T.は じ め に
慢性関節リウマチ(以下RA)の診断基準に手指関節の腫脹が重要視されているように,手指の病変は早期から現れ,進行すると日常生活動作(以下ADL)を障害しその醜形が心理的にも患者を苦しめる。RA手の手術には否定的な意見が浸透し実際にRA手指の手術を施行している施設は限定されているが,近年わずかながら増加傾向にある↑1,2)↑。指の人工関節の開発が世界的に再燃してきていることもあり↑3,4)↑,RA手指の機能再建や人工指関節がリウマチと手の外科関連学会のシンポジウムと特集号などのテーマに取り上げられることが多くなった。学会の討論では,ADLからQOLの時代になり審美的手術適応にも言及されるようになってきた。進行した変形に対する機能再建術は重要であるが,予防的早期滑膜切除術も極めて有効である。指関節早期滑膜切除術を支持する根拠を示し,現在行われている各種変形の病態と機能障害,治療法について概説する。 U.滑 膜 切 除 術
大関節を含めて滑膜切除術の総数は確実に減少している。DMARDsの進歩により腫脹した関節が減少したのが一つの要因であるが,他方関節破壊が進行してから再建術を行えばいいという考え方が増えてきているように思われる。指の滑膜切除に限れば,滑膜切除の効果に疑問を持ち,手術によりかえって悪化することを危惧した否定的な考え方が蔓延している。否定的な長期成績の報告が確かに目につく。しかしそれらのほとんどが内科的コントロールが不完全で,ダイナミックスプリントを用いた後療法が一般化されていない時代のものであり,最も問題点はこれらの報告が関節破壊の進行したものまで混合して評価したものであった点である↑5,6)↑。
しかし,見方を変えれば,このような報告のなかでも30%〜40%に良好な成績があったことを見逃してはならない(表1)。自験例と国内の最近の報告でも早期指関節滑膜切除術の成績は中・長期的にも良好であり↑7〜10)↑,Mannnefelt↑11)↑とStanley↑12)↑はそれぞれ自験例と文献を引用し,指関節の早期滑膜切除術の良好な成績を示し,手術紹介の遅れや術者が手術に躊躇するために手術時期を逸して,真の早期滑膜切除術があまり行われていないことを明記している。
1.PIP関節の滑膜切除術
PIP関節の腫脹が持続するとボタン穴変形へ進行し,破壊された関節はストレスを受けて,不安定性を呈することも多い(図1A〜D)。したがって可及的早期に滑膜切除術の適応がある。ボタン穴変形が出現する前に滑膜切除術を施行することが望ましいが,実際には変形が始まってから行われることが多い。PIP関節は術後の装具療法も行いやすいので,関節破壊のない早期では滑膜切除術の成績は極めてよい。関節破壊が始まっても,関節軟骨の状態が比較的よければ手術適応はあるが,成績は不安定となる。関節破壊と関節裂隙の狭小化が明らかとなった症例では,滑膜切除術の手術適応はほとんどなく関節固定か人工関節が適応となる。
2.MP関節の滑膜切除術
MP関節の腫脹は,関節軟骨の浸食のみならず尺側偏位や掌側(亜)脱臼を引き起こし,手指のスワンネック変形の原因ともなる。掌側亜脱臼を来す前に滑膜切除を行うと可動域の減少も軽度で成績がよい。自験例ではPIP関節に比し早期滑膜切除であっても可動域の減少がやや強い傾向にある。外来手術で行ったり,関節形成術のように徹底したスプリント療法を行っていないことと,早期ではPIP関節の可動域制限がほとんどないので屈筋力が十分にMP関節に伝わらないことも一因であろう。後療法でPIP関節を伸展位で固定してMP関節の屈曲訓練を励行するようにしている。尺側偏位が起こり始めた時点も患者の同意が得やすく,可動域の減少を覚悟して手術を勧める。掌側亜脱臼を予防できれば,スワンネック変形の発生頻度の減少も期待できる。PIP関節の屈曲制限が強くなければ多少のMP関節の屈曲制限による機能障害は少ない。 V.手指の代表的変形
