2025年11月28日
第12回JCRベーシックリサーチカンファレンス 体験記
ベーシックリサーチカンファレンスに初めて参加させていただいたのは、まだ研修医であった頃です。当時は生物学的製剤がリウマチ膠原病領域に続々と登場し、トランスレーショナルリサーチの重要性がより注目され始めた時期であったように思います。そのような時代に、基礎研究に根ざした学術活動の重要性を教えてくれる場があることを知ったのは、研修医の立場としては非常に印象的な出来事でした。
私は大学院生時代にSLEにおける単球とIFNの研究に従事してまいりましたが、幸いにも3年前のこの会で優秀ポスター賞をいただくことができました。その際の演題数が30前後であったのに対し、今回の第12回大会では、それをはるかに上回る合計50以上の素晴らしい演題が集結し、これは本カンファレンスが極めて質の高い学会へと発展していることを物語っているように感じます。
今回、私自身は筆頭著者としての発表機会はありませんでしたが、熱気あふれる会場でさまざまなポスターの発表者の先生に積極的に質問させていただき、深く議論を交わすことができました。特に、かつて私自身が携わったSLEとIFNに関する研究分野の先生方と互いに刺激し合う熱のこもったディスカッションを交わすことができ、充実した時間となりました。
大学院生時代、自身の研究の方向性に不安を抱えながらポスターの前に立っていた頃、エキスパートの先生方からたくさんの質問や助言をいただいた時のことが鮮明に蘇ります。その時の記憶を胸に、今度は自身が発表者の先生方の研究のさらなる発展に貢献できるような議論を交わしたいという思いで会場を回りました。
講演ではこれまで以上に、リウマチ膠原病領域の研究から、加齢・細胞老化やミトコンドリア伝播といった異分野融合的な最新テーマに至るまで、多様な分野のトップランナーの先生方のお話を伺う機会がありました。まさに「明日からの研究のヒント」と、新たな熱意をもらえる、非常に示唆に富んだ充実した会でした。
このベーシックリサーチカンファレンスで得た刺激と学びを糧に、後輩の指導や臨床業務を大切にしつつも、改めて自らの言葉でアカデミックなディスカッションを交わす「舞台」に立ちたいという思いを強くしました。この熱を冷ますことなく、明日からの研究と臨床に邁進しようと決意を新たにする、貴重な機会となり、基礎研究推進委員会 委員長の高柳広先生、学会長の三宅幸子先生をはじめ本会の準備に邁進いただきました皆様に厚く御礼を申し上げます。
JCR発・若手の、若手による、若手のためのJ-STARセッション(JCR2025報告)
J-STAR-IR第一期の集大成として迎えたJCR2025では、J-STARセッションの企画から座長までを務めさせていただきました。J-STARセッションは今年で2回目の開催となり、目的は若手医師間の国際交流の促進です。今年はアジアリウマチ学会の若手医師AYR(APLAR Young Rheumatologists)およびEMEUNET(The Emerging EULAR Network)から演者をお招きし、日本からの症例発表をもとに活発な意見交換を行いました。
セッションの企画については、テーマ設定から症例募集、海外演者の先生方への依頼に至るまで、委員の皆様と意見を交わしながら進めました。開催に向けて国内外の委員・演者の皆様と複数回の事前ミーティングを重ね、直前までスライド内容の綿密な調整を行ったことは、とても良い思い出です。当日は、聴講者の皆様に楽しみながら議論にご参加いただけるよう、参加型の質問を取り入れ、SNSを活用した広報活動にも挑戦しました。こうして、所属や国を越えて力を合わせ、一つのセッションを協働で作り上げるという経験は私にとって初めてのことであり、まさにJ-STAR-IRの目標を体現するような貴重な体験となりました。
この場をお借りして、企画段階からご支援くださった委員の皆様、演者の皆様、そしてこのような貴重な機会を与えてくださり、多大なるご支援を賜りました先生方に、心より御礼申し上げます。今後も日本リウマチ学会において、若手から始まる国際的なつながりがさらに広がっていくことを願ってやみません。
JCR2025を見据えたJ-STARセッション運営委員会が船出したのは、2024年のJCRが閉幕した直後の5月。まず我々が立ち止まって考えたのは、「誰に何を届けるセッションにするのか?」という設計でした。何度ものオンライン会議を重ねた末、“日常診療でよく遭遇するが、RAほど治療に自信のない疾患”という絶妙なポジションにいる「脊椎関節炎」をテーマに据えることに。発表内容も、症例ベースの実践的構成としつつ、日本のリウマチ専門医が好む“基礎”のエッセンスも盛り込みました。
