関節リウマチに対するデノスマブ使用の手引き
デノスマブはRANKL を標的としたヒト型IgG2 モノクローナル抗体で、RANKLを特異的に阻害し破骨細胞の形成、機能および生存を抑制することにより骨吸収を抑制する。本邦では、2013年に「骨粗鬆症」の適応が承認され、2017年7月に「関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制」の効能・効果が追加された。一方、海外では、関節リウマチに係る適応は承認されていない。
手引きの目的
デノスマブは唯一の抗RANKL抗体製剤であり、また、「関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制」の効能・効果を持つ薬剤はデノスマブの他にない。関節リウマチ治療における本剤の位置づけ、および治療上の注意点を提示し、各主治医が添付文書を遵守して適正に薬剤を使用することを目的に作成した。
対象患者
抗リウマチ薬(メトトレキサート等)で治療を行っている患者で、画像検査にて進行性の骨びらんがある関節リウマチ患者。
(例)
· 抗リウマチ薬の効果が不十分で、骨びらん進行がみられる患者。
· 抗リウマチ薬で寛解もしくは低疾患活動性が達成されても、骨びらん進行がみられる患者。
用法・用量
関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制
· 60 mg を6ヵ月に1 回、皮下投与する。なお、6ヵ月に1 回の投与においても、骨びらんの進行が認められる場合には、3ヵ月に1 回、皮下投与することができる。
· 本剤には抗炎症作用、抗リウマチ作用はないために、メトトレキサート等の抗リウマチ薬と併用すること。
投与禁忌
· 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
· 低カルシウム血症の患者。
· 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人。
要注意事項
1. 低カルシウム血症
1) 本剤投与開始前に血清補正カルシウム値を確認する。
· 腎機能障害患者や、既に活性型ビタミンDを使用している患者においては、適宜、活性型ビタミンDを使用するとともに、カルシウムについては投与の必要性を判断し、投与量を調整する。
· 重度の腎機能障害のある患者や透析を受けている末期腎疾患の患者では、カルシウムの尿からの再吸収機能及び胃腸管での吸収機能が低下している可能性があり、腎機能が正常な患者に比較し、低カルシウム血症の発現率が高くなるおそれがあるため、十分に血清カルシウム値等のモニタリングをする。
2.顎骨壊死
1) 本剤投与開始前に、口腔内の管理状態を確認する。必要に応じて、患者に対し適切な歯科検査を受け、侵襲的な歯科処置をできる限り済ませておくよう指導する。
· 治療前の徹底した感染予防処置を行ったうえで、侵襲的治療が必須と判断された場合は速やかにその治療を行う。
· 侵襲的治療が必要であるが、しはらく保存的治療で経過をみることができる場合はプラリアの投与間隔、血中半減期を加味し、歯科治療の時期や内容を検討し、必要な場合はプラリアの休薬等を考慮する。ただし、休薬の有用性に関しては、明らかなエビデンスはなく、見解が分かれている。
· 口腔内を清潔に保つこと
· 定期的な歯科検査を受けること
· 歯科受診時に本剤の使用を歯科医師に告知して侵襲的な歯科処置はできるだけ避けること
· 異常が認められた場合には、直ちに歯科・口腔外科を受診すること
3. 治療中止時の対応
一般社団法人日本リウマチ学会
ガイドライン委員会
RA治療薬ガイドライン小委員
委員長 川人 豊
(2020.2.1)
参考文献
1) 医薬品インタビューフォーム「プラリア皮下注60 mg シリンジ」2017年7月改訂 第一三共株式会社
2) J Clin Endocrinol Metab 2011; 96 972-980
更新記録
2018年4月 関節リウマチに対するデノスマブ使用ガイドライン初版策定
2020年2月 改訂第2版