手指の変形はRA患者の30〜45%にみられるといわれている。われわれの調査では,拇指の変形を入れると58%に何らかの変形がみられた↑13)↑。対象が比較的進行した患者層が多いこともあるが,これに関節腫脹や関節拘縮を含むとさらに病変の数は増加する。以下代表的変形について記載する。
1.ボタン穴変形
ボタン穴変形の発生メカニズムを図1Eに示す。PIP関節の腫脹により背側の関節包と伸筋腱中央索の中節骨付着部が伸展されPIP関節の伸展障害が起こり,同時にdorsal
retinacular ligamentがゆるみ側索が掌側に偏位する。掌側に偏位した側索は,PIP関節の伸展力として働かず,側索からのPIP関節を延ばそうとする力はDIP関節に集中し,DIP関節の過伸展が起こる↑14)↑。外観の変形に比して,ボタン穴変形はピンチが障害されることが少なく,一般的に機能的障害は少ないとされ,手術療法はあまり積極的には行われていない。しかし,実際に患者のADL評価を詳細に行うと,DIP関節の屈曲障害があるとpulp
pinchは可能でもtip pinchは困難となり,細かい物の摘み動作が障害される。PIP関節の伸展障害も高度(約60↑°↑以上)となると洗顔や大きな物の把持動作が障害される。
1)保存的療法
変形の初期で関節破壊がほとんどなければ,ステロイドの関節内注射を併用しPIP関節の可及的伸展位での固定とDIP関節の屈曲を励行する。PIP関節を伸展位で十分な期間保つことにより中央索は短縮し,DIPの屈曲により掌側に偏移していた側索が背側に戻される↑15)↑。
2)手術適応
PIP関節の腫脹が強く,ステロイドの関節内注射が無効な場合は関節破壊を予防する意味でも積極的に滑膜切除を勧める。この際,PIP関節の伸展障害が軽度(20↑°↑前後)な場合は,伸筋腱の再建を行わず,術後に装具療法を行う↑16)↑(図3A〜C)。中等度の変形(30↑°↑<PIP<−75↑°↑)以上で関節破壊のない症例では伸筋腱を再建しPIP関節の可動性を温存する↑16,17)↑(図2,3D〜F)。PIP
関節が 90↑°↑以上屈曲し,ADL 障害を伴う高度
な変形や関節破壊のある症例では,PIP関節の関節固定(軽度屈曲位で)か人工関節が適応となる(図 3 G〜I)。
2.スワンネック変形
MP関節の掌側脱臼と手関節のcollapseに伴う腱バランスの破綻が原因で生じるスワンネック変形(SND)が最も多く,尺側偏位と合併することが多い↑13,18)↑。正常ではPIP関節レベルで側索は,PIP関節の屈伸回転中心のやや背側にあり,可動性がある。近位か遠位(mallet
typeの場合)の病変により側索に過緊張が生じ,側索は背側へ転位してくる(図1F)。掌側の支持組織の弛緩によりPIP関節が徐々に過伸展となり,側索の背側移動はさらに助長される。背側転位した側索の掌側移動がなくなるとPIP関節の屈曲が不能となり,骨性強直に至るものもある↑14)↑。PIP関節の自動屈曲が不能となったSNDは摘まみ動作と把持機能が著しく障害されてくる。マレットが原因の場合はDIP関節の屈曲が著明であるがPIP関節の過伸展は軽度であり,したがって屈曲制限の程度も少ない。
1)保存的療法
SNDの初期でPIP関節の自動屈曲が可能な場合には過伸展ブロックスプリント(Ring Mate)を装着するとPIP関節の過伸展が制限されて屈曲は制限されないので変形が矯正され生理的な運動となる↑15,19)↑(図4)。理論的には長期間装具を使用すれば変形の進行の遅延効果と治癒も期待できる。
2)手術適応
Intrinsic tightnessによりPIP関節の屈曲制限があり,関節自体に拘縮がない段階では,尺側intrinsic
