リウマチ Vol.42 No.6 index
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リウマチ Vol.42 No.6             
「骨粗鬆症」
 
松本俊夫
徳島大学大学院医学研究科生体情報内科学
 
Osteoporosis
Toshio MATSUMOTO
〈Keywords〉 bisphosphonate:osteoblast:osteoclast:parathyroid hormone:selective estrogen receptor modulator (SERM)

T.は じ め に

 近年,骨代謝の調節機構に関する研究の急速な進歩に伴い,わが国ですでに1000万人以上の患者が存在する骨粗鬆症の診断と治療に目覚ましい進歩がみられた。骨量の評価における骨塩定量装置の進歩と普及,骨代謝研究の進歩を背景とした数々の骨代謝マーカーの日常診療への導入,分子生物学的研究成果に立脚したエストロゲン受容体作動薬(SERM)や,薬物デザインの進歩による強力なビスフォスフォネートなどの治療薬の登場など,進歩は診断と治療のあらゆる面に及んでいる。
 骨粗鬆症治療の目的は骨折の防止であり,治療薬の有効性も骨折防止効果をもって判定されるべきである。この基本に立ち,3年以上に及ぶ海外での大規模なrandomized controled trial(RCT)により,幾つかの治療薬の骨折防止効果が臨床的に検証され,それに基づくevidence-based medicine(EBM)の導入が進むに至っている。
 わが国ではすでに大きく分けて7種類の薬剤が骨粗鬆症治療薬として市販されているが,海外での大規模試験とのbridging試験などにより骨折防止効果が証明された薬剤はそのうちわずかである。しかし今後は,骨折防止効果を指標としてEBMに基づく薬剤の開発と普及がさらに加速するものと思われる。一方,症例により骨粗鬆症の病態は多様であり,骨代謝マーカーや遺伝子多型などを用いた個々の病態・発症機序の解析が進むことにより,おのおのに即したtailor-made medicineの必要性も今後増すものと思われる。そこで本稿では,骨粗鬆症の病態・発症機序に関する最近の知見を概説した上で,治療の現状と将来への展望について述べる。

U.骨代謝の制御機構

1.骨芽細胞による骨形成の制御
 骨形成を担う骨芽細胞は,線維芽細胞,筋細胞,脂肪細胞や軟骨細胞と共通の未分化間葉系幹細胞を起源とする。骨芽細胞系の細胞はその分化段階に応じて破骨細胞の分化・機能の調節,基質蛋白や成長因子およびサイトカインの産生・分泌,骨基質の石灰化など多様な機能を営んでいる。また,骨芽細胞は副甲状腺ホルモン(PTH),活性型ビタミンD,エストロゲンなどのホルモンや各種の成長因子・サイトカインの受容体を発現し,これらの因子により極めて多様な調節を受けている。これら多くの調節因子の中でも骨芽細胞分化に最も重要な役割を担うと考えられているのが,骨形成誘導因子として同定されたbone morphogenetic protein(BMP)である。一方,骨芽細胞分化のマスター遺伝子としてrunt family転写因子Cbfa1/Runx2が同定され,その欠損マウスでは骨がまったく形成されないことが示された↑1〜3)↑。Cbfa1はBMPの細胞内情報伝達因子であるSmadと直接結合してその転写活性を修飾し得ることも示されており,BMP-SmadシグナルとCbfa1は協調作用により骨芽細胞分化を促進するものと考えられる(図1)。

