20世紀後半の50年はRA治療発展の激動の時代であった。1950年コルチコステロイド(以下ス剤)の臨床応用が始まり,その劇的な効果でRA治療は一時終着駅を迎えたと思われたが,現実には,これがRA治療のスタートとなり各種薬剤の開発をみながら終わることなく長い旅を続け21世紀に至ろうとしている。
私も医学部入学以来50年,その大半をRA治療に専念してきた身,この機会にこの経過を振り返ってみて,これらの成果を基に21世紀に向けたRA治療の進展を展望してみたい。ス剤の副作用の軽減を目指して,次々の開発された非ステロイド抗炎症例(フェニールブタゾン,インドメサシン,イブプロフェン,ジクロフェナック)などがRA治療に用いられてきた。さらに非ス剤の副作用(消化器障害,腎障害)の軽減を目指し,DOS製剤として座薬,外用剤,注射剤,プロドラッグ,腸溶剤と数十種の薬剤が開発されてきた。この50年間栄えた非ス剤の開発も20世紀の終わりに近い現在,その粘膜障害のため使用が制限されcox-2製剤へと変わりつつある。
また,1960年代の金注射,クロロキンに続き,免疫調節剤として1970年代には,D-ペニシラミン,経口金剤サラゾスルファピリジンが開発され,さらに1980年代からMTXなど免疫抑制剤もRA治療に応用されてきている。最近はこれに加えて21世紀の治療に結びつく抗サイトカイン療法,遺伝子療法も臨床応用も始められている。これらの薬物療法の進歩は,50年前に比べRA患者のQOLの向上に役立ってきた。また,抗リウマチ剤も長期使用による脱落例やresponder,
nonresponderの存在が明らかになり,副作用有効性についての問題点が判ってきている。
ただ,こうした治療成績の向上もRAの完治させることができず,主病巣の関節の破壊は徐々に進行し,このためのADL障害を改善する手段としての手術療法,理学療法,補整具療法が必要とされた。手術はせいぜい関節固定術,座位保持のための関節切除術しかなかった50年前に比べ,半世紀の間に薬物療法ともども進歩発展してきた。
1960年代の抗リウマチ効果を目指した滑膜切除術の時代から1970年代,急速な進歩をみた人工関節による機能改善手術がRAに適応され,これ以後20年の進歩により寝たきり患者は著しく減少してきている。人工関節はまず股関節に始まり,膝関節,肘関節と続き,現時点では,ほぼ全身の関節に適応されている。初期懸念された耐久性も,人工材料,デザインの改良,手術手技の向上により長期成績も安定し,末期RA患者の治療体系に広く組み入れられ,その有用性は疑問の余地はない。またRA同様,関節の破壊を来す主な病変変形性関節症に対して,人工関節はより一般的に適応され,人口の高齢化に伴いその需要は増大している。最近は一時見捨てられていた滑膜切除術も,関節鏡視下の方法により,低浸襲の手術として普及し,関節破壊の予防に広く適応されている。
これら20世紀のRA治療の進歩を踏まえ21世紀を展望してみると,まずモノクロナール抗体を使った抗サイトカイン療法はより一般的になり,それに続いて遺伝子療法が試みられ,原因療法に近づくと思われる。
21世紀前半は,まだ関節機能の改善を目指した人工関節手術の治療適応は拡大され,より正確な手術としてのロボット手術も一般化されるであろう。
また,加齢に伴う変化やRAによる骨の弱化がより問題になり,骨形成をコントロールする因子に関与する薬剤の開発が進み,bone and
joint decade 2000〜2010の目指した人体支持組織の強化によるQOLの向上が得られると期待される。
今は見捨てられた薬剤,治療法もその時点では有用な手段であることを念頭において一歩一歩目標に向かって行く姿勢が大切であり,新しい発見は過去の歴史の上に打ち立てられたことを忘れてはならない。 |