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病気に関する情報箱

1.SLEってこんな病気

Q1.SLEってなんですか?

A1.Systemic lupus erythematosusの略で、日本語では「全身性エリテマトーデス」と訳されます。通常は自らを守る働きをする「免疫」が、誤って自分の様々な組織を攻撃してしまい、全身に症状がでてしまう「自己免疫疾患」の一つです。世界的にもその病態の解明などについて広く研究されている疾患ですが、いまだその詳細な原因についてははっきりと分かっていません。

Q2.SLEはどうやっておきるのですか?

A2.様々な要因が重なって発症するといわれています。主には遺伝的な要素、環境的な要素などが指摘されています。

① 遺伝因子:ある特定の遺伝子異常で発症する「単一遺伝子病」とは異なり、糖尿病、高血圧なども類される「多因子遺伝病」という、複数の遺伝子と環境要因が相互に関わって発症する病態と考えられています。しかし、家族内にSLEの患者さんがいる場合、100人に1-5人前後の割合で発症している家系があること、一卵性双生児の場合では4組に1組程度のSLE同時発症があること、などから遺伝が関与している事は推測されています。

② 環境因子:上記のような遺伝因子をもっている人に、紫外線への長時間曝露、ウィルス感染、手術、妊娠・出産、薬剤等の何らかの身体的・精神的なストレスがかかるとSLEを発症すると考えられています。

Q3. SLEは昔からある疾患ですか?

A3. 19世紀後半から広く認識されるようになった、比較的新しい疾患です。歴史的には、1850年に初めてフランスの皮膚科医Cazenave(図1)が、今でいうSLEの皮膚症状について報告しています。その後、1872年にハンガリーの皮膚科医Kaposiが全身性疾患であることを報告し、徐々に知られるようになってきました。そして1948年にアメリカの病理医HargravesらによってSLEでは免疫学的機序が関わっている証拠が確認され、1950年代以降にSLEの診断に現在でも用いられる抗核抗体などの検査法の開発がなされるようになりました。このように、SLEが広く知られるようになったのは19世紀後半からと歴史的には最近の事であり、その疾患の解明には様々な国の医師が携わってきたことがわかります。

Pierre Louis Alphée Cazenave(1795-1877年)
図1.Pierre Louis Alphée Cazenave(1795-1877年)1)
Q4. SLEではどんなことがおきますか?

A4. 「“全身性”エリテマトーデス」という名前の通り、様々な内臓障害、関節・皮膚症状が起こります。しかし、必ずしもすべての症状が起きる訳ではなく、一括りにSLEといっても一人一人、症状の組み合わせもその重症度も異なります。
SLEの症状としては、主に微熱・倦怠感・食欲低下の全身症状、また関節痛や皮疹がよくみられます。また、以下のような症状を起こすことがあります。

・中枢神経系 … けいれん、意識障害、頭痛、抑うつ状態
・筋骨格系 … 筋肉痛、関節痛
・皮膚/粘膜症状 … 口内炎、脱毛、光線過敏、顔面の紅斑、手指の紅斑、レイノー現象*
・心臓・肺 … 胸痛、咳、動悸・息切れ
・腎臓 … 手足の浮腫
・消化管 … 腹痛、下痢
・血液・リンパ節系 … 貧血、リンパ節腫脹

また、合併する内臓障害によって、以下のような検査異常を認めます。

・血球異常 … 白血球(リンパ球)減少、貧血、血小板減少
・肝機能障害 … AST・ALT上昇など
・腎機能障害 … 血尿、蛋白尿、血清クレアチニン値上昇

そのほか、SLEの病態に関わっていると考えられる抗核抗体や抗二本鎖DNA抗体の陽性、抗Sm抗体陽性、抗リン脂質抗体陽性などの免疫学的検査異常が確認されます。

*レイノー現象:寒冷刺激によって手指の血流障害が起こり、指先が白→紫→赤色へ変化する現象のこと。膠原病ではSLEの他、混合性組織結合病、全身性硬化症などの患者さんにおこります。

Q5. SLEに対する治療にはどんなものがありますか?