10月には症例の公募を行いましたが、英語発表という高いハードルにも関わらず、勇敢な2名の先生が手を挙げてくださったのは、まさに“若手の底力”を感じる瞬間でした。発表者とは早期から二人三脚でスライドを幾度となく練り直し、本番1週間前まで、共同座長の安部沙織先生とともに予演会を繰り返しました。さらに海外講演者とは2か月前からオンラインミーティングを行い、セッション全体の“流れ”と“つながり”にとことんこだわりました。この地道な準備の積み重ねこそが、当日の完成度の高さと、安心感ある進行の土台となったと確信しています。
「なぜ日本の学会で英語セッションなのか?」そんな声もあるかもしれません。しかし、答えは明快です。第一に、世界の第一線で活躍する講演者を迎えることで、最新の知見に直に触れられる。そして第二に、日本のリウマチ診療・研究の“いま”を世界に発信する絶好の舞台になるからです。実際、海外からの参加者の間では「こんなにハイレベルな英語セッションが毎日あるなんて、JCRはすごすぎる」との声も聞かれ、思わず背筋が伸びました。
確かに、英語セッションの準備には膨大なエネルギーを要します。けれども、その先に待っているのは、単なるセッション運営では得られない、深い学びと人とのつながりです。この経験は、今後の国際共同研究やグローバルな学術活動の礎になると強く感じています。
最後に、この貴重な機会をくださったJ-STAR委員会 委員長の橋本求先生、副委員長の加藤将先生、J-STAR-IR小委員会 委員長の西出真之先生、そして発表者・演者の皆様、運営を支えてくださった委員の先生方に、心からの感謝を申し上げます。多くの方々のご協力があってこそ、このセッションは単なる“成功”ではなく、“記憶に残る挑戦”となりました。
JCR若手が世界のTop Rheumatologistsとf2f交流!
寺子屋は、英語プレゼンテーション・質疑応答能力の向上、国際舞台で活躍可能な若手の育成を目的に本年より実施され、JCR開幕前日の4月17日(水)に開催されました。ICW(国際ワークショップ)の発表演題について海外の先生方に指導いただくもので、不安に思いながらもとても楽しみにしていました。参加者は20名で、7、6、7名の3クラスに分かれました。Burmester先生、Smolen先生、McInnes先生、各クラスに2名の日本人の先生方がご指導くださいました。私はクラス3でした。開始前は、緊張感でいっぱいでした。McInnes先生は、自己紹介や、ペットの話などをされ、軽やかに緊張をときほぐしてくださいました。各自の20分の持ち時間のなかで、演題の発表を行い、質疑応答、指導となりました。発表が終わるとMcInnes先生は全員を、Great!と褒めてくださいました。先生の問いは、研究の本質にかかわるもので、今まで当然のこととして扱い、まるで公式のように扱っていた事柄に対して説明を求めるものでした。そのうえで、自分の行った研究で得られた結果がどのようなメカニズムによると考えているのかを問われました。答えることは大変難しく、衝撃を受けました。McInnes先生の「メカニズムを考えることを大事にしなさい」「仮説をたてること、仮説が間違えていても落ち込まないこと、また考えればよいこと」と言う言葉は、ずっと大事にしていきたいと思います。終了後には懇親会も開催され、夢のような時間を過ごしました。
ランチパーティーはJCR3日目の4月20日(土)昼に行われ、Travel Awardを受賞された先生方を含む各国の先生方が参加されました。受付でJ-STARの先生方からおそろいの法被をいただき羽織って入室します。ビュッフェスタイルで行われ、途中では自己紹介タイムもありました。おそろいの法被をきっかけに、初対面の先生方とも打ち解けることができました。研究のみならず、各々の母国の文化についても話すことができ、話題が尽きることはありませんでした。貴重な経験となりました。瞬く間に時間が過ぎ、名残惜しいなか散会となりました。 日本にいながらにして海外にいるような経験で、とても刺激的で心が浮き立ちました。リウマチ膠原病という学問の魅力や奥の深さ、海外の先生方と交流することの楽しさを感じ、これからの世界が広がるようでした。
最後になりましたが、このような素晴らしい機会を与えてくださった日本リウマチ学会の先生方、国際委員会の先生方、J-STAR-IR小委員会の先生方に深く感謝申し上げます。
