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関節リウマチ(RA)に対するTNF阻害療法施行ガイドライン

本邦では現時点(2006年4月)ではインフリキシマブ、エタネルセプトの2種が使用可能である。

対象患者
既存の抗リウマチ薬(DMARD)通常量を3ヶ月以上継続して使用してもコントロール不良のRA患者註1)。コントロール不良の目安として以下の3項目を満たす者。
 
  • 疼痛関節数6関節以上
  • 腫脹関節数6関節以上
  • CRP 2.0mg/dl以上あるいはESR 28mm/hr以上
さらに日和見感染症の危険性が低い患者として以下の3項目も満たすことが望ましい。
 
  • 末梢血白血球数 4000/mm3以上
  • 末梢血リンパ球数 1000/mm3以上
  • 血中β-D-グルカン陰性
用法・用量
1.
インフリキシマブ 註2) 
 
  • 3mg/kgを生理食塩水に溶解し、緩徐に(2時間以上かけて)点滴静注する。
  • 初回投与の後、2週後、6週後に追加投与を行い、以後8週間毎に投与を継続する。
2.
エタネルセプト
 
  • 10−25mgを1日1回、週に2回、皮下注射する。
  • ただし、本剤の承認用量は標準的体格をもとにした一律用量とされており、低体重者等には過量となる可能性があるため、投与量を慎重に検討する。
  • 自己注射に移行する場合には患者の自己注射に対する適性を見極め、充分な指導を実施した後で移行すること。

註1)インフリキシマブの場合には、既存の治療とはメトトレキサート(MTX) 6〜8mg/週を指す。
エタネルセプトの場合には、既存の治療とは本邦での推奨度Aの抗リウマチ薬である、 MTX、サラゾスルファピリジン、ブシラミンのいずれかを指す。

註2)インフリキシマブではMTX 6ないし8mg/週との併用のみが保険承認されている。インフリキシマブとMTXとの併用により、インフリキシマブ単独よりも強力な臨床効果が得られると同時に、中和抗体(HACA)産生を抑制することができることから、MTX併用下で使用する。

投与禁忌
1.
感染症を有している。

※B型肝炎ウイルス(HBV)感染者に対しては、TNF阻害薬投与に伴いウイルスの活性化および肝炎悪化が報告されている。C型肝炎ウイルス(HCV)感染者に対しては、一定の見解は得られていない。両者については、TNF阻害療法開始前に感染の有無に関して検索を行い、陽性者においては慎重な経過観察を行なうことが望ましい。
※非結核性抗酸菌感染症に対しては有効な抗菌薬が存在しないため、同感染患者には投与すべきでない。

2.
過去6ヶ月以内に重篤な感染症の既往を有する。
3.

胸部X線写真で陳旧性肺結核に合致する陰影(胸膜肥厚、索状影、5mm以上の石灰化影)を有する。ただし、本剤による利益が危険性を上回ると判断された場合には、抗結核薬の投与を行った上で本剤の開始を考慮する。

4.
結核の既感染者。ただし、本剤による利益が危険性を上回ると判断された場合には、抗結核薬の投与を行った上で本剤の開始を考慮する。
5.
ニューモシスチス肺炎の既往を有する。
6.
うっ血性心不全を有する。
7.
悪性腫瘍、脱髄疾患を有する。
要注意事項
1. 本邦および海外のTNF阻害薬の市販後調査において、重篤な有害事象は感染症が最多である。特に結核・日和見感染症のスクリーニング・副作用対策の観点から、以下の項目が重要である。
 
  • 胸部X線写真撮影が即日可能であり、呼吸器内科医、放射線専門医による読影所見が得られることが望ましい。
  • 日和見感染症を治療できる。
  • スクリーニング時には問診・ツベルクリン反応・胸部X線撮影を必須とし、必要に応じて胸部CT撮影などを行い、総合的に判定する。結核患者との接触歴あり、ツベルクリン反応で発赤径20mm以上または硬結あり、胸部X線撮影で異常陰影あり、のいずれかの条件に該当する症例であれば、イソニアジド(INH)内服(原則として300mg/日)を行なう。
  • 本邦でのインフリキシマブ市販後調査において、高齢者(65歳以上)・糖尿病患者・呼吸器疾患合併患者で有意に肺炎の合併が多いことが明らかになっており、特に慎重な適応判断と経過観察を行なう。
  • 本邦でのインフリキシマブ市販後調査において、ニューモシスチス肺炎の多発(4000例中15例)が報告されており、TNF阻害薬投与中に肺炎の合併を疑う場合は同肺炎を想定した対処を行なう(フローチャート参照)。
2. インフリキシマブ投与においてInfusion reaction(投与時反応)の中でも重篤なもの(アナフィラキシーショックを含む)が起きる可能性があることを十分に考慮し、その準備が必要である。
 
  • 緊急処置を直ちに実施できる環境:点滴施行中のベッドサイドで、気道確保、酸素、 エピネフリン、副腎皮質ステロイド剤の投与ができる。
  • 本邦における市販後調査において、治験でインフリキシマブを使用し2年間以上の中断の後に再投与を行なった症例で重篤なInfusion reaction(投与時反応)の頻度が有意に高かったため、長期間の中断や休薬の後の再投与は特に厳重な準備とともに行なうことが望ましい。
3. 手術後の創傷治癒、感染防御に影響がある可能性があり、外科手術はTNF阻害薬の最終投与より2〜4週間(インフリキシマブでは半減期が長いため4週間)の間隔の後に行なうことが望ましい。手術後は創がほぼ完全に治癒し、感染の合併がないことを確認できれば再投与が可能である。
4. TNF阻害薬の胎盤、乳汁への移行が確認されており、胎児あるいは乳児に対する安全性は確立されていないため、投与中は妊娠、授乳は回避することが望ましい。インフリキシマブは半減期が長いことから、最終投与より6ヶ月は授乳しないことを推奨する。ただし現時点では動物実験およびヒトへの使用経験において、児への毒性および催奇形性の報告は存在しないため、意図せず胎児への曝露が確認された場合は、ただちに母体への投与を中止して慎重な経過観察のみ行なうことを推奨する。
5. TNF阻害薬はその作用機序より悪性腫瘍発生の頻度を上昇させる可能性が懸念され、全世界でモニタリングが継続されているが、現時点では十分なデータは示されていない。今後モニタリングを継続するとともに、悪性腫瘍の既往歴・治療歴を有する患者、前癌病変(食道、子宮頚部、大腸など)を有する患者への投与は慎重に検討すべきである。

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