リウマチ Vol.42 No.1 index
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リウマチ Vol.42 No.1             
「骨吸収におけるTNF関連サイトカインの役割 ──慢性関節リウマチにおける骨吸収機構の解明を目指して──」
 
宇田川信之 小 竹 茂1 鎌谷直之1  高橋直之2 須田立雄3
松本歯科大学生化学講座,東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター1,
松本歯科大学総合歯科医学研究所機能解析学講座2,埼玉医科大学ゲノム医学
研究センター病態生理部門3
 
〈Keywords〉 GM-CSF:IFN-γ:IL-17:IL-18:receptor activator of NF-κB ligand(RANKL)
 
綜 説
T.は じ め に

 破骨細胞は高度に石灰化した骨組織を破壊・吸収する唯一の細胞で,その起源は生体に広く分布するマクロファージ系の造血細胞であると考えられている。近年,FosやSrcなどのがん関連遺伝子を欠失させたマウスが破骨細胞の分化あるいは骨吸収機能に異常を来し,大理石骨病を呈することが報告され,破骨細胞による骨吸収のメカニズムが今まで骨に関心がなかった多くの人によっても注目されている。
 破骨細胞研究の有利な点は,多核巨細胞としての破骨細胞の形成を視覚的に判別できるとともに,その骨吸収機能を細胞培養系で簡単に再現できるところにある。われわれは,これまでにマウスを用いた破骨細胞の分化・融合・活性化(機能発現)を解析する各種の細胞培養系を確立し,その解析を行ってきた。その結果,破骨細胞の分化と機能は,骨芽細胞あるいは骨髄間質細胞の細胞膜上に発現する破骨細胞分化因子(osteoclast differentiation factor:ODF)によって厳格に調節されていることを提唱してきた↑1〜3)↑。ODFの同定は20世紀中には無理であると思われていたが,1997年に思いもよらない方向からその解明が進み,1998年破骨細胞分化因子(ODF/RANKL)の同定とその遺伝子クローニングという劇的な結末を迎えた↑4〜8)↑。
 われわれの研究グループが破骨細胞の形成に関する研究を本格的に開始した今から15年前には,現在のような破骨細胞研究の分子レベルでの急速な解明はまったく想像できなかった。われわれは慢性関節リウマチ(RA)の病態における骨破壊にも注目して研究を行ってきたが↑9,10)↑,receptor activator of NF-κB ligand(RANKL)の発見はRA患者の関節破壊における破骨細胞の役割にも一つの示唆を与えた。本稿では,RAの骨吸収機構について,われわれの成績を中心に最近の研究成果を概説したい。

U.RANKLの発見

 1997年,世界の3つの研究グループ(雪印乳業,Amgen,インディアナ大学)によって破骨細胞形成を抑制する新規因子が発見され,そのcDNAがクローニングされた。この新規物質はTNF受容体に共通した構造を有していたが,膜貫通領域を持たない分泌性の蛋白質であった↑8)↑。この新規受容体はosteoclastogenesis inhibitory factor(OCIF),TNFレセプター1(TR1)などとも呼ばれていたが,その後骨を防御する因子として命名されたosteoprotegerin(OPG)という名称を使用しようという提案が米国骨代謝学会で採択された↑11)↑。
 続いて1998年,OPGが結合するリガンドとしてTNFファミリーに属する膜結合型蛋白質のcDNAがクローニングされた。この分子こそ,われわれが10年以上追い求めてきた破骨細胞分化因子(ODF)そのものであった↑4,8)↑。ODFは316個のアミノ酸から成る膜貫通領域を有するTNFファミリーに属する蛋白質であった。骨芽細胞におけるODF遺伝子の発現は,破骨細胞の分化を促進する因子である活性型ビタミンD,副甲状腺ホルモン,IL-11などの刺激によって著しく増強された。また,ODFの細胞内領域と膜貫通領域を欠如した可溶性ODFを遺伝子工学的に作製し,破骨細胞分化誘導活性をマウスあるいはヒトの造血細胞だけの培養系を用いて調べたところ,骨芽細胞の非存在下でも可溶性ODFとマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)の添加によって破骨細胞が多数形成された。これらの破骨細胞形成促進活性はOPGの添加によって完全に阻害された↑4,7,12,13)↑。
 ODFの真の受容体は,すでに報告されていたRANK(receptor activator of NF-κB)と呼ばれるTNF受容体ファミリーに属する膜結合型蛋白質であることが種々の実験により明らかになった(図1)。現在,ODFはRANKリガンド(RANKL)という名称で統一されつつある。
 一方,OPGはRANKと構造が類似していることからおとり受容体(decoy receptor)として働き,RANKよりもはるかに高い親和性を持ってRANKLに結合することにより,RANKLの活性を強く抑制することが明らかとなった↑8)↑(図1)。

