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多発血管炎性肉芽腫症(GPA)

多発血管炎性肉芽腫症(GPA)とは

以前はウェゲナー肉芽腫症と称されていた疾患で、「気道に起こる炎症性肉芽腫かつ小~中血管に起こる壊死性血管炎である」と定義されています。眼、耳、鼻、喉などの上気道炎を初発として、気管、肺などの下気道および腎障害をきたしてくる疾患です。病気の原因は不明で、遺伝性はいわれていません。推定発症年齢は男性が30~60歳代、女性が50~60歳代、性差はいわれていません。

症状・検査

発熱、体重減少、易疲労感、筋痛、関節痛などの全身症状とともに、(1)上気道の症状(膿性鼻漏、鼻出血、難聴、耳漏、耳痛、視力低下、眼充血、眼痛、眼球突出、咽喉頭痛、 嗄声 など)、(2)肺症状(血痰、 咳嗽 、呼吸困難など)、(3)腎症状(血尿、乏尿、浮腫など)、(4)その他の血管炎を思わせる症状(紫斑、多発関節痛、多発神経炎など)が起こります。通常は、(1)→(2)→(3)の順序で起こることが多いですが、順番通りではなく、人によってでてくる症状、障害される臓器が違います。検査所見は、炎症反応の上昇(CRP高値、白血球数増加、赤沈亢進)があります。自己抗体としてはPR3-ANCAまたはMPO-ANCAの検出ですが、欧米ではPR3-ANCA陽性が多いのに比し、本邦ではMPO-ANCA陽性が約半数以上みられます。

診断

上気道・肺・腎などの主要症状、壊死性肉芽腫性血管炎の主要組織所見、ANCA陽性などの検査所見から診断します。また、指定難病のため重症度に照らした上で医療助成の対象となることがあります。早期発見・治療による予後の改善があるので、病初期の的確な診断・治療が望ましいです。しかし、感染症、悪性腫瘍、その他の膠原病などでも血管炎を疑うような症状や肉芽腫形成、ANCA陽性化があるので、充分な鑑別が必要です。

治療

治療としては、副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤としてシクロフォスファミド、リツキシマブ、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、透析療法の一つである血漿交換などがあります。また、リスクとベネフィットを鑑みて、ステロイド単独や無治療も考慮することがあります。

生活上の注意点

感染症に対する注意が重要です。また、ステロイドや免疫抑制剤による副作用・合併症に留意し、また、この病気は再燃することが多いので、定期的な診察を受けましょう。

主治医への相談のポイント

感冒などでみられる発熱、易疲労感、関節痛などの全身症状が感染症治療を行っても改善しない場合には、血管炎が関与していることがあるので、早めに主治医に相談をしましょう。

杏林大学 腎臓・リウマチ膠原病内科
川嶋聡子先生

更新日:2022年5月22日