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病気に関する情報箱_過去のコラム

2020年12月17日公開

1.SLEってこんな病気

Q1.SLEってなんですか?

A1.Systemic lupus erythematosusの略で、日本語では「全身性エリテマトーデス」と訳されます。通常は自らを守る働きをする「免疫」が、誤って自分の様々な組織を攻撃してしまい、全身に症状がでてしまう「自己免疫疾患」の一つです。世界的にもその病態の解明などについて広く研究されている疾患ですが、いまだその詳細な原因についてははっきりと分かっていません。

Q2.SLEはどうやっておきるのですか?

A2.様々な要因が重なって発症するといわれています。主には遺伝的な要素、環境的な要素などが指摘されています。

① 遺伝因子:ある特定の遺伝子異常で発症する「単一遺伝子病」とは異なり、糖尿病、高血圧なども類される「多因子遺伝病」という、複数の遺伝子と環境要因が相互に関わって発症する病態と考えられています。しかし、家族内にSLEの患者さんがいる場合、100人に1-5人前後の割合で発症している家系があること、一卵性双生児の場合では4組に1組程度のSLE同時発症があること、などから遺伝が関与している事は推測されています。

② 環境因子:上記のような遺伝因子をもっている人に、紫外線への長時間曝露、ウィルス感染、手術、妊娠・出産、薬剤等の何らかの身体的・精神的なストレスがかかるとSLEを発症すると考えられています。

Q3. SLEは昔からある疾患ですか?

A3. 19世紀後半から広く認識されるようになった、比較的新しい疾患です。歴史的には、1850年に初めてフランスの皮膚科医Cazenave(図1)が、今でいうSLEの皮膚症状について報告しています。その後、1872年にハンガリーの皮膚科医Kaposiが全身性疾患であることを報告し、徐々に知られるようになってきました。そして1948年にアメリカの病理医HargravesらによってSLEでは免疫学的機序が関わっている証拠が確認され、1950年代以降にSLEの診断に現在でも用いられる抗核抗体などの検査法の開発がなされるようになりました。このように、SLEが広く知られるようになったのは19世紀後半からと歴史的には最近の事であり、その疾患の解明には様々な国の医師が携わってきたことがわかります。

Pierre Louis Alphée Cazenave(1795-1877年)
図1.Pierre Louis Alphée Cazenave(1795-1877年)1)
Q4. SLEではどんなことがおきますか?

A4. 「“全身性”エリテマトーデス」という名前の通り、様々な内臓障害、関節・皮膚症状が起こります。しかし、必ずしもすべての症状が起きる訳ではなく、一括りにSLEといっても一人一人、症状の組み合わせもその重症度も異なります。
SLEの症状としては、主に微熱・倦怠感・食欲低下の全身症状、また関節痛や皮疹がよくみられます。また、以下のような症状を起こすことがあります。

・中枢神経系 … けいれん、意識障害、頭痛、抑うつ状態
・筋骨格系 … 筋肉痛、関節痛
・皮膚/粘膜症状 … 口内炎、脱毛、光線過敏、顔面の紅斑、手指の紅斑、レイノー現象*
・心臓・肺 … 胸痛、咳、動悸・息切れ
・腎臓 … 手足の浮腫
・消化管 … 腹痛、下痢
・血液・リンパ節系 … 貧血、リンパ節腫脹

また、合併する内臓障害によって、以下のような検査異常を認めます。

・血球異常 … 白血球(リンパ球)減少、貧血、血小板減少
・肝機能障害 … AST・ALT上昇など
・腎機能障害 … 血尿、蛋白尿、血清クレアチニン値上昇

そのほか、SLEの病態に関わっていると考えられる抗核抗体や抗二本鎖DNA抗体の陽性、抗Sm抗体陽性、抗リン脂質抗体陽性などの免疫学的検査異常が確認されます。

*レイノー現象:寒冷刺激によって手指の血流障害が起こり、指先が白→紫→赤色へ変化する現象のこと。膠原病ではSLEの他、混合性組織結合病、全身性硬化症などの患者さんにおこります。

Q5. SLEに対する治療にはどんなものがありますか?

A5. 現在の治療としては、ステロイド、免疫抑制剤などのお薬を組み合わせて使用します。

① ステロイド … SLE治療の主たるお薬です。広く炎症を抑える作用があります。臓器合併症の種類や程度により、使用する量は異なっています。少量(プレドニゾロン5mg以下)から大量(プレドニゾロン50~60mg)、あるいは非常に重篤な場合は点滴パルス療法(メチルプレドニゾロン500~1000mg)を短期間使用するなどその使い方は様々です。副作用として、不眠・うつ、高血圧、糖尿病、脂質異常症、白内障・緑内障、骨粗鬆症、感染症リスクの上昇などが起こる可能性がありますが、急な減量・中断はかえって命に関わる事があるため、必ず主治医の指示通りに内服する必要があります。

② ヒドロキシクロロキン … 免疫調整薬と分類されています。海外では古くから皮膚症状の強いSLE患者さんに対して有効な薬として使用されていましたが、日本ではクロロキンによる重篤な網膜症という事例を踏まえて長らく医薬品として承認されていませんでした。しかしSLEに対する臓器合併症や再燃のリスクを減らす効果が国際的に示されてきた中で、2015年に日本でも公式にSLEに対して承認され、現在は使用可能となっています。お薬による網膜症評価のために、必ず使用前に眼科で7種類の検査を受け、使用中も少なくとも年に1回の眼科診察を受けましょう。

