1.結晶誘発性関節炎の分類
生理的に結晶が存在する部位は骨などに限られるが,病理的に体内で結晶が出現すると疾患を生じる。とくに,関節内に生じると炎症を引き起こすことが多い。結晶の種類によって(a)痛風性関節炎,(b)仮性痛風,(c)塩基性リン酸カルシウム(BCP:basic
calcium phosphate)結晶誘発性関節炎,に分類される。これらの関節炎の原因となる結晶の種類は,(a)尿酸1ナトリウム(MSU)1水,(b)ピロリン酸カルシウム2水(CPPD),(c)ヒドロキシアパタイトなどの塩基性リン酸カルシウム(BCP)(成分は数種類の結晶の混合と考えられている)である。
2.結晶誘発性関節炎の臨床像と診断
各,結晶誘発性関節炎の臨床像の比較を表1にまとめた。
1) 痛 風
痛風は20代以降の男子に多く,女性は非常に少ない(男性の数%程)。罹患関節は初発関節炎の約70%は第1中足趾節関節である。関節炎発作は予感を伴うことが多く,炎症は激烈で通常1日以内にピークが来る。初期の場合一般に1週間以内に炎症は治まり,1年に1/2―2回程の発作を繰り返す。発作中には全身的に発熱する場合もある。
検査所見では血清尿酸値の上昇(7mg/dl以上)が重要である。また,発作時の関節穿刺によるMSU結晶の証明は診断のために大切である。関節のX線所見では,初期の発作では軟部組織の腫脹がみられるが,後には関節の破壊像がみられるようになる。痛風の関節のX線像に特徴的な所見は,overhanging
margin(ひさし様の張り出し),軟部組織の細かい石灰化などとされる。
2) 偽痛風
偽痛風は軟骨のCPPD結晶により誘発される急性の関節炎である。老人に多く,男女差は少ない。若年性の偽痛風は遺伝性の場合が多い。CPPD結晶は膝,肩関節,股関節,足関節,手関節などの関節軟骨,半月板などにしばしば沈着する。
偽痛風の関節炎も発作性があるが,痛風より炎症の程度は弱いことが多い。しかし,発作中には全身的に発熱する場合もある。
検査所見では関節X線像によるCPPD結晶の沈着の証明が大切である。関節軟骨ではCPPD結晶は鮮明な線状の像としてみられる。半月板や恥骨結合部への沈着では比較的不規則な粒状,線状の陰影として認められる。
3) BCP結晶誘発性関節炎
BCPは関節炎の原因になるほか,関節周囲炎,腱炎,滑液包炎を引き起こす。比較的女性に多く40―50代に多い。肩関節周囲炎が多いが股関節,手関節,膝関節に起きることもある。関節炎は数日―数週間でおさまる。Milwaukee
shoulderとして知られる肩関節の萎縮性,破壊性関節症もこの範疇に入る。
検査所見では関節X線像で石灰沈着がみられる。炎症や疼痛部位に石灰沈着像が一致することが診断の根拠となる。
4) その他の結晶
関節注入したステロイドが関節内で結晶化し,関節炎の原因になったとの報告がある。
さらに,その他の結晶により関節炎が誘発されたとの報告もあるが,症例が少なく因果関係は確実ではない。
3.結晶誘発性関節炎の治療
痛風性関節炎の治療にはコルヒチンがしばしば用いられる。しかし,偽痛風でも痛風ほどではないがコルヒチンが発作の治療に有効であると考えられている。コルヒチンは多核白血球の遊走を抑制することにより関節炎の炎症の進展を阻害する。コルヒチンは痛風の発作の予感期に1錠(0.5mg)のみを投与すると有効である。
結晶誘発性関節炎に共通して用いられるのは非ステロイド抗炎症薬(NSAID)である。痛風発作の場合はNSAIDは通常極量を用い,漸減する。たとえば発作直後から,ナプロキセンを1回に300mg投与,3時間置きに1日3回まで投与する。発作の2日目にも疼痛がある場合にはナプロキセンを1回に200mg投与,毎食後に1日3回まで投与する。CPPD結晶,BCP結晶誘発性関節炎の場合も基本的には同様の治療でよい。
非ステロイド抗炎症薬が用いにくい場合は経口ステロイド薬による治療も有効である。ステロイド薬はプレドニンであれば1日20―30mgより開始し,急速に減量する。注射用ステロイド薬の投与もまた有効である。非ステロイド抗炎症薬もステロイド薬も炎症が治まった後には投与する必要はない。
4.結晶性関節炎の長期的治療
痛風の治療は,関節炎の治療だけでなく高尿酸血症を是正する治療が大切である。また,高尿酸治療を開始する時期も極めて重要である。発作中には高尿酸血症の治療薬は新たに開始すべきではない。すでに高尿酸血症の治療中に発作が起きた場合は,その治療法を継続すべきである。これは,痛風発作の開始や悪化が血清尿酸値の変動により起こりやすいことによる。痛風発作中に高尿酸血症治療薬であるアロプリノールやベンズブロマロンを開始すると極めて高い確率で発作は悪化する。したがって,これらの薬剤は痛風発作が十分鎮静化した後に開始すべきである。また,痛風発作のないときに高尿酸血症治療薬を開始した場合にも,血清尿酸値は正常に戻っても発作は起こりうる。しかし,長期に(半年位)血清尿酸値を正常に保てば発作は起きなくなる。
表 1 結晶誘発性関節炎の臨床像の比較
疾患名患者背景罹患関節X線像
痛風 成人男性 母趾MTP,膝,足
足背,アキレス腱 overhanging margin
軟部組織のCa沈着
偽痛風 高齢者 膝,肩,股,足,手 軟骨の線状のCa沈着
BCP結晶
誘発性関節炎 中高年 肩,股,膝,手 軟部組織のCa沈着
表 2 各結晶誘発性関節炎の結晶の特徴
疾患名結晶結晶の大きさ
(μm)結晶の形偏光性
痛風 MSU 2―20 針,棒状 強い負
偽痛風 CPPD 2―10 棒,矩形 弱い正,またはなし
BCP結晶
誘発性関節炎 BCP 5―20 棒,不規則 なし
MSU:monosodium urate(尿酸1ナトリウム);CPPD:calcium pyrophosphate dihydrate(ピロリン酸カルシウム2水);BCP:basic
calcium phosphate(塩基性リン酸カルシウム) |