V.IL-17による破骨細胞形成促進作用

 IL-17は活性化T細胞が産生するサイトカインであり,RA患者由来の線維芽細胞に作用しIL-6,IL-8,G-CSFなどの産生を促進することや,線維芽細胞が支持するCD34陽性の造血細胞の増殖を促進することが知られている↑14〜16)↑。そこで,破骨細胞形成に対するIL-17の作用を検討したところ,骨芽細胞と骨髄細胞の共存培養系における破骨細胞の分化をIL-17は強力に促進することが明らかとなった↑17)↑。IL-17のこの促進活性はプロスタグランジンE↓2↓合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX-2)の選択的阻害剤(NS-398)またはOPGの添加により完全に阻害された↑17)↑。また,IL-17は骨芽細胞におけるRANKL mRNAの発現を促進した。そこで,RA患者の関節液中のIL-17濃度を測定したところ,変形性関節症(OA)に比較してRA患者の方が有意に高値を示した。
 以上の結果より,RA患者の骨・軟骨破壊においては,増殖した活性化Tリンパ球が産生するIL-17が骨芽細胞に作用して,RANKLの発現を誘導することにより破骨細胞の分化を促進する可能性が示された↑17)↑(図2)。
 Chabaudら↑18)↑は,IL-17がRA患者由来の滑膜線維芽細胞からのIL-6とLIFの産生を促進することを報告している。また,彼らは,滑膜の器官培養系においてはIL-17が恒常的に産生されており,IL-4とIL-13がその産生を抑制することを報告している↑19)↑。さらに,Lubberts↑20)↑らは,コラーゲン誘発関節炎マウスにIL-4のgene therapyを行うと,滑膜におけるIL-17およびRANKLの発現を抑制することにより骨吸収を軽減できるとする実験結果を報告している。
 一方,Jovanovicら↑21,22)↑は,IL-17はヒトマクロファージによるMMP-9の産生や各種炎症性サイトカイン(IL-1β,IL-6,TGF-β)の産生を亢進させることを報告している。これらの産生促進には,p38 MAP kinaseのリン酸化およびNF-κBの活性化が関与しているとしている↑21,22)↑。また,Ziolkowskaら↑23)↑は,RA関節液中に高濃度のIL-17とIL-15が検出されること,両者は強い正の相関を示すことを報告している。また,ヒト末梢血単核細胞においてIL-15はIL-17の産生を促進すること,この産生亢進はサイクロスポリンAやステロイドにより抑制されることを示している↑23)↑。
 以上の結果より,RAにおける骨破壊にIL-17が重要な役割を果たしている可能性が示唆される↑24)↑。今後の詳しい解析が期待される。