③ 免疫抑制薬 … アザチオプリン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、エンドキサンなどがあります。合併している臓器障害とその重症度により使用するお薬は異なります。基本的にステロイドと共に使用します。その名の通り、免疫を様々な作用で抑えてステロイドの使用量を安全に減らす事ができると期待されます。アザチオプリン、タクロリムスは妊娠希望時にも使用継続可能な薬剤として正式にコメントされています。ミコフェノール酸モフェチルは使用中に妊娠した場合、赤ちゃんの奇形リスクや流産の確率が増えると言われているため、妊娠希望時には主治医と事前に相談し、他剤への変更あるいは中止を検討する必要があります。エンドキサンを使用された経験のある患者さんでは、卵巣機能低下が認められ月経不順・無月経など、不妊の原因となることがあります。このため、病状が安定しており主治医から妊娠許可が出ている患者さんについては、パートナーと相談の上、早期に不妊治療を考慮してもよいかもしれません。

④ べリムマブ … 関節リウマチなどでは様々な種類が開発されている生物学的製剤の一つです。B細胞といわれるリンパ球の作用を抑えることで免疫の異常反応を抑え、効果を発揮します。点滴あるいは注射で投与することが可能なお薬です。

その他、関節痛などに対して非ステロイド性消炎鎮痛薬などを使用する事があります。

Q6. SLEは治りますか?

A6. 残念ながら、現在の医学では、風邪などの感染症や怪我のように「完治する(=お薬なしで病気がない状態で過ごせる)」という事はありません。一方で、SLEの重症度にもよりますが、必要最低限のお薬を使用しながら、日常・社会生活を恙なく過ごせる状態にすることは可能と考えられています。自己防衛のための免疫が様々な要因で誤作動を起こしてしまって発症する疾患であるため、お薬を用いたり規則正しい生活を送ることを心がけ、コントロールして永く付き合っていく事となります。

<Take home message>
SLEは全身に症状が出る自己免疫疾患です。ステロイドをはじめとしたお薬で病気を抑え、感染症などの合併症に速やかに対処することで、永く社会生活を送ることが可能となってきています。

<参考文献>
1)K. Holubar. Acta Dermatoven APA. 2006(15):191-194.

(文責:多摩総合医療センター 大西香絵先生)

 

2.SLEとワクチン接種

ワクチンとは:

細菌やウイルスに感染し,感染症にかかると,その病原体に対する免疫という抵抗力が備わります.毒性を弱めたり,無毒化した病原体を接種することにより,実際には病気にかからなくてもその病気への免疫ができ,病原体が体内に侵入しても発症を予防したり,症状を軽度ですませたりすることができます.この予防接種用の薬液をワクチンといいます。

ワクチンの種類:

ワクチンには下の表のように弱毒化された病原体を使った弱毒生ワクチンと病原性をなくした不活化ワクチンがあります.原則的に弱毒生ワクチンは免疫抑制状態の方には接種できません.帯状疱疹は免疫抑制状態では罹患しやすく注意が必要ですが,不活化ワクチンが開発中で今後期待されます.また,例えばインフルエンザワクチンは不活化ワクチンで以前副作用が強く出た方以外は毎年接種を受けた方がよいと考えられます。

不活化ワクチン(免疫抑制状態でも接種可能)
肺炎球菌,インフルエンザ,子宮頸癌,A型肝炎,B型肝炎,狂犬病,破傷風,ジフテリア,日本脳炎,ポリオ,髄膜炎菌ワクチン,帯状疱疹

弱毒生ワクチン(免疫抑制状態では接種は原則禁止)
BCG,はしか(麻疹),風疹,おたふくかぜ,みずぼうそう(水痘),黄熱,ロタウイルス

ワクチンの副作用:

ワクチン接種時に注射した部位が赤く腫れたり熱を持ったりすることがありますが,1~3日程度でおさまることが多いです。まれに重篤な副反応が起こることもあり,症状がひどい場合は病院を受診してください。インフルエンザワクチンを打ってインフルエンザになったのでワクチンは打ちたくないといわれる方がいますが,発熱やだるさ等が生じることはあっても不活化ワクチンであり,インフルエンザそのものに罹ることはありませんので,重症化を防ぐうえでも受けた方がよいでしょう。

ワクチンの効果:

免疫抑制状態時の抗体獲得率や獲得抗体の持続期間はワクチンの種類や併用薬の種類,用量により異なることがあります。

ワクチンの費用:

高齢者では年齢により肺炎球菌ワクチン等の行政による費用軽減措置がある場合,髄膜炎菌ワクチンのように特定の疾患・使用薬剤によっては保険適応になる場合もありますので相談されるとよいでしょう。

2020年からの変更点

注射生ワクチン同士を接種する場合以外は,接種間隔の制限が撤廃されました。帯状疱疹の不活化ワクチン(通常50歳以上,2回接種)が使用可能となりました.新型コロナワクチンも発売されてきますが,それぞれの接種に関しては主治医の先生に相談してください。

(文責:東京医科歯科大学 岩井秀之先生)

 

3.SLEとインフルエンザ

人の体にはウイルスや細菌などの病原体から自らを守る「免疫」という働きがあります。SLEの症状は主にこの免疫の異常によって起きます。本来外敵から身を守るための免疫の働きが自分の 体に害を及ぼすのですが、これが膠原病の大きな特徴の一つです。

