リウマチ Vol.43 No.2 index
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リウマチ Vol.43 No.2             
リウマチによる頸椎病変 ―その病態と治療―  P.176 - 177
 
戸山芳昭
慶應義塾大学医学部 整形外科
 
教育講演
教育講演-3


 全身疾患である関節リウマチ(RA)患者の50〜70%程度に何らかの頸椎病変が合併するといわれている。RAでは変化が捉えやすい四肢の関節病変に目が向けられ,重要な脊椎病変の診断が遅れたり,見逃されたりする例も少なくない。周知のごとく,脊椎には支持性と運動性,そして脊髄の保護という3つの重要な役目があるが,RAではこれらが障害され,単に局所痛から,脊髄麻痺による寝たきりの状態,さらには突然死に至る例もみられる。このため,個々のRA患者の治療体系を構築するためにも頸椎病変の把握は必須であり,その病態や神経障害発現機序,手術適応とその方法,そして頸椎手術患者の予後などについて十分理解しておくことが必要である。

 一般にRA環軸椎病変は,四肢のRA関節炎と同様に滑膜炎から始まる。病変は関節包の弛緩と主に靱帯付着部を中心とした横靱帯などの弛緩,断裂へと進み,環軸椎間の支持機構が破綻して徐々に前方への不安定性,亜脱臼が生じる。さらに炎症が波及すると,歯突起と外側環軸関節が侵され,その破壊の程度により脱臼形態が決定される。すなわち,病変は前方脱臼から前方+垂直,前方+後方,さらに垂直や後方,側方脱臼へとRA活動性や罹病期間に伴い進行する。このため,垂直脱臼や後方脱臼は罹病期間の長いRA高度進行例に多い。脱臼により脊柱管は狭小化し,延髄・脊髄は静的な圧迫により麻痺が出現する。

 一方,環軸椎の不安定性による動的因子によっても脊髄は循環障害などを来し脊髄症が発症する。従来,環軸椎不安定性は前後方向へのtranslationが主に論じられてきたが,生体力学的研究や臨床例のX線による動態分析,晒し骨標本を用いた検討などから,同高位の矢状面での不安定性にはtranslationに加えてrotationの関与の大きいことが明らかとなった。この不安定性を演者は環軸椎における矢状面回旋不安定性(rotational instability in sagittal plane)と定義し検討している。
 前述した骨性因子による脊髄症発現機序に加えて,RAでは歯突起周囲の滑膜炎による軟部組織の腫脹や肉芽組織,さらに硬膜周囲の肉芽組織や索状物による狭窄なども脊髄症発現因子となる。とくに歯突起後方の腫瘤はMRIにより画像的に描出される。この歯突起後方腫瘤には2つの病態があり,四肢のRA関節炎と同様に滑液の貯留と,滑膜組織・肉芽の増殖である。不安定性は単純X線機能撮影で評価し,脊髄圧迫の有無についてはMRIを用いて評価することが妥当である。垂直脱臼は多関節破壊型やムチランス型,長期罹患例にみられる。この脱臼形態に伴う神経障害は,脳幹・下位脳神経症状として嚥下困難や構音障害,意識障害,顔面の知覚障害などがある。これに脊髄障害として四肢麻痺が加わると,いわゆるpentaplegia型の重篤な麻痺となる。また,延髄高位で脊髄呼吸中枢が障害されるとrespiratory quadriplegia型の麻痺を呈する。

 さて,RAによる頸椎病変の多くは上位頸椎部に生じるが,前・後縦靱帯の椎体縁への付着部,Luschka関節および椎間関節などからRA中下位病変が発現する。その結果,椎間関節・棘突起の侵食破壊,椎体終板-椎体への侵食破壊,椎間板狭小化,椎体のすべりなどの所見がX線上認められる。この中下位頸椎病変は上位頸椎病変例に比べて,高齢者で,ムチランス型などのRA高度進行例に多く,罹病期間が長く,ステロイド治療歴があり,高度骨粗鬆症の合併が多く,多椎間にRA脊椎炎が合併している特徴を有する。そして,中下位頸椎部では軸椎下亜脱臼ないし硬膜外でのRA肉芽組織とそれに伴う絞扼輪によって脊髄麻痺を来す。一般に,上位頸椎病変に比べて治療に難渋する例が多い。

 治療では,症状発現機序がRAによる炎症・破壊・肉芽形成を原因とし,その結果生じた脊椎不安定性や脊髄・神経根圧迫,椎骨動脈障害により局所症状から延髄・脊髄障害などが惹起されるため,その病態に即した治療法が選択される。不安定性が主体の例に対しては,まず頸椎装具を使用させてその効果をみる。ただし,装具による治療が本当に有効か否かの証明はされていない。

 手術では,圧迫性病変に対しては除圧術を,不安定性病変や変形が主体の場合には固定術ないし矯正固定術を脊椎instrumentationとの組み合わせで行う。その際の適応は,高度の環軸椎不安定性を伴う例や,頑固な後頸部痛を有する例,麻痺を伴う例,進行性の環軸椎垂直脱臼例などが対象となるが,とくに麻痺が出現した場合には可及的早期に手術に踏み切るべきである。RA頸椎手術患者の予後は,あくまで全身疾患であるRAの活動性に大きく影響されていることは事実であるが,重度のRA頸椎病変を有する患者の予後が手術例より放置例において不良であったとする報告もあり,今後,早期手術の是非について再検討する必要がある。本講演では,RA頸椎病変について,自験手術例約100例の分析結果を基に文献的考察も加え概説したい。
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