A5. 現在の治療としては、ステロイド、免疫抑制剤などのお薬を組み合わせて使用します。

① ステロイド … SLE治療の主たるお薬です。広く炎症を抑える作用があります。臓器合併症の種類や程度により、使用する量は異なっています。少量(プレドニゾロン5mg以下)から大量(プレドニゾロン50~60mg)、あるいは非常に重篤な場合は点滴パルス療法(メチルプレドニゾロン500~1000mg)を短期間使用するなどその使い方は様々です。副作用として、不眠・うつ、高血圧、糖尿病、脂質異常症、白内障・緑内障、骨粗鬆症、感染症リスクの上昇などが起こる可能性がありますが、急な減量・中断はかえって命に関わる事があるため、必ず主治医の指示通りに内服する必要があります。

② ヒドロキシクロロキン … 免疫調整薬と分類されています。海外では古くから皮膚症状の強いSLE患者さんに対して有効な薬として使用されていましたが、日本ではクロロキンによる重篤な網膜症という事例を踏まえて長らく医薬品として承認されていませんでした。しかしSLEに対する臓器合併症や再燃のリスクを減らす効果が国際的に示されてきた中で、2015年に日本でも公式にSLEに対して承認され、現在は使用可能となっています。お薬による網膜症評価のために、必ず使用前に眼科で7種類の検査を受け、使用中も少なくとも年に1回の眼科診察を受けましょう。

③ 免疫抑制薬 … アザチオプリン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、エンドキサンなどがあります。合併している臓器障害とその重症度により使用するお薬は異なります。基本的にステロイドと共に使用します。その名の通り、免疫を様々な作用で抑えてステロイドの使用量を安全に減らす事ができると期待されます。アザチオプリン、タクロリムスは妊娠希望時にも使用継続可能な薬剤として正式にコメントされています。ミコフェノール酸モフェチルは使用中に妊娠した場合、赤ちゃんの奇形リスクや流産の確率が増えると言われているため、妊娠希望時には主治医と事前に相談し、他剤への変更あるいは中止を検討する必要があります。エンドキサンを使用された経験のある患者さんでは、卵巣機能低下が認められ月経不順・無月経など、不妊の原因となることがあります。このため、病状が安定しており主治医から妊娠許可が出ている患者さんについては、パートナーと相談の上、早期に不妊治療を考慮してもよいかもしれません。

④ べリムマブ … 関節リウマチなどでは様々な種類が開発されている生物学的製剤の一つです。B細胞といわれるリンパ球の作用を抑えることで免疫の異常反応を抑え、効果を発揮します。点滴あるいは注射で投与することが可能なお薬です。

その他、関節痛などに対して非ステロイド性消炎鎮痛薬などを使用する事があります。

Q6. SLEは治りますか?

A6. 残念ながら、現在の医学では、風邪などの感染症や怪我のように「完治する(=お薬なしで病気がない状態で過ごせる)」という事はありません。一方で、SLEの重症度にもよりますが、必要最低限のお薬を使用しながら、日常・社会生活を恙なく過ごせる状態にすることは可能と考えられています。自己防衛のための免疫が様々な要因で誤作動を起こしてしまって発症する疾患であるため、お薬を用いたり規則正しい生活を送ることを心がけ、コントロールして永く付き合っていく事となります。

<Take home message>
SLEは全身に症状が出る自己免疫疾患です。ステロイドをはじめとしたお薬で病気を抑え、感染症などの合併症に速やかに対処することで、永く社会生活を送ることが可能となってきています。

<参考文献>
1)K. Holubar. Acta Dermatoven APA. 2006(15):191-194.

