会員各位
本学会は、主要な対象疾患である“rheumatoid arthritis” の和語の変更に関し、第46回日本リウマチ学会総会(2002年4月23日)において、「慢性関節リウマチ」から「関節リウマチ」へと呼称変更を決定しておりましたが、厚生労働省からこのたびの政令改正に併せ、特定疾病の疾患名の呼称も「関節リウマチ」へと変更し、2006年4月から実施されることになった旨の連絡が本学会にありましたので、会員各位にお知らせします。
今後とも、論文や学会発表等においてこの旨、周知徹底頂きますようお願いします。
(中)日本リウマチ学会
理 事 長 小池隆夫
JCR医学用語委員会委員長 猪熊茂子
“関節リウマチ”への診断名変更の経緯 2002年4月23日 付
変更の経緯は下記の通りです。
慢性関節リウマチから関節リウマチへ
日本リウマチ学会では、本学会の主要な対象疾患である “rheumatoid arthritis” の和語の変更に関し、下記の背景で検討してきましが、第46回日本リウマチ学会総会(2002年4月23日)において、“慢性関節リウマチ”から“関節リウマチ”に変更することに決まりましたのでお知らせします。
今後は論文や学会発表等において周知徹底頂きますようお願いします。
日本リウマチ学会
理 事 長 越智 隆弘
医学用語委員会委員長 鳥巣 岳彦
医学用語rheumatoid arthritisの和訳が“慢性関節リウマチ”と決定された歴史的背景
“リウマチおよびその近似疾患の命名と分類”(ラテン語と英語)について、第8回国際リウマチ学会総会(1957年)において各国が自国語に翻訳して利用するようにとの決議がなされた。これに基づき日本リウマチ学会では“リウマチ病命名に関する委員会”を設け、関東地区と関西地区のそれぞれの小委員会等で検討の後、第6回日本リウマチ学会総会(1962年)で医学用語rheumatoid arthritis(RA)の和訳が“慢性関節リウマチ”に採用されたとの経緯に基づく。
“慢性関節リウマチ”とは、ラテン語のpolyarthritis chronica progressivaにも英語のrheumatoid arthritisにも該当しない、わが国独自の和語となった。この命名と分類に漸次必要な改訂を加えてより良いものにすることが望まれていた。
用語を変更して欲しいとの要望
1999年日本リウマチ学会評議員に対し、リウマチ学用語に関するアンケート調査が行われた。その結果、多くの評議員よりrheumatoid arthritisに関し、
- 病態解明が進み、それに伴う治療体系が変化し、早期発見、早期治療が重要視される今日、“慢性関節リウマチ”という用語は適当ではない。
- RA患者はすべてが“慢性”の経過を【辿】るとは言えない。RAの“慢性”といった言葉は患者に与える精神的ダメージがあまりにも大きすぎる。
- 療養指導や治療を受ける側の心理をも考慮に入れると発病初期より“慢性”の病名は避けたい。
などの理由で和語変更の要望が多く寄せられた。
“慢性関節リウマチ”より“関節リウマチ”へ
前記の要望により、医学用語委員会において過去3年間に亘り審議を行った。さらに日本リウマチ学会総会の場でも“慢性関節リウマチ”を変更することで見解の一致をみた。その案として“関節リウマチ”と“リウマトイド関節炎”の2つに絞られ、更に討議を重ねた結果、“関節リウマチ”が診断名として妥当であるとして、第46回日本リウマチ学会総会(2002年4月23日)で決定された。その理由は以下のとおりである。
- 患者に不安を与える“慢性”を削除すればよく、社会的にも混乱が少ない。
- 関節に主病変があるリウマチ性疾患との語意を的確に伝えていて、心臓が主病変のリウマチ熱との違いを明確にしている。
- 炎症性疾患であるのに“炎”がついていないのは、SLEやpolymyalgia rheumaticaと同様に考えればよい。
- MRAやJRAの和語との整合性がある。
- 国家試験、医療保健、教科書、国語辞典などでの混乱が最小限ですむ。
- 日本整形外科学会用語集によれば、RAの和語は“慢性関節リウマチ”と“関節リウマチ”のどちらを使用してもよいように初版より[ ]が付けてある。