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偽痛風

偽痛風とは

偽痛風(ぎつうふう、Pseudogout)とはピロリン酸カルシウム二水和物(CPPD)の関節軟骨や周囲組織への沈着を原因とした、関節炎を来す疾患の総称です。痛風と同じような関節炎の症状を起こしますが、高尿酸血症が見られないことから名付けられました。

症状・検査

症状としては高齢者の大関節に激烈な痛みがおこり、患部の炎症に伴う発熱、同部位の関節腫脹・発赤・運動時痛を認めます。好発部位は膝関節で、偽痛風の半数以上が膝関節です。それ以外には肩関節(石灰沈着性腱板炎)・足関節・手関節が好発部位です。

診断

高齢の関節炎患者(特に炎症性関節炎)ではCPPD結晶沈着症を疑うべきです。まずはX線検査で軟骨にピロリン酸カルシウムが沈着することで、石灰化像が線状に認められ、特に膝関節の典型例では、半月板に石灰化を認めます。さらに関節穿刺液検査で関節液内にCPPDの結晶が認められれば、診断は確定できます。詳細は、偏光顕微鏡検査で複屈折性を示さないまたは弱い正の複屈折性の菱形または桿状の結晶を関節液中に同定することによって確定します。ただし急性発作時の関節液には,典型的な炎症の所見がみられるため,化膿性関節炎および痛風を血液検査・関節液検査などで除外する必要があります。化膿性関節炎は,グラム染色および培養の所見に基づいて除外します。痛風は,炎症を起こしている関節から採取した体液中に尿酸結晶がないことによって除外します。ただし実臨床の現場では関節リウマチ、変形性関節症の重症型、さらに化膿性関節炎などの鑑別が困難な場合があり、施設によっては時間外検査で関節液内のCPPD結晶の検査ができず、化膿性関節炎などの否定ができない場合は入院して経過をみるのも一法です。

治療

特異的な治療法はありません。ただし、急性の関節炎発作は時間の経過(1~3日)で軽快します。その急性の痛みを軽減するための対症療法として非ステロイド系抗炎症薬(NSAID) の処方、患部冷却(アイスノンをタオルに巻いてあてる)、医療処置としては関節液の排出とコルチコステロイドの関節内注入が有効です。変形性関節症を合併し関節の変形が進み歩行障害が進行すれば人工関節置換術などの外科的治療の適応となる場合があります。

生活上の注意点

急性の関節炎発作時には患部安静が原則です。ただし 関節炎発作がおさまったら、過度な安静は必要ないので通常の生活に戻るように指導が必要です。また、痛風と異なり代謝性疾患でないので食事療法の必要はありません。

専門医への相談のポイント

通常、初発・高齢の関節炎患者ではCPPD結晶沈着症を疑うべきでありますが、クリニックでの関節液内のCPPD結晶の検査は困難であり、その際は紹介が適切であります。

独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター整形外科
金子敦史先生

更新日:2022年5月22日