1.SLEと腎臓
SLEで起こる臓器障害で特に多いのは、「ループス腎炎」と呼ばれる腎障害です。ループス腎炎は、腎臓で血液をろ過するフィルターのような役割を果たしている糸球体(しきゅうたい)に抗原と抗体からなる免疫複合体が沈着することによって炎症が起きている状態です。
一般にSLEでは80%以上の症例に腎病変が認められ、そのうち25~30%が難治性で、10~15%程度が腎不全に移行すると言われています。ループス腎炎によって腎臓の機能が低下すると、最初は自覚症状がありませんが尿検査で血尿や蛋白尿がみられるようになります。検診などで偶然発見されることもあります。
蛋白尿が増えてくると、特にアルブミンと呼ばれる蛋白質が低下し、低蛋白血症(低アルブミン血症)という状態に陥ります。アルブミンは血管内に水分を保つために必要な蛋白質で、血管内の血液の量が少なくなったり、血管外に水が溜まったりします。
この結果、顔や足のむくみといった症状が現れ、さらに進行するとお腹や胸に水が溜まってきます。全身倦怠感、食欲不振が現れたり、高血圧や体内の老廃物を排泄することができなくなる腎不全の状態をきたすことがあります。
ループス腎炎の組織型はⅠ型~Ⅵ型に分類されます。症状や血液検査、尿検査のみで組織型を類推することは難しく、病型によって治療法が異なってくるので、可能な限り腎生検を行って組織型の診断をつけることが望ましいです。腎生検は発症から1か月以内で、治療開始前がよいですが、直ちに行えない場合はやむを得ず治療を開始することがあります。
ループス腎炎の治療の中心は、ステロイドと免疫抑制薬の併用です。Ⅲ型やⅣ型、Ⅴ型では、ステロイドに免疫抑制薬を併用して早期の寛解を目指し、効果が得られたら免疫抑制薬で維持します。
なかでも、腎臓の機能が悪化しやすいⅢ型やⅣ型では、ステロイドの大量点滴投与(ステロイドパルス療法)により治療を開始することがあります。
免疫抑制薬は治療開始~6か月までの寛解導入療法と6か月以降の寛解維持療法に分けて考えます。シクロホスファミド(CPA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、タクロリムス(TAC)、シクロスポリン(CyA)、アザチオプリン(AZP)などが用いられています。近年ヒドロキシクロロキン(HCQ)がステロイドと併用で使用されることが多くなっています。
ループス腎炎における妊娠経過中の再燃率は報告によってばらつきはありますが,妊娠中のどの時期でも起こり得ます。海外では、妊娠中もHCQ継続することが推奨されていて、むしろHCQ中止によるSLE再燃が問題とされています。また、新生児ループスの予防効果があるという報告もあります。
Ⅵ型は、長期の腎炎持続の結果としておこる慢性変化で、それ自体はステロイドや免疫抑制剤による治療の対象になりません。慢性腎臓病(CKD)としての管理をおこないます。
また、薬物療法以外に血漿交換療法という治療法があります。血漿交換療法は、血液中から自己抗体や免疫複合体などの病因物質を除去する治療法で、妊娠中も施行できる安全性の高い治療法です。
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ループス腎炎はSLE患者の多くが発症する主要な臓器障害であり、生命予後因子の1つです。透析導入患者の平均年齢推移を見ると、ループス腎炎は1987年末には平均年齢は39.7歳でしたが、年々高齢化が進んでおり、2015年末では63.8歳となっており、SLEに対する治療の進歩の結果と思います。主治医の先生と相談して適切な治療を受けましょう。
(文責:順天堂大学医学部附属病院順天堂医院 根本卓也先生)
2.SLEと虫歯
SLEの口の中に起こる症状としては、口腔内潰瘍と呼ばれる、口内炎のような赤みや白い盛り上がりが口の奥や頬のところにできることがあります。通常、痛みがないことの方が多く、気づかないうちにできていることもあります。これに対して、SLE自体は虫歯になりやすい、虫歯が増えるということはありません。しかしながら、SLEの合併症および治療薬によって虫歯が増えることはあります。
