メディカルスタッフのみなさま メディカルスタッフのみなさま

リウマチ内科医にとってメディカルスタッフとは?

リウマチ内科医にとって
メディカルスタッフとは?

リウマチ・膠原病の診療において、メディカルスタッフの支えはよき診断、治療のためには必要不可欠です。その具体的な例の一部を、下記にご紹介いたします。

■膠原病診療は受付から

受付との連携(医療事務、看護師)

受付での様子、電話、FAXや情報提供書の内容などは、まさに診療の“入口”です。その入口での気付きは大切です。診断や治療を急いだほうが良い状況で「これは急いだほうがいいかも」と気付くことができれば、早めの診察や予約、より良い結果へとつながります。また、膠原病診療では治療を無理なく続けることにも価値があります。スムーズな予約の変更や待ち時間調節は、気持ちの良い受診を実現します。膠原病診療は受付から!なのです。

■みんなで診断する膠原病診療

問診表(看護師)

はじめての受診では「何をどのように記入したらいいのだろう?」と迷ってしまうかもしれません。そのような時に看護師などスタッフから声かけがあると、安心します。第三者と話すことで、自分ではよくわかりにくい症状であっても冷静にコトバとして表現しやすくもなります。時間の流れに沿っていつから・どこで・何が起こったかがわかる経過の記載は診断の助けです。ひとりで抱え込まずにサポートを受けながら記載する問診票、それは診療の財産です。

検査(臨床検査技師、診療放射線技師、看護師、准看護師)

膠原病診療では、症状の「ストーリー」(経過)、「様子」(身体診察)、「検査」を組み合わせ診断や治療をします。検査は、採血、尿検査、画像検査など多岐にわりますので、とてもお医者さんだけではできません。例えば、関節リウマチを“見える化”させる超音波検査は、診断や治療効果判定に便利です。日本リウマチ学会は登録ソノグラファー制度をつくり普及を目指しています。対象スタッフは医師のほか、臨床検査技師、診療放射線技師、看護師、准看護師となっています。みんなで検査をしてみんなで診断をしていく、それがリウマチ・膠原病診療です。

 

■みんなで支える膠原病診療

文書(医療事務)

多くは、痛みや熱、皮膚の症状、息切れなどがはじめの症状です。そのため、整形外科や皮膚科、一般内科、呼吸器内科からの紹介が受診の契機にもなります。スムーズな医療連携はスムーズな診断につながりますので、日常から紹介状やお返事は大切です。また、診断/治療に際しては特定疾患の申請・更新、各種保や介護関係の書類も必要になります。膠原病診療では治療の継続が肝ですので、転居などでの紹介状も大切です。文書は、膠原病診療を支える縁の下の力持ち、なのです。

社会制度(ソーシャルワーカー)

膠原病関連疾患の一部では特定疾患が利用できます。また、経済的な負担が高額な場合は、高額医療制度を申請することで負担が軽減できることもあります。社会制度の種類や、申請の方法、必要な書類について手伝ってくれる存在が、ソーシャルワーカーです。病院の窓口でソーシャルワーカーに相談したい、と教えて頂けると面談の案内につながることが多いです。社会制度も、案内人に支えてもらいましょう。

内服(薬剤師、看護師)

リウマチ・膠原病関連の治療薬は少しだけ特殊です。毎日内服するのではなく、週1回、月1回などの内服薬があります。例えば、関節リウマチの内服薬として世界でいちばん使用されているメトトレキサートというお薬があります。こちらは週1回の内服薬で、フォリアミンとのセット処方が基本になります。しかし、うっかり週1回のところを毎日内服すると、用量過多になり副作用が生じるリスクが高まります。ただし、メトトレキサートが開始になる時はすなわち、関節リウマチと診断された時であることがほとんどです。病気の説明を理解するだけでも大変ですので、内服薬の効果・注意点・服用のタイミングを同時に理解することは困難の極みになってしまいます。そこで、繰り返しの説明が、解決策のひとつになります。医師、看護師、薬剤師からと複数の職種から説明してもらうことや、受診のたびに時間をおいて説明してもらうことで、お薬の理解も深まります。

残薬の確認(受付・薬剤部・看護師)

もし「実は上手にお薬を飲めていなかった」という状況があったらば、そのままご相談ください。“お薬を内服しているのに調子が悪い”と勘違いされてしまうと、お薬がより増えてしまうこともありえます。飲む回数が多くて大変、飲み薬の種類が多くて大変、なにか心配な気持ちがある、などの気掛かりな点は、医師やスタッフに相談すると解決できることが多いです。飲み薬を減らすために点滴や注射にする、効果が合わさった合剤にする、最低限のお薬だけに厳選する、などの方法があるかもしれません。お薬が余っている状況は、うまくいっていない何かを改善するチャンスです。医師や看護師に伝えにくければ、受付や薬剤部などで相談しても大丈夫です。逆に、残薬が不足することも困ります。大雨・大雪、交通トラブルなどで受診がうまくいかない時への備えとして「1週間分を目安に余裕があると嬉しい」というご相談もまた大歓迎です。

注射・点滴(看護師・薬剤師)

