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リウマチ Vol.42 No.2             
「内科医にも分かる内視鏡視下手術の基本と現状」
 
松井宣夫
名古屋市立大学整形外科
 
教育講演
 慢性関節リウマチ(以下RA)をはじめ関節炎は種々の原因によって起きるが,その本態は滑膜の炎症であり,関節鏡により滑膜を直接観察し,生検を施行し病理組織学的検索を行うことは,関節炎の診断上有用である。本講演では膝関節鏡検査手技について概略し,慢性関節リウマチを始め,種々の周辺疾患の関節鏡像ならびにRAの鏡視下滑膜切除術の基本につき述べる。

関節鏡の歴史
 関節鏡は,1918年高木が世界に先駆けて膀胱鏡を使用して膝関節の観察を行ったのが初めてであり,さらに1920年にはこれを改良して関節鏡第1号機を作製した。その実用化は遅れたが,1959年に渡辺らにより21号関節鏡が開発され,同時にAtlas of Arthroscopyが英語で出版され北米,ヨーロッパを中心として世界に広く普及するに至り,一般にも使用されるようになった。その後しばらくは手技の困難さもあり関節鏡の有用性はあまり広く認められなかった。1975年McGinty,1977年渡辺らによるビデオカメラの導入や種々の鏡視下手術器具の開発により,手技の簡便化や画像の鮮明化が実現し,関節鏡は整形外科医にとって欠くことのできない検査方法となっている。さらに最近は検査のみならず多くの手術が関節鏡視下に施行されるようになっている。

関節鏡の手順
 関節炎に対する関節鏡検査は膝関節が最も多い。現在では1.0mm前後径の細い関節鏡が開発され臨床応用されているため,指の指節間関節においても関節鏡が可能となっており,ヒトのほとんどすべての関節が関節鏡検査の対象となる。
 一般の手順としては,関節鏡により滑膜変化を観察し,その肉眼的所見,病変の程度,広がりについて十分に把握してから,関節鏡視下に生検を行う。駆血帯を使用すると滑膜の色調が大きく変化するため,駆血帯を使用する前に滑膜を自然に近い状態で観察することが重要である。生検を行うと出血のため視野が妨げられることがあるため,生検を施行するときは必要に応じて駆血帯を使用する。また,洗浄により疼痛や腫脹の軽減などの治療効果もみられる。とくに疼痛性関節炎や偽痛風発作(CPPDc. d. d)では関節鏡による洗浄効果が著明であるため,十分に洗浄を行うことが診断とともに治療の一助となる。

滑膜の鏡視と生検
 関節鏡視により滑膜の変化を観察するが,膝蓋上窩底から始まり,半月板周辺,十字【靱】帯周辺の変化や内外谷部の変化も見逃してはならない。
 一般的手順として,関節鏡により滑膜変化の有無,程度,広がりなどにつき詳細に把握してから生検を行う。次に鏡視下に生検を行うが,とくに単関節炎の診断には,関節鏡視と滑膜生検とが不可欠である。

滑膜の関節鏡像
 滑膜関節鏡像の分類は飯野,渡辺の分類による記載が有用である(図1)。正常の滑膜は絨毛が細長slender状で,半透明かつ内部毛細血管を透見できる。炎症による循環障害や細胞浸潤のために,絨毛は腫脹,混濁する。また,強い炎症により,滑膜表面におけるフィブリン様物質の沈着や滑膜の壊死で白色opaqueとなる。

疾患別関節鏡所見
 主な関節炎を呈する疾患(表1)につき関節鏡所見を呈示する。

慢性関節リウマチの滑膜所見
 RAにおける滑膜炎の変化は炎症の期間,部位,再発の有無などにより,きわめて多彩な像を呈する。炎症の初期においては,滑膜の充血,うっ血,浮腫性変化が認められる。炎症の活動期には滑膜の肥厚と絨毛の著しい乳頭状(polyp)増生が認められる。またそれらの滑膜表面はフィブリンの沈着やフィブリノイド壊死により白色を呈する。それらが関節内に脱落し,米粒体やdebrisとなる。著しい滑膜の増生やdebrisは鏡視の妨げとなるので生食水で十分な灌流を行う。前述の他の疾患については講演中で解説する。
RA膝に対する関節鏡視下滑膜手術
 近年関節鏡テレビモニターシステムや手術器具などが進歩し,関節鏡視下手術が広く行われるようになっている。慢性関節リウマチ(以下RA)の膝関節に対する関節鏡視下手術としては鏡視下滑膜切除が主であり,演者は1969年以降,本法をpunchにより行ってきた。1982年以降はテレビモニターの導入により観察下にpunchとshaverの併用により,滑膜切除をよりきめ細かく徹底的に行うことができるようになった。
 最近は,多くの施設から良好な成績が報告されており,本法がRAの局所療法の一つとして,ほぼ確立された位置づけとなっている。
 本法の利点は,術中においては手術侵襲や出血の少ない点,半月板の温存も可能である点などである。術後においては,早期に除痛が得られる点,特別な後療法を要しない点,関節可動域の低下がほとんどない点,従来行われていた外科的滑膜切除術に比して長期的に骨変化の少ない点,早期離床・社会復帰が可能な点,などが主なる利点である。
 現在,演者は表2にあげたような適応により,RA膝に対する鏡視下滑膜切除を施行している。セミナーにおいて手術手技,手順と手術のタイミング(表2)等について解説する。

まとめ
 関節鏡視下滑膜切除術は,テレビモニター下にpunchのみならずshaverなどを駆使することにより,より徹底した滑膜の切除が可能であり,手術侵襲も少ない。単純X線変化が軽度で軟骨変化の軽微なearly stage(Larsen gradeUまで)では,中期的にも明らかに成績がよい。しかも全身コントロールがよければ,さらに長期的に良好な成績が期待される。以上より,本法がRAの局所療法として有用な手段であると考え,ことにearly stageのRA膝に対して,積極的に本法を施行することを勧めたい。

表 1 関節炎を呈する疾患

外傷性関節炎
慢性関節リウマチ
変形性膝関節症
結核性関節炎
痛風性関節炎
偽痛風(CPPDc. d. d.)
色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)
ほか

表 2 RAの鏡視下滑膜切除術の適応

1.保存療法に抵抗し,関節の疼痛,腫脹,関節肥厚,関節水症を繰り返す症例
2.関節拘縮に軽微な症例
3.関節軟骨や骨破壊の少ない早期例(LarsenUまで)
4.全身コントロールの良好な症例
5.若年者で骨軟骨破壊の進行した晩期例での一時的timesavingな手段として
6.高齢者でも可
7.conventional capsulosynovectomyや鏡視下滑膜切除術の再発例
8.その他




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