releaseでPIPの屈曲が容易となる↑20)↑。マレットタイプのSNDは,DIP関節の固定かteno-dermodesisとPIP関節のmanipulationでほとんどの場合対処できる(図5C)。PIP関節の他動屈曲不能なSNDにはlateral
bandのmobilizationが必要で,PIP関節の過伸展の強いSNDではさらにcentral slipの延長が必要となる↑14)↑(図5A,B)。これらの操作でPIP関節の屈曲が獲得できれば,PIP関節の過伸展が残存する場合に何らかの追加操作が必要である。K-wireにより伸展ブロックを行うことも多いが,皮膚刺激のために屈曲障害を来したり,早期抜鋼により変形再発することもある。PIP過伸展の程度により,dermodesis,尺側側索の掌側移行↑21)↑,浅指屈筋腱による強力な制動まで術式を選択する(図5D〜F)。MP関節の掌側亜脱臼を合併している場合はMPの手術を必ず同時か先行して行う必要がある(図5G)。進行したSNDの変形矯正術では,再発と,PIP関節の強直となる例も多い。しかし,術後にPIP関節の過伸展ブロックをしっかりとしていれば,強直となっても機能的肢位となれば外観,機能共に改善が得られる(図7H,I)。
3.尺側偏位
尺側偏位では,MP関節の腫脹により背側関節包と伸筋腱を中央に支持している矢状索の伸張が起こる。手関節部での橈屈,力学的バランスの破綻,解剖学的形態など種々の要因が加わり伸筋腱がMP関節背側で尺側に転位する。MP関節の内外転の回転中心に生じた尺側方向へのモーメントにより各指は尺側に傾く。同時に伸筋腱は中手骨背側から掌側方向へも移動してくるので,MP関節の伸展力が減少する。MP関節屈伸の回転中心の掌側まで伸筋腱が移動すれば,伸筋腱はMP関節を屈曲するように働き,高度の屈曲拘縮となる(図6A,B)。指の尺側への偏位が中等度(約30↑°↑以上)となると,母指は環小指に届かず,摘まみは困難となる。MPの伸展障害は進行性でコップなどの把持動作が著しく障害される。
1)保存的療法
尺側偏位を保存的に治癒できるかは疑問であるが,矯正位を保持しながら手指を使用できる装具ではADLの改善もみられる↑22,23)↑。装具の使用によって尺側指と拇指とのピンチも可能となり,継続して使用することにより尺側軟部組織の拘縮の予防や変形の進行予防効果は期待できる。しかし,患者自身が装具の使用によりADLの改善を実感していても経過とともに装具を使用しなくなるのが現状である。
2)手術適応
MP関節の伸展制限が軽度(20↑°↑前後)な変形の初期には基本的には手術は行わない。この時期では,滑膜炎がなければ伸筋腱のreposition(橈側への縫縮)のみを行うだけで変形の矯正が簡単確実に行えるが(図6D,E),変形の原因となっている要素を除去しない限り再発の可能性が高いためである。Cross
intrinsic transfer↑24)↑(尺側手内筋を尺側隣の橈側に移行する)や手関節のリアライメント(Clayton法↑25)↑や手根部分固定術↑26)↑)を同時に行えば十分効果が期待できるが,残念ながらこれまでにまとまった報告はない。
MP関節の腫脹が強く,尺側偏位の初期に滑膜切除を主目的に行った症例では,屈曲可動域の減少を認めても変形の矯正は維持されている。変形がもう少し進行して,MP関節の伸展制限によって手掌に深い皺が出始めたり,指の尺側偏位(deviation)で尺側指とのピンチが不能となり始めた時期が手術を勧めるタイミング↑27)↑と考えている(図9)。患者自身もADL障害を感じているし,客観的なADL評価でも障害程度を明らかにできること,この時期からは屈筋腱の相対的優位と尺側手内筋の拘縮も加わり尺側偏位の進行に加えてスワンネック変形も高率に合併(進行)してくる。
