日本リウマチ学会会員各位
2009年10月に米国フィラデルフィアで開催されたアメリカリウマチ学会年次集会において、アメリカリウマチ学会(ACR)とヨーロッパリウマチ学会(EULAR)との合同によるRA予備診断基準が発表されました。この診断基準は臨床現場における今後の検証を待つことからあくまで「予備」とされていますが、きわめて完成度が高く、正しい統計学的解析手順を踏んだものであると評価されます。
この診断基準作成の根底にあるのは、RAをできるだけ早期から診断し、持続的関節炎あるいは骨びらんを来たす可能性の高い症例に対してメトトレキサート(MTX)を用いて治療することにより、関節破壊を阻止しようという画期的な考え方です。したがって、1987年のACR診断基準は正確には分類基準でしたが、この予備診断基準は早期RAを含むRAの診断基準と位置づけることも可能と思います。
この予備診断基準の詳細については、ACR及びEULARの学会誌であるArthritis & Rheumatism及びAnnals of the Rheumatic Diseasesで公表されることになっていますが、現時点ではその詳細について発表されていません。しかし、一部マスコミではすでにその内容が不完全な形で公表をされていることを鑑み、日本リウマチ学会が入手した資料を下記PDFファイルでご紹介します。なお、本資料は、本診断基準の作成に携わったACRのJonathan Kay教授によって提供されたものであることを付記致します。
この予備診断基準は、EULARから提出された早期RA患者症例をもとにして作成されています。したがって、彼我との間に人種差や診療環境の違いなどが存在する可能性は否定できません。このため、日本リウマチ学会としては早急に本予備診断基準の妥当性を検証することが必要不可欠と考え、ACR/EULARによるRA新予備診断基準検証委員会を設置する予定であることをご報告いたします。
関節リウマチに対するACR/EULARの予備診断基準-その考え方と問題点-
平成21年10月30日
一般社団法人日本リウマチ学会
理事長 宮坂 信之