このため、感染症はSLEの患者さんにとって最も注意すべき合併症です。SLEの治療ではステロイドや免疫抑制剤など免疫を抑える薬が使われることから、感染症にかかりやすくなります。

インフルエンザの予防接種は可能な限り受けましょう。予防接種をすることで体の中にインフルエンザに対する抗体が作られるため、本当のインフルエンザにかかったときに速やかにインフルエンザウイルスを攻撃し、重症化を防ぐことができます。インフルエンザワクチンは、流行が予測されるウイルスのタイプによって毎年ワクチンが変わっています。このため毎年接種を受けることが望ましいです。

風邪やインフルエンザなどの一般的な感染症に対する予防法は、SLE患者さんにとっても有用です。インフルエンザの流行時はなるべく人混みを避け、外出から帰宅後はうがい、手洗いを忘れないようにしましょう。
SLE患者さんは弱い病原体でも感染症を起こす可能性があるため、歯磨きをきちんと行い、口腔内の衛生を保つことも大切です。

ストレスや体の疲れは、病状悪化の引き金となるだけでなく、免疫力を弱らせることで、感染症にかかるきっかけとなることもあります。無理をせず、疲れを感じたら、十分な安静を心がけるようにしましょう。

<take home message>
発熱や咳など感染症の疑いがある症状が現れた場合は、すみやかに受診するようにしましょう。感染症が重症化しやすいため、ただの風邪だと思っても放置せず、医師の診察を受けるようにしましょう。

(文責:順天堂大学 根本卓也先)

 

2021年3月26日公開

1.SLEと花粉症

● 花粉症とは;

くしゃみ,鼻水,鼻づまりを特徴とするアレルギー性鼻炎があります.家の塵やダニ(ハウスダスト),スギ,ヒノキ,ブタクサなどの花粉,カビの胞子といった呼吸とともに吸い込んでしまう空気中の微細な物質(抗原)が原因となります.その中でも花粉が原因で鼻や眼に起こるアレルギーを花粉症といいます. 日本人の4人に1人が花粉症といわれています.花粉の種類により症状の出る季節が異なります.鼻づまりにより口の渇き,咳,においや味がわかりにくくなったり,目のかゆみ,充血,涙がでたりします.さらに,だるさ,のど・顔・首のかゆみ,集中力の低下,不眠といった症状が生じることもあります.
風邪と似た症状もありますが,風邪では微熱や咳があり,1週間ほどで治りますが,花粉症では花粉の飛んでいる時期に持続するのが特徴です.

● 治療法としては(1)抗原除去・回避,(2)薬物療法,(3)減感作療法,(4)手術療法があります.

(1) 抗原除去・回避:
病院で花粉症と診断されたら,花粉との接触をできるだけ避け,予防することが大切です.花粉予報に注意して,花粉が多い日は外出を控え,窓やドアを閉める.外出の日は花粉症対策眼鏡,マスク,帽子を使用し,帰宅時には花粉をよく払い,掃除をこまめにするなどの対策をしましょう.

(2)薬物療法:
内服薬,点鼻薬,点眼薬があります.くしゃみ・鼻水型,鼻づまり型,全ての症状が出る充全型があり,型に合わせ薬の種類も変わってきます.
くしゃみ・鼻水型には抗ヒスタミン薬と鼻噴霧ステロイド薬を,鼻づまり型・全ての症状が同じくらいある型には抗ロイコトリエン薬と鼻噴霧ステロイド薬の併用が推奨されています.その時の病型や重症度に応じてほかの治療薬を併用することも効果的です.
また,初期療法といって症状が少し出たタイミングで内服薬を開始すると症状が出るのを遅らせたり,症状を軽くしたりできる可能性もあります.
古くからある抗ヒスタミン薬(特に第1世代)では眠気,口の渇き,尿が出にくくなるなどの副作用があることがありましたが,最近の薬では少ないです.

(3)減感作療法:
舌下免疫療法といって花粉症の原因となっている物質を少ない量から取り入れ,徐々に増やし免疫を獲得しようという治療法があります.花粉に反応する体質自体を変えていく方法です.治療には2~3年かかりますが,花粉症が治る可能性があります.

(4)手術療法:
鼻づまり型で鼻内部の形の異常がある方などには手術療法もあります.下鼻甲介粘膜焼灼術,重症では下鼻甲介形成術や後鼻神経切断術がありますが,薬物療法無効例に行うことが多いです.

SLEではアレルギー性鼻炎の人が多いとの報告もありますが,花粉症の治療が大きく異なるわけではありません.様々な薬を服用している方も多く,担当の先生と相談しての治療が大切です.