2.破骨細胞による骨吸収の制御
 破骨細胞は血液系幹細胞がCFU-GMからマクロファージとの分化スイッチを経て破骨細胞前駆細胞へと分化,融合して形成される多核巨細胞である。破骨細胞は骨吸収という特殊な機能を遂行するため,強力な酸分泌能を有するプロトンポンプと,これにH+を供給するcarbonic anhydraseUや,蛋白分解酵素としてcathepsin Kなどの特殊な機能分子を発現している。そして破骨細胞の成熟および機能発現にはPU.1,c-Fos,NF-kBなどの転写因子や非受容体型チロシンキナーゼのc-Srcなど極めて多岐にわたる細胞内因子の存在が不可欠であることが遺伝子欠損マウスを用いた検討から明らかとなっている。
 破骨細胞の分化・機能の調節には骨芽細胞系細胞との接触を介したシグナルが重要な役割を果たしており,IL-6などのサイトカインやPTHを始めとするカルシウム(Ca)調節ホルモンなど多くの骨吸収調節因子は,その受容体が存在する骨芽細胞への作用を介して破骨細胞の形成・機能を調節している。この細胞間情報伝達を担う分子として,骨芽細胞に発現される破骨細胞誘導因子receptor activator of NF-kB ligand(RANKL)が同定された↑4〜6)↑。
 RANKLはTNFリガンドファミリーに属する膜貫通型のサイトカインで,破骨細胞やその前駆細胞に発現される受容体RANKに作用して破骨細胞の分化,活性化,生育の調節に中心的な役割を果たしている↑6,7)↑。一方osteoprotegerin(OPG)は,TNF受容体ファミリーに属するが膜貫通領域を欠く可溶性受容体として細胞外に分泌される蛋白である↑8,9)↑。OPGはRANKLに高い親和性で結合し,decoy受容体としてRANKとの結合を競合的に阻害することによりその破骨細胞誘導作用を抑制する。
 RANKL↑10)↑あるいはRANK遺伝子↑11,12)↑を欠失したノックアウトマウスにおいては多核の破骨細胞がまったく認められないことから,RANKL-RANKシグナルは少なくとも生理的な条件下では破骨細胞の形成に必須の役割を果たしている。また,OPG遺伝子を過剰発現したマウスでは骨吸収の抑制による骨大理石病が↑9)↑,逆にOPG遺伝子を欠失したマウスにおいては骨吸収の亢進に基づく骨粗鬆症が起こることから↑13,14)↑,RANKL-RANKシグナルの調節にOPGが重要な役割を果たしているものと考えられる。
 骨芽細胞系細胞はRANKLおよびOPGをともに発現しており,多くの骨吸収調節因子が両者の発現を逆方向に変化させることにより破骨細胞による骨吸収をダイナミックに調節していることが明らかとなっている(図2)。

V.骨粗鬆症の発症機序

1.閉経後骨粗鬆症の発症機序
 閉経後骨粗鬆症は骨代謝回転の亢進を特徴とする病態を呈し,エストロゲン欠乏によるIL-6,IL-1,TNF-αなどの骨吸収性サイトカインの骨髄での産生増加が中心的な役割を演じている。骨芽細胞にはエストロゲン受容体(ER)-αおよびβが存在するが,前記のサイトカイン産生への作用に加えてエストロゲンはERαを介するOPGの発現促進によりRANKL-RANK系を抑制することが明らかとなっている↑15,16)↑(図3)。さらに,エストロゲンは破骨細胞前駆細胞に直接作用してその分化を抑制することも示されており↑17)↑,複数の作用点を介した多様な作用により骨代謝を調節している可能性がある。
 ER-αの変異↑18)↑やアロマターゼ欠損症↑19)↑の男性患者で著明な骨端線閉鎖不全,高身長や高度の骨量低下が存在することから,男性においてもエストロゲンの存在が思春期の骨端軟骨閉鎖による成長の停止やその後の骨量の維持に必要であることが明らかとなった。しかし,ER-α,βあるいはαβ両者の欠損マウスを用いた検討成績はこれと異なっており↑20,21)↑,ER-α,β作用の特異性およびERを介する骨代謝の調節機構,さらにはアンドロゲンの骨代謝調節系への関わりの解明は今後の重要な課題である。