W.活性化Tリンパ球に発現するRANKLは

  破骨細胞の分化を直接促進する
 RANKL遺伝子欠損マウスの所見↑7)↑より,RANKLは破骨細胞の分化のみならずリンパ節の発生およびリンパ球の分化にも重要な役割を果たしていることが明らかとなり,免疫系におけるRANKLの重要性が注目されている。
 最近,RA患者およびリウマチモデル動物の関節滑膜組織におけるRANKLの発現を解析した実験成績が相次いで報告された↑25〜29)↑。われわれも,in situ hybridization法を用いて観察したところ,RA患者の関節滑膜組織において多数増殖が認められる線維芽細胞およびCD3陽性の活性化Tリンパ球にRANKLのmRNAおよび蛋白の発現を認めた↑30)↑。また,RA患者の関節液中の可溶性RANKL濃度をELISA法によって測定した結果,RA患者の関節液中には,変形性関節症,外傷,痛風患者と比較して,可溶性RANKLが高濃度に含まれていることが明らかとなった。一方,RA患者のOPG濃度は低値を示しており,変形性関節症または痛風患者と比較すると,RA患者の関節液における可溶性RANKLとOPG濃度の比は有意に高値を示した↑30)↑。その結果,OPGに対するRANKLの相対比の上昇が,RAにおける骨破壊を惹起している可能性が示された。実際,活性化されたTリンパ球がRANKLを発現し,直接破骨細胞の分化を促進する実験結果も得られている↑25,30,31)↑。
 以上のin vitroの実験結果を支持するin vivoの実験結果として,マウスの関節炎モデルにおける骨破壊はRANKL遺伝子欠損マウスでは認められないとする実験成績が報告された↑32)↑。また,Amgenのグループ↑25)↑は,Tリンパ球が恒常的に活性化されているctla4遺伝子欠損マウスは骨吸収の亢進が認められ典型的な骨粗鬆症の症状を示すこと,リウマチモデルであるアジュバンド誘発関節炎ラットに対するOPGの投与は骨密度の回復作用を示すことを報告した。さらに,限局性若年性歯周炎の原因菌であるActinobacillus actinomycetemcomitansによって発症させた歯周炎モデルマウスにおける歯槽骨の吸収には活性化Tリンパ球(CD4↑+↑T cell)が直接関与しており,これらの骨吸収の亢進はOPGの投与によって抑制されるとする興味深い実験結果も報告されている↑33)↑。
 また,RAの滑膜組織に存在するTリンパ球やマクロファージが産生するIL-6,可溶性IL-6受容体,IL-17,TNFα,IL-1などは骨芽細胞に作用し,RANKLの発現を促すことにより破骨細胞の形成を促進するとする実験結果↑10,17,34,35)↑や,TNFやIL-1がRANKLを介さずに直接破骨細胞の分化や機能を制御するとする報告(後述)↑36〜40)↑もあり,RA病変における骨破壊には複数の機構が関与していると考えられる(図2)。
 最近,東京大学医学部整形外科の田中らのグループは,自己RANKLに対する液性免疫誘導によりマウスの関節炎モデルにおける関節破壊を抑制するという新しい治療法を開発した↑41)↑。このワクチン療法はOPGの頻回投与によって引き起こされる中和抗体産生によるOPGの効果減弱という問題点を克服することができ,RAや骨粗鬆症における病的骨吸収に対する有効な治療法として今後の臨床応用が注目される。

