会員のみなさま 会員のみなさま

病気に関する情報箱

1.SLEと花粉症

● 花粉症とは;

くしゃみ,鼻水,鼻づまりを特徴とするアレルギー性鼻炎があります.家の塵やダニ(ハウスダスト),スギ,ヒノキ,ブタクサなどの花粉,カビの胞子といった呼吸とともに吸い込んでしまう空気中の微細な物質(抗原)が原因となります.その中でも花粉が原因で鼻や眼に起こるアレルギーを花粉症といいます. 日本人の4人に1人が花粉症といわれています.花粉の種類により症状の出る季節が異なります.鼻づまりにより口の渇き,咳,においや味がわかりにくくなったり,目のかゆみ,充血,涙がでたりします.さらに,だるさ,のど・顔・首のかゆみ,集中力の低下,不眠といった症状が生じることもあります.
風邪と似た症状もありますが,風邪では微熱や咳があり,1週間ほどで治りますが,花粉症では花粉の飛んでいる時期に持続するのが特徴です.

● 治療法としては(1)抗原除去・回避,(2)薬物療法,(3)減感作療法,(4)手術療法があります.

(1) 抗原除去・回避:
病院で花粉症と診断されたら,花粉との接触をできるだけ避け,予防することが大切です.花粉予報に注意して,花粉が多い日は外出を控え,窓やドアを閉める.外出の日は花粉症対策眼鏡,マスク,帽子を使用し,帰宅時には花粉をよく払い,掃除をこまめにするなどの対策をしましょう.

(2)薬物療法:
内服薬,点鼻薬,点眼薬があります.くしゃみ・鼻水型,鼻づまり型,全ての症状が出る充全型があり,型に合わせ薬の種類も変わってきます.
くしゃみ・鼻水型には抗ヒスタミン薬と鼻噴霧ステロイド薬を,鼻づまり型・全ての症状が同じくらいある型には抗ロイコトリエン薬と鼻噴霧ステロイド薬の併用が推奨されています.その時の病型や重症度に応じてほかの治療薬を併用することも効果的です.
また,初期療法といって症状が少し出たタイミングで内服薬を開始すると症状が出るのを遅らせたり,症状を軽くしたりできる可能性もあります.
古くからある抗ヒスタミン薬(特に第1世代)では眠気,口の渇き,尿が出にくくなるなどの副作用があることがありましたが,最近の薬では少ないです.

(3)減感作療法:
舌下免疫療法といって花粉症の原因となっている物質を少ない量から取り入れ,徐々に増やし免疫を獲得しようという治療法があります.花粉に反応する体質自体を変えていく方法です.治療には2~3年かかりますが,花粉症が治る可能性があります.

(4)手術療法:
鼻づまり型で鼻内部の形の異常がある方などには手術療法もあります.下鼻甲介粘膜焼灼術,重症では下鼻甲介形成術や後鼻神経切断術がありますが,薬物療法無効例に行うことが多いです.

SLEではアレルギー性鼻炎の人が多いとの報告もありますが,花粉症の治療が大きく異なるわけではありません.様々な薬を服用している方も多く,担当の先生と相談しての治療が大切です.

(文責:東京医科歯科大学 岩井秀之先生)

 

2.SLEとストレス

1. ストレスの身体への影響

ストレスとは「生活上のプレッシャー, また, それを感じたときの感覚」であり, その原因となるストレッサーとしては一般的には不安や恐怖などの精神神経ストレスが思いつきやすいですが, 痛みや寒さなどの物理的ストレスの他, 薬剤による化学的ストレスなども含まれます. 適度なストレスは自身の能力を高めることや環境に適応するために必要ということは実感されると思いますが, 過剰なストレスは身体や精神をすり減らすことも日常的に実感できると思います. 非常に強いストレスがかかり, ストレスに適応できない場合は, 急性ストレス障害という血圧上昇や消化器症状などがみられるときがありますし, 慢性期に生じる心的外傷後ストレス障害(PTSD)はトラウマ体験後に生じるフラッシュバックなどの特徴的な症状で有名です.
ストレスを感じるとヒトの身体ではどのようなことが起きるのでしょうか. ストレス刺激は脳の視床下部という部分で感知され, 下垂体というホルモン産生部位に伝達し, 最終的に副腎という腎臓の上に乗っている組織よりアドレナリンとステロイドホルモンが放出されます. その結果として, 心肺機能強化(心拍数上昇, 血圧上昇など), 筋肉の血管拡張, 脂肪などの分解によるエネルギー産生, 胃や腸などの機能阻害・停止, 膀胱の緩み(尿が出ないように), 瞳孔の散大, 周辺視野の喪失, 手の震えなどが起こります. 交感神経が働くことで機能的には優先的に筋肉に血が供給され, 他の部分への血流を減らすことで, 筋肉がより早くより強く動けるように緊張状態になることとなり「戦うか逃げるか」という状態となります. 生きるために必要な機能であることはわかりますが, このような反応が長期に続くことが良いとは思えませんよね. 事実として, ステロイドホルモンであるコルチゾールが一般より高いヒトでは低いヒトと比べると, 脳の容積が小さいことがMRIの研究で示されています [1]. また, マウスやラットといったげっ歯類を用いた多くの実験でも慢性ストレスが脳の機能や認知行動に影響を及ぼすことが示されています.