(文責:東京医科歯科大学 岩井秀之先生)

 

2.SLEとストレス

1. ストレスの身体への影響

ストレスとは「生活上のプレッシャー, また, それを感じたときの感覚」であり, その原因となるストレッサーとしては一般的には不安や恐怖などの精神神経ストレスが思いつきやすいですが, 痛みや寒さなどの物理的ストレスの他, 薬剤による化学的ストレスなども含まれます. 適度なストレスは自身の能力を高めることや環境に適応するために必要ということは実感されると思いますが, 過剰なストレスは身体や精神をすり減らすことも日常的に実感できると思います. 非常に強いストレスがかかり, ストレスに適応できない場合は, 急性ストレス障害という血圧上昇や消化器症状などがみられるときがありますし, 慢性期に生じる心的外傷後ストレス障害(PTSD)はトラウマ体験後に生じるフラッシュバックなどの特徴的な症状で有名です.
ストレスを感じるとヒトの身体ではどのようなことが起きるのでしょうか. ストレス刺激は脳の視床下部という部分で感知され, 下垂体というホルモン産生部位に伝達し, 最終的に副腎という腎臓の上に乗っている組織よりアドレナリンとステロイドホルモンが放出されます. その結果として, 心肺機能強化(心拍数上昇, 血圧上昇など), 筋肉の血管拡張, 脂肪などの分解によるエネルギー産生, 胃や腸などの機能阻害・停止, 膀胱の緩み(尿が出ないように), 瞳孔の散大, 周辺視野の喪失, 手の震えなどが起こります. 交感神経が働くことで機能的には優先的に筋肉に血が供給され, 他の部分への血流を減らすことで, 筋肉がより早くより強く動けるように緊張状態になることとなり「戦うか逃げるか」という状態となります. 生きるために必要な機能であることはわかりますが, このような反応が長期に続くことが良いとは思えませんよね. 事実として, ステロイドホルモンであるコルチゾールが一般より高いヒトでは低いヒトと比べると, 脳の容積が小さいことがMRIの研究で示されています [1]. また, マウスやラットといったげっ歯類を用いた多くの実験でも慢性ストレスが脳の機能や認知行動に影響を及ぼすことが示されています.

2. ストレスはSLEに悪影響があるのか

患者さんや医師の多くはストレスがSLEを含む自己免疫疾患の病勢を悪くすると信じていますが, 証拠となるような研究は実は限られています. うつや不安といった指標がSLEの活動性と相関することは多く示されていますが, SLEの病勢が悪ければ, 抑うつや不安は強くなるので, ストレスがSLEの病勢を悪くするとはいえません. 2002年にアメリカから報告された研究では, 19人のSLE患者さんを40か月追跡し, 抑うつや不安などの患者さんの感じ方とSLEの病勢が関与しているかを調べており, この研究では患者さんのストレスの感じ方が患者さんによるSLEの病勢評価と相関があると示されたものの, 客観的な検査所見などを用いて算出されるSLE病勢の指標であるSLEDAIは相関しないことが示され, ストレスによりSLEは悪くならないと結論付けています [2]. ロサンジェルスで1994年に発生した大規模地震の際に, 10人のSLE患者さんの病勢を地震前後で調べた研究がありますが, これでも病勢に明らかな変化はありませんでした [3]. もちろん, これらの研究に含まれる患者さんの数は少なく, もっと大規模な研究をしなければストレスとSLE病勢の関係に関する結論は出ません. 現在参加頂いているPleasure-J研究でもストレス評価などが含まれていますので, SLEの病勢などとの関連について, 日本より新たな, 意義のある医学的なエビデンス(証拠)を世界に発信できればと考えています. 今後ともご協力のほど, 何卒よろしくお願い致します.

3. ストレスへの対処

最後にストレスへの対処ですが, 相談やカウンセリング, 気分転換, 趣味, 娯楽, 瞑想, スポーツ, 入浴, 音楽などの情動焦点型対処と人間関係改善, 社内環境改善などの環境調整・変更といった問題焦点型対処の2つがあり, 様々な技法を身につけるほど総合的なストレス対処力が向上するとされます. SLE患者さんに特徴的な対処法というものはありませんが, 医師が患者さんに対して, SLEの病状, 治療目標などを明確にし, ストレス対処方を教育することはSLE患者さんのストレスを減らし, 抑うつや不安などの症状を減らすという研究結果があります [4]. 患者会など同じような境遇の人々とのコミュニケーションや患者さん向けの医師による病気の講演会などは不安などの軽減に役立つかもしれません.

<参考文献>
1) Echouffo-Tcheugui JB, et al. Neurology. 2018;91:e1961-70.
2) Ward MM, et al. Rheumatology (Oxford) 2002;41:184-8.
3) Wallace DJ, et al. Arthritis Rheum 1994;37:1826-8.
4) Haupt M, et al. Ann Rheum Dis 2005;64:1618-23.

(文責:北海道大学 阿部靖矢先生)

 

3.SLEと学校生活

小児期発症のSLEの患者さんにとって、治療を受けながら学校生活を送るということがとても大きな課題となっています。入院生活や頻回な通院のため学校を休まざるを得ない。病気が落ち着いても、ステロイドの副作用での外見の変化が気になって、まわりからどう見られるのか不安になる。しばらく行っていなかった学校、友達、そこへ行くのに勇気がいる。頑張って行っても、体育の授業や野外活動など紫外線を多く浴びるようなことは参加するのに気を使う。そういったことを乗り越えるのは想像以上に大変なことと思います。

学校生活を送ることは、勉学のみならず自我同一性の獲得、人間関係の構築、親からの自立といった過程が育まれることに重要だと言われています。病気が安定し、ステロイドで丸くなった顔も元に戻り、治療に通い薬や紫外線に気を遣いながらも日常生活を送るようになります。進学し、就職し、親元を離れ、自分の人生を自分で送る日々があります。そういう日々のために、なるべく学校へ行けるようにできれば良いと思います。

