一般社団法人日本リウマチ学会
会員各位
現在、トリアムシノロン製剤であるケナコルト-A(ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社)について、海外製造所における生産停止の影響により、日本国内への供給が大きく制限される状況が続いております。すでに医療現場ではその影響が広がっており、本剤の入手は極めて困難な状況となっています。さらに、代替として使用される懸濁性ステロイド製剤についても、入手困難となる状況が生じつつあります。
本学会は、本剤の供給問題は単なる一製品の供給不安にとどまらず、日常診療における治療選択肢を著しく制限する重大な医療上の問題であると認識しております。現在、本学会として製造販売会社との情報共有および意見交換を継続するとともに、関係機関とも連携しながら状況の改善に向けた働きかけを行っております。本剤が臨床現場において不可欠な薬剤であることを踏まえ、できる限り早期の製造再開と安定供給の確保が強く求められます。
ケナコルト-Aは、関節リウマチや若年性特発性関節炎に対する筋肉内注射、関節リウマチや変形性関節症に対する関節腔内注射、腱鞘内注射など、日常診療において極めて頻繁に使用される重要な薬剤です。臨床現場において実質的に代替となる注射製剤が存在しないことから、その供給が長期間にわたり不安定な状態にあることは、患者診療に重大な影響を及ぼす深刻な問題であると認識しております。過去の出荷実績においても、本剤の多くがリウマチ・膠原病内科および整形外科領域で使用されており、これらの診療領域への影響は極めて大きいものと考えられます。
製造販売会社からの説明によれば、現在、海外製造所において製造ラインの無菌性確認のための培地充填試験(APS)の再実施に向けた準備が進められているとのことです。供給再開に至るまでには、培地充填試験の適合確認、製剤の製造、品質試験、さらに国内製造所における外観検査および包装工程など、複数の工程を順次完了する必要があるとされています。しかしながら、現時点では各工程の完了時期は確定しておらず、具体的な供給再開時期は依然として未定です。
また、2026年4月1日発注分より出荷制限がさらに強化される予定であり、その内容は以下のとおりです。
・ケナコルト-A 筋注用関節腔内用水懸注40mg/1mL(10バイアル/箱):通常出荷量の15%
・ケナコルト-A 皮内用関節腔内用水懸注50mg/5mL(5バイアル/箱):通常出荷量の10%
在庫消尽時期は概ね2026年11月頃まで延長される見込みとされています。一方、現在の供給状況(約50%程度の制限)が継続した場合には、在庫が2026年5月末頃に消尽する可能性も示されており、欠品の発生を回避するため、出荷制限のさらなる強化が検討されています。このような状況は、医療現場における診療体制の維持に重大な支障を来しかねないものです。
会員の皆様におかれましては、極めて厳しい供給状況の中で診療にあたっておられることと存じますが、限られた供給を可能な限り必要な患者へ届けるため、本剤の使用については慎重な判断と適正使用へのご配慮をお願いいたします。必要性の高い患者への使用を優先するなど、供給状況を踏まえた対応にご協力賜りますようお願い申し上げます。
今後、新たな情報が得られ次第、速やかに会員の皆様へお知らせいたします。本学会としても、本問題の解決に向けて引き続き関係各所と連携しながら対応を進めてまいります。
令和8年3月13日
一般社団法人 日本リウマチ学会
理事長 田中 良哉
社会保険委員会 桃原 茂樹
医薬品安定供給検討委員会委員長 中島 亜矢子