X.破骨細胞分化を負に調節するTリンパ球

  由来のGM-CSFとIFN-γの役割
 われわれは,破骨細胞形成を制御する新しいサイトカインを同定する目的で,骨髄由来の数種類の間質細胞株↑42,43)↑と血液細胞を共存培養することによって,破骨細胞の形成を支持することができる間質細胞と支持することができない細胞の間で発現パターンを異にする分子種を,differential display PCR法を用いて比較検討した↑44)↑。その結果,破骨細胞形成支持活性のない間質細胞において特異的に発現するバンドを見出し,この遺伝子配列を決定したところ,それはマウスのIL-18(IFN-γ誘導因子)遺伝子と一致した↑44)↑。
 そこで,共存培養系を用いてIL-18の生物活性の検討を行ったところ,予想どおりIL-18は各種骨吸収因子によって誘導される破骨細胞形成をすべて強力に抑制した。IL-18はリンパ球あるいは単球に作用して,IFN-γとGM-CSF産生を亢進することが報告されている。よく知られているように,IFN-γとGM-CSFは強力な破骨細胞形成抑制因子である。そこで,IL-18による破骨細胞形成の抑制メカニズムを明らかにするため,IFN-γタイプU受容体遺伝子欠損マウスとGM-CSF遺伝子欠損マウスからそれぞれ骨芽細胞と血液細胞を調製して共存培養を行い,IL-18の効果を検討した(図3)。その結果,IFN-γの信号が伝達されないIFN-γ受容体遺伝子欠損マウス由来の細胞の共存培養系においても,IL-18は破骨細胞形成を正常細胞の共存培養と同様に抑制した。一方,GM-CSF欠損マウスを用いた共存培養系において誘導される破骨細胞形成に対してIL-18はまったく抑制作用を示さなかった↑44,45)↑。
 さらに,IL-18刺激によるGM-CSF産生細胞を同定する実験を行った結果,Tリンパ球に対する特異抗体を用いて脾臓由来の血液細胞画分からTリンパ球を除去した細胞群を骨芽細胞と共存培養すると,骨吸収因子の刺激により破骨細胞は誘導されるが,この共存培養においてIL-18は破骨細胞の形成をまったく抑制しなかった(図3)。
 この共存培養系に正常マウス脾臓細胞から調製したTリンパ球を添加すると,IL-18は破骨細胞の形成を抑制した。しかし,GM-CSF欠損マウス由来のTリンパ球を加えても破骨細胞形成は抑制できなかった(図3)。
 以上の結果より,IL-18はTリンパ球に作用してGM-CSFの産生を促し,破骨細胞前駆細胞に直接作用することにより,破骨細胞形成を抑制することが明らかとなった(図4)↑44,45)↑。
 最近,Horwoodらは,IL-18と同様にIL-12が破骨細胞の分化を強力に阻害する成績を報告している↑46)↑。この実験成績によると,IL-12はTリンパ球に作用して可溶性因子の産生を促進し,この因子が直接破骨細胞前駆細胞に作用することにより破骨細胞形成が抑制されるとするものである。この新規阻害因子の同定は今後の課題であり,RA病変における骨破壊を考えるうえでも興味深い。また,IL-18は骨芽細胞や骨髄間質細胞におけるOPGの発現を促進する結果も得られており↑47)↑,RA患者の関節液中において高濃度存在しているIL-18は破骨細胞による骨吸収の亢進を防御する役割を果たしていることが示唆される↑48)↑。実際,乳癌細胞の移植による骨転移モデルマウスにおける骨吸収の亢進はIL-18の投与によって抑制されるとする結果↑49)↑も報告されており,病的骨吸収におけるIL-18やIL-12の臨床応用も考えられている。
 一方,東京大学医学部の高柳ら↑50)↑は,活性化Tリンパ球はIFN-γの産生を介して破骨細胞の分化を抑制する実験結果を各種の遺伝子欠損マウスを用いて報告している。その実験成績によると,IFN-γはTリンパ球活性化に伴う骨破壊においてTRAF6(TNF receptor-associated factor 6:RANKL,IL-1,LPSなどのシグナル伝達因子)を標的分子とし,その分解を介してRANKLのシグナル伝達を抑制する機構を有するとしている。したがって,TRAF6の機能や発現を抑制することによって新たな炎症性骨破壊の治療法の確立に道が開けると提唱している。事実,TRAF6遺伝子欠損マウスは重篤な大理石骨病を呈すること↑51,52)↑,IFN-γ受容体遺伝子欠損マウスにおいてはコラーゲン誘発性の関節炎が強く発症すること↑53)↑などが報告されている。