具体的手術法の選択は:@MP関節の掌側(亜)脱臼が他動的に矯正可能で,関節破壊の軽度なものでは,骨切除を温存したsoft tissue
reconstruction(関節包の縫縮とCITのWood法↑28,29)↑(図7A〜D),Zancoli法↑30〜32)↑など),手術手技と後療法の煩雑さとを考慮し高齢者ではシリコンインプラントも適応としている(図8A〜E);A他動矯正が可能であっても骨破壊がMP関節形成術(後述);B他動的矯正が不能な症例では中手骨骨頭の切除が必要となり,掌側板を利用した関節形成術↑33)↑(Tupper法)(図7E〜I),種々の人工関節を用いた関節形成術が行われる(図6C)。これら進行例に対する再建術は,可動域には術式と経過年数などによりばらつきがあるがもののMP関節の伸展障害が改善され,外観と機能上の改善が得られ患者の満足度も高い。
4.母指変形
母指のMP関節は手指のMP関節に比して機械的ストレスを受けやすく,関節炎による疼痛を訴えることが多い。PIP関節のボタン穴変形の発生メカニズムと同様にMP関節の腫脹により短母指伸筋腱(EPB)を含めた背側関節包が伸張し,長母指伸筋腱(EPL)が尺側へ偏位を来すためにMP関節の屈曲とIP関節が過伸展する(拇指ボタン穴変形,NalebuffのType
1)↑34)↑。進行した母指ボタン穴変形ではIP関節の屈曲障害のために巧緻動作が障害される。ピンチによるストレスが加わり,IP関節が橈側に傾き不安定性となることも多く,ピンチ動作が障害される。
1)保存的療法
MP関節の関節炎は疼痛を訴えることが多く,同部の局所安静を目的としたshort opponent typeのスプリントが有効である↑15)↑。IP関節の過伸展,橈屈や不安定性に対するIP関節の固定装具は摘まみ動作の改善が得られ患者の受け入れもよい(図10A,B)。拇指ボタン穴変形に対してもMP関節を伸展位に保持する装具が開発され,効果が期待される↑35)↑。
2)手術適応
拇指ボタン穴変形でMP関節の関節破壊がなければ,MP関節の形成術(EPBの縫縮か前進)を(図10C〜E),関節破壊が進行していれば,人工関節かMP関節の固定術を行い,IP関節の屈曲を獲得する。高度の変形では矯正術後の変形再発が多いので,通常MP関節固定術が選択される。術後のMP関節の伸展位保持とダイナミックスプリントの装着が困難であることが変形再発の主因と考えられる↑36)↑(図10F,G)。IP関節の高度な橈屈や不安定性に対してはIP関節の関節固定術が適応となり,ADLの改善と患者の満足度も高い最も確実な手術法である。IPとMP両関節の固定には,良好なCM関節が必須条件となる。 X.屈筋腱腱鞘滑膜炎
屈筋腱の腱鞘滑膜炎は腫脹がはっきりせず,指の変形もないので見過ごされることが多い。弾撥現象で診断されることが多いが,触診による屈筋腱周囲の膨隆した滑膜と屈筋腱鞘のサイドからの圧痛(ピンチテスト)で診断は容易である。PIP関節の拘縮が進行する前に早期診断し治療することが大切であり,放置すると拘縮から強直となり機能障害が著明となる。頻度は少ないが屈筋腱の断列の原因ともなる。手根管部での屈筋腱滑膜炎により手根管症候群を呈する症例も少なからずある。保存的療法に抵抗するものには積極的に手術療法を考慮する。
1. 保存的療法:ステロイドの腱鞘内注射と可動域訓練を行う。自動可動域が得られなくとも,術前に他動可動域を獲得できれば術後の成績もよい。
2. 手術適応:弾撥現象がある例や自動屈曲が不能でも他動屈曲が可能な例は腱鞘滑膜切除術の好適応であり成績もよい↑37)↑。他動屈曲が制限されても関節破壊がなければ,関節受動術を追加して腱鞘滑膜切除術が可能であるが成績はやや劣る。A1
