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リウマチ Vol.41 No.3             
「関節疾患とA Disintegrin and Metalloproteinase (ADAM)ファミリープロテアーゼ」
 
丹沢和比古
三共椛謫生物研究所所長
〈Keywords〉 a disintegrin and metalloproteinase(ADAM):a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motif(ADAMTS):aggrecan:aggrecanase:TNFα-converting enzyme
 

T.はじめに―ADAM,ADAMTSファミリー

 ADAMとはa disintegrin and metalloproteinaseの頭文字をとった呼称で,同一ファミリーをmetalloproteinase/disintegrin/cysteine-rich(MDC)とも呼ぶ↑1)↑。ADAMはmetzincinスーパーファミリーの中のadamalysin/reprolysin subfamilyに分類され,同じくmetzincinスーパーファミリーに属するmatrix metalloproteinases(MMPs)やastacinsとは,活性中心の亜鉛を配位するアミノ酸配列HEXXHXXGXXHならびに ‘Met-turn' と呼ばれるメチオニンを含む立体構造を共有する↑2)↑。
 ADAM成熟体はpro domain,metalloproteinase domain(catalytic domain),disintegrin domain,cysteine-rich domainから構成される。分類上ADAMの最も近縁のプロテアーゼはヘビ毒プロテアーゼのPVクラス(PV class of snake venom metalloproteinases, PV・SVMP)であり,両者で上記の基本構造は共通している。ADAMではこのC端側にEGF repeatが,また膜結合型ADAMではこのC端にさらにtransmembrane domain,cytoplasmic tailが存在する。ADAMTSは,ADAMのうちthrombospondin typeT motif(血小板顆粒の成分であるthrombospondinに現れる繰り返し配列の一つ)を持つ一群の分子である。
 Disintegrinは溶血性ヘビ毒中から見出された,50〜80アミノ酸から構成される血液凝固阻止因子であり,その多くはフィブリノーゲンと血小板上のαUbβ↓3↓ integrinとの結合を阻害することによって血栓形成を阻止する。これらはRGD配列を持ち,それを介してintegrinと相互作用するものと考えられたためdisintegrinという名称で呼ばれた。ただし今日ではRGD配列を持たないで血液凝固阻止活性を持つ分子も知られている。個々のADAM分子の中でdisintegrin domainが一定の役割を果たしていることは必ずしも証明されていないが,このdomainが機能を発揮する場合,それは細胞間接着に関与すると考えられており,それはプロテアーゼ活性とは独立に機能することもあり得る。幾つかのADAMでは,そのレセプターがintegrinであることが報告されている。そしてADAM,ADAMTSのすべてがプロテアーゼ活性を持つわけではない。
 ADAMファミリーの構造,分類,およびその多岐にわたる役割についてはホームページ(表1)に紹介されているほか,多くの優れた綜説↑1,3〜6)↑がある。本稿ではADAM,ADAMTSファミリーに属する酵素のうち,関節疾患との関係で注目されている2つの酵素,TNF-α converting enzymeとaggrecanaseとを取り上げ,最近の進歩について俯瞰したい。その精製・遺伝子クローニングが,前者はイミュネクスおよびグラクソのグループにより,後者はデュポンのグループにより行われたことからも判るように,これら酵素は医薬のターゲットとなるという期待がその研究の強力なdriving forceとなってきた。

U.TNF-α converting enzyme (TACE) [ADAM-17]

1.発見の経緯
 TNF-α converting enzymeは,膜結合型TNF-αを切断し分泌型TNF-αを産生するプロテアーゼである。1994年にその活性が検出され↑7〜9)↑,1997年には全塩基配列↑10,11)↑が報告されてADAMの一分子種であることが明らかになった。抗TNF-α抗体,可溶型TNF-α受容体などの蛋白製剤が関節リウマチ(RA)に著効を示すことが明らかになるにつれ,経口投与可能な薬剤が次の目標とされたが,TACEはその標的としての期待を集めて登場したのである。TACEは現在ADAMの中で最もよく研究されているものの一つであり,ADAMファミリーの中で初めて触媒部位のX線結晶構造が解析され↑12)↑,またノックアウトマウスが作成された↑13)↑。後述するTACEの基質の多くは,ノックアウト動物に由来する細胞の解析から明らかにされている。