Y.RANK-RANKL 系を介さない

  TNFα の破骨細胞形成促進機構
 マウス骨髄細胞をM-CSFの存在下で4日間培養して得たマクロファージをRANKLとM-CSFの存在下でさらに3日間培養すると,大部分のマクロファージは破骨細胞に分化する↑36)↑。そこでこの培養系を用いて各種サイトカインの作用を調べたところ,マウスTNFαはM-CSFの存在下でマクロファージからの破骨細胞への分化を強力に促進した。一方,ヒトTNFαはわずかな数の単核破骨細胞を誘導するのみであった。
 このマクロファージの単独培養系において,IL-1には破骨細胞の分化を誘導する活性は認められなかった。また,マウスTNFαによる破骨細胞形成はOPGの添加によりまったく抑制されなかったが,TNFT型受容体ならびにTNFU型受容体に対する中和抗体によって強力に抑制された↑36)↑。
 マウスTNFαはマウスのTNFT型受容体とU型受容体に結合しシグナルを伝達するのに対し,ヒトTNFαはマウスのTNFT型受容体にのみ結合する。以上の知見は,TNFT型受容体およびU型受容体両者からのシグナルが破骨細胞の分化に重要であることを示唆するものである(図5)。
 また,マクロファージの形質を有するマウス株細胞であるRAW264.7細胞の単独培養においてもTNFα刺激によって破骨細胞の形成が認められた↑37,38)↑。TNFαのシグナル伝達にはTRAF2が必須であることが報告されており,TNFα誘導性の破骨細胞形成におけるTRAF2の重要性が示唆される(図5)。しかし,TRAF6遺伝子欠損マウスから得られた破骨細胞前駆細胞にTNFαを処理してもRANKLの場合と同様に破骨細胞はほとんど形成されないことから↑39)↑,TNFαによる破骨細胞形成におけるTRAF2とTRAF6の関連は今後に残された課題である。
 次に,TNFαによって誘導された破骨細胞に骨吸収活性が具備されているか否かを解析した。マウスTNFαとM-CSFの存在下で破骨細胞前駆細胞を象牙切片上で培養すると,破骨細胞は誘導されたが吸収窩は形成されなかった。吸収窩は,TNFαとIL-1を同時に添加したときのみ象牙切片上に形成された↑36)↑。以上の知見より,マウスTNFαは破骨細胞の分化を促進するが,破骨細胞の活性化を誘導しないこと,一方IL-1は,破骨細胞前駆細胞から破骨細胞への分化を直接促進しないが,形成された破骨細胞の骨吸収活性を誘導することが明らかにされた(図5)。このことから,破骨細胞の機能発現にはTRAF6が必須であることがわかる。
 Pacificiらは,閉経後のエストロゲン欠乏はTリンパ球によるTNFαの産生亢進を介して骨吸収亢進を惹起するという実験結果を報告した↑54,55)↑。すなわち,卵巣摘出術を行ったマウス骨髄においてはTNFを産生するTリンパ球の数が有意に増加すること,Tリンパ球が欠如しているヌードマウスあるいはTNFT型受容体遺伝子欠損マウスにおいては卵巣摘出術による骨量減少が認められないという興味深い結果である。以上の結果は,エストロゲン欠乏による骨破壊にもTリンパ球によるTNF産生が密接に関与している可能性を示している。

Z.お わ り に

 1997年のOPGの発見とそれに続く1998年のRANKL遺伝子のクローニングにより,破骨細胞の形成を調節する骨芽細胞の役割の詳細が明らかになりつつある。さらに,RAや歯周疾患の発症に関与するさまざまな炎症性サイトカインとRANKLとのシグナル伝達の複雑なクロストークのベールも【剥】がされつつある。また,RANKLとRANKの遺伝子欠損マウスが作製され,これらのマウスがともに大理石骨病を呈することが示され,少なくとも生理的骨吸収ではRANKを介するシグナル伝達系が主要な役割を果たすことが示唆されている(図6)。
 一方,炎症性サイトカインであるTNFαとIL-1はRANKL系を介さずにそれぞれ破骨細胞の分化と機能を促進する。とくに,TNFαについては,リウマチ患者に対するTNF抗体の投与が関節破壊を著明に改善したという臨床知見が欧米と日本で相次いで報告されている。したがって,RAをはじめとする炎症性骨吸収の亢進にはTNFをはじめとする炎症性サイトカインの関与が示唆される(図6)。
 さらに,国立相模原病院臨床研究センターの越智ら↑56,57)↑は,RA患者の滑膜組織由来の線維芽細胞であるナース細胞が細胞間接触によってBリンパ球の生存を支持する活性を有し,破骨細胞の分化を促進することを報告している。これらの実験成績は,骨芽細胞と同様にRA由来のナース細胞も破骨細胞の形成に関与している可能性を示唆する。
 この数年にわたる骨吸収機構に及ぼす各種新規サイトカインの発見は,破骨細胞による骨吸収のしくみの分子レベルでの理解に大きく貢献した。これらの研究の発展がRAの新しい治療方針の確立や治療薬の開発につながることを期待したい。

