてしまいます。あれこれpain killerを内服したり、神経根ブロックを受けたりもしましたが、症状はみるみる進みます。5月下旬になると、仰臥位だけでなく、右を向いても左を向いてもしびれのために眠ることができなくなります。左足の筋力低下・痛みのため、たかだか100m歩くことでさえも数回休みを入れないとたどり着けません。

このまま仕事を続けることは無理であろうと判断し、ヘルニア除去の手術を受けることになりました。(実は25年前にも右L4-5のヘルニアで手術を受けています。おまけに術後血腫のためにひどい目にあいました。まさか二回も同じ手術を受けることになるとは思いませんでした。)

6月下旬にL3ヘルニア摘出術を受けてまいりました。全麻での手術でしたので、目を覚ましたらすべて終わっていましたが、麻酔が切れてくるにつれて創部が痛いわ、足は重いわ…。翌日からリハビリに伴う激しい筋肉痛を味わい、本当に仕事に復帰できるのか不安がよぎります。もう一週間休みを長く取っておけば良かったと後悔した程でした。

現在手術を受けてから約一か月経過しました。未だにうまく走れませんし階段昇降は若干苦労しますが、左足の筋力は徐々に改善傾向です。若干の腰痛はあるものの、術前に比べればまったく別な世界にいる気分です。どんな格好でも良く眠れるようにもなりました。

「危機」とは大げさだと怒られるかもしれませんが、本人からしてみればコロナ禍と相まって事業主不在になるという、まさにクリニック存亡の危機を味わった感覚でした。当事者の不安を慮っていただければ幸いです。

「医者は体力勝負」と言われておりますが、まさにその言葉を思い知らされた一件でした。自らの健康に留意しつつ、これからも「地域のかかりつけ医」としての責務を果たしていきたいと考えております。

 

ひろせ内科クリニック

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