2.Ectodomain shedding
 細胞表層に局在する膜結合型蛋白質が種々の刺激に応じて切断を受け,その細胞外ドメインが放出される過程はectodomain sheddingと呼ばれ,発生過程などに深く関与すると同時に,炎症反応やRAなど疾患の進行過程において極めて重要な役割を果たす。このプロテアーゼはほとんどの場合金属プロテアーゼであり,しかもその多くはADAMファミリーであろうと考えられている。Sheddingにあたって,ADAMは何らかの形で活性化を受けることが予想される。TACEはectodomain sheddingを担うプロテーゼの代表例であり,TNF-αばかりでなく,TGF-α,L-selectin,U型TNF-αレセプター(TNFR-75)↑13)↑,T型TNF-αレセプター(TNFR-55),U型IL-1レセプター(IL-1RU)↑14)↑,erbB4/HER4↑15)↑などのectodomain sheddingを行う。それらの切断部位には何ら共通するアミノ酸配列が存在しない。これはある意味で従来のプロテアーゼの常識を覆すものである。
 生合成的にTNF-αはいったん小胞体膜上に固定された後,細胞膜表面に移動しU型膜蛋白として活性を発現する。当初,TACEは細胞表層に局在し,TNF-αは細胞表層で切断されて分泌型となると考えられていた。しかし最近の蛍光抗体法を用いた検討によると,TACEは一部が細胞表層に局在するものの,その大部分は細胞内,それも核周辺部に局在し,この局在はTNF-αそのものの局在と一致した。しかもTACEのprodomainはmedial Golgiで除去されるため,TACEは細胞表層に到達する以前に活性型になっている↑16)↑。またPMA刺激によるsheddingの亢進に伴って,細胞表層のTACEは細胞内に取り込まれる↑17)↑。これらの結果から考えると,ectodomain sheddingは細胞表層ではなくむしろ細胞内で起こっていると考えるのが合理的である。もちろん,切断反応が細胞表層でのみ起こるような未知のメカニズムが存在している可能性は,完全には否定しきれない。またsheddingを引き起こす刺激は複数存在するが,それらがADAMの活性変動を通じてsheddingを引き起こす情報伝達経路の解明は今後の重要な研究課題である。

3.TACEの役割の二重性
 TNF-αレセプターにはT型(TNFR-55)とU型(TNFR-75)とが存在し,情報伝達を主に担うのはTNFR-55であると考えられてきた。しかしその後,細胞間接触によりその機能を発現する膜結合型TNF-αは分泌型TNF-αよりもはるかに強いTNFR-75活性化作用を持ち,しかもTNFR-55とは異質な細胞応答,すなわちT細胞の活性化や胸腺の増殖誘導を引き起こすことが見出された↑18)↑。ところでTNFR-55もTNFR-75も,TNF-αそのものをはじめとする幾つかの刺激によってsheddingを受ける。その結果,sheddingを受けた細胞はTNF-α非感受性になり,同時に遊離した可溶型レセプターがTNF-αと結合してこれを中和する。したがってレセプターのsheddingを通じて,TNF-α刺激は負のフィードバックを受けている。Driらはこの過程を解析し,次のような結果を得た↑19)↑。好中球をTNF-α刺激するとTNFR-55とTNFR-75とがともにsheddingされるが,抗TNFR-55モノクローナル抗体を用いた場合も同一の現象が同程度に起こる。しかし抗TNFR-75モノクローナル抗体を用いた場合このsheddingは起こらないため,TNF-αは2つのレセプターのうちTNFR-55によるシグナル伝達を介してsheddingを引き起こしていると考えられた。このsheddingはヒドロキサム酸阻害剤により阻害されることから,その大部分(TNFR-55の場合はほぼすべて,TNFR-75の場合は約2/3)が金属プロテアーゼ活性に依存することは明らかである。彼らは幾つかの予備検討の結果から,ここで働いている金属プロテアーゼがTACEそのものである可能性について言及している。これが正しいとすると,TACEは分泌型TNF-αの産生とTNF-α刺激の抑制,言い換えると炎症の惹起と抑制という二重の役割を担っていることになり,このとき各種の刺激による,その局在の変動を含むTACEの活性調節がどのようになされているかは興味深い。

4.TACE阻害剤
 このように (1) TACEはTNF-α以外にも多くの蛋白をectodomain sheddingする (2) TACEはTNF-α刺激の負のフィードバックにも働いている可能性がある,という事実から,TACEを阻害することはTNF-αを中和することとはかなり意味合いが異なっていると思われる。TACEの阻害剤としておびただしい数の化合物が合成されているが,現時点で最も先行しているのはデュポン社であり,DPC333(構造未開示)のリウマチを適応症としたフェーズUを北米と欧州とで開始した。なお,TACEはTIMPファミリーのうちTIMP-3によってのみ阻害される↑20)↑が,何故TIMP-3のみが阻害するのかはまったく不明である。

V.Aggrecanase[ADAMTS-4, -5]