文     献

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著者紹介:宇田川信之教授
 1987年 松本歯科大学歯学部卒業
 1987年 同大歯科病院第2口腔外科学 前期助手
 1992年 昭和大学大学院歯学研究科口腔生化学修了
 1992年 同大歯学部生化学教室 助手 1994年 メルボルン大セントビンセント医学研究所 CR Roper Research Fellew
 1996年 昭和大学歯学部生化学教室 講師
 2001年 松本歯科大学生化学教室 教授
主要研究テーマ:破骨細胞の起源,破骨細胞の分化を制御するサイトカインの役割


図 1 破骨細胞形成の分子機構
活性型ビタミンD(1α,25(OH)↓2↓D↓3↓),副甲状腺ホルモン(PTH),IL-11等の骨吸収促進因子の刺激により骨芽細胞の細胞膜上に発現誘導されるRANKLを,破骨細胞前駆細胞または破骨細胞のRANKが認識することによって,TRAFを介したシグナル伝達により破骨細胞の分化と活性化が行われる。TRAFを介したシグナル伝達にはNF-κBとJNKが関与する。OPGはRANKLのおとり受容体としてRANK以降のシグナル伝達を遮断する。

図 2 活性化Tリンパ球の破骨細胞分化への関与
RANKLの発現が強く認められる活性化Tリンパ球は破骨細胞前駆細胞に直接作用し,破骨細胞への分化を促進する。活性化Tリンパ球によって産生されるIL-17は骨芽細胞に作用することによりRANKLの発現を誘導し,間接的に破骨細胞の分化を促進する。活性化Tリンパ球によって産生されるRANKLは,骨芽細胞由来のRANKLに較べて膜から離れ易く,可溶性RANKL(sRANKL)になるという。

図 3 各種の遺伝子欠損マウス由来の血液細胞と骨芽細胞を用いた共存培養系における破骨細胞形成に対するIL-18の効果
正常マウス(wild type:WT),IFN-γタイプU受容体遺伝子欠損マウス(IFN-γR KO),GM-CSF遺伝子欠損マウス(GM-CSF KO)からそれぞれ骨芽細胞と血液細胞を調製して共存培養(活性型ビタミンDとPGE↓2↓の存在下)を行い,IL-18の効果を検討した。その結果,IFN-γ受容体遺伝子欠損マウス由来の細胞の共存培養系においても,IL-18は破骨細胞形成を正常細胞の共存培養と同様に抑制した。一方,GM-CSF欠損マウスを用いた共存培養系において誘導される破骨細胞形成に対してIL-18はまったく抑制作用を示さなかった。また,血液細胞画分からTリンパ球を除去した細胞群を骨芽細胞と共存培養すると,骨吸収因子の刺激により破骨細胞は誘導されるが,この共存培養においてIL-18は破骨細胞の形成をまったく抑制しなかった。この共存培養系に正常マウス由来のTリンパ球を添加すると,IL-18は破骨細胞の形成を抑制した。しかし,GM-CSF欠損マウス由来のTリンパ球を加えても破骨細胞形成を抑制できなかった。これらの実験成績はIL-18の破骨細胞形成抑制作用がIFN-γでなく,GM-CSFを介して発現されることを強く示唆する。

図 4 破骨細胞分化を負に調節するTリンパ球由来のサイトカインの役割
IL-18はTリンパ球に作用してGM-CSFの産生亢進を介して破骨細胞の分化を抑制する。一方,Tリンパ球が産生するIFN-γは,TRAF6の分解を促進することによってRANKLシグナルを抑制し,破骨細胞の分化を阻害すると考えられる。IFN-γはIL-18の破骨細胞形成抑制作用には関与しない。

図 5 破骨細胞の分化と機能を調節するTNFα,RANKLおよびIL-1の受容体とそれらのシグナル伝達

図 6 生理的骨吸収と病的骨吸収に関与するサイトカイン
生理的状態における破骨細胞の分化と活性化にはRANKLを介した経路が主役を演ずるが,病的状態ではRANKLを介した経路と,RANKLを介さないTNFαによる破骨細胞の分化の促進とIL-1による活性化の促進の関与が考えられる。病的骨吸収におけるRANKLを介した経路と介さない経路の寄与率は現在のところ不明である。

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