平素より、日本リウマチ学会の活動にご理解とご支援を賜り、誠にありがとうございます。
現在、高額療養費制度の上限引き上げが議論されており、今回は見送りとなったものの、患者の皆様にとって大きな不安要素となっております。
特に、分子標的治療薬を使用するリウマチ性疾患の患者さんにとって、長期的な治療費負担の増加は深刻な問題です。
本学会では、この問題に対し慎重に検討を重ねた結果、現時点では以下の方針をもって対応することが重要であると考えております。
- 1.医療費負担の軽減と持続可能な医療制度の両立
-
・高額療養費制度の急激な上限引き上げは、患者の治療継続に影響を及ぼす可能性があり、慎重な運用が求められます。
-
・一方で、医療財政の持続性を考慮し、費用対効果に基づく適正な薬剤使用を推進することが必要です。
-
・日本リウマチ学会としては、日本医学会をはじめとする関連学会等と連携し、患者負担軽減と医療制度の維持を両立させる提言を行います。
-
- 2.分子標的治療薬(バイオ医薬品・JAK阻害薬)の適正使用の推進
-
・患者さんとの“Shared Decision Making(共同意思決定)”を重視し、個々の症例に適した治療法を選択することが重要です。
-
・バイオ医薬品やJAK阻害薬の適正使用を推進し、寛解維持が可能な場合には減量や投与間隔の調整を検討します。
-
・エビデンスに基づいた治療戦略を確立し、より適切な治療選択肢の提供に努めます。
-
・これにより、患者さんの負担軽減だけでなく、医療費の適正化にも貢献できると考えます。
-
- 3.バイオシミラーの適切な活用と安定供給の確保
-
・医療費削減の観点から、バイオシミラーの適切かつ積極的な活用を推奨します。
-
・長期安全性の確保と安定供給の維持を求め、製薬企業とも連携を図ります。
-
- 4.患者の負担軽減と医療の質向上に向けた取り組み
-
・早期診断・早期治療の重要性を改めて周知し、標準的治療の普及を推進するとともに、副作用のリスクを考慮しながらグルココルチコイドの使用を最小限に抑えることを推奨します。
-
・患者教育や合併症予防の充実を図り、長期的な健康維持に努めます。
-
・経済的負担の大きい患者層(低所得者・若年層)の医療費負担の影響を最小限に抑えるための政策提言を行います。
-
・医療費削減と治療の質の向上を両立するため、エビデンスに基づいた医療経済的視点を取り入れた治療を推進します。
-
本学会は、患者さんが安心して最適な治療を受けられる環境を守るとともに、持続可能な医療制度の構築に向けた取り組みを継続してまいります。
今後も関連学会と協力しながら、政府や関係機関への提言を行い、患者の皆様にとってより良い医療環境を実現できるよう努めてまいります。
引き続き、ご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
2025年3月吉日
一般社団法人日本リウマチ学会