2.老人性骨粗鬆症の発症機序
 老人性骨粗鬆症の主たる病態は骨形成の低下であり,これに性ホルモンの低下やCa代謝平衡の障害などによるさまざまな程度の骨吸収の亢進を伴う。老化促進モデル動物であるsenescence-accelerated mice(SAM)や老齢化マウスでは,老人性骨粗鬆症患者と同様に骨髄の脂肪化と骨芽細胞数の減少が認められ,骨形成の低下を伴う骨量減少を呈する。これらの動物由来の骨髄間質細胞は,ともに脂肪細胞分化の亢進と骨芽細胞分化の抑制を示し,骨芽細胞と脂肪細胞との分化スイッチに重要な役割を果たすIL-11の発現が低下していることが明らかとなった↑22)↑。一方,IL-11を過剰発現するマウスでは骨形成の促進に基づく骨量の増加が認められ,加齢に伴う骨量の減少がみられないことも明らかとなった↑23)↑。さらにわれわれは,IL-11遺伝子の転写がAP-1転写因子活性に強く依存しSAMや老齢化マウスの骨髄間質細胞ではAP-1活性が低下していること,これが主にJunファミリーのJunDのAP-1結合部位への結合活性の低下によることを見出した。したがって,AP-1/IL-11カスケードは生理的な骨形成の維持に関与し,この低下が老人性骨粗鬆症の一因となっている可能性があるものと考えられる(図4)。

3.不動性骨粗鬆症の発症機序
 長期臥床や微小重力による力学的負荷の減少に基づく不動性骨粗鬆症は,骨吸収の亢進とともに骨形成の抑制をもたらし急速な骨量減少を来す。力学的負荷が骨に及ぼす影響については,骨内のosteocyteや骨表面の骨芽細胞への静水圧やshear stressあるいは細胞伸展刺激などの変化を感受する機序の解明が進められている。そしてosteocyte細胞膜に存在する力学的負荷感受性Caチャンネルを介した細胞内Ca濃度の上昇や,MAPキナーゼファミリー因子などを介する情報伝達系の関与が明らかとなってきた。
 力学的負荷により骨芽細胞系細胞においてc-Fosの発現が短時間で一過性に誘導されるが,われわれはc-Fosのみならず,FosBおよびΔFosB,Fra-1などの広範なFosファミリー転写因子の発現が短時間で一過性に誘導されることを見出した。ΔFosBやFra-1の過剰発現は骨芽細胞の分化・機能の促進による骨形成の促進をもたらすことから,これらの増加が力学的負荷による骨形成の促進に関与する可能性が考えられる。しかも,Fosファミリー転写因子の発現誘導に引き続いてIL-11の産生も促進されることから,AP-1/IL-11カスケードが力学的負荷刺激による骨形成シグナルにも関与している可能性がある。そして加齢に伴う骨形成の低下もAP-1/IL-11カスケードを介する力学的負荷への反応性の低下によりもたらされる可能性が考えられる(図4)。さらに,グルココルチコイドの過剰により骨形成が抑制される一方,後述するごとくPTHの間歇投与により骨形成が著明に促進される。これらのホルモンはいずれもこのAP-1/IL-11カスケードを抑制あるいは促進することによりその作用を発現する可能性も明らかとなりつつあり(図4),骨芽細胞分化の調節におけるこの転写調節系の役割の解明が進められている。

W.骨粗鬆症の治療の進歩

 わが国では,世界に類をみない速度で社会の高齢化が進んでいる。現在すでに1000万人を越すといわれる骨粗鬆症人口は,このまま放置すると20年後には倍化する可能性すら指摘されている。しかも骨粗鬆症による骨折のうち最も重篤な大【腿】骨頸部骨折は,寝たきりの原因の15%近くを占めており,脳卒中に次いで大きな発生原因となっている。また椎体骨折により,QOLの低下のみならず呼吸器や消化器をはじめとする内臓機能の障害などにより生命予後も悪化することが示されている。したがって,骨粗鬆症による骨折の増加は,高齢者自身にとって大きな脅威であるのみならず,社会的にも医療経済的にも重大な課題となっている。

