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小児リウマチの魅力

川邊 智宏
川邊 智宏
東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センター 小児リウマチ科

私が初めて小児リウマチ性疾患に出会ったのは、大学の学生実習のことでした。中学生の変形した足趾の関節を恐る恐る触れたことを今でも覚えています。真似事の問診のなかでテンプレートとして尋ねた”困っていること”に、同じデザインの靴を違うサイズで2セット買わないといけないから大変、と少し切ない明るい笑顔で話してくれました。

大学卒業後、何となく上京したいという理由だけで生まれ育った北海道を離れ、東京大学附属病院で初期研修を行い、そのまま同院小児科に入局し、青梅市立総合病院で小児科専門研修を行いました。初期研修中に内科か小児科か迷った時も、小児科で様々な症例を経験してサブスペシャリティを決めあぐねた時も、結局はその少し切ない笑顔が頭の片隅に浮かび、進路を決めたように思います。2020年4月から現職の東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター小児リウマチ科で勤務をはじめ、宮前多佳子先生のご指導のもと小児リウマチ性疾患・自己炎症性疾患の診療にあたっています。

当院の膠原病リウマチ痛風センターは膠原病リウマチ内科だけではなく、整形外科や私のような小児科の医師も在籍しています。小児リウマチ科の患者さんに入院が必要な場合には、小児科の先生と一緒に診療を行うため、様々な診療科と関わることができ、とても刺激になるよい環境で毎日充実した日々を過ごしています。

ほぼ勉強した記憶がない学生時代から免疫学だけはその複雑かつ明快なところが好きでしたが、実際に患者さんを目の前にしたときの自己免疫・炎症性疾患は想像以上に難しいものでした。日々の勉強が大変ですが、急性期・慢性期、局所・全身の両病態に対応し、分子標的薬をはじめとした新薬を扱う先進的な部分がある一方で、検査所見だけではなく身体所見や患者さんの訴えにも重きをおく古典的な部分もあり、とても広く深い世界に思えます。これに加え、患者さんの成長に伴うライフスタイルの変化に応じて、長期的に診療を行うことも小児リウマチ診療の大きな魅力だと思います。

希少疾患が多く、エビデンスが不足していたり、海外ではスタンダードな治療が保険適用外であったりと、様々な課題が多い分野だと思いますが、その分非常にやりがいのある領域だと思います。いつの日か、少し切ない笑顔を100%の笑顔にできるように、小児リウマチの世界で一緒に研鑽をつんでみませんか。