膠原病診療の特徴のひとつは、内服薬だけでなく、皮下注射や点滴を組み合わせる点にあります。皮下注射には患者さんが自分で行う“自己注射”も含まれます。痛くない注射や点滴は治療の希望に、わかりやすい手技の説明・サポートは安心につながります。注射や点滴の“プロ”であるコメディカルの存在は、お薬と同じくらいの価値があるのです。

日常生活の様子(看護師)

痛みや腫れなどの症状、採血結果の改善だけが治療効果の目安ではありません。日常生活で困っていることが少しずつ良くなっているか、も大切な指標です。朝起きて足が痛くない、裸足で歩けない、ペットボトルがあけられない、正座ができない、階段がつらい、など困っていることを生活の様子のまま伝えることは診療の助けになります。医師には相談せずとも、そっと看護師などのスタッフに声をかけて頂くことでも十分です。遠慮せずに、どんどん教えてください。

妊娠(看護師・薬剤師)

妊娠/出産は膠原病診療における大切なイベントです。妊娠・授乳をしたいけれどお薬を飲んでいて大丈夫なのかと心配になってしまうのは当然です。医師が男性の場合は相談しづらいこともあるかもしれませんので、看護師や薬剤師含めて、相談しやすい相手に気軽にお知らせ下さい。膠原病診療は新しい薬剤が登場し、妊娠・授乳のサポートも整ってきている時代になっています。

 

■みんなで防ぐ合併症

飲み合わせ(相互作用)の確認[医師・薬剤師]

例えばタクロリムスやJAK阻害薬など、リウマチのお薬の中には「飲み合わせ」に少しだけ注意しなければならない種類があります。しかし、飲み合わせが大丈夫かどうかをひとつひとつ覚えていかなくても大丈夫です。お薬はそのプロフェッショナルである薬剤師にお任せすること、そして、お薬手帳を活用することで、この課題は解決できます。新しく抗菌薬を近所のかかりつけから処方される場合などでは、「リウマチの薬をいくつか内服していますが飲み合わせ大丈夫ですか?」とお薬手帳をみせながらお薬のプロ(薬剤師)に確認しましょう。お薬手帳やお薬シールは、薬局や処方箋窓口でもらえます。積極的に活用しましょう。

フットケア[皮膚科、看護師、リハビリ]

フットケアでは、皮膚科、看護師、リハビリと協力して爪やむくみへアプローチします。爪白癬(水虫)や巻き爪、足のむくみ(浮腫)は蜂窩織炎という足の感染症のリスクになります。足が変形してたこ(胼胝)ができたまま生活を続けていると、傷ができて感染症につながることもあります。そのため、爪や足の胼胝の手入れ、下肢の挙上や弾性ストッキング/包帯の使用は、立派な感染対策になります。歩行によるふくらはぎの刺激は筋のポンプ作用でむくみは軽減させますので、リハビリも大切です。

歯周病・虫歯[歯科医・歯科衛生士]

膠原病診療では、初診の時、治療を始めた時、治療をはじめた後、各々のタイミングで歯周病対策ができているか?を確認します。例えば、口腔内が乾きやすいシェーグレン症候群では唾液が少なる結果、口腔内の自浄作用が弱くなり虫歯・歯周病になりやすくなってしまいます。しっかりとした歯磨き・歯周病ケアがお薬よりも重要になります。また、口の中の慢性炎症は関節リウマチを発症するリスクにもなってしまいます。さらに、虫歯や歯周病がある中で治療を開始すると、口の中が原因となって全身や顔面での感染症が発症することもあります。歯周病・虫歯の予防/治療は、とても大切な膠原病の治療のひとつ、なのです。

帯状疱疹(看護師、理学療法士、放射線技師)

帯状疱疹は皮膚を見ることで診断しますが、「腰が痛くてX線を撮影しようと着替えたら、皮疹があった」「足がしびれていて靴下やズボンを脱いでみたらブツブツがあった」などのエピソードを、よく見聞きします。寒くて洋服を重ね着していた、シップを貼っていた、などでブツブツや水泡が隠れてしまっていると、診断が遅れてしまいうるのです。帯状疱疹は治療が早ければ早いほど、帯状疱疹後神経痛は起こりづらくなります。そして、顔面や頭皮などの帯状疱疹、範囲が広く派手な帯状疱疹は点滴治療のほうが好ましいこともあります。“痛い”“ヒリヒリする”など帯状疱疹が示唆される症状があれば、いつでも教えてください。

ダイエット(栄養士、理学療法士)

体重をコントロールすると、関節リウマチや乾癬性関節炎などでは調子が良くなります。体重当たりで量が調節されるお薬もありますので、ダイエットをするとお薬のより良い効果やお薬の減量も期待できます。もちろん、糖尿病、高血圧、高脂血症、高尿酸血症などの併存疾患の調子も改善し、将来的な脳や心臓の血管イベントのリスクも減ります。食事のメニュー・レシピの相談や、ウォーキングや運動につながるリハビリはダイエットの助けになります。ひとりで頑張り過ぎずに、みんなでダイエットをしましょう。

JR東京総合病院 リウマチ・膠原病科医長
陶山恭博