1.Aggrecanの分解
 Aggrecanは軟骨乾重量の約10%を占める高分子コンドロイチン硫酸プロテオグリカンであり,そのコア蛋白分子内にG1,G2,G3と称される3つの球状ドメインを含む。AggrecanはこのうちN末にあるG1を介してヒアルロン酸(hyaluronan)に結合しており,通常ヒアルロン酸とaggrecanとの比が約1:100の巨大な会合体として存在する。またG2とC末端にあるG3との間の部位には,コンドロイチン硫酸とケラタン硫酸とがとくに高密度に結合している。関節のフレームワークは主としてU型コラーゲン繊維によって形成されるが,関節が耐圧性や膨潤性を持つのはaggrecanが負に荷電したグリコサミノグリカンを大量に持つことによる。
 関節疾患において, aggrecanは真っ先に減少していく細胞外マトリックス成分の一つである。ところでG1とG2との間にあるinterglobular domain(IGD)はプロテアーゼ感受性であるが,1991年にSandyらは,関節軟骨の器官培養をIL-1α刺激するとaggrecanが特異的な部位,すなわちGlu↑373↑-Ala↑374↑で切断されていることを見出し↑21)↑,後にこの活性をaggrecanaseと命名した↑22)↑。この “aggrecanase site" における切断は,変形性関節症(OA)患者や炎症性関節疾患患者の関節液中にも観察された↑23)↑ことから,aggrecanaseはOA治療薬のターゲットになると期待された。一方,多くのMMPもこのIGDを切断するが,その場合の切断部位はAsn↑341↑-Phe↑342↑である。Aggrecanase活性の検出には,切断によって生じるネオエピトープを認識する抗体がしばしば用いられ,汎用されているものにはたとえばN末端配列ARGSを認識するモノクローナル抗体BC-3↑24)↑がある。

2.Aggrecanaseの遺伝子クローニング
 Aggrecanaseの実体は長い間不明であり,MMP研究の進歩とともにそれはある種のMMPではないかと考えられたが,この仮説はことごとく否定された。たとえばMMP-8は実際にaggrecanase siteを切断する活性を持っているが,実際には “MMP site" を優先的に切断しその後にaggrecanase siteを切断するため, 上述の現象を説明できない。 最終的に1999年Arnerらのグループによりaggrecanase-1(ADAMTS-4)↑26)↑,aggrecanase-2(ADAMTS-5,当初の発表ではADAMTS-11)↑27)↑が精製・cDNAクローニングされ,ADAMTSファミリーとしての基本構造を持つことが明らかにされると,aggrecanaseの研究は一気に進展し,次のような事実が明らかにされた。この中で関節中に主として存在するのは,aggrecanase-1であるといわれている。

 1) “Aggrecanase site"
 Aggrecanaseによるaggrecanの切断部位は複数存在し,その中で従来aggrecanase siteと呼ばれてきたGlu↑373↑-Ala↑374↑は実は最も切断されにくい部位である↑28)↑。ウシaggrecanを用いた実験において,aggrecanase-1はG2とG3との間にあるKEEE↑1667↑-↑1668↑GLGSを,次いでGELE↑1480↑-↑1481↑GRGTを切断し,最後にIGDのGlu↑373↑-Ala↑374↑を切断した。図1には対応するヒトaggrecanの配列を示す。Sandyらが最初にGlu↑373↑-Ala↑374↑を同定したのは,切断産物の分析にCsClグラディエントを用いたため,このsiteによって切断される産物が最も分子量が大きいという理由による。こうして分解されたaggrecanは,さらに2個所で切断される。これら新たに明らかにされた切断部位を用いることによって,関節炎でのaggrecan分解をより高感度に検出できる可能性がある。ラットコンドロザルコーマをIL-1β刺激した場合にもほぼ同様の順序でaggrecanase依存性の切断が起こる↑29)↑。

 2) Thrombospondin typeT motif
 Aggrecanase分子中のthrombospondin typeT motif(TSP-1)は,aggrecan中のglycosaminoglycan(GAG)との相互作用を介して基質の認識と切断とに必須の役割を果たしている↑30)↑。すなわちTSP-1を欠損させたaggrecanase-1はaggrecanを切断しなくなり,またaggrecanからGAGを除いたaggrecanコア蛋白はaggrecanase-1によって切断されなくなる。Thrombospondinが硫酸化GAGと結合することはよく知られており,Glu↑373↑-Ala↑374↑が存在するIGDにはGAGが存在しないのに対して,前述したKEEE↑1667↑-↑1668↑GLGS,GELE↑1480↑-↑1481↑GRGT配列があるG2-G3間ドメインはコンドロイチン硫酸による強い修飾を受けている。したがって,これらの事実は切断部位の優先度に関する結果と符合する。Thrombospondinの中でW(S/G)XWはGAGとの結合に,またCSVTCGはthrombospondin receptorであるCD36との結合にあずかることが明らかにされているが,これらの配列を含む人工ペプチドはaggrecanaseを阻害する↑30)↑。またわれわれはコンドロイチン硫酸がaggrecanaseを阻害することを見出している↑31)↑。

