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巨細胞性動脈炎

巨細胞性動脈炎とは

巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis: GCA)とは、おもに頭頸部の大動脈およびそこから枝分かれする浅側頭動脈(こめかみを通過する動脈)や眼動脈(目を栄養する動脈)などに慢性的な炎症を起こす自己免疫疾患です。病変部位である側頭動脈を顕微鏡で観察すると、核をたくさん持つ大きな細胞(巨細胞)が観察されることから「巨細胞性動脈炎」と名付けられました。以前は、側頭動脈に炎症を起こすことから「側頭動脈炎」と呼ばれていました。
病気の原因は不明であり、やや女性に多く、原則として50歳以上に発症し、発症年齢は60~70歳代にピークがあります。

症状・検査

症状はズキズキと拍動する片側の側頭部の頭痛、視力低下、視野狭窄などの眼症状、物を噛んだときのあごの痛み、首や肩の痛みなどがみられます。発熱、体重減少、だるさなどもみられることがあります。リウマチ性多発筋痛症を合併することがしばしばみられ、腕や太ももの筋肉痛や立ち上がりや寝返りが困難なことがみられます。頻度は多くありませんが、脳梗塞、虚血性心疾患、大動脈解離、大動脈弁閉鎖不全症などを合併することがあります。
検査結果では炎症反応(CRPや赤沈)の上昇です。特徴的な血液検査異常はありません。眼の検査で視神経や網膜などに異常がみられると失明の危険性があります。

診断

高齢者で新たに出現した側頭部痛、眼症状、発熱および炎症反応の上昇からこの病気を疑います。炎症反応の上昇と超音波、造影CT、MRI、PET-CT、血管造影検査により血管の壁が厚くなっていることを確認します。病気の確定診断のために、慢性炎症を起こした動脈の一部を採って顕微鏡で血管を観察して(側頭動脈生検)、巨細胞と血管の炎症を証明することで診断します。巨細胞性動脈炎は、2015年より厚生労働省の定める指定難病のため設定されました。重症度に照らした上で医療助成の対象となることがあります。

治療

急性期の血管の炎症には副腎皮質ステロイドが効果的です。通常、1日あたり体重1kgに対し、1mgのプレドニゾロンを服用します(体重 50kgであれば、1日にプレドニゾロン 50mgを服用します。ステロイドを減らすと再び病気が悪化(再燃)することがしばしばみられます。再燃する場合には免疫抑制薬、生物学的製剤を使用します。目の症状があり、失明のおそれがある場合には、側頭動脈生検による診断を待たずに治療を開始します。

生活上の注意点

頭痛、物を噛んだときのあごの痛み、発熱時などには安静を心がけ、回復期・慢性期には体力・筋力維持・増強のために適度の運動を行いましょう。食事は高たんぱく食と高カルシウムの摂取を心がけましょう。また、セルフチェックとして、体温、血圧、脈拍数や体重を測定して、ステロイドの副作用がみられないか、記録してみましょう。

主治医への相談のポイント

頭痛、首やあごの痛み、微熱、だるさや体重減少などが続いている場合、持続する空咳、息切れなど気になる症状がある場合には、早めに主治医に相談をしましょう。

埼玉医科大学病院リウマチ膠原病科
横田和浩先生

更新日:2022年5月22日