pulleyの切除は尺側偏位を助長することになるので,同部で弾撥現象がある場合ではFDSの一方のslipの切除を行う↑38)↑。 Y.お わ り に
RA手指の保存的療法と早期から機能再建術までそれぞれの段階で行う術式を示した。病変が進行し機能障害が強いほど,再建術による外観と機能の改善が期待でき,患者の満足度も高い。しかしながら,自己の関節に勝る人工関節は存在しないので,腫脹のある関節には早期の滑膜切除術,関節破壊が軽度で変形が起こり始めた時期でのsoft
tissue reconstructionを時期を逸せず行うべきである。内科医と外科医そしてhand therapistのチームワークにより良好なコントロールと機能的評価に基づいた適切な保存的,外科的治療がなされれば患者の大切な手指機能は十分温存できるであろう。RA手の病態と機能障害を理解し,内科医は早い時期に外科医に紹介し,外科医は保存的療法を含めたRA手の治療に積極性を持っていただきたい。
文 献
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著者紹介
1980年 関西医科大学 卒業
1980年 同大整形外科 研修医
1982年 同 助手
1987年 State University of New York at Buffalo, Hand Center of
W. N. Y.
Research Instructor
1990年 Mayo Clinic Biomechanic Lab.
Research Fellow 1991年 関西医科大学整形外科 助手
1995年 同 講師(現職)
1999年 同大学リハビリテーション科 専任医(現職)
主要研究テーマ:慢性関節リウマチの手の病変および変形の病態究明と治療,手のバイオメカニクス
表 1 指関節滑膜切除術の長期成績とその解釈
患者数
関節数
術後年数術前関節Stage
S-1,S-2,S-3,
S-4
%XPの破壊進行
S-1,S-2,S-3,
S-4
(平均)%滑膜炎再発
S1〜S4
(平均)%疼痛ROM変化
S1〜S4
(平均)%総合評価
Ellison et al
(1971) 67
390
4.5 37,15,48 62,90,90
(70) (30) (14) 軽度減少
(15) 43%
森本 他
(1986) 21
69
11 0,30,70,0 (82) (16) (57) 増加
(13) 満足度
33%
長岡 他
(1990) 25
70
14.8 29,67,4,0 50,71,100,―
(70) 15,2,0,―
(4) (0) 増加〜軽度減少
75,26,33,―
Ryu et al
(1998) 64
167
6.7 38,34,24,4 8,40,72,―
(35) 7,11,23,―
(12) (6) 不変〜軽度減少
(73)
注(S:Steinbrocker's stage,Ellisonは初,中,晩期と分類)
Ellisonは70%に関節破壊が進行し,30%に滑膜炎の再発,可動域の軽度減少に留まったのは10%とし,総合評価で43%が良好な結果とした。この結果を成績不良例として,引用している文献が散見されるが,関節単位でなく患者単位で進行度を3期に分類した評価であり(48%がlate
stage),レントゲン進行度以外は全体的な評価しかしていない。Ellionはdiscussionで早期例では滑膜切除を推奨している。森本の報告は成績不良との結論であったが,症例の内訳をみるとStage
1がなく,Stage 2はさらに分類したStage2B以上のすべてlate stageを対象としている。Late stageの報告としては他の報告と大差なく,10年で可動域が9関節(13%)に増加がみられ,患者の33%が満足度しているのはむしろ良好な結果ともとらえることができる。長岡の15年とRyuの7年の報告ではそれぞれ,関節破壊の進行がStage
