抗核抗体とは
抗核抗体(antinuclear antibody: ANA)とは、真核細胞の核に結合する抗体群の総称です。検査法には間接蛍光抗体法(indirect fluorescent antibody method; IFA)、酵素結合免疫吸着測定法(enzyme-linked immunosorbent assay; ELISA)、蛍光酵素免疫測定法(fluoroenzyme immunoassay; FEIA)の3種類の方法があり、多くの場合にはIFA法による測定が行われます。
検査法ごとの特性
IFAでは染色パターンからある程度の対応抗体を推測できます。例えばdiscrete speckledの場合には抗セントロメア抗体とほぼ判定できます(表)。
ELISAでは膠原病に特異的な9種類の抗原(RNP、Sm、SS-A、SS-B、CENP-B、Scl-70、Jo-1、dsDNA、ssDNA、リボゾーマルP)に反応する抗体を検出します。FEIAではELISAの9種に4種の抗原(PM-Scl、PCNA、Mi-2、フィブリラリン)を加え、かつssDNAを除いた12種類の抗原に反応する抗体を検出します。
表.IFAにおける抗核抗体の種類と関連疾患
染色パターン | 主な自己抗体 | 関連疾患 |
---|---|---|
Homogeneous (均質型) またはdiffuse (びまん性型) |
抗ヒストン抗体(LE因子) 抗DNA抗体 |
薬剤誘発性ループス SLE |
Nucleolar (核小体型) | 抗リボソーム抗体 抗RNAポリメラーゼ抗体 |
SLE 強皮症 |
Peripheral (辺縁型) またはshaggy(シャギー型) |
抗DNA抗体 | SLE |
Speckled(斑紋型) | 抗Sm抗体 抗U1RNP抗体 抗SSA抗体 抗SSB抗体 抗Scl-70抗体 |
SLE MCTD シェーグレン症候群 強皮症 |
Discrete speckled(散在斑紋型) | 抗セントロメア抗体 | CREST症候群 原発性胆汁性胆管炎 |
検査時の注意点
抗核抗体は特異度の低い検査であり、健常人でも陽性となることがあります。特にIFA法における均質型、斑紋型の抗核抗体は特性が低く、抗核抗体陽性のみで膠原病と診断することはできません。
専門医への相談のポイント
抗核抗体陽性であっても患者が無症状の場合には、必ずしも専門医へ相談する必要はありません。
東京慈恵会医科大学 葛飾医療センター 中央検査部 臨床検査医学講座
越智小枝先生
更新日:2022年5月22日