日本リウマチ学会会員各位
これまで日本リウマチ学会としては、関節リウマチにおけるメトトレキサート(MTX)成人用量増量に向けて長年努力をしてまいりましたのはご存じの通りです。昨年11月に当学会から厚生労働省に提出した研究報告書「MTXの週8mgを超えた使用の有効性と安全性に関する研究:日本の3つのRA患者のコホート(IORRA, REAL, NinJa)研究とエタネルセプト市販後全例調査のデータベースの解析」において、「MTXは必要に応じて週16mgまで増量することにより、RA治療の有効性は向上し、安全性には有意の変化は認められない」という結論を提示いたしました。その結果、現在、厚生労働省より医薬品医療機器総合機構(PMDA)への指示により、公知申請に向けてPMDAとワイス社との協議が行われております。これまでの経緯は下記の通りですが、今後の状況の推移につきましても当学会ホームページで逐次皆様にお知らせをする予定にしておりますので、ご了承下さい。
平成21年10月28日
一般社団法人日本リウマチ学会
理事長 宮坂 信之
MTX成人用量増量申請の経緯
1999: |
我が国において関節リウマチの治療薬としてMTXが承認された。 |
2002.5: |
日本リウマチ学会よりMTX承認用量拡大に対して厚労省に要望書を提出した。 |
2004.10: |
医薬品機構(PMDA)は公知申請を認めないとの見解あり。 |
2007.4: |
PMDAは二重盲検比較試験を実施すべきであり、一般臨床試験は認めないとの見解あり。 |
2008.6: |
小池隆夫理事長(当時)及び宮坂信之リウマチ性疾患治療薬検討委員長と厚労省安全対策課課長とが面談し、MTX成人増量の可能性について打診。その結果、日本リウマチ学会よりMTX増量時の有効性及び安全性に関する十分なエビデンス(第三者の解析による)が提出されれば、公知申請も含めて前向きに検討するという回答あり。 |
2008.7: |
日本リウマチ学会小池隆夫理事長(当時)とワイス社社長(当時)との間において、RAにおけるMTX成人用量増量の公知申請に関してはワイス社が全面的に協力をすることが確認された。 |
2008.8: |
MTX用量検討実務会が開催され、IORRA, REAL, NinJa各データベース及びエタネルセプト市販後全例調査のデータのさらなる統計学的解析を情報解析研究所に依頼した。 |
2008.10: |
日本リウマチ財団高久史麿理事長より「MTX投与量の増量等について」という要望書が厚労省保険局医療課長宛に提出された。 |
2008.11: |
日本リウマチ学会は「MTXの週8mgを超えた使用の有効性と安全性に関する研究:日本の3つのRA患者のコホート(IORRA, REAL, NinJa)研究とエタネルセプト市販後全例調査のデータベースの解析」の研究報告書(全117ページ)を厚生労働省安全対策課及び医薬品機構に提出し、「MTXは必要に応じて週16mgまで増量することにより、RA治療の有効性は向上し、安全性には有意の変化は認められない」という具体的な結論を提示した。 |
2009.3: |
PMDA担当者より非公式ではあるが、「本件に関しては間質性肺炎に関する安全性が懸念されているため、厚労省より日本呼吸器学会に諮問を出している」との連絡があり。 |
2009.6: |
日本リウマチ学会よりMTX承認用量拡大に対して厚労省に要望書を提出した。 |
2009.8: |
日本呼吸器学会よりの回答書が厚労省にあり。その骨子は以下の通り:「MTX増量の導入により、MTX惹起性肺障害の可能性を増すという危険は、大規模試験の結果からあまり高くないと推定される。しかし、危険因子の存在の評価については、どのような症例が原則禁忌か、どのような状況であれば慎重投与か、などをこれまでより具体的かつ明確に規定する必要があると思われる。日和見感染症は確実に増加することが懸念されるため、「投与前、投与中の適切なモニタリング項目の必須化を条件に導入する」「ある程度の量を超える症例では報告義務を課す」などの必要があると考えられる。」 |
2009.9: |
日本リウマチ学会宮坂信之理事長と厚労省審査管理課担当官及び薬事情報専門官とが面談。審査管理課からワイスに対して日本呼吸器学会の回答書を示し、現在のワイスの準備状況を確認した後に、審査管理課からPMDAに対してワイスとの協議再開の指示を出すとの説明あり。 |
2009.10: |
日本リウマチ学会宮坂信之理事長、川合眞一リウマチ性疾患治療薬検討委員長兼MTX公知申請推進委員長とワイス社社長とが面談し、ワイス社としてMTX公知申請に全面的に協力する旨が再確認された。 |