そのために、少しでも学校へ行くハードルを下げてあげる必要があります。私たち医師がすることは、よりしっかりとSLEを安定させること。どうしたらより病気が安定した状態でいられるかを患者さん自身と共有していくこと。また、学校でのハードルを下げる工夫を、担任の先生など学校で行っていただけるように、学校への情報提供が必要です。これに関しては患者さんとご両親と相談しながらしていくようになります。長期入院の際は院内学級へ通うことになるかと思います。病院の学校の先生と元の学校と連携をし、可能であればお便りを届けてもらうなど、交流がなくならないような工夫をしてもらえると良いです。今の時代はインターネットが普及しており、昔に比べそういったことはやりやすいのかもしれません。がんの患者さん向けのサイトではありますが、「国立がん研究センター小児情報サービス」というホームページに、就学に関するQ&Aがありますので参考にしてみてください。

上記のことは、医師や病院・学校の担当者、親御さんが行うことです。患者さん自身がやることは、無理をしないこと、ちゃんとまわりに相談すること。そして、親元を離れる日のために少しずつ自分の病気のこと、薬のことを身につけて行ってください。

<take home message>
小さい頃から病気とともに生きているだけでとても頑張っています。困ったことは相談して、下げられるハードルは下げてもらって。それとともに、自分でも自分の病気のことをしっかりとわかるようにしていきましょう。

<参考文献>
成人診療科医のための 小児リウマチ性疾患移行支援ガイド
厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 小児期および成人移行期小児リウマチ患者の全国調査データの解析と両者の異同性に基づいた全国的「シームレス」診療ネットワーク構築による標準的治療の均てん化 研究班 (編) / 一般社団法人 日本小児リウマチ学会,一般社団法人 日本リウマチ学会 (他)

(文責:昭和大学 三浦瑶子先生)

 

2021年9月28日公開

1.プレドニンについて

副腎皮質ステロイドは副腎という腎臓の上についている臓器から産生されている『ホルモン』です。生体内ではプレドニンというお薬に換算して1日約2.5㎎~5mg程度が産生されています。副腎皮質ステロイドを薬として外から大量に取り入れると、炎症を強く抑えたり(抗炎症作用)、免疫反応を強く抑える(免疫抑制作用)作用があり、薬として広く使用されています。
プレドニンは副腎皮質ステロイドの飲み薬の1つでSLEなどの自己免疫性疾患の治療薬として使用されています。症状が重たいと大量のステロイド投与が必要となり、場合によっては点滴で超大量のステロイドを投与することもあります。
たくさんの量を服用すればするほど抗炎症・免疫抑制作用は高まりますが、その分副作用のリスクも高まります。
プレドニンには免疫抑制剤として抵抗力がおち、感染症に対して体が弱くなる(これを『易感染性』という)だけではなく、『ホルモン』としての作用が増強した形で、体に副作用としてあらわれてくるという特徴があります。
代表的な副作用を下図に示します。

図1

プレドニンを服用する上で、最も注意しなければならないのはやはり抵抗力が落ちることによる『易感染性』です。マスク、うがい、手洗いを習慣づけて、必要以上に人混みに出かけないなど、外から入ってくる風邪などの感染症を予防することは大切です。しかし、通常の風邪にかかりやすくなることはもちろんですが、抵抗力が落ちることによっておこる感染症には『日和見感染』といって、自覚なく吸い込んでいる真菌(カビ)の一種や、症状なく感染していたウイルスなど、通常は病原体にならないようなものが抵抗力が落ちることで体内で増殖し肺炎などをおこしてくるものもあり注意が必要です。そして、肺炎球菌(肺炎の原因となる細菌)や、インフルエンザウイルスなど予防ができるものについてはワクチン接種を積極的にうけることが大切です。
ホルモンとしての作用からの副作用としてはいわゆる生活習慣病といわれる高血圧、脂質異常、糖尿病が薬剤性に出てくることがあります。プレドニンには食欲増進の作用もあるため、体重が増えすぎないように食事管理をすることは重要です。
胃の防御作用も低下すると言われており、プレドニンの服用に加えて非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs:ロキソニン®、ボルタレン®)を服用する、ヘリコバクターピロリ菌感染をともなっているなどがあると潰瘍をつくるリスクが増すため胃粘膜障害への対策が必要となります。
また骨粗鬆症にも注意が必要です。プレドニンを3か月以上使用中あるいは使用予定で、プレドニン7.5㎎/日以上服用中であれば、骨密度が保たれていても骨粗鬆症の薬物治療を開始する必要があります。(ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン 2014年改訂版より)
そして、プレドニンの服用によって特に体幹に近い太ももなどの大きな筋肉がやせることで筋力がおちることがあります。プレドニンを減量、中止することで回復することが多いですが、病状によって急な減量・中止はできないこともあるため、安静が不要となれば積極的にリハビリを行うことが大切です。
その他には循環障害によって阻血状態になることで起こる骨壊死という副作用があります。起こりやすいのは股関節で比較的多量のステロイド使用でリスクが増し、SLEの方は起こしやすいと言われています。
眼にも薬剤の影響がでることがあり、緑内障・白内障が薬剤性にでてくることがあります。
プレドニンは元々副腎で産生されているホルモンなので、長期にプレドニンを服用すると、副腎はホルモンを作る必要がなくなりやせてしまいます。そういう状態で急にプレドニンの服用をやめてしまうとステロイド欠乏状態に体が陥り、『副腎不全』といって、低血糖、ショック、下痢、発熱などの命にかかわる症状をおこすことがあります。ですので、プレドニンは用法・用量を守って確実に服用することが大切です。
また重篤な副作用ではありませんが、クッシング徴候といって頬に脂肪がついて顔が丸くなる(満月様顔貌)、お腹周りに脂肪がつく(中心性肥満)、手足がやせるなどの体型の変化や、ニキビができやすくなる、毛深くなるなどが起こることがあります。一時期目立つ時期があり、外見上の変化で気になると思いますが、プレドニンが減ってくることで症状は和らいでいきますので何とか乗り切っていきましょう。
プレドニンは薬としての効果には即効性がある反面、諸刃の刃で様々な副作用のリスクのある薬でもあります。しかし、SLEをはじめとする膠原病の治療では第一選択薬で未だにこれにかわるものはありません。薬の特徴をしっかりと理解した上で治療に取り組んでいくことが大切です。