1.ビスフォスフォネート製剤
 強力な骨吸収抑制効果を示すビスフォスフォネートのうち,アレンドロネートとリセドロネートは,歴史的ともいえる大規模な前向き臨床試験により,著明な骨量増加効果とともに椎体骨折および非椎体骨折の防止効果を示すことを初めて臨床的に証明した↑24〜27)↑。とりわけリセドロネートは,欧米を中心に9331例に及ぶ70歳以上の高齢女性を対象とし,大【腿】骨頸部骨折の防止効果を主要評価項目とした3年間にわたる臨床試験を施行した。そして骨塩量の低下等の大【腿】骨頸部骨折の危険因子を持つ5445例の骨粗鬆症患者群において,リセドロネートが大【腿】骨頸部骨折の発症を約40%抑制することが示された↑28)↑。わが国においてもこれらの臨床試験とのbridging試験が行われすでに認可されている。
 これらのビスフォスフォネートは,経口投与では腸管からの吸収効率が極めて悪く,とりわけ食後にはほとんど吸収されなくなるため,朝食30分以上前の空腹時の起座位での服用が推奨されている。しかも,程度の差はあるものの消化器系障害を来しやすいという問題点がある。そこで,これらの問題を少しでも緩和するため,7日分を1錠にした製剤を週1回にまとめて服用する方法が米国ではすでに広く普及しており,効果にはほとんど相違がないことが示されている。そしてわが国においても週1回の服用法の臨床試験が進められている。
 ビスフォスフォネートの経口投与の問題点を克服するとともに,注射薬の繰り返し投与を回避するため,最も強力なビスフォスフォネートの一つであるゾレドロネートを用い,3カ月から1年に1回の静脈内投与というスケジュールで骨粗鬆症患者の骨塩量および骨代謝マーカーに及ぼす影響の検討が行われた↑29)↑。その結果,どの投与法においても4mg/年のゾレドロネートにより1年間にわたり持続的な骨吸収マーカーの抑制とともに,4.3〜5.1%の腰椎骨塩量の増加効果が得られた。したがって,朝食前空腹時の起座位での服用や消化管障害に煩わされることなく,たとえ寝たきりでも年1回の静脈注射により継続的な経口投与と同等の効果が得られる可能性が示された。さらに今後の骨折防止効果の検証結果が待たれており,わが国でも臨床試験が開始される予定となっている。

2.ラロキシフェン
 選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)として組織選択的にエストロゲン作用を発揮するラロキシフェンは,欧米での31〜81歳(平均66.5歳)の7705例における3年間の大規模なMORE(multiple outcomes of raloxifene evaluation)試験により,椎体骨量の増加効果は2.7%に留まるにもかかわらず,新規椎体骨折の発生を50%近く減少させることが示された↑30,31)↑。一方,非椎体骨折の発生は減少させなかったが,これは対象年齢が比較的若年であったことによる可能性もある。この試験では多項目の評価が行われ,同時に検討された乳癌の発症に対しては相対危険率を3分の1近く(0.38)にまで低下させた。これは主にエストロゲン受容体(ER)陽性乳癌の減少によるもので,ER陽性乳癌の発症は実に90%近くも低下した↑32,33)↑。したがって,ラロキシフェンは乳腺での抗エストロゲン作用により,ホルモン補充療法とは逆に乳癌の発症を防止すると同時に,骨粗鬆症による椎体骨折をも防止することが証明され,閉経後女性に対する新しい治療薬として注目を集めている。わが国でもこの試験とのbridging試験がすでに終了しており,承認申請中である。
 ホルモン補充療法の虚血性心疾患への効果を主要評価項目,浸潤性乳癌の発症への影響を主要安全性項目とした大規模臨床試験Women's Health Initiativeが平均5.2年で中断され成績が公表された↑34)↑。これによると,50〜79歳の16,608名に及ぶ子宮摘除歴のない健常閉経後女性におけるエストロゲンとプロゲスチン併用治療は,虚血性心疾患の発症を29%,脳卒中の発症を41%,すべての心血管障害の発症を22%増加させ,乳癌の発症を26%高めることが示された。
 一方,MORE試験での4年間にわたるラロキシフェンの投与が心血管系に及ぼす影響を検討した成績では,全症例を対象とした解析からはラロキシフェンは虚血性心疾患および脳血管障害の発症を有意に抑制しなかったが,虚血性心疾患の高リスク群においては虚血性心疾患の発症を有意に40%減少させた↑35)↑。しかもホルモン補充療法で問題とされた,治療開始1年間での心血管系合併症の増加は認められなかった。
 これらの成績をさらに検証するため,冠動脈疾患をすでに有するか多数の危険因子を持つ10,101例を対象とした大規模なRUTH(raloxifene use for the heart)試験が進行中である。

