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高安動脈炎

高安動脈炎とは

高安動脈炎(takayasu arteritis:TA)とはおもに大動脈およびそこから枝分かれする太い血管(冠動脈、肺動脈など)に慢性的な炎症を起こす自己免疫疾患です。以前は「大動脈炎症候群」と呼ばれていましたが、病変は大動脈以外の全身の臓器に生じることから、現在は「高安動脈炎」と呼んでいます。
病気の原因は不明であり、女性に多く、発症年齢のピークは20歳前後です。

症状・検査

症状は発熱、体重減少、だるさが多く、首、肩、胸、背中の痛みがみられます。冷や汗、失神、めまい、耳鳴り、難聴、視力の低下、腕のだるさ、上肢血圧の左右差もみられることがあります。また、動悸、息切れ、歩行時の足の痛み、頑固な腹痛、下痢、関節痛、皮疹などもしばしばみられます。 検査結果は血管の炎症により炎症反応(CRPや赤沈)が上昇します。慢性の炎症による貧血がみられます。ヒトの白血球抗原(HLA)検査でB52の陽性が特徴です。

診断

若い女性で症状からこの病気を疑います。特徴的な症状や血液検査項目がないことから1年あまり診断されないことがしばしばあります。診断は血液検査による炎症反応の上昇と超音波、造影CT、MRI、PET-CTや血管造影検査により血管の狭窄、拡張および血管の壁が厚くなっていることを確認することで診断します。高安動脈炎は、厚生労働省の定める指定難病のため設定されています。重症度に照らした上で医療助成の対象となることがあります。

治療

急性期の血管の炎症には副腎皮質ステロイドが効果的です。通常、1日あたり体重1kgに対し、0.8~1mgのプレドニゾロンを服用します(体重 50kgであれば、1日にプレドニゾロン 40~50mgを服用します。ステロイドを減らすと再び病気が悪化(再燃)することがあります。再燃する場合には免疫抑制薬、生物学的製剤を使用します。血管の炎症によって血管が詰まらないように抗血小板薬を併用します。詰まってしまった血管に対しては、全身状態をみながら外科的な血管バイパス術を行うこともあります。

生活上の注意点

動脈硬化のリスクファクターである喫煙、肥満、高血圧症、脂質異常症、糖尿病があれば、生活習慣を是正し薬物療法を考えましょう。また、風邪、怪我、ストレスなど病気を悪化させてしまうことがありますので、体調管理を心がけ、過度のストレスは取り除くようにしましょう。セルフチェックとして、両方の上肢の血圧を測定、ふらつきはないか、背中の痛みがないか、体重が減り続けていないか、記録してみましょう。

主治医への相談のポイント

妊娠・出産を計画している場合、発熱、背中などの痛みが強くなった場合、治療開始後の体調の異変があり副作用が疑われる場合には、早めに主治医に相談をしましょう。

埼玉医科大学病院リウマチ膠原病科
横田和浩先生

更新日:2022年5月22日