まずSLEの合併症についてお話しします。SLEの患者さんは、シェーグレン症候群を合併していることがしばしばあります。このシェーグレン症候群の主な症状は、目の乾燥(ドライアイ)と口の乾燥(ドライマウス)です。ドライマウスは唾液腺から唾液の分泌が低下することによって起こります。食事をすると口の中は酸性になり、歯の表面のミネラルが溶け出しますが、唾液があると口の中を中性に保ち、虫歯を予防してくれます。また、唾液に含まれるラクトフェリンなどの抗菌物質が虫歯の原因菌の侵入を妨げ、繁殖を抑える役割をしています。さらには、歯や歯間に付着した食べかすやプラークを洗い流したり、飲食により溶けかかった歯の表面を修復する作用もあります。このように重要な役割をしている唾液が少なくなることで、虫歯の原因となる細菌が繁殖しやすくなり、結果として虫歯が増えることになります。このため、シェーグレン症候群を合併している患者さんやドライマウスの症状のある患者さんは、虫歯や歯周病を予防するために、普段から自宅で歯みがきやうがいなどのセルフケアを行うとともに、定期的に歯科医院でのクリーニングを行ってもらうようにしましょう。また、うがい薬や唾液腺を刺激して唾液の分泌を促進させる薬(サリグレン®︎、サラジェン®︎など)もありますので、ドライマウスの症状のある方は主治医と相談してみるのがいいでしょう。
次にSLEの治療薬と虫歯との関連についてお話しします。SLEの治療には、多くの場合、ステロイドや免疫抑制薬が使用されます。ステロイドや免疫抑制剤を長期間内服していると、免疫力が低下し易感染性となるため、虫歯や歯周病などの口腔内感染症にもかかりやすく、進行しやすい傾向にあります。以上のことから、ステロイドや免疫抑制薬を内服されている方も、普段からの自宅で歯みがきやうがいなどのセルフケアが大事ですし、定期的に歯科医院でのクリーニングを行ってもらう方がいいでしょう。また、抜歯や外科治療後にも細菌感染を起こしやすく、傷が治りにくくなります。そのため、治療内容によっては抗生物質を内服したり、歯科医院で頻繁に消毒を行ってもらう必要もでてきます。歯科医院を受診される場合は、現在、内服されている薬を必ず確認してもらい、担当医師の指示に従いましょう。
最後に、骨粗鬆症の治療薬で起こりうる合併症についてお話しておきます。ステロイドを長期間内服されている方の場合には、副作用である骨粗鬆症の予防のためにビスフォスフォネート(ボノテオ®︎、ボナロン®︎、ベネット®︎など)という薬やデノスマブ(プラリア®︎)という注射薬が投与されることがあります。この薬や注射薬を使用している方が、抜歯などの侵襲的歯科治療を受けられると、その後にあごの骨が細菌に感染し、腐ってしまう病気(顎骨壊死)を起こすことがあります。顎骨壊死が起こると、症状は進行性できわめて難治性です。特に口の中が不衛生な状態の方に起こりやすいとされていますので、口の中を常に清潔に保つことで防ぐことができます。また、骨粗鬆症の薬を使用されている方で、抜歯などの治療が必要となる場合には、骨粗鬆症の治療薬を休止するかどうか主治医や歯科医院の担当医師と十分に相談をしましょう。
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妊娠・出産に対する不安だけでなく、SLEの患者さんにとっては病状が悪化するかもしれないという不安もあると思います。これまで妊娠を諦めてしまう患者さんもいましたが、治療の進歩とともに妊娠・出産率は向上しています。そのためにはまずSLEの病状を安定させておく必要がありますので、しっかり治療を受けるようにしましょう。
(文責:香川大学医学部附属病院 島田裕美先生)
3.SLEとタバコ
1.タバコによる悪影響とは
喫煙による健康問題は誰しも知るところと思いますが、世界中でも問題となっており、約800万人が喫煙により亡くなっており、そのうち100万人は受動喫煙が原因とされています [1]。タバコはニコチンにより強い身体依存症を形成し、細胞のDNAを損傷させることで遺伝子異常が起こり悪性腫瘍の原因となり、活性酸素が肺・気管支の表面の細胞や血管を構成する細胞を傷つけることで、肺気腫や心筋梗塞・動脈硬化を誘発し、その他にも歯周病などの原因となります。一部の報告では、ニコチンがパーキンソン病のリスクを減らす可能性も指摘されていますが [2]、喫煙による社会的な損害が利益に比して極めて大きいことから、喫煙を肯定する因子とはならないと考えられます。