2. ストレスはSLEに悪影響があるのか

患者さんや医師の多くはストレスがSLEを含む自己免疫疾患の病勢を悪くすると信じていますが, 証拠となるような研究は実は限られています. うつや不安といった指標がSLEの活動性と相関することは多く示されていますが, SLEの病勢が悪ければ, 抑うつや不安は強くなるので, ストレスがSLEの病勢を悪くするとはいえません. 2002年にアメリカから報告された研究では, 19人のSLE患者さんを40か月追跡し, 抑うつや不安などの患者さんの感じ方とSLEの病勢が関与しているかを調べており, この研究では患者さんのストレスの感じ方が患者さんによるSLEの病勢評価と相関があると示されたものの, 客観的な検査所見などを用いて算出されるSLE病勢の指標であるSLEDAIは相関しないことが示され, ストレスによりSLEは悪くならないと結論付けています [2]. ロサンジェルスで1994年に発生した大規模地震の際に, 10人のSLE患者さんの病勢を地震前後で調べた研究がありますが, これでも病勢に明らかな変化はありませんでした [3]. もちろん, これらの研究に含まれる患者さんの数は少なく, もっと大規模な研究をしなければストレスとSLE病勢の関係に関する結論は出ません. 現在参加頂いているPleasure-J研究でもストレス評価などが含まれていますので, SLEの病勢などとの関連について, 日本より新たな, 意義のある医学的なエビデンス(証拠)を世界に発信できればと考えています. 今後ともご協力のほど, 何卒よろしくお願い致します.

3. ストレスへの対処

最後にストレスへの対処ですが, 相談やカウンセリング, 気分転換, 趣味, 娯楽, 瞑想, スポーツ, 入浴, 音楽などの情動焦点型対処と人間関係改善, 社内環境改善などの環境調整・変更といった問題焦点型対処の2つがあり, 様々な技法を身につけるほど総合的なストレス対処力が向上するとされます. SLE患者さんに特徴的な対処法というものはありませんが, 医師が患者さんに対して, SLEの病状, 治療目標などを明確にし, ストレス対処方を教育することはSLE患者さんのストレスを減らし, 抑うつや不安などの症状を減らすという研究結果があります [4]. 患者会など同じような境遇の人々とのコミュニケーションや患者さん向けの医師による病気の講演会などは不安などの軽減に役立つかもしれません.

<参考文献>
1) Echouffo-Tcheugui JB, et al. Neurology. 2018;91:e1961-70.
2) Ward MM, et al. Rheumatology (Oxford) 2002;41:184-8.
3) Wallace DJ, et al. Arthritis Rheum 1994;37:1826-8.
4) Haupt M, et al. Ann Rheum Dis 2005;64:1618-23.

(文責:北海道大学 阿部靖矢先生)

 

3.SLEと学校生活

小児期発症のSLEの患者さんにとって、治療を受けながら学校生活を送るということがとても大きな課題となっています。入院生活や頻回な通院のため学校を休まざるを得ない。病気が落ち着いても、ステロイドの副作用での外見の変化が気になって、まわりからどう見られるのか不安になる。しばらく行っていなかった学校、友達、そこへ行くのに勇気がいる。頑張って行っても、体育の授業や野外活動など紫外線を多く浴びるようなことは参加するのに気を使う。そういったことを乗り越えるのは想像以上に大変なことと思います。

学校生活を送ることは、勉学のみならず自我同一性の獲得、人間関係の構築、親からの自立といった過程が育まれることに重要だと言われています。病気が安定し、ステロイドで丸くなった顔も元に戻り、治療に通い薬や紫外線に気を遣いながらも日常生活を送るようになります。進学し、就職し、親元を離れ、自分の人生を自分で送る日々があります。そういう日々のために、なるべく学校へ行けるようにできれば良いと思います。

そのために、少しでも学校へ行くハードルを下げてあげる必要があります。私たち医師がすることは、よりしっかりとSLEを安定させること。どうしたらより病気が安定した状態でいられるかを患者さん自身と共有していくこと。また、学校でのハードルを下げる工夫を、担任の先生など学校で行っていただけるように、学校への情報提供が必要です。これに関しては患者さんとご両親と相談しながらしていくようになります。長期入院の際は院内学級へ通うことになるかと思います。病院の学校の先生と元の学校と連携をし、可能であればお便りを届けてもらうなど、交流がなくならないような工夫をしてもらえると良いです。今の時代はインターネットが普及しており、昔に比べそういったことはやりやすいのかもしれません。がんの患者さん向けのサイトではありますが、「国立がん研究センター小児情報サービス」というホームページに、就学に関するQ&Aがありますので参考にしてみてください。

上記のことは、医師や病院・学校の担当者、親御さんが行うことです。患者さん自身がやることは、無理をしないこと、ちゃんとまわりに相談すること。そして、親元を離れる日のために少しずつ自分の病気のこと、薬のことを身につけて行ってください。

<take home message>
小さい頃から病気とともに生きているだけでとても頑張っています。困ったことは相談して、下げられるハードルは下げてもらって。それとともに、自分でも自分の病気のことをしっかりとわかるようにしていきましょう。

<参考文献>
成人診療科医のための 小児リウマチ性疾患移行支援ガイド
厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 小児期および成人移行期小児リウマチ患者の全国調査データの解析と両者の異同性に基づいた全国的「シームレス」診療ネットワーク構築による標準的治療の均てん化 研究班 (編) / 一般社団法人 日本小児リウマチ学会,一般社団法人 日本リウマチ学会 (他)

(文責:昭和大学 三浦瑶子先生)

 

上に戻る