3.副甲状腺ホルモン
 初めての骨形成促進薬として期待されている,副甲状腺ホルモン(PTH)を用いた17カ国に及ぶ99施設での大規模臨床試験の成績が報告された。この試験では,閉経後5年以上を経過し椎体骨折を有する1637名の閉経後骨粗鬆症患者に20または40μgのPTH(1-34)を平均18カ月間にわたり連日皮下注射し,骨塩量および骨折の発生が評価された↑36)↑。その結果,PTHは新規椎体骨折の発生を対照群の14%に対し20μg群で5%,40μgでは4%へと減少させた。これは,骨折発生率を実に65%および69%も低下させたことになる。また新規の非椎体骨折の発生も対照群の6%に対し,20μg群で3%と53%減少しており,40μgでも54%減少させた。しかも,骨塩量は低および高用量でそれぞれ腰椎では9および13%,大【腿】骨頸部でも3および6%と著明に増加させた。一方,動物実験などで示されてきた皮質骨量の減少は軽度で,高用量でも橈骨で2%の減少を示したのみであった。また,持続性の高Ca血症がみられたのは全体の5%以下に留まり,低用量群ではその頻度はわずかであった。
 以上の成績は,骨吸収抑制薬ではみられたことのなかった程度の骨折率の減少と骨塩量の増加をPTH投与がもたらすことを示したものであり,骨形成促進により骨量が増加すればたとえ骨代謝回転が同時に高まっても,骨強度の増加をもたらしうることを臨床的に証明した点で意義深い。
 さらに,米国ではPTHとラロキシフェンあるいはビスフォスフォネートとの併用あるいは逐次療法の検討も進められており,著明な骨量増加効果などが示されつつある。わが国では,自己注射は少数の薬剤に限られていることから,週1回の皮下注射の効果が検討されている。第2相試験の成績では,200単位(約60μg)週1回1年間の投与で椎体骨塩量を8.1%増加させることが示されており,骨折防止効果を評価項目として3年間の第3相試験が進められていた。また点鼻薬を用いた臨床試験も検討されていた。
 ところが,ラットを用いた毒性試験により,著明な骨量増加による骨髄腔の充溢と平行して,投与1年半過ぎから骨腫瘍の多発が認められ骨肉腫も発生することが報告された。米国での臨床試験も元来は3年以上の投与が計画されていたものがラットでの骨腫瘍の発生により平均18カ月で中断された経緯があった↑37,38)↑。しかし,@ラットでの2年間の投与は生涯投与に相当すること,A生後早期からの投与が骨肉腫の発生に関係する可能性があるものの,ヒトでは高齢者にのみ使用されること,Bヒトで長期間にわたりPTHが高値を持続する病態である原発性副甲状腺機能亢進症では骨肉腫の発症はみられないこと,Cラットでの投与量はヒトにおいて用いられる有効投与量よりはるかに多いことなどの理由により↑39)↑,重症骨粗鬆症患者に対する2年以内の投与を米国FDAは2002年11月に認可した。
 一方,わが国では,動物での骨腫瘍の発生によりすべての臨床試験が停止させられた状態にある。しかし,上記の各点およびPTHの従来の薬剤とまったく異なる作用機序による優れた骨折防止効果を考慮すると,一刻も早い臨床試験の再開と,適切な期間と投与量による骨粗鬆症治療への適用が望まれる。