2.タバコはSLEに悪影響があるのか
では、喫煙はSLEを含めた自己免疫疾患にどのような影響があるのでしょうか。先述の通り、喫煙は活性酸素を増加させ、細胞のDNAを損傷しますが、損傷したDNAなどが多く存在すると、自身の免疫が損傷した自身のDNAを非自己として反応するようになり、SLEの指標でもある抗DNA抗体が産生されるようになるなど、自己に対する免疫が次第に成立するようになる可能性が指摘されています。また、局所の環境において、細胞などの損傷が炎症性のホルモンを誘導するようになり、自己免疫がより完成されていきやすい形となります [3]。喫煙がSLEの病気の勢いに対する影響としては、皮膚の障害が喫煙により悪くなることが報告されていますが、全身の病勢に対する影響は報告によって、悪くなるもの、変わらないもの、良くなるものなど様々です [3]。しかし、SLICC障害度指数というSLEの慢性病変、いわゆる後遺症を評価するための指標をみると、喫煙者が非喫煙者に比べてより悪いという結果が得られています。本指数は臓器毎に障害の度合いをみていますが、特に差が合った項目が認知機能障害でした [4]。
その他、SLEでは心筋梗塞や脳梗塞、動脈硬化などの心血管イベントが通常と比較して多いことが知られており、その管理が重要です [5]。また、薬剤の治療効果が得られにくくなるという側面もあります。その観点からも喫煙は望ましいものではないといえます。
3.禁煙のために
SLE患者さんでも禁煙は上述の通り、重要です。禁煙を達成する方法はSLEといえど特別な方法はなく、通常の禁煙と同様にニコチンによる身体依存を如何に断ち切るかが重要となります。一般的な禁煙方法になりますが、禁煙開始日を決定することから始め、何もすることがなければ喫煙してしまうので、禁煙中に何をするかを決め、禁煙外来を受診してニコチンパッチをもらうなどして進めていくことが大切です。ニコチンは2-3日で体内からなくなりますが、1か月は身体・精神依存が持続するとされていますので、ひとまずの目標は1か月間の禁煙となります。飲み会の席などは再喫煙などの可能性が高く、なるべく避けるなどの調整も望ましいです。いきなり禁煙は難しいからまずは吸う本数を減らすなどの試みは本数を減らすこと自体がストレスになり失敗するとされていますので、一気に禁煙することが重要です。
リウマチ・膠原病外来では本格的な禁煙指導というものはなかなか実施できていないこともあり、患者さんが禁煙により病気にどのような利益があるのか、またはどのような不利益があるのかを理解する機会が少ないこともまた禁煙のための障壁となってしまっています [6]。主治医への相談や自助グループの使用など、禁煙を達成するために利用できる資源は多くあります。本コラムで紹介したSLEの病気の治療・合併症予防の観点からの禁煙の必要性を読んで、禁煙したいと少しでも思ったら、是非禁煙をしてみませんか。かかりつけの主治医にも是非相談してみましょう。
参考文献
1.World Health Organization. 2019. Retrieved from https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/tobacco.
2.Ritz B, et al. Arch Neurol 2007;64:990-7.
3.Perricone C, et al. Autoimmun Rev 2016;15:354-74.
4.Montes RA, et al. Arthritis Rheumatol 2016;68:441-8.
5.Fanouriakis A, et al. Ann Rheum Dis 2019;78:736-45.
6.Wattiaux A, et al. Arthritis Care Res (Hoboken) 2019. [Epub ahead of print]
(文責:北海道大学大学院医学院 阿部靖矢先生)
4.全身性エリテマトーデスですが医療脱毛に行ってもいいですか?