(文責:多摩総合医療センター 大西香絵先生)

 

2.SLEとワクチン接種

ワクチンとは:

細菌やウイルスに感染し,感染症にかかると,その病原体に対する免疫という抵抗力が備わります.毒性を弱めたり,無毒化した病原体を接種することにより,実際には病気にかからなくてもその病気への免疫ができ,病原体が体内に侵入しても発症を予防したり,症状を軽度ですませたりすることができます.この予防接種用の薬液をワクチンといいます。

ワクチンの種類:

ワクチンには下の表のように弱毒化された病原体を使った弱毒生ワクチンと病原性をなくした不活化ワクチンがあります.原則的に弱毒生ワクチンは免疫抑制状態の方には接種できません.帯状疱疹は免疫抑制状態では罹患しやすく注意が必要ですが,不活化ワクチンが開発中で今後期待されます.また,例えばインフルエンザワクチンは不活化ワクチンで以前副作用が強く出た方以外は毎年接種を受けた方がよいと考えられます。

不活化ワクチン(免疫抑制状態でも接種可能)
肺炎球菌,インフルエンザ,子宮頸癌,A型肝炎,B型肝炎,狂犬病,破傷風,ジフテリア,日本脳炎,ポリオ,髄膜炎菌ワクチン,帯状疱疹

弱毒生ワクチン(免疫抑制状態では接種は原則禁止)
BCG,はしか(麻疹),風疹,おたふくかぜ,みずぼうそう(水痘),黄熱,ロタウイルス

ワクチンの副作用:

ワクチン接種時に注射した部位が赤く腫れたり熱を持ったりすることがありますが,1~3日程度でおさまることが多いです。まれに重篤な副反応が起こることもあり,症状がひどい場合は病院を受診してください。インフルエンザワクチンを打ってインフルエンザになったのでワクチンは打ちたくないといわれる方がいますが,発熱やだるさ等が生じることはあっても不活化ワクチンであり,インフルエンザそのものに罹ることはありませんので,重症化を防ぐうえでも受けた方がよいでしょう。

ワクチンの効果:

免疫抑制状態時の抗体獲得率や獲得抗体の持続期間はワクチンの種類や併用薬の種類,用量により異なることがあります。

ワクチンの費用:

高齢者では年齢により肺炎球菌ワクチン等の行政による費用軽減措置がある場合,髄膜炎菌ワクチンのように特定の疾患・使用薬剤によっては保険適応になる場合もありますので相談されるとよいでしょう。

2020年からの変更点

注射生ワクチン同士を接種する場合以外は,接種間隔の制限が撤廃されました。帯状疱疹の不活化ワクチン(通常50歳以上,2回接種)が使用可能となりました.新型コロナワクチンも発売されてきますが,それぞれの接種に関しては主治医の先生に相談してください。

(文責:東京医科歯科大学 岩井秀之先生)

 

3.SLEとインフルエンザ

人の体にはウイルスや細菌などの病原体から自らを守る「免疫」という働きがあります。SLEの症状は主にこの免疫の異常によって起きます。本来外敵から身を守るための免疫の働きが自分の 体に害を及ぼすのですが、これが膠原病の大きな特徴の一つです。

このため、感染症はSLEの患者さんにとって最も注意すべき合併症です。SLEの治療ではステロイドや免疫抑制剤など免疫を抑える薬が使われることから、感染症にかかりやすくなります。

インフルエンザの予防接種は可能な限り受けましょう。予防接種をすることで体の中にインフルエンザに対する抗体が作られるため、本当のインフルエンザにかかったときに速やかにインフルエンザウイルスを攻撃し、重症化を防ぐことができます。インフルエンザワクチンは、流行が予測されるウイルスのタイプによって毎年ワクチンが変わっています。このため毎年接種を受けることが望ましいです。

風邪やインフルエンザなどの一般的な感染症に対する予防法は、SLE患者さんにとっても有用です。インフルエンザの流行時はなるべく人混みを避け、外出から帰宅後はうがい、手洗いを忘れないようにしましょう。
SLE患者さんは弱い病原体でも感染症を起こす可能性があるため、歯磨きをきちんと行い、口腔内の衛生を保つことも大切です。

ストレスや体の疲れは、病状悪化の引き金となるだけでなく、免疫力を弱らせることで、感染症にかかるきっかけとなることもあります。無理をせず、疲れを感じたら、十分な安静を心がけるようにしましょう。

<take home message>
発熱や咳など感染症の疑いがある症状が現れた場合は、すみやかに受診するようにしましょう。感染症が重症化しやすいため、ただの風邪だと思っても放置せず、医師の診察を受けるようにしましょう。

(文責:順天堂大学 根本卓也先)

 

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