メディカルスタッフのみなさま メディカルスタッフのみなさま

理学療法士からの声 金子 基史(65号)

慢性疼痛患者に対する当院リハビリテーション部の試み

金子 基史
早石病院 リハビリテーション部

当院リハビリテーション部は主に一般病棟、回復期リハビリテーション病棟に入院されている患者様に、理学療法士(PT)作業療法士(OT)言語聴覚士(ST)がそれぞれチームを組んで、リハビリテーションを提供させていただいています。中でも線維筋痛症(FM)の患者様に対し専門医の下、3週間集中運動プログラムの試みにも取り組んでいます。(大学研究倫理委員会の承認を受けた研究の一環として)

前頭前野は思考や創造性を担うとても重要な部分であり、その一部である背外側前頭前野(DLPFC)は下行性疼痛抑制系を介して、痛みを調整すると考えられています。実際のFM患者の脳画像からも、下行性疼痛抑制系の機能が減弱していると考えられていますが運動療法、特に有酸素運動を取り入れていくことによりDLPFCの機能が改善し、疼痛抑制につながり、認知機能の向上につながることも報告されています。特に高齢のFM患者様の中には運動、体を動かすことに対してとても懐疑的な考えを持たれている方も少なくありません。痛みにより活動性が低下した状態が続き、ADL能力の低下につながって行くという悪循環に陥っている方も見受けられます。

そこで慢性疼痛患者様に対し、運動療法を進めて行く際には「運動=痛み」と言った誤った認識を解くためにも、ペーシングを用いて低負荷、低頻度の運動から始めていくことがとても重要です。

当院リハビリテーション室に見学等に来ていただいた医療機関の方々に、こんな質問を投げ掛ける時があります。「今、患者の方々に対応しているセラピストのうち、誰がPTで誰がOTなのかわかりますか?」その大部分において「わからない」という返答をいただいています。

当院リハビリテーション部が、患者様に介入していく上でまず個人個人を受け入れていただけるよう尽力します。どんなに知識や経験も豊富で、腕が良いなんて言われるセラピストであっても、患者様に受け入れていただけなければその力を十二分に発揮することができません。まず傾聴から入り、対話を重ねて行くことで、患者様自身がどうありたいのかという事を念頭に置いて、プログラムを進めて行きます。患者様の状態に応じて、時にはPT、OT、STそれぞれの専門分野の垣根の越えた、きめ細やかなアプローチも必要と考えています。一見とても極端な話にはなりますが、患者様のQualityを上げる為には歩行能力の向上が必須と判断するならば、担当セラピスト一致団結して患者様と歩行練習に取り組んで行く、それも我々はペーシングと考えているのです。

 

早石病院 リハビリテーション部 集合写真(前列左から3番目が筆者)

早石病院 リハビリテーション部 集合写真(前列左から3番目が筆者)