もう10数年前になるが,リウマチ関係の国際学会に出席した折,発表を終え雑談の時に「Are
you rheumatologist?」と聞かれたことがある。もちろん,私は整形外科医なのでorthopaedistですよとお答えした。リウマチ領域を専門としている医師の中には,こんなやりとりをされた方もあることでしょう。日本でリウマチ科としての診療科が認められたのは2年前になるが,subspecialityとしてのリウマチ診療科の定着はなおこれからと思われる。
Rheumatologyはもちろん先進諸国では臨床医学の中では内科研修として行われている。これにはリウマチ関連疾患では,多くの全身性障害を伴ういわゆる膠原病を知らなければ高い診療レベルを維持できないことによるであろう。しかし,リウマチをはじめいくつかの膠原病では関節自体が標的であり,その破壊と機能障害は我々整形外科医の守備範囲ともなってくる。もちろん,リウマチのような慢性進行性疾患では他の診療科例えば内科,リハビリ科,精神科,眼科など多数の診療科とも関連してくる。整形外科におけるその他の関節疾患との関連は当然強く,我が国では早くから整形外科医がリウマチ診療に携わった歴史的経緯もある。従って,日本リウマチ学会の会員をみても整形外科医が半数以上を占めている。
もちろん,私は各診療科の立て割り区分や守備範囲の線引きをしようなどといっているわけではない。むしろ,こうした慢性疾患では「かかりつけ医」がいて,二次,三次医療圏へと,必要に応じてより高度の専門的な医療が受けられる体制造りが必要と思う。また,各医療圏間での情報伝達とその共有化により,より適切な医療を提供できることを望んでいる。医療はこのリウマチ学の領域においても一般化と専門化の中で絶えず模索している。かかりつけ医ではより一般医的な診療を求められるであろうし,二次,三次医療圏センターではより専門性を問われることになる。しかし,現行の日本の医療制度の中でこうしたシステムがうまく成り立ってるとはいいがたい。
最近言われている平成16年からの卒後研修必須化の中で,初期研修としてリウマチ学あるいは関節学をどこまで指導しうるか確かに心許ない。もちろん,一般医としてもこうした疾病を研修で体験していなければ実のあるものにはなり得ない。リウマチ学会としてはこうした点も留意すべき点といえる。もちろん,卒後臨床の場では,リウマチ学会,日本整形外科学会や関連学会あるいは日本リウマチ財団がある程度その役割を果たしている。しかし,卒後研修の中でリウマチ学を一般医から専門のrheumatologistに至るまで系統的に教育できるシステムが組み立てられているとはいいがたい。
我が国で膠原病を主体とする内科学教室や関節疾患が中心となる整形外科学教室では,これまで基礎研究ばかりでなく,臨床分野においてもそれなりの研究成果を挙げ,今日のようなリウマチ学の隆盛をみてきた。また,リウマチ・センターも最近ではかなり定着してきており,三次医療圏リウマチ・センターの役割を果たす医療施設も設けられつつある。国立病院における難治性疾患の拠点病院や大学におけるリウマチ・膠原病学講座もみられるようになってきた。しかし,充実したrheumatologistの教育,研究の場はなお限られたものでしかない。
これまで卒後における認定医制は多くの診療科で導入されてきた。ところが最近になって(平成13年7月),専門医認定制協議会が発足し,専門医の認定について新しく見解が出された。加入学会は基本的領域の学会(内科,外科,整形外科学会など),subspecialityの学会(消化器病,アレルギー,胸部外科学会など)と,区分がこれから協議されるもの(リウマチ学会はこれに入る)に分けられ,討議されようとしている。少なくともリウマチ学会はsubspecialityとして認定される学会として期待されるが,これからの問題である。それにはやはり学会として卒前のコア・カリキュラムや卒後研修の計画的な教育カリキュラムについて提言し,実施と評価を行っていくことが急がれる。
私は整形外科サイドからrheumatologyをみていて,リウマチ患者ほど全人的に疾病をみなければならない領域はなく,医療人としてこれほどやりがいのある仕事はないと思っている。若い人にもそういう指導もしてきた。しかし,外科サイドからいえばリウマチの外科で優れた手術ができないようでは,高度の医療提供者の役割は果たし得ないであろう。
幸いにも,私共の新しい附属病院では臓器別・疾患別診療体制を確立しつつあり,リウマチ性疾患は整形外科の病棟と同じ診療単位となり,内科と整形外科がチームとして診療に対応することになっている。こうした傾向はこれから21世紀の診療の中では大いに普及してもらいたいものと考えている。さらにはsubspecialityとしてのリウマチ学の教育システムが早く確立されることを願ってやまない。
著者紹介
1964年 岡山大学医学部卒業
1969年 同大大学院博士課程修了
1970年 ヘイノラ病院(フィンランド),ケネディ
リウマチ研究所(英国)に留学
1973年 岡山大学医学部整形外科 助手
1984年 同 講師
1987年 同 助教授
1996年 同 教授 2001年 同大大学院医歯学総合研究科生体機能再生・再建学教授(現職)
主要研究テーマ:関節外科特に再建術,関節疾患の病態
業績:人工関節の開発・関節軟骨の病態に関する研究
学術賞:1974年 日本リウマチ学会賞
1999年 日本リウマチ財団北陸製薬・骨・関節疾患学術奨励賞 |