 3) Aggrecanaseの基質
 Aggrecanaseはaggrecan以外のプロテオグリカンも分解する。Aggrecanをはじめversican,neurocan,brevican[brain-enriched hyaluronan binding(BEHAB)/brevican]などのコンドロイチン硫酸プロテオグリカンはlecticanファミリーと呼ばれる。Brevicanは脳に局在し,Glu↑395↑-Ser↑396↑で切断されるが,この切断部位周辺のアミノ酸配列はaggrecanのaggrecanase siteと50%の類似性を示す。この部位を切断する酵素brevicanaseはaggrecanase-1と同一であった↑32,33)↑。Brevicanの生成と分解とはグリオーマの転移性に相関しており,aggrecanase-1活性の制御がその治療につながる可能性が示唆されている↑33)↑。またversicanは全身に分布しており,その分解産物も大動脈などに検出されている↑34)↑。

3.Aggrecanase阻害剤
 Aggrecanase-1,-2はMMPの内因性阻害蛋白であるTIMP-3によって阻害される↑35,36)↑。この阻害は,TIMP-3のN末ドメインによるものである↑35)↑。TIMPsにはTIMP-1から-4まで4つの分子種があり,この特異性が前述したTACE阻害の特異性と共通していることは興味深い。しかしTACEの場合と同様,この特異性な阻害がTIMP-3の構造上のどのような特徴に依存するのかは明らかでない。またn-3(Omega-3)脂肪酸は他の炎症性因子(cyclooxygenase,lipoxygenase,サイトカイン)とともにaggrecanase発現のダウンレギュレイションを引き起こす↑37)↑。
 最近Sandyらは,ヒト【靱】帯損傷によって関節aggrecanのaggrecanase siteでの切断が急速に進行することを見出している。彼の基本的な考えは,OAとは機械的損傷などを引き金とする関節構造のリモデリングの過程である,というものである。そこではまず既存の構造を除去することが必要であり,aggrecanaseはその中で中心的な役割を果たす。したがってaggrecanaseを阻害することはOAの治療に有効と考えられるが,上述したようにaggrecanaseにはaggrecan以外の基質が存在することから考えると,それを全身性に阻害することが副作用につながる可能性も考えられる。Aggrecanaseは傷害や疾患に伴う腱でのaggrecan代謝にも主要な役割を果たす↑38)↑。何らかのモデルでOA治療に効果を示すaggrecanase特異的阻害剤は,現在に至るまで報告されていな
い。

W.お わ り に

 私事にわたり恐縮であるが,筆者のADAMファミリーとの関わりは20年前,米国ラトガース大学でprocollagen N-proteinaseの研究をしていた当時に【遡】る。この酵素はコラーゲンの3重らせん構造を必須とする厳密な基質特異性↑39)↑や,プロテアーゼとしては珍しい2段階の反応機構↑40)↑を持つ。それがADAMTS2と同定された↑41)↑現在の時点で考えてみると,未だ証明されてはいないものの,このような特性はaggrecanaseの場合と同様にそのthrombospondin motifに依存していることは,まず間違いないであろう。ADAMファミリープロテアーゼは,ようやくその巨大な全貌を見せ始めたように思われる。
 そしてこれらADAMは最終的に医薬の分子標的となるのか? 研究の進展とともにそれ以上の疑問が出て来る現状のもと,水面下で多くの努力が続けられている。

文     献

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著者紹介
 1972年 東京大学農学部農芸化学科卒業
 1974年 同大学院修士課程修了
 〃 三共鞄社 1981年 ラトガース医科大(米国)留学
 1999年 三共椛謫生物研究所所長(現職)
主要研究テーマ:炎症,癌,感染症に関する開発研究

表 1 Web sites一覧

ADAM
www.uni-bielefeld.de/〜hgeppert/ADAMs/ADAMs.html
www.uta.fi/%7Eloiika/ADAMs/HADAMs.htm
www.people.Virginia.EDU/〜jag6n/Table of the ADAMs.html
ADAMTS
www.gene.ucl.ac.uk/users/hester/adamts.html
www.lerner. ccf.org/pi/apte.html


図 1 ヒトaggrecanのプロテアーゼ切断部位

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