(文責:島根大学医学部附属病院 森山繭子先生)

 

2.SLE治療の最新トピックス

これまでSLEの治療には、ステロイドや免疫抑制薬など体におこる炎症や免疫の仕組みを全般的に抑える薬が広く使用されてきました。しかし、治療の効果が十分にみられない患者さんや治療の副作用がみられる患者さんも少なくありません。そのため、従来の薬よりもSLEの病状に即した新しい治療薬が望まれてきました。近年、SLEの原因の解明がすすんでおり、病気にかかわる物質だけを抑える新しい薬が開発されつつあります。今回はSLE治療の最近の話題について紹介します。

SLEの新たな治療薬

この数年間、SLEに対する新しい薬が認可されました。2015年に、ヒドロキシクロロキン (プラケニル®︎)とミコフェノール酸モフェチル (セルセプト®︎)、2017年には、ベリムマブ (ベンリスタ®︎)が承認・販売され、多くの患者さんに使用されるようになりました。以下にそれぞれの薬の特徴を紹介します。

ヒドロキシクロロキンは、かつてマラリアの治療薬として古くから使用されてきた飲み薬です。皮膚や関節の症状がある患者さんに有効性が高く、さらに、病気の再発の防止やステロイドを減量させる効果が確認されており、海外では全てのSLE患者さんに使用が推奨されています。

ミコフェノール酸モフェチルは、炎症の原因となる免疫に働く細胞 (免疫細胞)に作用する飲み薬です。ループス腎炎のように炎症が強い状態でステロイドと同時に使用することで治療効果が高まり、将来的な病気の進行を抑えることができます。

ベリムマブは、SLEに対して初めて認可された生物学的製剤 (抗体医薬品)で、点滴または皮下注射の薬です。自分自身を攻撃する抗体 (自己抗体)を作る免疫細胞が生き残るために必要な物質の働きを阻害することで、SLEの疾患活動性 (病状の強さ)を抑えます。

SLEの新たな治療目標

このような新しい薬の登場は、SLEの治療目標を大きく変化させようとしています。つまり、新しい薬を従来のステロイドと組み合わせて上手に使うことで、炎症や免疫の異常をできる限り低い状態で維持しながら、病気の再発を防ぎ、病気による体のダメージを抑えることを目指します。SLEの疾患活動性が低い状態で安定すれば、なるべくステロイドを減らして副作用によるダメージを防ぎます。最終的に、健康な人とかわらない普通の生活を送ることが長期的な治療目標となっています。

これからの展望

現在、SLEに対して多くの臨床試験 (患者さんや健康な方を対象として、薬の有効性や安全性などを検討するために行われる試験)が行われています。SLEの病気にかかわる特定の物質をピンポイントに抑える薬が開発されつつあり、有効性の高い、かつ、副作用の少ない新しい薬が期待されています。一方、最新の研究ではSLE患者さんにみられる免疫の異常にはさまざまなタイプがあることが判っており、今後は患者さんの一人ひとりに適切な治療薬を使用するオーダーメイド医療への期待が高まっています。SLEのよりよい治療法を目指して、世界中で研究が盛んに行われています。

Take Home Message

最近はさまざまな新しい薬が使えるようになり、SLE治療の選択肢が広がってきています。患者さん一人ひとりの病状の変化にあわせた適切な治療を継続していくことが大切です。豊かな日常生活を送るためにも主治医と相談しながら病気と上手につきあっていきましょう。

(文責:産業医科大学病院 中山田真吾先生)

 

3.SLEと診断されました。普通の生活はできますか。

SLEは日本語で『全身性エリテマトーデス』というように全身性、体の様々なところに症状を起こす可能性のある病気です。同じ病気であっても個々で症状の出方は様々ですので、一概に言うことは難しいですが、病状が安定しており、重篤な合併症がなければ普通の生活を送ることはできます。病状が安定して経過するためにも定期受診、継続的治療はとても大切です。むやみにステロイドを嫌って内服を自己中断したり、通院をやめてしまえばせっかく安定していた病状が悪化してしまうことにつながります。また、ご自身で体調のちょっとした変化に敏感になっていただき、早期発見、早期対応に努めることも重要です。
日常生活を送るうえで、いくつか注意したり取り組んでいただくとよいことがあるのでご紹介します。

一番は決して無理をしないということです。SLEの患者さんは過労やストレスで体調を崩しやすいので、持病のない方よりも十分な休息が必要です。ご自分のペースで無理せず生活されることが大切です。

