メディカルスタッフのみなさま メディカルスタッフのみなさま

メディカルスタッフのためのライフステージに応じた
関節リウマチ患者支援ガイド【2025改訂版】

序文

 近年,治療法の進歩により,関節リウマチ患者さんの疾患活動性は低下し,関節破壊の抑制も進んできています.その一方で,小児期から成人期への移行診療体制の構築,職場や学校での生活支援,妊娠・出産への対応,高齢化に伴う合併症対策など,ライフステージに応じた多様な課題への対応が,より一層求められるようになっています(平成30 年11 月 厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ等対策委員会報告書).これらの課題に対応するためには,患者さんやご家族への支援体制の充実が不可欠であり,その実現には,医師に加え,看護師,薬剤師,リハビリテーションスタッフ,介護・福祉職など多職種が連携してチーム医療を推進していくことが求められています.
 このような背景のもと,厚生労働科学研究費補助金(免疫・アレルギー疾患政策研究事業)「ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援に関する研究」研究班では,医師,看護師,薬剤師,理学療法士,作業療法士,そして患者会(日本リウマチ友の会,あすなろ会)の皆様と協働し,「メディカルスタッフのための ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド」を作成し,2021 年11 月に公開いたしました.本ガイドでは,移行期,妊娠・出産・授乳期,高齢期といった各ライフステージにおける支援情報を中心に,関節リウマチ全般の知識,患者支援制度,災害時の対応なども網羅しており,多くの方々にご活用いただいております.
 その後,新たな治療薬の登場に加え,「関節リウマチ診療ガイドライン 2024 改訂」や「若年性特発性関節炎診療ガイドライン 2024–25 年版」,「関節リウマチにおけるメトトレキサート使用と診療の手引き 2023 年版」などが公表されたことを受け,当研究班ではガイドの内容を最新の情報に基づいてアップデートし,「メディカルスタッフのための ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド 2025 改訂版」を作成いたしました.
本ガイドが,関節リウマチ患者さんとそのご家族への支援の一助となり,より良い医療の提供と生活の質の向上に寄与することを,作成者一同,心より願っております.

2025年9月

日本リウマチ学会関節リウマチ患者支援小委員会委員長
厚生労働科学研究費補助金 (免疫・アレルギー疾患政策研究事業)
「介護・福祉・在宅医療現場における関節リウマチ患者支援に関する研究」研究班代表
国立病院機構相模原病院臨床研究センターリウマチ性疾患研究部 部長
松井利浩

◆ 目 次 ◆

第1部 関節リウマチの基礎

Ⅰ. 関節リウマチの基礎知識【目次】
 Q1 関節リウマチ(RA)はどのような病気か?(原因・疫学)
 Q2 関節症状の特徴は?
 Q3 関節以外の症状として何があるのか?
 Q4 RAの診断の基準は?
 Q5 どのような血液検査が行われるのか?
 Q6 どのような画像検査が行われるのか?
 Q7 疾患活動性の評価はどのように行われるのか?
 Q8 ADLの評価方法は?
 Q9 RAにおける「寛解」とは何か?
 Q10 T2Tとは何か?
 Q11 「関節リウマチ診療ガイドライン2024」の概要は?
 Q12 RAの長期予後および生命予後は?
Ⅱ. 関節リウマチの治療【目次】
 Q1 治療の全体像は?
 Q2 日常生活における注意点は?
 Q3 薬物療法の全体像は?
 Q4 メトトレキサート(MTX):治療における役割と使用時の注意点は?
 Q5 MTX以外の従来型合成抗リウマチ薬(csDMARDs):治療における役割と使用時の注意点は?
 Q6 生物学的製剤(bDMARDs):治療における役割と使用時の注意点は?
 Q7 分子標的合成抗リウマチ薬(tsDMARDs):治療における役割と使用時の注意点は?
 Q8 非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs):治療における役割と使用時の注意点は?
 Q9 副腎皮質ステロイド:治療における役割と使用時の注意点は?
 Q10 抗RANKL抗体:治療における役割と使用時の注意点は?
 Q11 体調が悪いときや,内服や注射を忘れたときはどうすればよいのか?
 Q12 治療薬は将来,減量したり中止できるのか?
 Q13 手術の種類と適応は?
 Q14 手術前後のマネージメントで気を付けるべきことは?
 Q15 人工関節手術後に気を付けるべきことは?
 Q16 リハビリテーションの全体像は?
Ⅲ. 患者支援の実際【目次】
 Q1 自助具や福祉用具にはどのようなものがあるのか?
 Q2 装具にはどのようなものがあるのか?
 Q3 余暇活動の支援としてどのようなものがあるのか?
 Q4 骨粗鬆症対策にはどのようなものがあるのか?
 Q5 注意すべき感染症とその対策は何か?
 Q6 帯状疱疹の特徴と対策は何か?
 Q7 予防接種における注意点は何か?
 Q8 間質性肺炎について知っておくべきことは何か?
 Q9 悪性腫瘍について知っておくべきことは何か?
 Q10 がん検診は受けるべきか?
 Q11 その他の注意すべき合併症は何か?
 Q12 RA患者さん,JIA患者さんへの支援制度にはどのようなものがあるのか?
 Q13 患者さん向けの公益性の高い情報を入手するには?

