教育講演-9
関節リウマチ(以下RA)はさまざまな関節外病変をきたすことが知られているが,中でも肺病変は比較的頻度の高いものである。RAの肺病変には表1に示すような多種多様のものがあるが,大きく分けて間質性肺病変(interstitial
lung disease;以下ILD)と気道病変に分けられる。ILDはRAの肺病変として最も普遍的なものであるが,その頻度は診断方法によってさまざまである。即ち,単純X線写真,HRCT,肺拡散能といった異なった手法を用いれば異なった数値が得られる。HRCTでの成績では30〜40%といった成績が多いようである。RAは女性に多い疾患であるが,ILD合併は男性例に多く,50〜60歳台に発症するとされる。リスクファクターとしては,喫煙とRAの活動性があげられている。
RA-ILDの臨床像は特発性間質性肺炎のそれとほぼ同様であるが,RA患者は関節症状のため運動能が低下しており,症状が表に出にくいことに注意すべきである。関節症状と肺症状の出現は一致せず,20%の例では肺病変が先行するとの報告がある。病理組織学的分類ではUIP,NSIP,BOOPが同じような頻度でみられるという。RA-ILDのUIPはしかし,IPF/UIPと組織学的に若干異なり,胸膜病変がより目立ち,またリンパ球浸潤が多く,胚中心を伴ったlymphoid
hyperplasiaが気道や血管に隣接して認められる。治療としては,安定しているUIPパターンのRA-ILDは無治療で経過を観察し,NSIP,BOOPパターンでは関節病変に対するよりも高用量のコルチコステロイドで治療を開始する。治療抵抗性の場合にはcyclosporinやcyclophosphamideといった免疫抑制剤も使用する。
RAには,一方でさまざまな気道病変が存在することが知られている。欧米でも気管支拡張症の合併がいくつか報告されているが,注目すべきは気管支拡張症の存在によってRAが生じるという考え方もある点である。我々も,慢性気道感染症経過中にANCA陽性血管炎を発症した例を経験しており,慢性気道感染症と血管炎/膠原病との関連が注目される。その他,閉塞性細気管支炎,濾胞性細気管支炎の報告がみられる。この場合,治療として用いられた金製剤やペニシラミンによる病変との鑑別が必要となってくる。その他,稀ではあるが,我が国で確立された疾患である,びまん性汎細気管支炎(diffuse
panbronchiolitis;DPB)様の臨床所見を示す例がみられる。この病変については,意見が分かれるところであり,RAの肺病変とする考え方と,DPB患者のHLAプロフィール(B54とDR4の増加)とRA患者のそれが同一であることから,両疾患が併存しているとの考え方がある。自験例では,早期の例では,通常のDPB患者と全く同様に14員環マクロライドが著効し,肺病変は消失するが,RAの関節病変は改善しない。RA例で,慢性的な膿性痰を有する場合には,こういった気道病変を考えて,マクロライド療法を試みる必要がある。
その他の肺病変として注意しておくべきは,薬剤性肺炎と感染症である。近年RAの治療薬としてmethotrexate(MTX)の低用量間欠投与が導入されるに及び,MTXによる薬剤性肺炎の発生が問題となってきている。また,以前から用いられているbucillamineによる薬剤性肺炎も稀ならず認められている。RA-ILDなのか薬剤性肺炎なのかという鑑別が重要となってきている。また,RAでは治療として免疫抑制的薬剤が長期に亘って使用されるため,さまざまな日和見感染症の発症も問題となる。肺結核はもとより,非結核性抗酸菌症も注意すべき感染症である。
表 1 関節リウマチの肺病変
(1) 胸膜病変
・胸水・胸膜炎
(2) 血管病変
・肺高血圧
・肺動脈炎
(3) 肺実質/間質病変
・間質性肺炎/肺線維症
(UIP,NSIP,BOOP)
・上肺優位型繊維化【嚢】胞性病変
・リューマチ結節
・Caplan症候群
(4) 気道病変
・閉塞性細気管支炎
・濾胞性細気管支炎
・気管支拡張症
・びまん性汎細気管支炎
(5) 二次性の肺病変
・薬剤性肺炎
・感染症
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