SLEの患者さんには若い女性が多いので、これは患者さんからたまに聞かれる質問です。医療脱毛とSLEに関する明確なデータがあるわけではないので、あくまで参考にしていただけると良いと思います。
まず、SLEの患者さんがなぜ脱毛に行ってもいいか?を気にするかですが、日頃紫外線を避けるようにと言われているので「レーザー脱毛」という行為がこれに当たらないか、が心配なのかと思います。
医療レーザー脱毛に関して言えば、使用しているレーザーはダイオードレーザーやアレキサンドライトといった700nm以上の波長のものです。10-400nmの波長の紫外線はとは異なります。しかしながら、加熱による軽度の熱傷をきたす可能性がありますので、ステロイドで皮膚が弱くなっている方は注意が必要です。目立たない部位で試してもらい、大丈夫だったら他を行うのが良いと思います。また、全身性エリテマトーデスに限らず皮膚の状態が悪い方に関しては不可能です。皮疹後の色素沈着が残っている方に関しても避けたほうが良いでしょう。
脱毛を希望する理由が単純に以前から産毛が気になっていたから、であれば良いのですが、治療後多毛になってしまい気になるから、であれば治療薬の変更で改善がある可能性があります。特にシクロスポリン(ネオーラル)には多毛の副作用がある他、ステロイドの副作用でも多毛があります。疾患が安定している方であればシクロスポリンの減量や他薬剤への変更、ステロイドの減量などが可能であることがありますので主治医へ相談してみてください。
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皮膚に病変がある方、皮膚が弱い方はやめておきましょう。
薬剤性の多毛の可能性もあるので、主治医に相談してみましょう。
(文責:昭和大学病院 三浦瑶子先生)
5.SLEと食欲
<食欲低下と体重減少>
食欲はさまざまな要因で低下、亢進します。
医学的には特に「意図しない体重減少」に伴う食欲低下には原因が様々あるといわれ、患者さんの主観ではなく、客観的に記録し6ヶ月間に5kg以上あるいは1か月に1kg以上の体重減少など、自らダイエットなどで意識して減量していないにも関わらず体重減少が持続している場合は、原因を調べる必要があるとされます。
2) レイノー現象はなぜ起こる?
血管は血液が通り、身体に酸素や栄養を行き渡らせるものですが、血管の内側にある筋肉が収縮・拡張することで身体の熱を貯めたり逃がしたりという体温調節にも関わっています。指先の皮膚表面にはいわゆる毛細血管とは異なる、動脈と静脈が吻合する構造があり、通常ですと体温が下がると、神経やホルモンの反応により、熱を逃がさないようにこの動静脈吻合を収縮させて身体の熱を逃がさないようにします。特発性レイノー現象の患者さんでは、この収縮機構に関わるα2アドレナリン受容体の反応性が高く、寒さやストレスによる神経刺激による動静脈吻合の過剰な収縮が起こる可能性が指摘されています[1]。動静脈吻合の収縮が起きても通常では栄養を行き渡らせる血管までは収縮しませんが、続発性レイノー現象の患者さんではこれも障害され、その結果として指先の潰瘍化など重症化すると考えられています。SLEと並び膠原病の代表疾患である全身性強皮症という全身の皮膚が硬くなる病気ではレイノー現象は9割の患者さんにみられますが、この病気では先の血管の収縮機構のみならず、血管の内側の細胞(内皮細胞)機能が異常で、収縮の異常に加えて血管の中に血の固まりができやすい可能性が報告されています[2]。SLEでも動脈硬化ができやすいなどの血管内皮細胞傷害を示唆する報告も多く[3]、共通のメカニズムがあるかもしれません。
3) レイノー現象を和らげる工夫
治療の目標は生活の質の改善と皮膚潰瘍や壊死などの組織障害を防止することです。レイノー現象を少なくすることで組織障害は防げますが、特に続発性レイノー現象の患者さんで完全にレイノー現象をなくすことは現状できる治療では難しいことが実情です。また、レイノー現象を和らげるためには内服治療と同レベルで患者さんの予防策(非薬物療法)が重要であるとの認識が必要です。薬を飲んでいても、生活習慣が改善されなければ、レイノー現象は減りません。