 

第2部 ライフステージ別の患者支援

Ⅰ. 移行期【目次】
 Q1 若年性特発性関節炎(JIA)と関節リウマチ(RA)の違いは何か?
 Q2 関節型JIAとRAでは,保険適用のある治療薬に違いはあるのか?
 Q3 移行期関節型JIAの診療で留意すべき治療薬の副作用や合併症は何か?
 Q4 移行期関節型JIA症例やその家族と医療者の関係性で留意すべき点は何か?
 Q5 移行期関節型JIAの生活指導において必要な知識は何か?
 Q6 移行期関節型JIAのリハビリテーション治療について知っておくべき知識は何か?
 Q7 関節型JIAの小児期と成人期での医療費助成の違いは何か?
 Q8 関節型JIAの移行サマリーに必要な情報は何か?
 Q9 移行期関節型JIA症例の進学,就労に関する指導で留意すべき点は何か?
Ⅱ. 妊娠・出産・授乳期【目次】
 Q1 プレコンセプションケアを行う際,確認すべき点は何か?
 Q2 加齢による妊娠への影響は?
 Q3 RAが妊娠に及ぼす影響および女性RA 患者さんの挙児率は?
 Q4 避妊方法やパートナーへ伝えるべきことは何か?(月経周期の知識も含めて)
 Q5 妊娠希望のRA患者さんが考慮すべき点は?
 Q6 不妊検査や不妊治療時の注意点は?
 Q7 妊娠を希望した際に調整が必要な薬剤は?
 Q8 「子どもにも病気は遺伝するのでしょうか?」と聞かれたら?
 Q9 妊娠中,RAの活動性はどう変わるのか?
 Q10 妊娠中の生活で気を付けるべきことは何か?
 Q11 妊娠中や授乳中に使用が許容される薬剤は?
 Q12 産後,RAの活動性はどうなるのか?
 Q13 産後の合併症(骨粗鬆症や産後うつ)への注意点は?
 Q14 児の予防接種時の注意点は?
 Q15 育児による関節機能への負担を軽減するにはどうすればよいのか?
 Q16 産後の患者さんへの支援制度や相談窓口は?
Ⅲ. 高齢期【目次】
 Q1 高齢RA患者さんの特徴は何か?
 Q2 ライフステージに応じた高齢RA患者さんの治療目標は何か?
 Q3 高齢RA患者さんの服薬管理指導はどのように行えばよいのか?
 Q4 高齢RA患者さんに対する総合的な機能評価はどのように行えばよいのか?
 Q5 高齢RA患者さんに対するサルコペニア評価はどのように行えばよいのか?
 Q6 高齢RA患者さんにリハビリテーション治療を実施するときの注意点は何か?
 Q7 介護保険施設への入所や在宅医療への移行の際に注意すべきことは何か?
 

第3部 患者支援制度について

患者支援制度について【目次】
 Q1 RA 患者さんが利用できる支援制度にはどのようなものがあるのか?
 Q2 身体障害者手帳の申請方法と助成内容は?
 Q3 高額な医療費に対する支援制度にはどのようなものがあるのか?
 Q4 若年性特発性関節炎(JIA)および悪性関節リウマチに対する医療費助成制度は?
 Q5 年金,税控除,休業中の補償などに関する支援制度にはどのようなものがあるのか?
 Q6 福祉やサービスなどの支援制度にはどのようなものがあるのか?
 Q7 就労支援制度にはどのようなものがあるのか?
 

第4部 災害時に対する備えと対応について

災害時に対する備えと対応について【目次】
 Q1 知っておくべき災害時の医療体制とRA 患者さんの支援体制は?
 Q2 災害時に備えて知っておくべき内服薬や注射薬の知識は何か?
 Q3 災害時に困らないように家庭で取り組むべき対策は何か?
 Q4 知っておくべき災害発生時に必要な行動は?
 Q5 災害時・避難時の生活上の注意点は?
 

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