医学生・若手医師のみなさま 医学生・若手医師のみなさま

「何故か」と問いかけ続けるリウマチ医を目指して

辻本 考平

左:筆者 右:平野先生
辻本 考平
西宮市立中央病院 内科(リウマチ・膠原病)

私は2012年に医学部を卒業後し、2021年の春でリウマチ・膠原病を専門にして8年が経過しました。もともと神経内科や眼科、腎臓内科などと迷ったあげく、幅広い臓器を総合的に診療する事ができる点に魅力を感じて進路を決めた私ですが、今ではリウマチ・膠原病診療にとてもやりがいを感じています。

その理由の一つに現在ではリウマチ・膠原病分野の患者さんを治せる時代になったことが挙げられます。ステロイドしか治療薬がなかった時代には関節リウマチや全身性エリテマトーデスと診断されることは、癌と診断されるよりも辛いものだった、と聞いた事があります。それが今では様々な免疫抑制剤や生物学的製剤の登場により、たくさんの患者さんはその痛みや苦痛から解放されることが可能な時代になりました。そして、それらの一昔前には考えられなかった画期的な治療が、一部の大学病院などの専門施設だけではなく、私が今所属しているような一般の市中病院でも、私たち専門医がおりさえすればすぐに目の前の患者さんに届けることができる時代であることは、我々リウマチ科医にとって非常に幸いな事と思います。

一方で、こうした治療の選択肢が増えた時代だからこそ、私が常に大切にしなければいけないと心に抱いている事があります。それは目の前の症例一つ一つに対して、「何故?」と考えることです。私は市中病院での研修を終えた後、大阪大学医学部呼吸器・免疫内科学にてさらなる研修および大学院生活を送らせて頂きました。大阪大学でのカンファレンスでは臨床や研究を問わず、常に「何故、このような現象が起きているのか」「何故、この治療が最適なのか」と、単にガイドラインを当てはめるのではなく、常にその背景にあるメカニズムや原因を考えながら一人一人の患者さんにとって最善の対応を行うことの大切さを学びました。専門医としてガイドラインの表面的な部分にとらわれ過ぎることなく、時には免疫学の知識も駆使しながら、「何故」に対する答えを探り最善の治療を患者さんに届けることのできる医師でありたいと考えています。

私は今年の4月より平野亨部長とともに西宮市立中央病院に赴任し、リウマチ・膠原病科を新たに立ち上げるために日々奮闘しています。まだまだ半人前の私ですが、これからも研修医の頃のように絶えず新鮮な気持ちで真摯に症例に向きあい、一人でも多くの患者さんの力になれるよう、邁進していきたいと考えています。