適度な運動は肥満、生活習慣病、骨粗鬆症の予防になり、ストレスの解消にもなるので取り組めるとよいでしょう。しかし、やりすぎは逆に悪影響となるため、翌日に疲れが残らない程度を目安に、運動後の休息は十分にとって続けていくことが大切です。日光過敏症がある方は、屋外で運動する場合には紫外線対策をしっかりと行い、長時間紫外線を浴びてしまわないように気を付けましょう。また、運動制限のある方は担当医の指示に従って運動を行うようにする必要があります。

次に食事ですが、基本的には栄養価が高く、消化の良いバランスのとれた食事を心がけましょう。腎臓の働きが低下していたり、高血圧、脂質異常、糖尿病などの合併症のある方は、食事療法が必要となるので、ご自身に最適な食事療法を栄養士の指導のもと実践していく必要があります。プレドニンの副作用で食欲が増してつい食べ過ぎてしまうことがあります。肥満は新たな合併症を引き起こしやすいため、こまめに体重を測定し体重の変化を観察し、適切な体重に管理することが大切です。飲酒は絶対にだめではありませんが、暴飲・暴食につながらないように節酒を心がけましょう。喫煙はニコチンによる血管収縮作用などが病状の悪化につながることがあるので禁煙は必須です。

冷え対策も重要で、寒冷刺激や緊張などで誘発されるレイノー現象(末梢の血流が悪くなることで指先が白→紫→赤色に変化する現象)の対策のためにも保温に心がけることが大切です。家事などで冷たい水を使うことを極力避ける、手袋をする、靴下を履くなどして保護しましょう。

SLEの患者さんは長時間紫外線を浴びると病状が悪化したり、ぶり返すことがあります。とくに日光過敏症のある方は紫外線対策をすることが重要です。外出する際には、できるだけ肌の露出を避け、日焼け止めをしっかりと塗り、日傘、帽子などを使用してなるべく長時間紫外線を浴びることがないように注意しましょう。

(文責:島根大学医学部附属病院 森山繭子先生)

 

4.SLEになって20年がたちました。何に気をつけたらいいですか。

SLEは、おこりうる症状がたくさんあり、同じ病名でも、患者さんによって全く異なる症状にお悩みであることが少なくありません。また、症状だけでなく、経過も様々で、それほど強くはないものの、症状が持続する方もいれば、発症した際には重い症状でも、治療によく反応して、その後は少ない治療で維持できているという方もいらっしゃいます。そのため、同じSLEの患者さんでも、20年間の治療経過は千差万別と言わざるを得ません。ここでは、20年間という具体的な数字にはこだわらず、SLEという病気とうまく付き合っていくために、医師の立場からアドバイスできることを長期的な視点で述べたいと思います。

動脈硬化

まず、動脈硬化のことをご説明します。動脈硬化とは、血管の内側が傷つき、そこにコレステロールなどの脂肪成分が沈着することで、血管の弾力性が失われていくことを指します。動脈硬化がすすむと、血液の流れもスムーズでなくなり、よけいに傷がつきやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞などの重い合併症をきたす可能性が高まります。最近では健康診断において、動脈硬化のリスクとなる、高コレステロール血症、高血圧、喫煙などは指導の対象となっていることから、広く知られているのではないかと思います。
SLEの活動性があると、体のなかで慢性的に炎症がおきるため、血管にもダメージが蓄積されることが最近わかってきました。また、多くの患者さんがステロイドを様々な用量で服用されていますが、ステロイドもまた、高血圧や高コレステロール血症などの副作用をおこすため、SLEの患者さんでは動脈硬化のリスクが比較的高めであるということが言えると思います。
SLE自体がリスクとなるため、病気のコントロールをなるべくつけるというのが大事ですが、その他の管理方法としては、一般的な動脈硬化予防と同じです。血圧を定期的に測定したり、日々の通院で、コレステロールや中性脂肪の値をチェックしたりして、引っかかるものがあれば、生活習慣や薬による治療が推奨されます。もし、日々の通院でこうした話題が主治医との間でなければ、今一度相談してみるとよいかもしれません。

感染症

次に感染症の話をさせていただきます。感染症は、細菌やウイルスなどの微生物が体内に侵入して、症状を引き起こしますが、それを起こらないように防いでいるのが、免疫というシステムです。SLEでは、この免疫システムに異常が起きて一部働きが悪くなっていると考えられています。SLE自体が、感染症のリスクであると考えられますので、やはり上記の動脈硬化同様、病気のコントロールをつけることが大事です。それと同時に、やはりステロイドやその他の免疫抑制薬を長年服用している場合には、(これまでどれぐらいの量を服用したのかにもよりますが)感染症のリスクが一般人口よりは高いと考えられています。
「免疫力をつける」という言葉がよく言われますが、免疫機能を維持して感染症のリスクを下げるという意味では、病気のコントロールをつけ、過度な投薬を避けるとともに、体力を消耗しすぎない、栄養の偏りを防ぐといった日常的な対策も効果があると考えられます。

骨粗しょう症(こつそしょうしょう)

