医学生・若手医師のみなさま 医学生・若手医師のみなさま

開業医からの視点 北村 公一(64号)

第2の人生の始め方

北村 公一
道南リウマチ・整形外科
 

60歳の還暦の年に23年間お世話になった函館五稜郭病院を退職し開業しました。ひと昔前なら定年退職の年齢であり、整形外科医として第一線でメスを握ることが難しくなったこと、リウマチ治療の進歩で機能障害を起こさないように治療することが可能となり、切らない治療が可能となったことが退職の要因と感じています。院長、同僚医師に開業の許しを得、準備を開始しました。医療設備の業者選定、内装の設計と施工業者の決定、薬品納入業者の決定、診察券やパンフレット作成など、多くの事柄を解決しなければならず、勤務しながらの準備ということで大変でしたが、半年で開院のためのハードは整えることができました。高齢開業で先が短いため、あまり資金をかけられないと思い、テナント開業で設備もレントゲン装置、エコー装置のみと“軽装”なのが良かったと思います。幸いスタッフも集まってくれて平成30年9月1日に開院できました。開院直前まで前病院で勤務していたため、ソフト面での準備、すなわち電子カルテや医療器具への自分の勉強やスタッフの訓練不足は否めませんでした。

開院して6日後、北海道胆振東部地震が発生し北海道全域がブラックアウトのため電源がストップ、電子カルテをはじめ施設の機器が使えなくなる事態が発生しました。休院を考えましたが、予約した患者さんが次々来院され、電源が無い中で手書き処方箋や関節注射など、可能な医療を行うこととなりました。冷蔵庫で保管していたバイオ製剤は自家発電のある卸業者さんが一時保管してくれ事なきを得て、翌日には電源が回復して通常の営業に戻りました。被災地に比べたら被害も少なく、短い不自由で済みましたが、災害の恐ろしさと何事もない日常の有り難さを実感しました。

勤務医時代からのリウマチ患者さんが8割ほど来院して頂き、診療内容もスタイルも変えず診療していますが、整形外科を標榜しているので骨折や外傷、肩、膝関節の変性疾患、脊椎疾患など勤務医時代には診察していなかった疾患も治療し、リウマチ以外の患者さんも増えてきています。リウマチ専門と考えてリハビリを作らなかったので、リハビリが必要な場合は他医に紹介するという、整形外科として情けない状態です。

開業して実感したのは医療費の高さです。バイオ製剤を使用していたため勤務医時代から患者さんの経済状況を考慮して治療しているつもりでいましたが、最終的には事務方まかせでした。開業して実際に経理に関わると薬が高額なのに驚かされます。開業では委任払いにも対応できないため、何人かは元の病院に戻ってもらうことになりました。内科的合併症対策や急変患者さんへの対策も十分考慮しておく必要があり、急変時には函館市内の当番病院や五稜郭病院にお願いし、すぐに受け入れていただき大変助かっています。勤務医時代には周りに依頼すれば診てもらえた環境が今となっては夢のように思えます。

還暦を過ぎて第2の人生を開業医として歩み出したことに、かなりの不安はありますが悔いはなく、来院してくれた患者さんやスタッフに対しての責任を今後も十分果たしていきたいと思います。

 

受付でスタッフ一同と

受付でスタッフ一同と

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