1で50%と8%,可動域不変〜軽度減少がStage 1で75%,平均73%は極めて良好な結果といえる。本文中では紹介できなかったが,定地らはOTによる指関節滑膜切除後のADL評価(22例36関節,術後9年)を行い,59%にADLの改善,82%が手術に満足と報告している。
図 1 PIP関節の骨破壊と変形の機序
A:中指のPIPと示環小指のMPに腫脹があり,中指はボタン穴変形を呈する。
B:関節腫脹のある関節に限局した骨破壊を認める。示指MPは破壊が進み,他の腫脹関節も早期滑膜切除の時期を少し過ぎている。前医で手術に対するネガティブなインプットがあり手術の同意が得られなかった。進行が危惧された。
C,D:52歳女性。関節腫脹は数年前に消失,これまでに手術の話を聞いたことがなかったという。図8に手術経過を示す。
E:ボタン穴変形の発生メカニズム(本文参照)
F:MPが原因のスワンネック変形(SND)のメカニズム(本文参照)
図 2 ボタン穴変形に対する伸筋腱再建術の術式
A:伸筋腱中央索付着部から伸展機構をV字に切開し,弁状の腱を末梢に反転する。
B:背側滑膜を一塊として切除した後PIPを屈曲すると掌側滑膜もほぼ廓清できる。不十分な場合は両側から側副【靱】帯と掌側板の間の副【靱】帯を切離し掌側滑膜を完全に廓清する。
C:中央索の長軸方向への縫縮。
D:側索を背側方向へ引き寄せて縫縮。
E:Y字型にしっかりと縫合し,他動屈曲で縫合部に無理のかからない角度を術後の早期運動目的で確認する。
図 3 ボタン穴変形の手術例
A〜C:軽度の中指のボタン穴変形に早期滑膜切除と装具療法を施行,術後5年の屈伸を示す。
D〜F:示指から環指の順に変形が強い。中,環指は図2の方法で伸筋腱の再建を行い良好な矯正と可動域を得た(術後2年)。
G〜D:両側示〜小指の高度なボタン穴変形。他動伸展も不能なため洗顔,大きな物の把持障害があった。左のみPIP関節の固定を行った。
図 4 スワンネック変形のPIP屈曲パターンとsplintの効果(ビデオより)
A〜C:PIPの過伸展が強く,自動屈曲はDIPが最大屈曲した後にスナッピングを伴ってPIPが屈曲する。
D,E:環指にリングメイト(京セラ)を装着すると,環指が早期からDIPの屈曲角と同期して曲がっているのが判る。小指はDIPが最大屈曲でもPIPは曲がっていない。
F,G:小指にもリングメイトを着けると屈曲動作がスムースとなる。
図 5 スワンネック変形に対する術式と症例
A:PIPの他動屈曲が不能となった症例。側索が中央索より背側に転位し可動性がない。
B:中央索をZ切離で延長,橈側の側索を掌側へ可動性を持たせ,尺側の側索は近位で切離しPIPの伸展ブロックとして使用。(E参照)
C:DIPの屈曲が強い場合は伸展位で固定するか,図のように皮膚を一部切除し伸筋腱を同時に縫縮する(tenodermodesis)。
D:PIPの掌側皮膚を切除し縫合する(dermodesis)。
E:尺側の側索をClearand皮膚【靱】帯の下から掌側に移行してA2pulleyなど軟部組織と縫合する。
F:片側FDSの1/2を近位で切離し基節骨に固定する事によりPIPの過伸展をブロックする。
G,I,J:54歳女性,矯正不能な尺側偏位とSNDを呈す。
H,K,L:MPは拇指を含めてsilicone implantを,関節破壊の進んだ示〜環指のPIPは表面置換型人工関節(SLFJ)を用いた再建,小指は伸筋腱の再建のみを行った。中指は延長した中央索の断裂を来し,夜間にCapner
splintを装着するが良好な矯正と可動域を有する。
図 6 尺側偏位