最後に、骨粗しょう症の話をいたします。骨粗しょう症とは、体を支える骨の密度(骨密度)が低下することで、骨が脆弱になる、簡単にいうと骨折しやすくなる状態のことを指します。一般的には年齢を重ねるにつれて骨密度が低下していくことが知られていますが、SLEの治療薬であるステロイドは、骨密度を低下させる副作用があるため、しばしば若いSLEの方でも骨密度の低下が見つかります。
たとえば、背骨の圧迫骨折を起こすと、背中回りの痛みや、神経を圧迫することによって手足のしびれ症状にもつながり、日常生活に支障が出てきてしまいます。また、その他に、足の付け根の骨である大腿骨や腕の骨についても、骨密度が低下していると、ふとした転倒で思わぬ骨折をしてしまう場合もあります。気を付けて歩くということももちろんですが、骨密度の低下を予防するお薬を使用することが最近では一般的です。現在、一定量のステロイドを服用していて、骨粗しょう症予防薬を服用(または注射)していない方がいらっしゃれば、一度主治医に相談されることをおすすめします。また、骨密度の検査もできる施設が多いので、一度測定してみることを推奨します。

最近は、ステロイドの量をなるべく少なくするために、色々な新薬が開発され、使えるようになってきました。SLEとうまく付き合っていくために、活動性がある時はしっかりと薬を使って病気を抑え、良くなったら、可能な範囲で(無理はしないで)薬を整理できないか、主治医の先生と相談していきましょう。

(文責:東北大学病院 矢坂健先生/白井剛志先生)

 

5.SLE治療を受けながら働く

全身性エリテマトーデス (SLE)は若い人に発症することが多いため、これから就職しようという学生さんや、すでにお仕事をしている人は、SLEと診断されたら、最初は「療養に専念するために仕事を辞めないといけないの?」「仕事と治療を両立していけるの?」と、様々な不安をかかえてしまうかもしれません。
 SLEと診断されたら、まず病気や治療のことを理解することが大切です。仕事を含めたライフスタイルについて、疑問や不安なことがあったら、あなたの主治医にお話しして一緒に考えていきましょう。ここでは、SLEの治療を受けながら働くにあたって、一般的なことをお話していきます。

一番は決して無理をしないということです。SLEの患者さんは過労やストレスで体調を崩しやすいので、持病のない方よりも十分な休息が必要です。ご自分のペースで無理せず生活されることが大切です。

1.SLE患者さんは、どのような仕事をされているのでしょう?

SLE患者さんは、病気を持たない人と同じように、社会の色々な場面で活躍されています。体力的に無理の少ない、デスクワークを中心としたお仕事をされている方が多いですが、サービス業、医療職や社会福祉専門職、専門技術職など、様々な職業についていらっしゃいます1)

2.就職先を探すには、どこに相談したらいいでしょう?

仕事を長く続けていくには、自身の体調や治療内容にあわせて、無理のない雇用形態や勤務時間などを考えながら仕事を探すことが大切です。SLE患者さんのための公的な就職支援として、下記の相談窓口があります。

◎ハローワークの難病患者就職サポーター
一部のハローワーク (全国47か所、2018年3月現在)には、難病患者就職サポーターという専門スタッフがおり、難病患者さんの就職に関連した相談に応じています。
厚生労働省/ 難病患者の就労支援(難病のある方へ)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/06e.html
◎難病相談支援センター
全国の難病相談支援センターで、難病患者さんの就労支援のためにハローワークなどと連携し、個別相談や就職準備に向けた講座などを行っています。
難病情報センター/ 都道府県 難病相談支援センター 一覧
http://www.nanbyou.or.jp/entry/1361
◎障害福祉サービスの就労支援
SLEは障碍者総合支援法の対象疾患に定められているので、障害者手帳の有無に関わらず、一定の基準を満たす場合に障害者福祉サービスを利用することができ、その一つに就労を支援するための相談や職業訓練があります。お住まいの市区長町の福祉担当窓口に問い合わせてみましょう。
3.SLEの治療中であることを、職場の人にオープンにした方がいいでしょうか?

SLEの治療中であることを職場の仲間に話した方がいいのかどうかは、あなたの病気の状態、病院への通院頻度、仕事内容などによって個々で違ってくるかもしれません。しかし、上司や一緒に働く同僚の一部に、あなたの体調や病気・治療のことを伝え、理解や協力を得ることができれば、あなたも無理なく仕事を続け易くなることもあります。

4.具体的に、仕事ではどのようなことに注意したらいいでしょう?

SLEは、ストレス、紫外線によって病状が悪化することがあるので、なるべくストレスをためず規則正しい生活を送ることを心がけましょう。また、長時間日光に当たることを避け、日焼け止めクリームや帽子・日傘などを活用して紫外線暴露を防止しましょう。レイノー症状がある人は、寒冷刺激で症状が増悪するため、なるべく保温に努めましょう。関節痛がある人は、寒冷刺激や重い物を持つと症状が増悪するため注意しましょう。接客業や営業などで人混みに行くことが多い場合、特にインフルエンザなどの感染症が流行する冬は、免疫抑制薬による治療で抵抗力が落ちている方は特に注意が必要です。手洗い・うがいをこまめに行い、できればマスクを着用して感染を予防しましょう。インフルエンザワクチン接種が有効な場合があるので、主治医の先生に相談してみましょう。

Take Home Message
現在、SLEの治療は新しい薬が増えたことで大きく改善しており、治療と仕事の両立が出来るようになりました。SLEの病気の特徴や治療を理解して、自分の体調と相談しながら、自分らしく活躍できる仕事をしていきましょう。

<参考文献>
1) 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障碍者職業総合センター 調査研究報告書No.103 「難病のある人の雇用管理の課題と雇用支援のあり方に関する研究」, 2011 p84 表5-3-3

(文責:産業医科大学病院 吉成紘子先生)

 

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