「意図しない体重減少」の主な原因を、頻度の多い順に列挙します。1)2)
①悪性腫瘍(消化管、血液、肺、乳房、泌尿生殖器、婦人科領域)
②精神疾患(うつ、不安)
③消化管(胃十二指腸潰瘍、炎症性腸疾患、慢性膵炎、吸収不良)
④内分泌(糖尿病、甲状腺機能異常など)
⑤感染症(HIV、結核など)
⑥薬剤(抗うつ薬、抗不整脈薬など)
⑦心血管疾患(心不全)
⑧神経疾患(脳卒中、認知症、パーキンソン病など)
⑩肺疾患(肺気腫など)
⑪腎疾患(腎不全、蛋白尿、尿毒症など)
⑫リウマチ・膠原病
⑬原因不明
このように、様々な問題で体重減少が起こります。
上記の中でリウマチ・膠原病などの慢性炎症性疾患は、「食欲低下+体重減少」の原因として、割合は低いものの可能性を考える必要があります。
<SLEと食欲低下>
SLEと診断がつく前の症状として、食欲低下という自覚症状は微熱、怠さとともに最も多く経験されます。SLEの食欲低下の原因としては、複数の因子が重なっていると考えられます。慢性炎症があるというのみならず、甲状腺機能低下、腸炎、心膜炎・胸膜炎、精神症状、腎炎などの臓器合併症が生じている事で結果として全身症状である「食欲低下」につながっている可能性があります。
食欲低下や発熱、怠さなどは自覚症状としては辛いものですが、原因はSLEでも様々であるため、患者さん個々に調べていく必要があります。
<食欲の変化>
SLEとしての治療の主なものとして、昔から、そして現在もステロイドを使用される機会が多いと思います。ステロイドはSLEの炎症を抑えてくれる有効な治療薬ですが、副作用も多く、特にステロイドの開始に伴って食欲は亢進する方向に変化します。このため、元気になり、しっかり体力をつけようと思って欲求のままに食事・間食をとり続けてしまうと必要以上のカロリー摂取となり、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧等のいわゆる生活習慣病を二次的に発症してしまう可能性が高くなります。食欲が戻るのは非常に喜ばしいことではありますが、ステロイド内服に伴う食欲亢進は薬の副作用によるところが多いため、自らを厳しく管理し、適正な体重コントロールとバランスの良い食事(間食はしない)を心がけるようにしましょう。SLEの病状が安定している、と主治医が判断しステロイドの量が減らせる状況になってくれば、食欲亢進という一時的な症状も改善してきます。
また注意したいのは、「太るから」、「顔がパンパンになってきて嫌だから」、「それもこれも全部ステロイドのせいだから減らしたい!」、という理由で勝手にステロイドを中断したり減らしたりすることはとても危険です。特にステロイドの量が多く(プレドニゾロン1日20mg以上など)、1か月以上服用している場合に突然中断したり急に減量したりすると、「離脱症状」といって発熱、意識障害、血圧低下、倦怠感、嘔吐・下痢など、時に命に係わる重篤な症状を来し、SLEの病状自体も再燃あるいはより重症な合併症を起こしてしまう事があります。このため、必ず主治医の指示通りにステロイドは内服し、自己判断で用量調整をしないようにしましょう。
TAKE HOME MESSAGE
SLEでは様々な原因で食欲は低下します。しかし、治療によって逆に食欲は亢進する方向に変化します。食欲の亢進は自覚がない場合が多く、適正な体重管理を心がけましょう。
1)Bouras EP, Lange SM, Scolapio JS. Rational approach to patients with unintentional weight loss. Mayo Clin Proc. 2001;76:923-929.
2)Huffman GB. Evaluating and treating unintentional weight loss in the elderly. Am Fam Physician. 2002;65:640-650.
(文責:多摩総合医療センター 大西香絵先生)