A:伸筋腱が尺側に転位し,MP関節の屈伸回転軸の掌側まで移動するとMP関節の伸展は不能となり,伸筋腱は逆にMP関節を屈曲させるように働く。
B:手掌に皮膚短縮を伴う高度な屈曲拘縮となる。
C:矯正術の模式図。亜脱臼の他動矯正可能な例には掌側の【剥】離を十分行い背側関節包の縫縮で矯正位を維持するWood法(上段)。中手骨頭を切除しシリコン製人工関節を挿入するSwannson法,あるいは他の人工関節(中段)。中手骨頭を切除し掌側板で基節骨を吊り上げて,掌側板を関節に介在させるTupper法(下段)。
D,E:関節腫脹がなく伸展障害を伴った尺側偏位の症例。伸筋腱の橈側への縫縮(realignment or repositioning)のみにより良好な矯正が得られる。
図 7 進行した尺側偏位に対する手術
A:47歳女性。他動伸展不困難な尺側偏位と矯正不能なSNDを伴った症例。
B:関節破壊がなかったので,MPは十分な掌側【剥】離の後CIT(本文参照)を伴ったWood法(図6C上段)とPIPはlateral
band mobilizationを施行。
C,D:変形矯正と十分な伸展と屈曲が獲得できた(術後6年)。
E,F:54歳女性。他動矯正不能な尺側偏位とSND。
G:中手骨切除しTupper法(図6C下段)術後5年のXP。
H,I:PIP関節は最終的に機能肢位での強直となったが,外観と機能上の改善が維持できている。
図 8 進行した尺側偏位に対する手術
A:67歳女性,手掌に深い皺がみられた。小指にSNDがある。
B,C:Avanta silicone implantによる関節形成術後4年半,良好な矯正が得られた。
D,E:MP屈曲はやや減少するも,SNDは消失し良好な把持,摘まみ機能を有する。
F:図1C,Dと同じ症例。示指PIP以外すべてのPIPと拇指IPとMPの不安定性があり,把持と摘まみ動作が著しく障害されていた。骨欠損のあるPIPは固定しか選択肢がなく,他に不安定な拇指IPと示指DIPを固定,MP関節は関節破壊のない中環指はWood法,拇指,示指,小指に表面型人工関節(SLFJ)による関節形成術を施行。
H〜J:術後1年,変形矯正と良好なMPの可動域を示す。
図 9 尺側偏位に対する手術のタイミング
伸展制限が30〜40↑°↑となると手掌の皺が深くなり,MP関節の掌側亜脱臼により小指以外にスワンネック変形が出現している。放置すると尺側Intrinsic
muscleの拘縮も進行し尺側偏位とスワンネック変形は共に進行する。
図 10 拇指変形に対する治療
A,B:IPの不安定性に対するSplint。
C〜E:24歳女性,拇指ボタン穴変形の初期であったがMPの腫脹が続き,変形の進行予防で手術を希望した。Gの術式を施行しMPを2カ月伸展位保持に注意した。MPの屈曲は20↑°↑と制限されるが,変形は矯正された(1年)。
F:拇指ボタン穴変形矯正後のコイルバネを使用したMP関節伸展dynamic splint。
G:EPBの基節骨への短縮【逢】着部の強度を高めるための工夫。
H:拇指固定術後1年,CM関節に骨変化(erosion)が出現。
I:約3年でCMの破壊が進行,疼痛と拇指の内転が強くなった。
J:腱を用いたCMの関節形成術を追加した。
K,L :IPとMPの破壊が進行しCMも狭小化がみられたのでIPの固定とMPにAvanta siliconeを使用した。
M:Swanson silicone implant術後沈み込みがみられ可動域が減少した。
N:Grommetを使用すると沈み込みが防止できる。
O,P:CMとMPともに脱臼がみられた。不安定なCMを固定し,側副【靱】帯の残存したMPに表面置換型人工関節(SLFJ)を使用した。
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