4.組織特異的活性型ビタミンD製剤
 骨により高い特異性を持つ活性型ビタミンD誘導体としてわが国で開発されているED-71の骨粗鬆症治療薬としての応用に向けた検討も進められている。わが国での第2相試験までの成績では,0.75μgの半年間の投与により骨塩量を3%と,従来の活性型ビタミンDではみられなかった程度にまで増加させることが示された↑40)↑。また,この投与量では高Ca血症や高Ca尿症が出現した症例はわずかで,しかもいずれも軽度であった。さらに,骨吸収マーカーのNTxは約25%低下する一方,骨形成マーカーのオステオカルシンは低下がみられずむしろ軽度上昇する傾向がみられた。したがって,骨吸収の抑制に加え骨形成に対してはむしろ促進的に作用する可能性も考えられ,骨折防止効果を含め今後の検討が期待される。
 最近,DeLucaのグループにより報告された2MDと呼ばれるビタミンD誘導体↑41)↑,およびロシュグループにより報告されたRo-26-9228は↑42)↑,いずれもED-71と同様に骨でより強い作用を発揮し骨形成の促進などとともに骨量増加作用を発揮することが動物実験で示されている。これらのビタミンD誘導体は,組織特異的なビタミンD作用を示す薬剤としてED-71とともに今後の臨床への応用が注目される。

X.お わ り に

 骨粗鬆症の治療薬の進歩には目覚ましいものがあり,EBMに基づく診療の基礎となる信頼性の高い臨床成績も大規模臨床試験などにより次々と得られている。そしてすでに市販されているビスフォスフォネート系薬剤についても,経口薬の投与間隔の増大や極めて長時間にわたり作用が継続する静注薬の開発が進められている。またSERMやPTHなどのまったく新しい作用を有する治療薬の登場も間近いものと期待されるほか,組織特異的に骨での作用をより強く示す活性型ビタミンD誘導体の開発も進められている。
 これらの治療薬の進歩により,続発性骨粗鬆症の中でもとりわけ患者数が多く,かつ治療が困難なステロイド骨粗鬆症に対する治療効果の検討も行われている。ビスフォスフォネートでは,アレンドロネートをステロイド治療中の477症例に1年間投与し,腰椎骨塩量に2.1〜2.9%の増加を認めた成績↑43)↑,およびこれを2年間まで延長した結果10mg投与群で3.9%の増加を示した成績などのほか↑44)↑,リセドロネートが新規椎体骨折の発症を防止するという成績も報告されている↑45)↑。
 ステロイド骨粗鬆症へのPTHの効果の検討も進められており,HRTとの併用によりHRT単独群と比較して椎体骨塩量を1年間で11%増加させること,PTHを中止後もHRT治療下で椎体骨量が1年間に15%も増加することなどが示されている↑46)↑。極めて治療が困難であったステロイド骨粗鬆症に対し,ビスフォスフォネートよりはるかに強力な骨量増加効果が示されたことから,さらに骨折防止効果を含めた今後の検討が待たれる。
 関節リウマチなどの慢性炎症性疾患に伴う骨粗鬆症に対しても,その病態および発症機序の研究とともにビスフォスフォネートを始めとした治療法の開発が近年進みつつあるが,本稿では敢えて割愛させて頂いた。今後,リウマチ疾患研究者と骨代謝研究者との間の情報交換や研究協力が進むことにより,これらの疾患に伴う骨粗鬆症や骨折の防止が進むことを期待したい。


文     献
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著者紹介
 1974年 東京大学医学部医学科卒業
 1977年 東京大学医学部第1内科 医員
 1978年 米国エール大学内科 Research Associate
 1981年 東京大学医学部第4内科 医員
 1982年 同 助手
 1987年 東京厚生年金病院内科 医長 1988年 東京大学医学部第4内科 講師
 1996年 徳島大学医学部第1内科 教授
 2002年 徳島大学大学院医学研究科生体情報内科学 教授(現職)
主な研究テーマ:内分泌代謝学および骨カルシウム代謝学,とりわけ骨粗鬆症の基礎および臨床的研究,多発性骨髄腫など悪性腫瘍に伴う骨病変など

 

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