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リウマチ Vol.43 No.2             
小児リウマチ性疾患の診察と考え方  P174 - 175
 
森 雅亮
横浜市立大学 小児科
 
教育講演
教育講演-2


 小児期にみられるリウマチ性疾患は,若年性特発性関節炎(以前,若年性関節リウマチと呼称),全身性エリテマトーデス,若年性皮膚筋炎,混合性結合組織病,抗リン脂質抗体症候群,血管炎症候群(高安病,結節性多発動脈炎など),シェーグレン症候群,ベーチェット病,全身性強皮症など一般に成人でみられるリウマチ性疾患と種類に相違はなく,いずれの疾患も全身性慢性炎症性疾患の特徴を有し,長期予後を見据えた全身性アプローチを必要とし,早期でかつ正確な診断と治療法の構築が求められている。

 平成12年度にcommunity-based epidemiologyの手法を用いて本邦の小児リウマチ性疾患の有病率を検討した結果(表)から,小児10万人あたりで最も頻度の高い若年性特発性関節炎が8.79人,極めて稀であるといわれている全身性強皮症が0.1人であることが判明した。疾患によっては若年性特発性関節炎のように米国(9〜10人対10万人),フィンランド(6〜8人対10万人)の報告と近似しているものもあったが,全身性エリテマトーデス,若年性皮膚筋炎のように欧米の発症頻度より高い頻度を示したものもみられた。

 小児リウマチ性疾患の特徴を挙げると,1) 疾患の種類は成人と同様で,頻度は成人の約15%である,2) 病期が長期にわたり,しかもその時期が成長期にあたる,3) 成人例と比較して,多数の臓器に障害が及ぶ,4) 障害の程度が重い,などが挙げられる。これらの点を留意した治療の考え方は,1) 治癒が最終目的ではあるが,現段階では治療にて病状を上手くコントロールし,患児が普通の生活(学校,進学,就職,結婚)を送れるように援助する,2) 組織破壊,機能不全に陥る前に炎症を抑制するために,早期診断・早期治療を心がける,3) 治療薬に関しては,その効果を最大限に引き出し,副作用を最小に抑えるようにパルス療法の導入や,他剤との併用療法を考慮していく必要がある,などであろう。実際に小児リウマチ性疾患は,最近の内科,整形外科,リハビリテーション科の「臨床免疫学」「リウマチ学」の著しい進歩に歩調を合わせて格段の進歩をみせている。

 ここでは,我々の施設で行っている各小児リウマチ性疾患の診断と治療法を中心に,小児リウマチ疾患へのアプローチの方法を紹介していく。


1) 若年性特発性関節炎

 若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis:JIA)は,滑膜炎をはじめとする関節の炎症が長期間繰り返した結果,関節軟骨・骨破壊が進行し関節拘縮や障害を引き起こす原因不明の慢性の炎症性疾患である。これまで「若年性関節リウマチ(juvenile rheumatoid arthritis:JRA)と呼ばれ,臨床型が発症6週間以内の病型によりいわゆる全身型,多関節型,少関節型の3型に分類されてきたが,米国と欧州の間でみられた疾患名の混乱や本疾患の本質的な病態観察から最近では本名称が定着してきている。

 これまで言及されていた欧米のJRAの病型分類は,客観的な指標に乏しく全身症状の有無や炎症関節数により行われていた。この意味で個々の病型・病態に照らした治療法が施行されてきたとはいえず,病型に応じた標準的な治療法を確立するために均質な病態の症例を集積し,同一の治療様式による治療反応性を検討していくことが必要な時期が来ているといえる。また小児期に発症した慢性の関節炎であっても,いずれは成人に持ち越す可能性は高く,成人における慢性関節炎の疾病分類,病型分類と著しく異なると整合性がとれなくなる。これらの点を考慮した病型分類を,そして早期診断基準を作成することが重要であると考え,我々はJRAを包含した形で小児にみられる関節炎を小児慢性関節炎と規定し,これまでの診断基準,病型分類に拘束されず,臨床症状,血液検査所見から病型分類を試みた。

 治療であるが,我々は関節型に対して,単剤大量使用による副作用の出現を抑え,かつ炎症の早期抑制により関節予後を改善する目的で,9年前よりRF陽性慢性関節炎の治療法としてMTXを中心とした,速効性薬剤と遅効性薬剤を組み合わせた多剤少量併用療法(MAP療法)を実施している。このMAP療法は早期に充分量の薬剤を用い効果を認めたら直ちに漸減にはいる治療法であるが,この結果MAP療法開始後3〜6週間のうちに関節炎の鎮静化,可動域の著しい改善が得られた。全身型に対しては,本邦では現在抗IL-6レセプター抗体の治験が進んでおり,投与後早期に炎症反応を完全に抑制することが可能であることが明らかになった。新たな抗サイトカイン療法が近い将来難治例に対して画期的な治療薬として使用されるはずである。

2) 全身性エリテマトーデス

 全身性エリテマトーデス(SLE)では,発症機序が未だ不明である現在では原因対策が立てられないため,治療目標を「完全な日常生活への復帰」において総合的な治療戦略を考えるべきである。実際の手順としては,@全身諸臓器の障害の評価,A重症度の把握,B総合戦略から考えた戦術の選択,となる。治療としては寛解導入法と維持療法を分けて考える必要があり,我々は寛解導入法として腎組織所見,他のリウマチ性疾患の合併の有無により治療法を選択している。具体的には,@腎組織所見WHO分類U型以下あるいはSLE単独例では,メチルプレドニゾロン(mPSL)パルス療法で導入しプレドニンとミゾリビンやアザチオプリン等の免疫抑制薬内服で維持する方法と,A腎組織所見V型以上あるいは他疾患を合併している症例では,寛解導入法にmPSLパルス療法とシクロフォスファミド・パルス療法,場合によっては血漿交換療法を組み合わせ,プレドニンと免疫抑制薬内服で維持する方法,である。免疫抑制薬の併用,あるいはシクロフォスファミド・パルス療法の導入により90%以上を占めるループス腎炎の著しい予後改善が図られ,腎予後は画然と改善した。

 小児のリウマチ性疾患に対して,我々は患児の10年後,20年後を見据えて,その疾患の病態に基づいた「治療戦略」を常に念頭に入れて対処すべきである。いかに炎症の早期抑制を図り臓器の構造的・機能的廃絶化を防ぐかが,「治療戦略」の基本概念であるべきだと考えている。

表 小児リウマチ性疾患の頻度
  (平成12年度厚生科学研究報告書)

対象人口登録
児数頻度*(min―max)

JRA 6,653,049 648 9.74(4.38―25.45)
SLE 8,998,543 423 4.70(0.75―23.84)
DM 8,860,403 154 1.74(0.71―11.92)
Sjs 8,420,366 60 0.71(0.00―23.62)
BD 8,972,420 42 0.47(0.00―3.26)
MCTD 8,838,220 29 0.33(0.00―15.75)
VS 8,222,984 16 0.19(0.00―1.26)
SSc 8,838,220  9 0.10(0.00―1.25)

*対小児10万人
JRA:若年性関節リウマチ,SLE:全身性エリテマトーデス,DM:皮膚筋炎,Sjs:シェーグレン症候群,BD:ベーチャット病,MCTD:混合性結合組織病,VS:血管炎症候群(川崎病を除く)SSc:全身性強皮症

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